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七人用台本
俺が退魔師を名乗るまで【男:女:不問=1:2(1):4(5)・和風ファンタジー・70分程度】
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俺が退魔師を名乗るまで
ハルト(台詞:151) 男
本名、竜崎遥斗。妖怪というものとは無縁だった高校生。しかし、何気なくやった召喚術にて『酒呑童子』を召喚してしまい、退魔師から逃げることとなる。怒鳴り、叫びあり。
酒呑童子(台詞:95) 性別不問
常に酔っ払ってる。訛り口調。ハルトに対し非常にだる絡みをよくする。酒は水と同じだぜ!怒鳴りあり。
茨木童子(台詞:73) 女(男でも可だが、セリフ変更不可)
酒呑童子の直属の配下だった。ハルトの同級生の茨城桃花と偽っていた。酒呑童子と暴れたいと思っている。桃華を兼役。怒鳴りあり。
まあな(台詞:49) 女
退魔師の高校生。阿部舞明成だが、基本は平仮名で名乗る。相棒である”しゅう”と共にハルトを追いかけることになった。怒鳴りあり。泣きあり。
しゅう(台詞:43) 性別不問
まあなの初めての式神。自我を持ち、式神としては随分長寿である。限界が近い。怒鳴りあり。
大天狗(台詞:42) 性別不問
酒呑童子に迷惑をかけられた覚えしかない人。恨んでは無いが、まあ嫌がらせしてもいいよな?と思うくらいには嫌っている。後半しか出てこない……。怒鳴り、叫びあり。
九尾の狐(台詞:25) 性別不問
九尾はかっこいいよねぇ……!人の子食べたいなぁと思ってる人……妖怪?今回はちょっと役として悪役気味かも?
桃華(台詞:17) 女(男でも可だが、セリフ変更不可)
茨木童子の化けた姿。基本的に茨木童子が兼役だが、台詞数の問題から、九尾の狐でも可。
猫(台詞:8) 性別不問
桃華の猫。ちょくちょく出てくるから気をつけて!基本的に九尾の狐の兼役だが、台詞数の問題から他キャラでも可。
※ 台詞の変更、アドリブは世界観を壊さない程度なら可。
【基本配役】
ハルト(151) :
酒呑童子(97) :
茨木童子・桃華(90) :
まあな(50) :
しゅう(43) :
大天狗(42) :
九尾の狐・猫(33) :
カリカリと何かを書く音。
ハルト : ん?これでいいんだったか?あれ、違ったっけ?まあ間違っててもいいか……どうにかなるだろ。(一回手を叩き)”来たれ、人道を外れし者よ。我、類稀なる世界を望む者なり。この美しき月光を祝福し、契約を執行せん。”
ぶどうジュースを飲み干す。
ハルト : ……やっぱりなんも起きないよなぁ。本来ならワインの方が良いんだろうけど、流石にワインは買えなかったし、これ以上は無理だもんな。……つーか、我ながら悪魔を呼び出そうとするの悪趣味だよなぁ。暇潰しでやろうとしただけだし。うーん、誰に言い訳してんだろ、俺……もう一杯飲むか。ぶどうジュースに罪は無いしな!投入~!
水音と共に、風の音。召喚音。
ハルト : ……は?
酒呑童子 : ん、んん~!!外はいいのぅ!久々じゃ!!あの男子、儂の首を落としおうてからに……!!酒は美味かったが、どんな目にあわせてやろうかのぅ……む?なんじゃぁ、お主?
ハルト : え、いや、こっちのセリフ……あんた、誰?
酒呑童子 : ふむ、人間の男子かぇ?なんとも美味そうな匂いをさせておるのぅ……丁度酒の肴が欲しかったところじゃ!
ハルト : さ、さけの、さかな?ちょ、ちょっと待ってくれよ!
酒呑童子 : 喰ろうた後は、酒でも探しに行くかぇ。ええ匂いがするけぇ、ええ酒もあるはずじゃ。
ハルト : な、なん……くろう?食べるって、こと、か?なあ?
酒呑童子 : 五月蝿いのぅ、さっきから!儂がええ気分で話しとるじゃろうが!!
ハルト : っ!!
酒呑童子 : 本来なら生き血を啜りながら、肉を削いでいくつもりじゃったが、もうええ。さっさと殺しちゃろう。
ハルト : (恐怖の吐息)
酒呑童子 : そんなに怯えんでも、一瞬じゃき、安心せぃ。味おうてやるきに……ん、なんじゃこ……ぐぅう!!?ま、まるで、いかづ、づち、に、うた、れれた、ような、いいい、いたみ、じゃぁ!け、けっか、い?こ、こんな、わらべに、できるわけ……!
ハルト : はっ、はっ、な、なに……?
酒呑童子 : ……はぁ、なんとか、動けるようになったきに。なんじゃ。童、貴様、儂に何をした?
ハルト : なに、なに、も……そもそも、アンタが誰かすら、知らないんだぞ!俺は!
酒呑童子 : 何?何もしてないとな?そんなわけがあるかい!結界なぞ、貴様のような童に出来るわけあるかい!そもそも、蘇らせたのも貴様じゃろ!!
ハルト : お、俺は!ただ!暇潰しに悪魔を呼び出そうとしただけであって!……ま、さか、お前は悪魔なのか?だから、俺を食べようとするのか?
酒呑童子 : なわけあるかい。儂は酒呑童子。貴様らのいうところの、妖じゃ。そもそも、あくまとはなんじゃぁ?初めて聞く名じゃ。……ふむ、すっかり興が冷めてしもうた。久々に町で暴れてくるかのぅ。
ハルト : 町で?暴れる?
