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バナナはおまえに入りますか
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今、ヒドイ目にあっています。
どれくらいヒドイかというと、この猛暑の中、ダウンを着せられて、アスファルトの上に立たされるくらいヒドイと思います。最近また少し体重が増えた僕では死んじゃうと思うんです。
もしくは、三日ほど絶食していたところに、老舗のうなぎ屋の前を通るようなものです。この頃美味しいものばかり食べさせられてるから気が狂うと思うんです。
どちらもしたことはないですが、それくらいヒドイと思います。
今僕はベッドの上で全裸になって両手両足をいっしょに縛られて身動き出来ない状態です。ロープが肉に食い込んでちょっと痛いです。まるでこれから焼かれる豚のようです。
しかも、僕の粘膜という粘膜にラブローションを塗り込められています。それ、僕が買ったやつなのに。高かったのに。もう空っぽになっています。
絶対弁償してもらいます。
というわけで今の僕の状態はどこもかしこも敏感になっているわけです。もともと敏感なのに、これ以上敏感になったら日常生活に困るんですが。
この間も少しサイズが小さくなったTシャツが擦れて乳首が目立ってしまいました。そう言えばあのときも怒られましたが、僕のせいではないのに理不尽が過ぎます。
だいたい、僕は悪くないのです。
もともと僕はぽっちゃり気味ではありましたが、デブと言われるほどではなかったのです。それなのに彼と出会ってから僕の食生活は一変しました。
彼はグルメでおいしいお店をよく知っています。
食いしん坊な僕は彼の誘いに乗っていたらあっという間にぷくぷくと太ってしまったのです。
だって、おいしいんですよ。
横浜の中華料理店では脂の乗った東坡肉にプリプリのエビマヨ。僕の手のひらよりも大きい肉まんを食べ歩いて、喉が渇けばタピオカミルクティー。
恵比寿のお店では一キロの塊肉と〆のパスタはウニをたっぷり使った濃厚なカルボナーラ。
門前仲町のお好み焼き屋さんでは選べないからと豚玉とモダン焼き、それからイカ玉を平らげたあとに出されたあんこ巻。老舗和菓子屋で使うあんこらしくてとてもお美味しかった。
つけ麺激戦区だという池袋では三軒はしごしましたが、魚介出汁のおいしい店もあれば豚骨醤油のこってりしたもの、塩味のお店ではついつい麺を追加してしまいました。あっさりした塩味ならカロリーゼロだと思います。
おかげさまで僕の今の体重は過去最高レベルに達してしまいました。
今の体勢も腹がつかえてとても苦しいのですが、文句も言えません。
なんせ、口に挿れられているのは僕が買ったディルドです。ちょっと大きすぎました。
ローションを塗られているところ以外も濡れているのは、彼の舌が這ったところです。犬みたいに長い舌で僕のふにふにとした足の指やら、二重あごになってしまう首を舐められました。
僕がなんでこんなことをつらつら考えているかというと、こうでもしないと痒みでどうにかなりそうだからです。
なんとかして欲しいと目で訴えるのですが、伝わったようには思えません。
「俺のよりデカイの咥えて喜んでるじゃねぇよ」
あ、とっても怒ってるみたいです。
ちょっととがった犬歯で耳を噛まれました。いくら脂肪に包まれているとはいえ、痛いです。
困りました。
目で伝わらないなら、口……はふさがってますからボディランゲージで伝えるしかありません。
彼が身体を起こしたところで僕は丸い身体を左右に揺らしました。痒いところをアピールするように。
すると彼は眉間のシワをさらに深くしてしまいました。さらに怒らせてしまったみたいです。
どうにも八方塞がりな僕はさらに塞がれてしまいました。
怒ってるはずの彼がぐっと身体を押し付けてきて、いちばん痒くて痒くて仕方ない部分を掻きました。
ボディーランゲージは万国共通のようです。
ここしばらくずっと欲求不満でさらにラブローションで敏感にさせられて焦らされた身体にはひとたまりもありません。
「……即イキかよっ」
しょうがないじゃないですか。
さっきからずっとラブローションがたっぷり塗り込まれたおちんちんをぐちゅぐちゅいじっては、イキそうになると止められてて、今にも爆発寸前だったんですから。
そこをちょうどいい硬さと大きさのおちんちん突っ込まれたらイくに決まってます。
本当にぴったり収まる丁度いいサイズ感です。
僕がアダルトグッズを通販したのは彼が僕の身体を作り変えたからにほかなりません。
彼が変えたのは体型だけではなく僕のあらゆる性感帯を開発し、淫乱な身体にしたのに、ここ数週間食事の誘いもなければ、押し倒されることもありませんでした。
もう飽きてしまったのか、捨てられたのだと思っていたのです。
なんせ彼は僕と違って社内でも指折りの出世頭です。
僕と彼は同じ会社の先輩後輩です。
五年前入社した彼のメンターをしたのが僕ですが、そのころから彼の実力は僕を上回っていました。
挨拶回りの営業先でも僕がもたついている間に資料の説明をしてくれたり、今どき珍しい接待でも美味しいお店を予約していたり。
ぽっちゃりな僕とは違って鍛えてる身体はいわゆるシックスパックでスーツがとても似合います。僕と同じだけ食べているはずなのにどうしてなんでしょう?
