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.風呂に入れないなんて無理っ!絶対無理っ! 2

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 それで今朝も貢物らしき果物を持ち、俺の機嫌を伺い、ヤろうとするハオを拒んだわけだ。

「まったくなにが不満なんさね。ハオ様の子種を欲しがるオンナはわんさとおるさに……」
「男の俺がもらっても仕方ねぇだろ?」
「男でも女でも、ハオ様を欲しがるやつぁ、オンナさね」

 あ、そういこと。
 つか、俺は別に欲しがってないし!

「じゃあ、ジジの息子もあいつのオンナだったりすんの?」

 これは軽いイヤミだ。

「レンのやつぁ無理さね。わしに似ちまったもんだから、ハオ様の好みじゃないさね」

 レンっていうのは、ジジの息子だ。最初に俺を見つけたモヒカン頭。見つけた褒美がもらえたらしく、昨日お礼に来た、わりと律儀なやつだった。
 まぁ、お礼と言っても「あざーっす!」みたいな感じだけど。そこでこのふたりが親子とわかり、俺はめちゃくちゃ驚いた。だって全然似てない。モヒカン男ことレンは、細身だけど背が高くて、俺を持ち上げるだけの腕力はある。
 ひきかえ、ジジのほうは小男でハゲ頭。歯抜けの汚い笑い声。似てるのは細い目くらいだ。
 ……もしかしてあのモヒカンはハゲ隠しなのか?

 その時にまだハオが俺を手に入れてないと知ると、あの無双発言を聞かされたのだ。

 この世界、力こそすべてだ。

 非力な者は強者に従うことで、なんとか生き抜いているらしい。たとえば、年老いたジジは下働きとして。見目が良ければオンナとして。本物の女の人は、子作りのため、大事にされている。
 強い子どもを産むために、強い者だけが手に入れられる戦利品みたいな扱いだ。
 この塔の隣には闘技場があって、夜な夜な試合が行われ、勝利者には女性との性行為が許される。
 相手が好みでなければ女性に断る権利もある。
 レンがいるってことは、ジジも昔その闘技場で勝ったことがあるわけだ。全然そんなふうには見えないけど。

 そうやって守られていても、女性は子どもを産むと死んでしまうことが多く、絶対数は少ない。

「俺だってあいつの好みでもないだろ」
「マナ様はアンダーウォーカーでさぁ。ハオ様がどうしても手に入れたかったモノを、みすみす見逃すわけがないさね」
「だから俺は違うって」
「違かろうが、なんだろうと構いやしませんさ。ハオ様は覇者になるために生まれてきたお方さね。その白い肌がそばにおれば、他の地の者も従わざるを得ん。アンダーウォーカーってのは、それほど重要なんでさぁ」

 覇者になるために生まれてきた……?
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