酒呑童子 : そうじゃ。この腹立たしさは、晴らすべきじゃろうて。ついでに酒も手に入れられれば、まあ満足はするじゃろ。
ハルト : そ、そんなの許せるわけないだろ!?
酒呑童子 : 貴様に指図される謂れはない。それともなんじゃ?その細っこい身体で、儂を止める気かぇ?
ハルト : け、けっかい?っていうのがあるんだろ……?俺があんたに触れれば!
酒呑童子 : ……たわけ、儂がそう簡単に触れられると思うのか。あの結界、なかなか痛ぅてのぅ。
ハルト : っ、くっ……酒呑童子っ!
酒呑童子 : はっ、遅いぞ、童。それではなっ!
ハルト : ”行くなっ!!酒呑童子!!”
酒呑童子 : っぐ!ち、から、が……ぬけ……な、なん、なんじゃ、さっきから……はぁ、酒が足りん……。
ハルト : え……あ、よ、かった……マジで、なんなんだよ……。は~、最悪。腰抜けたぜ畜生……しゅ、てん、どうじ、っと。お!ネットって凄いな、いっぱい出てくる。えっと?酒呑童子とは、盗賊の頭目?と、お、鬼の頭!!?しかも首落とされて死んでるはずなの!?ま、まじか……俺、もしかして……とんでもないやつ、呼び出しちゃったのか?
翌日。
ハルト : じゃ、俺行ってくるからな。”俺が帰ってくるまで待ってろよ!”
酒呑童子 : はぁ、お主の言葉に逆らえんのはなんなんじゃ一体……気持ちが悪い。儂の身体でないようじゃ。
ハルト : それは知らないけどさ……正直、街を壊さないって約束すればどこに行ってくれてもいいんだぞ。
酒呑童子 : はっ。そうしたいのは山々だがの、外に出る気力が全く無いけぇ、無理な話じゃ。あ、帰りに酒を買うてこい。
ハルト : 悪いが俺は高校生なんでね、酒なんて買えないんだよ。
酒呑童子 : なんじゃと!!?全く、使えんヤツよのぉ……そもそもじゃが、そのこうこうせい、というやつはなんじゃ?
ハルト : 学生だよ。昔は、寺子屋?とか呼ばれてたと思うけど、わかんないよな。
酒呑童子 : 分からん。興味もないがの。さっさと行け。
ハルト : ……行ってきます。
酒呑童子 : くぁ、暇じゃのぅ。……酒が足りん、寝ちょるか。
教室。
ハルト : ふぁあ、っく、おはよう……なんか、体がどっと疲れた、気がする。
桃華 : おはよう、竜崎くん。今日も眠そうだね。
ハルト : まぁな……色々あったんだ。
桃華 : なぁに、色々、って……?ん、この、匂い……。
ハルト : え、なに、俺なんか匂いする!?
桃華 : ……んーん、いつも通りなんかいい匂いするよ?美味しそうっていうか、甘いっていうか?
ハルト : なんかそれはそれで嬉しくないな。なんだ美味しそう、って。
猫 : ナァン。
ハルト : お?また連れてきたのかよ、茨城。そろそろバレて怒られるんじゃないか?な~。
猫 : ミャァン。
ハルト : なぁ、まだ名前付けねぇの?こんなに慣れてんなら……お、や、やめろって!舐めんなって!あはは!
桃華 : ふふ、本当にその子は竜崎くんに懐いてるよねぇ。あ、名前については付けないよ。私には飼えないもん。
ハルト : 家に連れ帰ってんのに?
桃華 : いつ引っ越すか分からないもん。飼えないの!それに、私よりも竜崎くんの方に懐いてるし。
猫 : にゃぁ。
桃華 : ほら、この子もうん、って言ってる。
ハルト : あ、そう?まあどっちでもいいけどな。
桃華 : ……ねぇねぇ、竜崎くん。今日さ、おうちにお邪魔してもいい?ちょっとだけ、この猫ちゃんも連れてくからさ。
ハルト : は?なんでだよ、急に。
桃華 : 私が飼えないからさ、竜崎くんにこの子をおねがいしたいなぁってって思ったの!ちゃんと食事代とか出すし!
ハルト : いや、俺も飼えな……。
桃華 : (遮る)いいのいいの!話を聞くだけしてくれればいいし!良いよね!じゃあ放課後、色々用意してからお家いくね!あ、そうだ。一時間目移動教室だから、早く用意した方がいいよ!お先に!
ハルト : え、あ、マジじゃん!なんで先いくんだよ、茨城!!って、もう居ない!!あ、やべ!間に合わないんじゃないか!?急がないと!
まあな : ちょっと、廊下は走らないで。
ハルト : すみません!
まあな : ……ん?あれ、あの子……。
放課後の家。扉を開ける音。
ハルト : ただいま~……。
酒呑童子 : ……すかー、んがっ!ん、おー、帰ってきたか。そうじゃ、お前さんの料理、なかなか美味かったけぇ!
ハルト : え、いる……!?ってか、料理?俺の……ああ、冷蔵庫に残ってたやつ?
酒呑童子 : そうじゃそうじゃ。酒が無かったのが残念なところじゃったが、少々濃ゆい味付けが儂好みでなぁ……あれならいくらでも喰えるきに!
ハルト : あ、そ、そう……まあ、一人暮らし初めてそこそこ経つしな!つ、つーか、そんなに褒めても何も出ねぇからな!
酒呑童子 : 今晩の飯は何時じゃ?
