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54日※オスカー視点
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引き続き虫が出てきますので苦手な方はご注意ください
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❖❖❖
耳を塞ぎたくなるような悲鳴が、断続的に響き渡る。
筋肉が衰え、たるんだ皮膚を真っ白なイーガーの幼獣が這う様を、オスカーは見下ろしていた。
――老けたな……。
この塔に閉じ込めてから何度も見て、その肌に触れているが、改めて師匠の老いを実感していた。
昔なら、オスカーの結界くらい破れたはずだ。
今だって術で縛りあげてはいるが、これくらいなら少し力を籠めれば解けただろう。
それだけ、ミッシャは年を取った。オスカーは変わらないのに。
ただでさえ12歳も年上のミッシャが、さらに離れた気がして、オスカーは苦々しい思いでいた。
「ひっ……、いや、やだ……、やめ、もう……っあぁ……っ」
20匹ほどのイーガーの幼獣は魔力を求めて、より強く漏れ出る場所へと集まっていた。
薄く色づく乳頭に、恐怖で萎えた陰茎に、そしてその奥の窄まりへ。
秋の終わりに卵嚢を採取し、孵化してから一度も魔力を与えていなかった。
1万はいただろう幼獣たちは共食いをはじめ、残った20匹である。
貪欲に餌を求めている。
まるで自分のようだなと、オスカーは皮肉気に嗤った。
20年、ずっとミッシャの魔力を求めていた。
幼いころに分け与えられてからずっと、ミッシャの魔力だけがオスカーの支えだった。
魔術を教わったのも、心癒すのも、眠るのさえミッシャの魔力無しではできなかった。
追い求めてきたものを、イーガーなんぞに分け与えるのは業腹だが、これもミッシャのためだ。
まだ、ミッシャは気付いていない。
毎日探られているが、オスカーが魔力を集めるのも、それをどこに蓄えているのかも。
腹が膨れたのだろう。キィキィと鳴き声を上げてミッシャから離れていたイーガーの幼獣を一匹摘まんだ。
「ミッシャ、見てください。あなたの魔力でこんな大きくなりましたよ」
他より一回り大きくなったそれをミッシャの顔に近付けると、ひっと小さな悲鳴を上げて顔を逸らした。
「味は悪くないんですけどね」
信じられないと嫌がるミッシャの顎を掴み、ムリヤリ口を開かせた。
青ざめて震える唇に白い幼獣が触れる。
紫の瞳に涙をためて、嫌だと訴えてくる姿に、思わず胸が締め付けられる。
――もう少しだ。もう少しで終わる。
指を離すと、幼獣がぽたりとミッシャの舌へと落ちた。
噛むのも飲み込むのも嫌なのだろう。
今度はオスカーが掴まずともミッシャは大きく口を開き、舌を伸ばした。
満腹のはずのイーガーはその舌に張り付き魔力を吸いはじめていた。
「んぇーんっーーっ……」
気持ちが悪いのか、うめき声をあげるミッシャに覆いかぶさると、オスカーはその舌を咥えた。
ミッシャの舌と違う感触は、正直面白くないが、仕方ない。
ついでとばかりに、ミッシャの魔力を少し奪いながらその舌を味わう。
舌の裏側を擽ると、ミッシャの目が瞬いた。
肘の内側に触れたときも、足の指を舐めたときにも見せた、敏感な場所を示す反応だ。
――相変わらずおかしなとこばかりだな。
気をよくしたオスカーが何度も何度もそこばかり擽ると、身体を這っていたイーガーのキィキィという合唱が聞こえてきた。
どうやらみんな満足したようだ。
20匹すべてに魔力を吸われても、ミッシャの魔力はまだ余っているようだった。
――これでまた器が大きくなった。
ミッシャの舌にいたイーガーを自分の口へと迎えた。
魔力が低下して意識がはっきりしないのだろう。
ミッシャがぼんやりと見ている目の前で、オスカーはイーガーを飲み下した。
流れ落ちるイーガーから、ミッシャの魔力が染み渡る。
水のようだと言うのに、オスカーの腹の底は煮えたぎるように熱くなった。
歯を食いしばり、その痛みに耐える。
――この作戦は失敗だったか……。イーガーに食わせたからか質が悪い。
残り19匹はあとで燃やしてしまおう。そう思っていると、冷たいものが頬に触れた。
痛みのせいで、拘束の術が切れたのか。
ミッシャのくたびれた手だった。
「だい、じょうぶか? オスカー」
自分のほうがよっぽど辛い目にあっているというのに……。ミッシャはまだオスカーを子供だと思っているのだろう。
何をしても、結局はミッシャは赦してしまう。
次は、何をすれば、ミッシャは苦しむのだろうか。
残りの魔力を奪うため、再度ミッシャに口付ける。
