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53日
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虫が出てきますので苦手な方はご注意ください
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「で、何かわかったんですか?」
「いや、なんもわからん。地下に何かがあるのは分かるんだけど、それ以上は僕には無理だな」
ミッシャはあれから毎日少しずつ、探査の糸を伸ばしてはいるが地下への侵入口は見つからず、徒労に終わっていた。
「あまり無駄に魔力を使わないで欲しいんですがね」
「お前が教えてくれたら、僕だって使う必要はないんだけどな」
探査と並行して魔力量の確認もしていた。
環境でも粥でもなければ、本当にセックスがトリガーになって増えるのかと思い、おとなしく抱かれていたがここ数日で増えた様子はなかった。
「協力ったって、これ以上どうしろってんだよ。量だってどうやって増えるかもわかんねぇのに。お前は知ってるのか?」
ミッシャが聞いても、オスカーは答える気はなさそうだった。
空になった椀を取り上げたオスカーは、懐から小さな瓶を取り出した。
「そんなに余ってるなら、今日から少し趣向を変えてみましょう」
ガラス瓶の中には白いものがうごめいている。
ミッシャは声をあげるのさえ出来ず、ベッドの上で後ずさった。
「お嫌いでしたよね?」
瓶を振って見せつけてくるのは、イーガーの幼獣だ。
それも、大量の。
成獣のイーガーは、普段地中に生息しているため、目や手足は退化しているが、繁殖期になると地上に出て、小さな羽を使って飛び回る。
夏には洞窟の天井に卵を産み付け、また地中へと潜る。
栄養豊富な卵嚢は回復薬の材料に、幼獣は魔力回復源になる。
ミッシャも若いころ、師匠であるシシィに言われて採取に行った。
秋も終わりもうすぐ雪が降るころだった。
ひんやりとした洞窟の最深部に、卵嚢はあった。
高い天井にある卵嚢を見てどうやって捕獲しようか、悩んで見上げているときだった。
卵が、一斉に孵化した。
頭上から白く柔らかい物体が降り注いだ。
ミッシャの白銀の髪に、肩に、ぽたりぽたりと落ちてきた小指大の幼獣は、小さな身体をくねらせた。
イーガーの幼獣の好物は、魔力だ。
服の隙間から入り込んで、ミッシャの魔力を吸いあげていった。
真っ白になった視界に、奪われていく魔力。
頭の奥がしびれ、意識が朦朧としだしてから初めて、ミッシャはようやく何が起きたのか理解した。
這いまわるイーガーの幼獣を追い払うように身体を振り、手で払う。
しかし、頭部にある大きな口を開いて吸引している個体は皮膚に噛みついていて簡単には取れない。
掻きむしるようにして引きちぎっては投げ捨てた。
その間にもイーガーはぼたぼたと落ちてきて、ミッシャの足を上ってくるものもいた。
キリがない。
半狂乱になりながら一心不乱に追い払った幼獣たちは共食いをはじめた。ミッシャの魔力を吸った少し大きな個体が小さな個体を丸のみしているのである。
その様子にミッシャは恐怖で震え、必死で洞窟を走り抜けた。
洞窟の入り口にたどり着いてもなお、イーガーの這う感触が身体に残っていた。
それ以来、ミッシャはイーガーの幼獣も、虫も苦手である。
それが、目の前にある。
ミッシャは首を横に振ったが、オスカーはゆっくりとコルクを抜いて傾けた。
ぽたり、と一匹ミッシャの腹に落ちていく。
「安心してください。ちゃんと歯は抜いてあります」
そんなことで安心できるわけがない。
見たくも触れたくもないがなんとか腹を這うイーガーの幼獣を払いのけると、オスカーは小瓶を掲げて見つめていた。
「本当に嫌いですよね。好んで食べる魔術師も多いのに」
魔力回復の源となるため、長期戦の時にはわざわざ幼獣を探す魔術師もいるらしい。ミッシャには絶対無理だ。
「やめ、やめてくれ、オスカー! お願いだから、これだけは、……いやだ、ああぁっ――」
ぼたぼたぼたと落されていくイーガーの幼獣に身体が竦んで動けない。
オスカーは嬉しそうに嗤うと、ミッシャの身体をベッドに縛り上げた。