ハルト : ……七、八時くらい。
酒呑童子 : そうけ。ほんなら、もうちょい待つけぇの。
ハルト : ……自由気まま過ぎだろ。って、あ、茨城が来るって言ってたけど、普通に忘れて家に帰ってきちゃったよ。ま、酒呑童子がいる間はどうしても連れて来れないけどな。よし、飯作るか……。
インターホンが鳴る。
ハルト : ん?インターホン?こんな時間に誰だ?はーい。
桃華 : こんばんは、竜崎くん!色々持ってきたの!開けて!
ハルト : え、茨城?俺、うちの場所、教えてないはず……。
酒呑童子 : む?この気配、何処かで……?
桃華 : ふふ、ちょっと裏技があるの。両手塞がってるからとりあえず開けて~。
ハルト : 悪いが帰ってくれ。今日はどうあっても入れられない。
桃華 : なんで?私こんないっぱい、色々買ってきたのに!
ハルト : ん?うわ!な、なんだ今の音!ちょっと揺れたぞ今!
桃華 : せめてこれだけでも置いてかせて!玄関でいいから!
ハルト : ……玄関だけだからな。あとさっき言ってたその裏技のことも説明してくれ、そんな簡単にウチがバレたら怖いんだぞ。
桃華 : うふふ、分かったよ!
扉を開ける音。
ハルト : って、なんだその大荷物!?よくこんな量もてたな?
桃華 : んふ、まあね。あ、あとご挨拶しないと。
ハルト : おい!玄関だけって話だろ!おい!
桃華 : 貴方様の復活、お待ちしておりました。酒呑童子様。
酒呑童子 : ふむ、おんしは誰じゃ?気配は知っちょるが、ガワは見たことがないけぇの。
ハルト : え?なんだ?茨城が、なんで酒呑童子に……。
桃華 : 失礼致しました。では……。
ハルト : え、茨城、だよな?姿が、かわって、いく?
茨木童子 : ……ふぅ、これで、お分かりいただけるでしょうか?
酒呑童子 : 茨木童子ではないか!!久しくじゃのぅ!!元気にしちょったか!?
茨木童子 : ええ、勿論にございます。貴方様が滅された時から、いつか戻ってくると信じ、様々なものに変化して生き長らえ続けておりました。
ハルト : 茨城も、鬼、だったのか?
茨木童子 : まあそうだな。しばらく騙していて悪かった。だが、驚いたぞ私は。木曜まで何も無く、美味そうな匂いをさせていたお前が、金曜……つまり、今日突然酒呑童子様の匂いをさせてくるからな。昨日何をしていたのか問いただしてやりたいところだったんだぞ。そんなことをすれば、変な目で見られるのは当然だったからな、やめたが。
ハルト : なるほど?いや、本当はよく分からないけど。
茨木童子 : 分からなくていい。それよりも、酒呑童子様、ゆきましょう。共にまた破壊の限りを尽くしましょう……!そのためにここまで私は……!!
酒呑童子 : すまぬが、茨木童子。儂はもう少しばかり此奴から離れられんようじゃ。
茨木童子 : ……へ?
ハルト : 破壊の限りはさせないけどさ。俺から離れられないって何だよ?
酒呑童子 : そうじゃのぅ。今日、お主ががっこう?なるものに行ったじゃろ?その時になぁ……外に出る気力は回復したんじゃが、身体がどうにもうごかんでな。もしやとは思ったんじゃが……お主が帰ってきてから確信した。儂ゃ、お主から力をもろうて今ここにいる。
ハルト : だから、お前から離れた時にあんなに疲れたのか?いや、何それ怖!!
酒呑童子 : ちゅーことで!お主にはしばらく世話になるけ!お前さんの名前を教えてくれんか?儂ゃ、お主と呼び続けたくは無い。
ハルト : いやいやいや!今の話聞いてよろしくなんてできるわけあるか!
茨木童子 : なっ!なっ!!お前!!一体、酒呑童子様に何をしたァ!!
ハルト : んぐっ!く、くび、くびしまってる!
茨木童子 : そ、そうだ、お前……一体、どんな方法で酒呑童子様を蘇らせたのだ!応えろ!!
ハルト : くる、し……い、ばら、ぎ……。
茨木童子 : 答えぬのならば聞き出すまで!!
酒呑童子 : 茨木童子、ちぃと落ち着け。このままじゃ、其奴が死んでしまう。其奴が死んだ場合、儂がどうなるかも分からんけ、その手を離すんじゃ。
茨木童子 : ……っ!くっ……。
ハルト : うっ!はっ、はぁ、げほっ、ごほ、ごほ!
茨木童子 : はぁ、人は脆すぎる……手加減が難しい。
酒呑童子 : 儂は此奴に触れられんからのぅ。その感覚は分からんが。
茨木童子 : 触れられない?それは一体……と、今考えたら、貴方様が子供を喰らわないのも珍しい。なにか理由がおありなのですか?
ハルト : (荒い呼吸)
酒呑童子 : まあ、みちょれば分かる。こうやって触れるとな……む?何も無い?おかしいのぅ。
ハルト : ちょ、あ、たま、を、なで、るな!くびが、もげる!!
酒呑童子 : 昨日は触れられんでな、何故じゃろな?
茨木童子 : そもそもですが、昨日何があったのです?そこからお聞きしたいのですが。
酒呑童子 : 儂も分からん。そこは其奴に聞かねばならんな。
ハルト : は~...俺ちゃんと首ある?ある、良かった……って、ん?何だよ。
酒呑童子 : お主、どうやって儂を蘇らせたんじゃ。
茨木童子 : 私が何をしても無理だったのに、お前には出来た……何が必要だったのか言え!