先ほど知った新たな快楽の源を擽りながら、オスカーは次の一手を思い悩んでいた。
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耳を塞ぎたくなるような悲鳴が、断続的に響き渡る。
筋肉が衰え、たるんだ皮膚を真っ白なイーガーの幼獣が這う様を、オスカーは見下ろしていた。
――老けたな……。
この塔に閉じ込めてから何度も見て、その肌に触れているが、改めて師匠の老いを実感していた。
昔なら、オスカーの結界くらい破れたはずだ。
今だって術で縛りあげてはいるが、これくらいなら少し力を籠めれば解けただろう。
それだけ、ミッシャは年を取った。オスカーは変わらないのに。
ただでさえ12歳も年上のミッシャが、さらに離れた気がして、オスカーは苦々しい思いでいた。
「ひっ……、いや、やだ……、やめ、もう……っあぁ……っ」
20匹ほどのイーガーの幼獣は魔力を求めて、より強く漏れ出る場所へと集まっていた。
薄く色づく乳頭に、恐怖で萎えた陰茎に、そしてその奥の窄まりへ。
秋の終わりに卵嚢を採取し、孵化してから一度も魔力を与えていなかった。
1万はいただろう幼獣たちは共食いをはじめ、残った20匹である。
貪欲に餌を求めている。
まるで自分のようだなと、オスカーは皮肉気に嗤った。
20年、ずっとミッシャの魔力を求めていた。
幼いころに分け与えられてからずっと、ミッシャの魔力だけがオスカーの支えだった。
魔術を教わったのも、心癒すのも、眠るのさえミッシャの魔力無しではできなかった。
追い求めてきたものを、イーガーなんぞに分け与えるのは業腹だが、これもミッシャのためだ。
まだ、ミッシャは気付いていない。
毎日探られているが、オスカーが魔力を集めるのも、それをどこに蓄えているのかも。
腹が膨れたのだろう。キィキィと鳴き声を上げてミッシャから離れていたイーガーの幼獣を一匹摘まんだ。
「ミッシャ、見てください。あなたの魔力でこんな大きくなりましたよ」
他より一回り大きくなったそれをミッシャの顔に近付けると、ひっと小さな悲鳴を上げて顔を逸らした。
「味は悪くないんですけどね」
信じられないと嫌がるミッシャの顎を掴み、ムリヤリ口を開かせた。
青ざめて震える唇に白い幼獣が触れる。
紫の瞳に涙をためて、嫌だと訴えてくる姿に、思わず胸が締め付けられる。
――もう少しだ。もう少しで終わる。
指を離すと、幼獣がぽたりとミッシャの舌へと落ちた。
噛むのも飲み込むのも嫌なのだろう。
今度はオスカーが掴まずともミッシャは大きく口を開き、舌を伸ばした。
満腹のはずのイーガーはその舌に張り付き魔力を吸いはじめていた。
「んぇーんっーーっ……」
気持ちが悪いのか、うめき声をあげるミッシャに覆いかぶさると、オスカーはその舌を咥えた。
ミッシャの舌と違う感触は、正直面白くないが、仕方ない。
ついでとばかりに、ミッシャの魔力を少し奪いながらその舌を味わう。
舌の裏側を擽ると、ミッシャの目が瞬いた。
肘の内側に触れたときも、足の指を舐めたときにも見せた、敏感な場所を示す反応だ。
――相変わらずおかしなとこばかりだな。
気をよくしたオスカーが何度も何度もそこばかり擽ると、身体を這っていたイーガーのキィキィという合唱が聞こえてきた。
どうやらみんな満足したようだ。
20匹すべてに魔力を吸われても、ミッシャの魔力はまだ余っているようだった。
――これでまた器が大きくなった。
ミッシャの舌にいたイーガーを自分の口へと迎えた。
魔力が低下して意識がはっきりしないのだろう。
ミッシャがぼんやりと見ている目の前で、オスカーはイーガーを飲み下した。
流れ落ちるイーガーから、ミッシャの魔力が染み渡る。
水のようだと言うのに、オスカーの腹の底は煮えたぎるように熱くなった。
歯を食いしばり、その痛みに耐える。
――この作戦は失敗だったか……。イーガーに食わせたからか質が悪い。
残り19匹はあとで燃やしてしまおう。そう思っていると、冷たいものが頬に触れた。
痛みのせいで、拘束の術が切れたのか。
ミッシャのくたびれた手だった。
「だい、じょうぶか? オスカー」
自分のほうがよっぽど辛い目にあっているというのに……。ミッシャはまだオスカーを子供だと思っているのだろう。
何をしても、結局はミッシャは赦してしまう。
次は、何をすれば、ミッシャは苦しむのだろうか。
残りの魔力を奪うため、再度ミッシャに口付ける。
先ほど知った新たな快楽の源を擽りながら、オスカーは次の一手を思い悩んでいた。
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