「ミッシャが悪いんですよ。無駄に魔力を使うから。しばらくは、こいつらがミッシャの相手です」
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「で、何かわかったんですか?」
「いや、なんもわからん。地下に何かがあるのは分かるんだけど、それ以上は僕には無理だな」
ミッシャはあれから毎日少しずつ、探査の糸を伸ばしてはいるが地下への侵入口は見つからず、徒労に終わっていた。
「あまり無駄に魔力を使わないで欲しいんですがね」
「お前が教えてくれたら、僕だって使う必要はないんだけどな」
探査と並行して魔力量の確認もしていた。
環境でも粥でもなければ、本当にセックスがトリガーになって増えるのかと思い、おとなしく抱かれていたがここ数日で増えた様子はなかった。
「協力ったって、これ以上どうしろってんだよ。量だってどうやって増えるかもわかんねぇのに。お前は知ってるのか?」
ミッシャが聞いても、オスカーは答える気はなさそうだった。
空になった椀を取り上げたオスカーは、懐から小さな瓶を取り出した。
「そんなに余ってるなら、今日から少し趣向を変えてみましょう」
ガラス瓶の中には白いものがうごめいている。
ミッシャは声をあげるのさえ出来ず、ベッドの上で後ずさった。
「お嫌いでしたよね?」
瓶を振って見せつけてくるのは、イーガーの幼獣だ。
それも、大量の。
成獣のイーガーは、普段地中に生息しているため、目や手足は退化しているが、繁殖期になると地上に出て、小さな羽を使って飛び回る。
夏には洞窟の天井に卵を産み付け、また地中へと潜る。
栄養豊富な卵嚢は回復薬の材料に、幼獣は魔力回復源になる。
ミッシャも若いころ、師匠であるシシィに言われて採取に行った。
秋も終わりもうすぐ雪が降るころだった。
ひんやりとした洞窟の最深部に、卵嚢はあった。
高い天井にある卵嚢を見てどうやって捕獲しようか、悩んで見上げているときだった。
卵が、一斉に孵化した。
頭上から白く柔らかい物体が降り注いだ。
ミッシャの白銀の髪に、肩に、ぽたりぽたりと落ちてきた小指大の幼獣は、小さな身体をくねらせた。
イーガーの幼獣の好物は、魔力だ。
服の隙間から入り込んで、ミッシャの魔力を吸いあげていった。
真っ白になった視界に、奪われていく魔力。
頭の奥がしびれ、意識が朦朧としだしてから初めて、ミッシャはようやく何が起きたのか理解した。
這いまわるイーガーの幼獣を追い払うように身体を振り、手で払う。
しかし、頭部にある大きな口を開いて吸引している個体は皮膚に噛みついていて簡単には取れない。
掻きむしるようにして引きちぎっては投げ捨てた。
その間にもイーガーはぼたぼたと落ちてきて、ミッシャの足を上ってくるものもいた。
キリがない。
半狂乱になりながら一心不乱に追い払った幼獣たちは共食いをはじめた。ミッシャの魔力を吸った少し大きな個体が小さな個体を丸のみしているのである。
その様子にミッシャは恐怖で震え、必死で洞窟を走り抜けた。
洞窟の入り口にたどり着いてもなお、イーガーの這う感触が身体に残っていた。
それ以来、ミッシャはイーガーの幼獣も、虫も苦手である。
それが、目の前にある。
ミッシャは首を横に振ったが、オスカーはゆっくりとコルクを抜いて傾けた。
ぽたり、と一匹ミッシャの腹に落ちていく。
「安心してください。ちゃんと歯は抜いてあります」
そんなことで安心できるわけがない。
見たくも触れたくもないがなんとか腹を這うイーガーの幼獣を払いのけると、オスカーは小瓶を掲げて見つめていた。
「本当に嫌いですよね。好んで食べる魔術師も多いのに」
魔力回復の源となるため、長期戦の時にはわざわざ幼獣を探す魔術師もいるらしい。ミッシャには絶対無理だ。
「やめ、やめてくれ、オスカー! お願いだから、これだけは、……いやだ、ああぁっ――」
ぼたぼたぼたと落されていくイーガーの幼獣に身体が竦んで動けない。
オスカーは嬉しそうに嗤うと、ミッシャの身体をベッドに縛り上げた。
「ミッシャが悪いんですよ。無駄に魔力を使うから。しばらくは、こいつらがミッシャの相手です」
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