女性陣からも人気で、いつも何かしら声を掛けられていました。
きっとそのうちの誰かと付き合うことになったのだと思いました。
彼がいなくなって食事をする相手もいなくなった僕は一抹の寂しさと、身体の疼きに苛まされました。
もともと適当だった食事がグルメの彼のせいでコンビニ弁当では味気ないのです。しかし僕にはおいしいお店にひとりで行く勇気もありませんし、そもそも彼に連れ回されていただけでお店を覚えていません。
うずく身体のほうはというと、この体型ではすぐに相手を見つけられるわけもなく、だからアダルトグッズを購入したのです。
今日、突然うちに来た彼が部屋に入るなり
「なぁ、俺がいなくて寂しかった?」
と言うので僕は正直に答えました。
「おいしいご飯が食べられなくて困りました。あと大きすぎるのもキツイということがわかりました」
そうしたら、偏った食生活で少し荒れてしまった身体を裸に剥かれ、縛られたわけです。
一応抵抗はしたのですが、ぽっちゃりの僕は運動も苦手であっさり拘束されてしまいました。
どうしてこんなことになったのか意味がわかりませんが、彼が僕を押し倒すときはいつも突然なので驚きはしません。
「俺以外の咥えたのか? ここで」
「細いのはなんとか挿ったんですが……」
グッズを買う前にいろいろなもので試してみたのです。どれも挿入はできるのですがあまり気持ちよくはありません。やはり形に問題があったのでしょう。
彼は僕の部屋を見渡してあのラブローションを見つけたのです。ぜんぶ塗りきったところで僕がひぃひぃ悲鳴をあげていると悲しそうな顔をしました。
いつもなら喜ぶのに変です。
「感度もあがってんな……」
「っ……♡ 毎日、して、たから……♡」
このラブローションは媚薬入りと評判で、確かに塗りつけると痒みに似た快感を得られますが自分では絶頂に達せませんでした。
しかし今はどうでしょう。
彼が指で触れる先から僕の身体は歓喜に震え、次に触れられる先が期待だけで反応してしまいます。
「すごっ、いっ♡ やっぱり、おまえ、じゃなきゃっだめっ♡」
「誰と比較してんだよっ! ちょっと見ない間にいろいろ覚えてきやがって、くそっ! 少し黙ってろっ」
そうして僕の口にはそのあたりに転がっていたディルドが挿れられているわけです。
誰とって自分と比較してなのですが、口が塞がれては反論できません。
長い間、身体中隈なくラブローションを塗り込められました。
確か、このラブローションは天然成分由来だったような気がします。少し荒れた肌も治るかもしれません。
こうしてようやく一番痒くて、一番気持ちのいいいところを、ちょうどぴったりハマる彼のおちんちんで掻いてもらっているわけですが、そろそろ限界です。
足首と手首をいっしょに縛られているから自然と膝が曲がってしまいます。しかもその膝押し出されると勝手に腰が上がります。
彼のおちんちんが真上から僕のお尻の穴を出入りするたびに、起き上がりこぼしのように僕の身体がゆらゆら揺れます。
激しく突き揺らぶられ僕の腹肉におちんちんがちゅっちゅして、また射精してしまいました。
「きっつ……っ、少し、緩め、ろっ」
無理言わないでください。
むしろイってるからか収縮するお尻の穴が彼のおちんちんを感じてしまって、気持ちよくて、またイきそうなんですから。
今日の彼はいつもより荒々しいのですが、彼も欲求不満だったんでしょうか?