ハルト : ちょ、ちょ!そんなにこっちに寄ってくるな!怖いから!話すから待てよ!あ、そうだ、茨城も俺の家がわかった理由、説明しろよ!それが条件だ!
茨木童子 : ああ、そういえばそんなことを話したな。良いだろう、とは言っても、私のようなものにしか出来ない技だからな。安心しろ。
ハルト : いや、茨城みたいなのが近くにいたことに気づいた今じゃ、安心できないっての……酒呑童子を呼び出した経緯、ね。まあ、簡単に言うと暇潰しで悪魔召喚しようとしてた。
茨木童子 : は?
酒呑童子 : うむ、やはりその”あくま”というのが分からんのぅ。
ハルト : 悪魔の話はまあいいとして、俺さ、友達なんて殆ど居ないし……親からも離れて一人暮らしだからさ、時間を持て余すわけだよ。
茨木童子 : うむ、知っている。変わり者として遠巻きにされているのもな。だからこそお前には話しかけているわけだ。
ハルト : なんだよ。俺がぼっちじゃなかったら、話しかけなかったのか?
茨木童子 : 勿論だ!私はすぐにいなくなる身だからな。あまり人に関わりたくないわけだ。
ハルト : なんか、それはそれで嫌だな。俺に近づいたのそれだけの理由なのか?
茨木童子 : いや?お前はいい匂いがすると言ったろう?もっと仲良くなったら、喰らってまた別の場所に行こうと思っていたんだ。お前はきっと、どんな御馳走よりも美味いのだろうからな。
ハルト : ……もう、二度とお前とは話さない。
茨木童子 : 安心しろ。お前を殺して酒呑童子様に何が起こるか分からない以上、手を出すつもりは無い。
ハルト : その言葉も信じられないけどな!?
酒呑童子 : そもそもじゃが、そんなにええ匂いするけ?儂には分からんのぅ……。
茨木童子 : そこも、何かあるのか……竜崎、早く続きを話せ。
ハルト : はいはい。……ネットでさ、暇潰しで調べてた時に、なんか出てきたんだよね。悪魔召喚の儀みたいな。簡単に出来る!みたいな変な見出しでね。
茨木童子 : そんなものに、引っかかったのか、お前……。
ハルト : そんだけ暇だったんだよ!!そんな可哀想な目で見るな!それに、そんだけ胡散臭ければ、デマだと思うしさ……あ、これだよコレ。この魔法陣とワインがあればできるって書いてあって……まあ、買うのも馬鹿らしいから自分で書いたんだよ。
茨木童子 : ……ああ、出てきたな。なんだこれ、本当に胡散臭い……あ、ここの字間違ってないか?魑魅魍魎の魅が、ただの鬼になっている。
ハルト : あ、面倒くさくてさ。省略したんだよね。
茨木童子 : ……呆れてしまう。馬鹿なのかお前は。
ハルト : だ、だってさ!他の字は間違ってないし!それに……ワインなんて買えないからぶどうジュースにしたけど、それ以外は間違ってないし!
茨木童子 : お前、適当にも程があるだろう。もう少し考えろ、頭を使え、馬鹿。
酒呑童子 : ……ところで、茨木童子、先程からいじっているその板はなんじゃ。ねっと、というものも分からん……儂にわからん言葉で話すのはやめろ!
茨木童子 : あ、そうでしたね……貴方様はあの頃のままですからね……その辺の説明はまた後々させていただきます。とにかく、その儀式で呼び出したのが酒呑童子様であった、それで良いのか?
ハルト : そうだよ。
茨木童子 : はぁ……もし、もしもだがな? その召喚の儀?の際に、本当に契約が契られてしまっていたのだったらだぞ?最後の”契約せん”は、契約をする、とも捉えられるはずだ。
ハルト : ……じゃあ、俺、もしかして……こいつの主?的な?
茨木童子 : 非常に遺憾だが、まあそうなるだろうな。どういう契約で結ばれているのか分からない以上、どうすることも出来ん。
酒呑童子 : 儂はなんでもいいがの。のぅ、飯はまだかぇ?
ハルト : まだまだ先だよ、ってか、本当にいいのか?俺がお前の上に立ってんだぞ?
茨木童子 : そうです!貴方様が一番上に立ち、導いてくださるからこそ、あの鬼の集は纏まっていた!
酒呑童子 : じゃが、集はもうおらんじゃろ?つまり、お前さんと此奴が居ればええ話じゃけ。それに、儂は此奴の飯が食えればそれでええ!あん頃よか何十倍もマシじゃけ……。
茨木童子 : あ……。
ハルト : え、何?そんなに飯酷かったの?その時の。
酒呑童子 : あれは、酷いもんじゃった……。
茨木童子 : それには同意しか出来ませんね……誰も、料理など出来ず……味付けなど、無いに等しい……。
酒呑童子 : ただ、そのまま食うだけよ。前はそれでも良かったがの、お主の料理を食った今じゃ、無理じゃの。
茨木童子 : 私も、人間の料理というものを知ってしまった今、あの頃のような食事は出来ません……それにしても、そんなに彼のご飯は美味しいのですか?
酒呑童子 : 儂の舌にピッタリ合う味じゃ!茨木童子、お主もきっと気に入るじゃろうて!
茨木童子 : そ、それは……!楽しみです!……仕方の無いことだ。しばらくここにいてやろう。そ、そしてお前のご飯を食べさせろ!
ハルト : いや、は?
酒呑童子 : それはええのぅ!一緒に食事を楽しもうぞ!
