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49日
しおりを挟む粥を食べるときだけ、少し会話をする。
会話が終われば、セックスをする。
セックスが終われば眠る。
そんな日々の中、少しずつ増えてく魔力のおかげで頭が冴えてきたミッシャは、これまでの会話をヒントに、オスカーがなにを研究しているのか考えていた。
とにかく、魔力が必要なこと。
それもオスカーのものではなく、ミッシャのものでなければならないようだ。
賢者の魔力と魔術師で、何か違いがあるのだろうか?
身近な賢者であるシシィの魔力を思い出して、ミッシャは吐き気がした。
魔術をコントロールするために流されたシシィの魔力は、今思い出せばラムのような甘ったるい酒のようだった。
ギルドでも飲まされることがあったが、口に合わない。
ミッシャはもっぱらハーブ水を飲んでいた。
オスカーの魔力は……賢者になってから変わった様子はない。
シシィのような甘さはないが、酒のように酔う感覚はある。キンと冷えたビールのように頭を突き刺す苦さがある。
とはいえ、ほかの魔術師の魔力とそう変わったものとは思えない。
ミッシャの魔力でなければならない理由があるかもしれない。
次にオスカーの言葉を思い出す。
この塔には大事なものが、あるらしい。
何度か研究内容を聞いたときに答えていた。
大事なものを守るための結界、研究。
地下に、なにかあるのだろうか?
塔は入り口から螺旋階段でこの部屋と下にもう一部屋。
おそらく、その部屋でオスカーは寝泊まりしてるのだと思う。粥もそこで作ってるのだろう。
それと、どこよりも厳重な結界を感じる地下。
ここが研究室だろう。
少し、探ってみようか。
ミッシャは回復しかけたわずかな魔力を練って探査を始める。
細い糸を想像し、指先から出すイメージだ。
白く細い糸は、昔のミッシャの髪のようだ。
結界のある扉は避けて、床下を這わせる。
物理的障害は関係ない。
想像力だけがモノを言う。
塔の構造を思い出してぐるぐると螺旋階段を下りていく。
地下への入り口の扉の前で止まる。
これ以上先は、見たことがないからわからないが、かすかにオスカーの魔力の気配がする。
それとは別に、覚えのある魔力があった。
――僕の、だな。やっぱり地下になにか蓄えるものがあるのか……。
結界とさらに何かわからないものに阻まれているが、明らかに自分の魔力がそこにあることを確認して、探査を切った。
久しぶりの魔術展開に、くらりと眩暈がする。
新たに分かったことは何もないが、地下に行けばおそらく分かるだろう。
どうにかして、地下へ行ければ……。
オスカーがそこまでして守りたいものの正体を知れば、オスカーを助けられる。
そのためには魔力をもっと増やさないと。
その日、オスカーにおとなしく抱かれたミッシャだったが、魔力が増えた様子はなかった。
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