しかも苦しそうな顔。こんな表情ですらイケメンな彼なら、いくらでも相手が見つけられるだろうに。
なんで僕なんか……。
あ……酸欠っぽいです。ちょっと考えがまとまらないというか、意識が……。目が覚めたら、怒ってないと、いいんですが……。
❖❖❖
起きたら身体中が痛くて身動きできません。
困ってる僕の目の前には、なぜか泣いている彼がいます。
「よか、った……目、覚めて、っ」
どうやら酸欠で気を失ってしまったことに、驚いていたようです。
僕はまだ裸のままですが、縛っていたロープはほどかれていました。
無理な体勢だったせいでまだしびれているような感覚がします。
どれくらい意識を失っていたのかわかりませんが、遮光性皆無のカーテンの外はまだ暗いように思います。
「あの、どうして……」
「あんたが、最近太ったことを気にしてて……食事に誘えなきゃ、メンターじゃなくなったあんたと接点もねぇし。それなのにあんたは前と変わった様子はねぇし、俺だけが寂しい、みたいで。ただ、今日のあんたは、顔色、悪かったし……」
確かに過去最高値を叩き出した体重に落ち込みました。
オフィスの椅子がギシギシ言うのを隣の同僚にからかわれたのはちょっと辛かったです。
顔色が悪いのは、寝不足だからです。昨夜あのディルドを挿れようと思って何度も自分で拡げてみて試したところでした。
しかも結局挿れられなくて、悶々としていました。
「なぁ……あんたは俺のこと、どう思ってるんだ?」
どう、と言われても答えに困ります。
後輩で、イケメンで、おいしいお店に連れて行ってくれて、なぜか僕を抱く人、です。
むしろ彼こそ僕をどう思ってるのかがわかりません。
同じ会社の同じ部署にいる同僚、先輩後輩です。接点がないわけではありません。
太ったのは気になりますが、彼から誘いがあれば、というか無理矢理連れて行かれればついていきます。
だって、どのお店もおいしいですから。
押し黙ったままの僕に彼の眉がまた下がりました。
飼い主に置いていかれてコンビニの前にリードを繋がれた犬のようです。
あれはかわいそうでついつい手を差し伸べたくなります。
「なんか言ってくれよ」
なにかと言われても困るんです。ずっと口に咥えていたディルドのおかげか顎がうまく動きません。
そう言えばさっき彼は「俺以外咥えるな」と言っていた気がします。ディルド咥えさせておいて矛盾しているなぁと思いますが、そうなると明日の朝ごはんに困ります。
「バナナは?」
「……は?」
「僕、朝ごはんがバナナなんですが、バナナは食べてもいいですか?」
あれ? ちょっと違ったかもしれません。あのとき指差した……、指ではないですが、指し示した場所は口ではなかった気がします。
とはいえ、バナナも試してはみました。皮を剥くべきかどうか迷いましたが、彼のおちんちんは皮が剥けているのでバナナの皮も剥いてみました。
太さはちょうどいいのですが、どうにも柔らかく中に挿る前に折れてしまうので難しいんです、バナナ。
食べ物はやはり下ではなく上で咥えるのがいちばんいいと思います。
「朝ごはん? それは何でもいい。他の男としないでくれって頼んでる」
「他の男なんていないからバナナやディルドを挿れてみたんですがうまく挿れられなくて……。ボールペンくらいならなんとかなるんですが」
ボールペンや指ではまったく物足りなかったです。
彼はなにやらがっくりとうなだれてしまいました。
「細いのは挿ったとか、大きすぎてキツイっていうのはそういうことかよ……」
だいたい僕みたいなデブ……他に抱きたいなんて思う人がいると思う彼がおかしいと思います。
「じゃあバナナは朝ごはんにしていいんですね! あれ、ということはバナナは尾前ってことになるんですか?」
あ、彼の名前は尾前と言います。
「なんでそうなる! というかそうじゃなくて、永沢さんが好きかどうかって話でっ!」
ちなみに永沢は僕の名前です。
「バナナは好きです!」
「俺のことは!」
「おいしい!」
なんか間髪いれずに聞かれたので僕も勢いで答えてしまいました。いつもおいしいお店に連れて行ってくれる人ですから。
「おいしいって……俺はバナナじゃねぇ!」
「そりゃ尾前は人だからバナナじゃないです。あ、でもバナナよりは固くてちょうどいいですね」
「あぁっ! もう話が噛み合わねぇっ!」
さっきまで泣いてた人とは思えない剣幕です。また僕怒らせてしまったようです。なんて言ったら伝わるんでしょうか?