茨木童子 : ええ、お酒もいっぱい買ってきましたので!この時代の酒は、色々ありますので飲み比べましょうぞ!
酒呑童子 : ええのう、ええのう!楽しみじゃ!
ハルト : そのデカイ袋酒かよ!!
茨木童子 : 酒とつまみ。肉類もあるぞ。食費なら私に任せておけ。今まで貯めてきた分がある。
ハルト : 食費の部分がいいならまあいいけど……その貯めてきたって金は、どっから出てきてんのか不安だ。
茨木童子 : 聞きたいか?
ハルト : 結構だ!俺も腹減ってきた……何作ろっかな。豚肉あるし、野菜炒めでも作ろうかな。
猫 : なァん。
酒呑童子 : ……っ!お主、そこから離れるんじゃ!!
ハルト : えっ、う、わ!!
大きめの破壊音。家の一部が崩壊している。
しゅう : このまま、その少年を保護するつもりだったんだがね。失敗してしまった……すまない、まあな。
茨木童子 : 何故、ここがバレたんだ!退魔師共が……!
まあな : 別にいいわ。後からでも保護すればいいのよ。こんばんは、名前は知らないけれど……あたしが助けに来た今、怯える必要は無いわよ。一年生くん。
ハルト : お、俺の家がァァ!!ここ賃貸なのに!!
酒呑童子 : いや~な匂いじゃのぅ……敵意の塊じゃ。
ハルト : ってか、は!?どういうことなの!?あんたら誰だよ!!
まあな : 名乗るのは後!とにかく、あたしたちは味方よ!しゅう!!お願い!!
しゅう : うん、任せて。少年、私の手に捕まるんだ。
ハルト : え、はやっ……。
酒呑童子 : そう簡単に渡すわけあるかい、武器を作ってくれてあんがとさん、じゃ!ぬぅん!!
しゅう : がっ!
まあな : しゅう!!あの鬼、ただの瓦礫でアレなの!?あ、あたしだけで、倒せるの?……いいえ、まあな。やらなきゃダメよ……!
しゅう : すま、ない……少し、油断した……。
まあな : 痛みは!?
しゅう : 大丈夫だよ、私はただの式神だからね。痛みなんて無い。
まあな : っ!そう、だったわね!しゅう、もう一回!!
しゅう : ああ!!
酒呑童子 : 同じのを食らうわけ無かろうて!次こそ潰してやろうか!!
ハルト : ”駄目だ!逃げろ!!”
酒呑童子 : んぐぅ!また来おうた……!!
茨木童子 : 酒呑童子様と竜崎を守りながら戦うなんて面倒なこと出来ません!行きますよ!!酒呑童子様、その男、離さないでくださいね!!
酒呑童子 : 勿論じゃ……!
ハルト : え、ちょ、ま……ぎゃああああ!!浮いてるぅぅぅぅ!!
茨木童子 : 五月蝿い!!黙れ!
ハルト : できるかバカァァァァ!!(フェードアウト)
しゅう : ……逃げられてしまったね。
まあな : そうね、追いかけないと!
しゅう : でも、あの鬼たちを相手にするなら、私だけでは……。
まあな : 出来る!できるわ!!だって、やらなきゃ行けないのよ!
しゅう : そう、だね。大丈夫、君のことは私が必ず守ると約束するから。
まあな : ……。早く行こう。見失っちゃう前に。
しゅう : ああ。そうだね、舞明成……。
まあな : ん?何、まだ何かあるの?
しゅう : いいや、何も無いよ。あの先は森だ。天狗が居るはず。用心していこう。
まあな : 分かってるわよ。そんなに言われなくたって!早く、お父様やお兄様に追いつかなくちゃいけないの……貴方と私が凄く強いんだって証明しなきゃ!別の式神を作れなんて、言われないように!
しゅう : うん、ありがとう、そうだね。
大天狗の山。
ハルト : ぜえ、ぜぇ、こ、こわ、かった……。
酒呑童子 : ぬぅう……ああやって止められると、体が固まってしもうて……まあ、酒なら持ってきたけぇ!!酒盛りなら出来る!!
茨木童子 : あの状態でよく持ってこれましたね?いや……とくになにかを言うつもりはありませんが。しかし、まだ飲まない方がよろしいかと。
ハルト : つーか、俺ん家壊れちゃったんだけど?それにアイツ誰だよ!人ん家壊していきやがって!
茨木童子 : あれは恐らく、退魔師というものだな。
ハルト : え、タイマ?
茨木童子 : (被せ気味)やばい薬の方ではないぞ、わかっているとは思うが。
ハルト : あ、いや、うん……。
茨木童子 : 魔を退く者と書いて退魔師と読む。アニメや漫画に出てくるようなものだと考えて差し支えないだろう。
ハルト : そもそも、妖怪の時点で二次元の話なんだよなぁ、俺からすると。はぁ、どうしようかな。こんな山の中に入ってきちゃってさ……。
酒呑童子 : んぐっ、んぐっ……ぷ、はぁ!!美味いのぅ!こんな美味い酒は久々じゃあ!!!
ハルト : え、あ!酒飲んでる!こんな異常事態に!
茨木童子 : ……はぁ、飲んでしまわれましたか……。
酒呑童子 : うんまい酒は残しておくよりも飲んだ方がええじゃろ!!お主も飲め!!
ハルト : 俺はまだ高校生で、お酒は飲んじゃ行けませーん!!って歳なの!!飲めません!!
酒呑童子 : 儂の酒がのめないっちゅうんか!!
ハルト : その通り、飲めないんだよ!!NO!!アルコール!!
