僕と賢者の108日

三谷玲

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49日

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 粥を食べるときだけ、少し会話をする。
 会話が終われば、セックスをする。
 セックスが終われば眠る。
 そんな日々の中、少しずつ増えてく魔力のおかげで頭が冴えてきたミッシャは、これまでの会話をヒントに、オスカーがなにを研究しているのか考えていた。

 とにかく、魔力が必要なこと。
 それもオスカーのものではなく、ミッシャのものでなければならないようだ。
 賢者の魔力と魔術師で、何か違いがあるのだろうか?
 身近な賢者であるシシィの魔力を思い出して、ミッシャは吐き気がした。
 魔術をコントロールするために流されたシシィの魔力は、今思い出せばラムのような甘ったるい酒のようだった。
 ギルドでも飲まされることがあったが、口に合わない。
 ミッシャはもっぱらハーブ水を飲んでいた。
 オスカーの魔力は……賢者になってから変わった様子はない。
 シシィのような甘さはないが、酒のように酔う感覚はある。キンと冷えたビールのように頭を突き刺す苦さがある。
 とはいえ、ほかの魔術師の魔力とそう変わったものとは思えない。
 ミッシャの魔力でなければならない理由があるかもしれない。

 次にオスカーの言葉を思い出す。
 この塔には大事なものが、あるらしい。
 何度か研究内容を聞いたときに答えていた。
 大事なものを守るための結界、研究。
 地下に、なにかあるのだろうか?
 塔は入り口から螺旋階段でこの部屋と下にもう一部屋。
 おそらく、その部屋でオスカーは寝泊まりしてるのだと思う。粥もそこで作ってるのだろう。
 それと、どこよりも厳重な結界を感じる地下。
 ここが研究室だろう。
 少し、探ってみようか。
 ミッシャは回復しかけたわずかな魔力を練って探査を始める。
 細い糸を想像し、指先から出すイメージだ。
 白く細い糸は、昔のミッシャの髪のようだ。
 結界のある扉は避けて、床下を這わせる。
 物理的障害は関係ない。
 想像力だけがモノを言う。
 塔の構造を思い出してぐるぐると螺旋階段を下りていく。
 地下への入り口の扉の前で止まる。
 これ以上先は、見たことがないからわからないが、かすかにオスカーの魔力の気配がする。
 それとは別に、覚えのある魔力があった。

――僕の、だな。やっぱり地下になにか蓄えるものがあるのか……。

 結界とさらに何かわからないものに阻まれているが、明らかに自分の魔力がそこにあることを確認して、探査を切った。
 久しぶりの魔術展開に、くらりと眩暈がする。
 新たに分かったことは何もないが、地下に行けばおそらく分かるだろう。
 どうにかして、地下へ行ければ……。

 オスカーがそこまでして守りたいものの正体を知れば、オスカーを助けられる。
 そのためには魔力をもっと増やさないと。

 その日、オスカーにおとなしく抱かれたミッシャだったが、魔力が増えた様子はなかった。
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