というか夜中に大きな声を出してはご近所迷惑になります。思わず僕は尾前の口を塞ぎました。
縛られていた感覚がまだ残っていたので、口で。
尾前は目をまんまるにして驚いているようですが、ようやく黙ってくれたので良かったです。
良かったはずなんですが、僕はまた押し倒されてしまいました。
「さっきは手ひどくしたから、今度は優しくする。それと俺、永沢さんが好きだから」
あの、いえ……そういうつもりではなかったんですが……。
飼い主が出てきたら大喜びして飛び跳ねるコンビニ前の犬のように嬉しそうな尾前の背中にふっさふさの大きなしっぽが見えました。
どうやら尾前は僕の身体だけじゃなくて、中身も変えていたみたいです。
好きと言われて、驚きましたが、僕も尾前が好きなようです。
「僕もバナナより好きです!」
「だからバナナの話はもういいって!」
また大声を出す尾前の口を今度は、自分で塞いでくれました。僕の口で。
やっぱり「おいしい」でいいような気もしました。
だって尾前とのキスはとっても甘いですから。
バナナより。
どれくらいヒドイかというと、この猛暑の中、ダウンを着せられて、アスファルトの上に立たされるくらいヒドイと思います。最近また少し体重が増えた僕では死んじゃうと思うんです。
もしくは、三日ほど絶食していたところに、老舗のうなぎ屋の前を通るようなものです。この頃美味しいものばかり食べさせられてるから気が狂うと思うんです。
どちらもしたことはないですが、それくらいヒドイと思います。
今僕はベッドの上で全裸になって両手両足をいっしょに縛られて身動き出来ない状態です。ロープが肉に食い込んでちょっと痛いです。まるでこれから焼かれる豚のようです。
しかも、僕の粘膜という粘膜にラブローションを塗り込められています。それ、僕が買ったやつなのに。高かったのに。もう空っぽになっています。
絶対弁償してもらいます。
というわけで今の僕の状態はどこもかしこも敏感になっているわけです。もともと敏感なのに、これ以上敏感になったら日常生活に困るんですが。
この間も少しサイズが小さくなったTシャツが擦れて乳首が目立ってしまいました。そう言えばあのときも怒られましたが、僕のせいではないのに理不尽が過ぎます。
だいたい、僕は悪くないのです。
もともと僕はぽっちゃり気味ではありましたが、デブと言われるほどではなかったのです。それなのに彼と出会ってから僕の食生活は一変しました。
彼はグルメでおいしいお店をよく知っています。
食いしん坊な僕は彼の誘いに乗っていたらあっという間にぷくぷくと太ってしまったのです。
だって、おいしいんですよ。
横浜の中華料理店では脂の乗った東坡肉にプリプリのエビマヨ。僕の手のひらよりも大きい肉まんを食べ歩いて、喉が渇けばタピオカミルクティー。
恵比寿のお店では一キロの塊肉と〆のパスタはウニをたっぷり使った濃厚なカルボナーラ。
門前仲町のお好み焼き屋さんでは選べないからと豚玉とモダン焼き、それからイカ玉を平らげたあとに出されたあんこ巻。老舗和菓子屋で使うあんこらしくてとてもお美味しかった。