茨木童子 : 保健の授業で、死ぬほど見たやつ……。
酒呑童子 : ちゅうか、妙に見覚えあるのぅ。この山。なんじゃろな、どこじゃったかのぅ……。
茨木童子 : お忘れですか?貴方が良くお酒を頂きに来ていた山ですよ。だから、飲むなと言ったのです。
酒呑童子 : ああ、なるほどのぅ!ここは――
大天狗 : 大天狗の山ぞ。鬼と人の子よ。
酒呑童子 : おお!久々じゃのう!美味い酒をまた溜め込んどるんじゃないか!?
大天狗 : 久方ぶりの再会だと言うのに、貴様はそれか。そういうところは本当に好かぬ。一度去ね。さすれば、もう少しまともになるだろう。
酒呑童子 : 儂がまともじゃないって言いたいんか!?まともってなんじゃあ!!
大天狗 : こんな道端でも飲んでいるのか貴様は。最早飲むではなく、呑まれておるな。何時、貴様の首が飛ぶか楽しみにしておるぞ。早ければ早い方が良い。
酒呑童子 : 首なら一度飛んだわ!!
大天狗 : 飛んでこれか。ふむ、だからここ何百年と来んかったのか。ということは、平穏な日々が終わるとな……全く、嘆かわしいな。
酒呑童子 : なんじゃ、大天狗、貴様……戦いとうて戦いとうて仕方ないんか?仕方の無いやっちゃのう!
大天狗 : 誰がそんなことを言った。うつけ者め。
酒呑童子 : うつけ者じゃと!?貴様の羽を全てむしり取っちゃるけ、そこで待っとれ!!
大天狗 : そんな物言いをされて待つものがどこにおる。そんなんだから、うつけ者と呼ばれるのだろう。
酒呑童子 : そんな呼び方しちょる命知らずはお前だけじゃ!
大天狗 : む?ところで、このいい香りの正体はそこの子か?ふむ、我への献上物か?貰い受けはするが、そんなもので許せるほど、貴様らの罪は軽くないぞ。
茨木童子 : そうでは無い。退魔師に追われていてな。命からがら逃げてきたところだ。
大天狗 : 何?貴様らが命からがら?なんだその面白き話は。是非詳しく聞きたいところだな。貴様らがそこまで弱ったのか、退魔師が強くなったのか。確認してくれてもいいのだぞ?
酒呑童子 : 儂を無視するな!!木の上から引きずり下ろしちゃる!!!
茨木童子 : そんなことをしても、メリットがあるのは貴様らのような関係の無い妖だけだろう。
大天狗 : なんだめりっと、とは?人間に染まったのか、そこの鬼は。確かにそうなれば、弱くなるのも当たり前か。
ハルト : な、なぁ、茨城。アイツは?
茨木童子 : この山の主、大天狗だ。天狗は聞いたことあるだろう?あれの支配者と呼べるものだ。
ハルト : 天狗の、支配者……大天狗……何それ、カッコイイ……。
大天狗 : ふっ、だろう?人の子はよく分かっているようだな。其奴らを捨てれば、我が貴様を大事に育ててやるが?
茨木童子 : 辞めておけ。あれの大事は、食料としてだ。
ハルト : あ……や、やめておきます。
大天狗 : 何だ、貴様もその程度か。まあ良い。馳走を作る際に攫えばよかろう。
ハルト : ねぇ、怖いこと言ってるよ。大天狗。
茨木童子 : 妖とはそういうものだ。信頼しない方が良いぞ。
ハルト : ……そうだな。
茨木童子 : おい、何故離れる。
ハルト : いや、お前も妖じゃん。
茨木童子 : ……お前なんぞ食わん。
ハルト : 酒呑童子との繋がりがあるからだろ?
茨木童子 : 否定はしない。
ハルト : やっぱり妖は信じられない。
茨木童子 : 安心しろ、人間も似たようなものだ。
ハルト : ……もう何も信じられない。
大天狗 : だから、我ならば……ぬぉ!?
酒呑童子 : やぁっと捕まえたけぇ、覚悟せい!!うおおおおぉ!!
大天狗 : こら、羽を掴むな!!おい!!あああああ!!!我の羽を抜くなこの鬼風情が!!!!
酒呑童子 : 儂をうつけと呼んだ罰じゃけ!!
大天狗 : ぐぁあああ!羽がァァァァ!
茨木童子 : 五月蝿いな、あの人ら。
ハルト : ほんとにね。
猫 : みゃあん。
ハルト : え、今……?
茨木童子 : な、んだ、この気配……。
大天狗 : む、嫌なものの香りがするな。鼻がひん曲がりそうだ……酒呑童子!!貴様、もう退かんか!!まさかこの気配が分からぬとは申すまいな!?
酒呑童子 : ああ!?知らんが!!そんな知らんもんよか先に、お主の羽を全部毟るんじゃあ!!
大天狗 : これだから貴様は嫌いなんだ!!!この気色の悪い気配が三もあると言うのに、分からぬなど役立たずにしかならん!!退け!!!
酒呑童子 : うっわ、落ち……うおおおおぉ!!頭打ったんじゃあああ!!いてぇぇぇえ……。
大天狗 : ふん……。それにしても、我の山を穢す気ならばただでは返さん。
茨木童子 : ……。
酒呑童子 : なんじゃなんじゃ……そんなに気を張って、どうしたんじゃ?茨木童子?
茨木童子 : いいえ……追ってきた、だけです。
酒呑童子 : 追ってきた?あの小娘かぇ?