つけ麺激戦区だという池袋では三軒はしごしましたが、魚介出汁のおいしい店もあれば豚骨醤油のこってりしたもの、塩味のお店ではついつい麺を追加してしまいました。あっさりした塩味ならカロリーゼロだと思います。
おかげさまで僕の今の体重は過去最高レベルに達してしまいました。
今の体勢も腹がつかえてとても苦しいのですが、文句も言えません。
なんせ、口に挿れられているのは僕が買ったディルドです。ちょっと大きすぎました。
ローションを塗られているところ以外も濡れているのは、彼の舌が這ったところです。犬みたいに長い舌で僕のふにふにとした足の指やら、二重あごになってしまう首を舐められました。
僕がなんでこんなことをつらつら考えているかというと、こうでもしないと痒みでどうにかなりそうだからです。
なんとかして欲しいと目で訴えるのですが、伝わったようには思えません。
「俺のよりデカイの咥えて喜んでるじゃねぇよ」
あ、とっても怒ってるみたいです。
ちょっととがった犬歯で耳を噛まれました。いくら脂肪に包まれているとはいえ、痛いです。
困りました。
目で伝わらないなら、口……はふさがってますからボディランゲージで伝えるしかありません。
彼が身体を起こしたところで僕は丸い身体を左右に揺らしました。痒いところをアピールするように。
すると彼は眉間のシワをさらに深くしてしまいました。さらに怒らせてしまったみたいです。
どうにも八方塞がりな僕はさらに塞がれてしまいました。
怒ってるはずの彼がぐっと身体を押し付けてきて、いちばん痒くて痒くて仕方ない部分を掻きました。
ボディーランゲージは万国共通のようです。
ここしばらくずっと欲求不満でさらにラブローションで敏感にさせられて焦らされた身体にはひとたまりもありません。
「……即イキかよっ」
しょうがないじゃないですか。
さっきからずっとラブローションがたっぷり塗り込まれたおちんちんをぐちゅぐちゅいじっては、イキそうになると止められてて、今にも爆発寸前だったんですから。
そこをちょうどいい硬さと大きさのおちんちん突っ込まれたらイくに決まってます。
本当にぴったり収まる丁度いいサイズ感です。
僕がアダルトグッズを通販したのは彼が僕の身体を作り変えたからにほかなりません。
彼が変えたのは体型だけではなく僕のあらゆる性感帯を開発し、淫乱な身体にしたのに、ここ数週間食事の誘いもなければ、押し倒されることもありませんでした。
もう飽きてしまったのか、捨てられたのだと思っていたのです。
なんせ彼は僕と違って社内でも指折りの出世頭です。
僕と彼は同じ会社の先輩後輩です。
五年前入社した彼のメンターをしたのが僕ですが、そのころから彼の実力は僕を上回っていました。
挨拶回りの営業先でも僕がもたついている間に資料の説明をしてくれたり、今どき珍しい接待でも美味しいお店を予約していたり。
ぽっちゃりな僕とは違って鍛えてる身体はいわゆるシックスパックでスーツがとても似合います。僕と同じだけ食べているはずなのにどうしてなんでしょう?
女性陣からも人気で、いつも何かしら声を掛けられていました。
きっとそのうちの誰かと付き合うことになったのだと思いました。
彼がいなくなって食事をする相手もいなくなった僕は一抹の寂しさと、身体の疼きに苛まされました。
もともと適当だった食事がグルメの彼のせいでコンビニ弁当では味気ないのです。しかし僕にはおいしいお店にひとりで行く勇気もありませんし、そもそも彼に連れ回されていただけでお店を覚えていません。
うずく身体のほうはというと、この体型ではすぐに相手を見つけられるわけもなく、だからアダルトグッズを購入したのです。
今日、突然うちに来た彼が部屋に入るなり
「なぁ、俺がいなくて寂しかった?」
と言うので僕は正直に答えました。
「おいしいご飯が食べられなくて困りました。あと大きすぎるのもキツイということがわかりました」
そうしたら、偏った食生活で少し荒れてしまった身体を裸に剥かれ、縛られたわけです。
一応抵抗はしたのですが、ぽっちゃりの僕は運動も苦手であっさり拘束されてしまいました。
どうしてこんなことになったのか意味がわかりませんが、彼が僕を押し倒すときはいつも突然なので驚きはしません。
「俺以外の咥えたのか? ここで」
「細いのはなんとか挿ったんですが……」
グッズを買う前にいろいろなもので試してみたのです。どれも挿入はできるのですがあまり気持ちよくはありません。やはり形に問題があったのでしょう。
彼は僕の部屋を見渡してあのラブローションを見つけたのです。ぜんぶ塗りきったところで僕がひぃひぃ悲鳴をあげていると悲しそうな顔をしました。
いつもなら喜ぶのに変です。
「感度もあがってんな……」
「っ……♡ 毎日、して、たから……♡」
このラブローションは媚薬入りと評判で、確かに塗りつけると痒みに似た快感を得られますが自分では絶頂に達せませんでした。
しかし今はどうでしょう。
彼が指で触れる先から僕の身体は歓喜に震え、次に触れられる先が期待だけで反応してしまいます。
「すごっ、いっ♡ やっぱり、おまえ、じゃなきゃっだめっ♡」
「誰と比較してんだよっ! ちょっと見ない間にいろいろ覚えてきやがって、くそっ! 少し黙ってろっ」
そうして僕の口にはそのあたりに転がっていたディルドが挿れられているわけです。
誰とって自分と比較してなのですが、口が塞がれては反論できません。
長い間、身体中隈なくラブローションを塗り込められました。
確か、このラブローションは天然成分由来だったような気がします。少し荒れた肌も治るかもしれません。
こうしてようやく一番痒くて、一番気持ちのいいいところを、ちょうどぴったりハマる彼のおちんちんで掻いてもらっているわけですが、そろそろ限界です。
足首と手首をいっしょに縛られているから自然と膝が曲がってしまいます。しかもその膝押し出されると勝手に腰が上がります。
彼のおちんちんが真上から僕のお尻の穴を出入りするたびに、起き上がりこぼしのように僕の身体がゆらゆら揺れます。
激しく突き揺らぶられ僕の腹肉におちんちんがちゅっちゅして、また射精してしまいました。
「きっつ……っ、少し、緩め、ろっ」
無理言わないでください。
むしろイってるからか収縮するお尻の穴が彼のおちんちんを感じてしまって、気持ちよくて、またイきそうなんですから。
今日の彼はいつもより荒々しいのですが、彼も欲求不満だったんでしょうか?
しかも苦しそうな顔。こんな表情ですらイケメンな彼なら、いくらでも相手が見つけられるだろうに。
なんで僕なんか……。
あ……酸欠っぽいです。ちょっと考えがまとまらないというか、意識が……。目が覚めたら、怒ってないと、いいんですが……。
❖❖❖
起きたら身体中が痛くて身動きできません。
困ってる僕の目の前には、なぜか泣いている彼がいます。
「よか、った……目、覚めて、っ」
どうやら酸欠で気を失ってしまったことに、驚いていたようです。
僕はまだ裸のままですが、縛っていたロープはほどかれていました。
無理な体勢だったせいでまだしびれているような感覚がします。
どれくらい意識を失っていたのかわかりませんが、遮光性皆無のカーテンの外はまだ暗いように思います。
「あの、どうして……」
「あんたが、最近太ったことを気にしてて……食事に誘えなきゃ、メンターじゃなくなったあんたと接点もねぇし。それなのにあんたは前と変わった様子はねぇし、俺だけが寂しい、みたいで。ただ、今日のあんたは、顔色、悪かったし……」
確かに過去最高値を叩き出した体重に落ち込みました。