ハルト : わあ!また逃げなきゃじゃん!?
大天狗 : なんだ、此奴らから逃げてきたと?……まあ、わからんことは無いな。此奴らは、随分と嫌な気配を持っておるからの。
酒呑童子 : そうけ?儂にはわからんのぅ……。じゃが、この足音だけは聞こえるがの。
まあな : しゅう!!!
しゅう : ああ。君はこちらだよ。
ハルト : なっ!また急に!!ちょ、掴むな!!
酒呑童子 : なっ!お主……な、名も知らぬ者よ!!
ハルト : なんだその呼び方ぁぁ!!
しゅう : やっと保護できたよ。まあな。
まあな : そうね。良かったわ……というか、一人増えて……あ、待って、アレって……!!
しゅう : 大天狗、だね。
大天狗 : ふむ、我の名は人間達まで轟いているようだ。
まあな : さ、三人も相手に……しゅう……。
しゅう : ああ、少し、厳しいかもね……しかも、鬼二人に大天狗一人……やれるだけ、やってみるかい?
まあな : っ!駄目、無理、だわ!しゅう、あたしじゃ……!一回、家に帰って……!
しゅう : でも、逃げる暇なんてなさそうだよ。大天狗はいいにしろ、あの鬼二人は殺しに来るかもしれないよ。
ハルト : ちょ、やめろ!やめろって!攻撃とかしなくていいから!
まあな : ……は?
しゅう : ……暴れないで。落としかねないから。
ハルト : 敵対する気は無いから!!
まあな : え、何、言ってるの?よく、分からないのだけど……。
しゅう : 彼らから、一体何を聞いたんだい?そもそも……。
ハルト : これには、実は事情があって……正直、俺もよく分かってないんですけどね?
まあな : ……よく、分からないけど……何か、脅迫されているとか言うわけじゃないなら、いい、のかな?
しゅう : ……良くは、無いだろうけど、まずは確認を取らなきゃいけないね。とりあえず、下ろすよ。
ハルト : あ~、ありがとう。良かったぁ……なんか、よく分かんないけど、上手く落ち着けそうで良かったよ。
酒呑童子 : なんじゃ?戦わんのか?
茨木童子 : まあ、良かった……のでは無いでしょうか?久方振りの戦となりましょう?であれば、身体も鈍ってしまっていることでしょうからね。
酒呑童子 : 身体をあっためるにはちょうどええかとも思ったんじゃがのぅ。
大天狗 : お前達、本当に気づかんのか?もう一つ、ずっと気色の悪いは気配があると言うのに……はぁ、これだから嫌なのだ。
酒呑童子 : そういえば、お前、言っちょったなぁ?気配が三つとなァ……儂には一つしか感じとらんかったがの。
大天狗 : 貴様は、本当に強い者しか興味を持たんな。いつか身を滅ぼしても知らんぞ。
酒呑童子 : そんな簡単に身は滅ばん!儂ゃ、そんなに弱うないからの!
大天狗 : 要らぬ心配だったな。
茨木童子 : ……っ!な、ん、だ……この、嫌な気配は!!
しゅう : はっ!まあな、早くこっちへ!
まあな : え、何!?急に!!
ハルト : え、何?みんなどうしたの?何も変なことなんて……
猫 : にゃァん
まあな : え、猫?
しゅう : 駄目だ、まあな。あれは……あれは、近づいては行けない!絶対に!
まあな : しゅう?あれ、ただの猫じゃない……の……?
ハルト : あ、茨城の猫じゃん。茨城~!ここまで追っかけてきてる……いばら、ぎ?
茨木童子 : ……わ、たしは……あんな、得体の知れないものを連れていたのか……何年も、何年も……。
酒呑童子 : がはは、彼奴じゃのぅ!儂が感じちょった奴は!そんな小さいガワなんて捨てて、本性を見せてみぃ!
猫 : みゃうん
ハルト : なあ、皆してなんでそんな反応してるんだよ。可哀想だろ。ほら、こっちおい、でぇっ!!
茨木童子 : やめろ!!死にたいのか!!
ハルト : 急に引っ張るなよ!!びっくりしただろ!?腕いってぇし……。
猫 : にゃぅ……に゛ゃ、ぁ、う゛ぅん……
しゅう : まあな!!見るんじゃない!!
まあな : なんか、変な音がする……しゅう、しゅう!
ハルト : ヒッ!な、なん、なん、なんだよ……形が、変形してく……猫の、かわ、が……!
茨木童子 : っ!あ、れは……
九尾の狐 : はぁ……一人くらいはつられてきてくれると高を括っていたが、まさかバレるとはの。
茨木童子 : 九つの尾に、黄金の毛色……九尾、か!!
九尾の狐 : お、そち、妾を知っておろうか。褒めて遣わす。……ふむ、誰かと思ったら、お主。妾を目掛けてくれた女子か。小物では無いと思ってはいたが、まさか鬼とは思わんかった。その姿も美しゅう。妾の世話をするには十二分じゃろう。
大天狗 : 貴様か……!この山に異様な空気を呼ぶ者は……!我の山を穢す気か?
九尾の狐 : 嗚呼、大天狗様。妾の目的はそこの男子と女子を喰らう事にございます。暫くぶりの食事に勤しみたく……どうか、ご慈悲をいただけないでしょうか?
大天狗 : ……ふむ。
九尾の狐 : もし妾が二人を喰らえた暁には、宴会での盛り上げ役をさせていただきましょう。妾とて、大妖怪の端くれ、綺麗な女子にも、秀麗な男子にも化けられる自信がございます。
大天狗 : それだけか?