オフィスの椅子がギシギシ言うのを隣の同僚にからかわれたのはちょっと辛かったです。
顔色が悪いのは、寝不足だからです。昨夜あのディルドを挿れようと思って何度も自分で拡げてみて試したところでした。
しかも結局挿れられなくて、悶々としていました。
「なぁ……あんたは俺のこと、どう思ってるんだ?」
どう、と言われても答えに困ります。
後輩で、イケメンで、おいしいお店に連れて行ってくれて、なぜか僕を抱く人、です。
むしろ彼こそ僕をどう思ってるのかがわかりません。
同じ会社の同じ部署にいる同僚、先輩後輩です。接点がないわけではありません。
太ったのは気になりますが、彼から誘いがあれば、というか無理矢理連れて行かれればついていきます。
だって、どのお店もおいしいですから。
押し黙ったままの僕に彼の眉がまた下がりました。
飼い主に置いていかれてコンビニの前にリードを繋がれた犬のようです。
あれはかわいそうでついつい手を差し伸べたくなります。
「なんか言ってくれよ」
なにかと言われても困るんです。ずっと口に咥えていたディルドのおかげか顎がうまく動きません。
そう言えばさっき彼は「俺以外咥えるな」と言っていた気がします。ディルド咥えさせておいて矛盾しているなぁと思いますが、そうなると明日の朝ごはんに困ります。
「バナナは?」
「……は?」
「僕、朝ごはんがバナナなんですが、バナナは食べてもいいですか?」
あれ? ちょっと違ったかもしれません。あのとき指差した……、指ではないですが、指し示した場所は口ではなかった気がします。
とはいえ、バナナも試してはみました。皮を剥くべきかどうか迷いましたが、彼のおちんちんは皮が剥けているのでバナナの皮も剥いてみました。
太さはちょうどいいのですが、どうにも柔らかく中に挿る前に折れてしまうので難しいんです、バナナ。
食べ物はやはり下ではなく上で咥えるのがいちばんいいと思います。
「朝ごはん? それは何でもいい。他の男としないでくれって頼んでる」
「他の男なんていないからバナナやディルドを挿れてみたんですがうまく挿れられなくて……。ボールペンくらいならなんとかなるんですが」
ボールペンや指ではまったく物足りなかったです。
彼はなにやらがっくりとうなだれてしまいました。
「細いのは挿ったとか、大きすぎてキツイっていうのはそういうことかよ……」
だいたい僕みたいなデブ……他に抱きたいなんて思う人がいると思う彼がおかしいと思います。
「じゃあバナナは朝ごはんにしていいんですね! あれ、ということはバナナは尾前ってことになるんですか?」
あ、彼の名前は尾前と言います。
「なんでそうなる! というかそうじゃなくて、永沢さんが好きかどうかって話でっ!」
ちなみに永沢は僕の名前です。
「バナナは好きです!」
「俺のことは!」
「おいしい!」
なんか間髪いれずに聞かれたので僕も勢いで答えてしまいました。いつもおいしいお店に連れて行ってくれる人ですから。
「おいしいって……俺はバナナじゃねぇ!」
「そりゃ尾前は人だからバナナじゃないです。あ、でもバナナよりは固くてちょうどいいですね」
「あぁっ! もう話が噛み合わねぇっ!」
さっきまで泣いてた人とは思えない剣幕です。また僕怒らせてしまったようです。なんて言ったら伝わるんでしょうか?
というか夜中に大きな声を出してはご近所迷惑になります。思わず僕は尾前の口を塞ぎました。
縛られていた感覚がまだ残っていたので、口で。
尾前は目をまんまるにして驚いているようですが、ようやく黙ってくれたので良かったです。
良かったはずなんですが、僕はまた押し倒されてしまいました。
「さっきは手ひどくしたから、今度は優しくする。それと俺、永沢さんが好きだから」
あの、いえ……そういうつもりではなかったんですが……。
飼い主が出てきたら大喜びして飛び跳ねるコンビニ前の犬のように嬉しそうな尾前の背中にふっさふさの大きなしっぽが見えました。
どうやら尾前は僕の身体だけじゃなくて、中身も変えていたみたいです。
好きと言われて、驚きましたが、僕も尾前が好きなようです。
「僕もバナナより好きです!」
「だからバナナの話はもういいって!」
また大声を出す尾前の口を今度は、自分で塞いでくれました。僕の口で。
やっぱり「おいしい」でいいような気もしました。
だって尾前とのキスはとっても甘いですから。
バナナより。
応援ありがとうございます!
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