九尾の狐 : いいえ。献上物も御用意致します。一度だけではございませんし、良い物を選ぶことをお約束いたします。どうでしょうか?
大天狗 : ……。
九尾の狐 : 貴方様の嫁……もしくは婿になれますが?
大天狗 : 今は要らぬ。だが、献上物は年に一度、三十年。
九尾の狐 : 感謝致します。
茨木童子 : 大天狗!!
大天狗 : 悪いが、我は貴様らに迷惑をかけられた覚えはあっても、手を貸す義理はない。
酒呑童子 : まあ、ええじゃろ!肩慣らしじゃ肩慣らし!
しゅう : まあな、下がって!
まあな : しゅう、やっぱり帰ろう!お父様にこの話……!
しゅう : 逃げられるなら、そうしたいところだけど……あの九尾から逃げられるとは思えない……鬼二人だけなら、私も一緒に逃げられたけれど......今回は、私の囮ありきだね。
まあな : そんなの許さない!一緒に帰るの!!もう何年も一緒にやってきたでしょ!?
しゅう : ありがとう……でも、私はただの式神だよ。使い捨てなんだ。
まあな : そ、そんなの絶対許さない!!貴方には自我があるんだもの!使い捨てなんて絶対にしない!一緒に帰るの!
しゅう : うん……ここを乗り切れたら、帰ってもう一度話そう。
まあな : 嫌よ!だめ、行かないで!!
九尾の狐 : 鬼二人に変な紙が一枚。さらに、鬼の片方は、酒呑童子と……妾に勝てるだろうか、不安じゃ。
酒呑童子 : まさか、こんなに唐突に九尾と戦うことになるとは思わんかったのぅ!お前さんから来ぃや!!
九尾の狐 : 野蛮じゃの。妾の美しゅう身体に、傷を付ける気なんじゃからな。そんなことは許されぬぞ?じゃが、お主は面倒そうじゃの。仕方の無いことじゃ。
酒呑童子 : がははは!!その意気じゃ!!ふんっ!!
九尾の狐 : 木を抜きおった?はぁ、力だけの者はこれだから嫌なんじゃ。妾のように美しゅう生きることを知らぬ……。さっさとその息の根、止めてやろう!
酒呑童子 : 早いのぅ、早いのぅ!!じゃが、それだけじゃのぅ!!オルァ!!
九尾の狐 : ふん、動きが単調じゃ。読みやすい。
酒呑童子 : がァっ!いっ、たいのぅ!(背を蹴られ)何をしおるか!!
九尾の狐 : お遊戯じゃないのじゃぞ?何を馬鹿なことを……。
しゅう : 助太刀いたす!
九尾の狐 : ん?ふふ、愚かじゃな。気づいておらんと思うか?
しゅう : 上に避けられ…っぐぁ!(背に乗られ)
九尾の狐 : 式神の背は乗り心地が悪いの。もう少し踏みやすくした方が良いのではないか?
酒呑童子 : ふん、ぬぅうぅう!!(大木を振り回し)
九尾の狐 : はぁ、やはり単調。面白くもなんともない。
しゅう : っが、はっ!!(酒呑童子の大木が当たる)
酒呑童子 : そんなところにいるから悪いんじゃ!何故そこにおる!!
しゅう : 貴方だけでは無理だろうから、手を貸しに来た、んだ……私が式神でなかったら危ないところだよ?
酒呑童子 : 知らん!!儂は儂の好きに戦うんじゃ!!貴様、邪魔するんなら貴様から相手しちゃる!!
しゅう : そんなことを言ってる場合じゃないだろう!?今は九尾を先に!
九尾の狐 : 妾抜きで盛り上がってもらっては困るのじゃが?
しゅう : いつのま……っ!!(鳩尾を蹴られ)
酒呑童子 : はっ!余裕こいてるからじゃ……どぅ!!(足払いをかけられ)
九尾の狐 : なんじゃ。ただのお遊びかの?妾を馬鹿にしておるのか。
茨木童子 : ふー……竜崎、あの退魔師の女と下がってろ。私たちがあれと戦うのに邪魔だ。
ハルト : は!?でも……!
茨木童子 : 正直、酒呑童子様よりもアイツの方が強い……しかも、身体が鈍っている酒呑童子様には荷が重い。だから私と、あの退魔師の式神?と言うやつでどうにか止める。もし、無理そうだと判断したら逃げろ。
ハルト : いや、でもさ!
茨木童子 : でもじゃない。お前ならば、私たちを生き返らせられるかもしれないから言っているんだ。もしダメだったら、最初と同じことをしろ。最悪、私はいい。
ハルト : なんで、そんなこと言うんだよ……!
茨木童子 : ……もう少し、聞き分けよくなってよ。竜崎くん。(一瞬だけ桃花に)
ハルト : いばら、ぎ?
茨木童子 : 頼んだ!
ハルト : ……っ!ああ、畜生!なんだってんだよ!!もう!!
まあな : だめ、だめ!しゅう、逃げるの!!あたし、貴方が居なきゃ戦えないの!
ハルト : おい、落ち着けって!
まあな : 落ち着けるわけないでしょ!?しゅうは、あたしの小さい頃からずっとそばに居る親友なの!!いなくなってほしくないの!!邪魔しないで!!
ハルト : じゃあここで叫んでいればどうにかなるのか!!?
まあな : っ!!でも、でも、これしかあたし……!
ハルト : 俺は、こんなことになったのは初めてで、本当に何も分からないんだよ……!だから、お前にしか頼れないんだよ!
まあな : っ!
ハルト : 俺はさ、アイツらと会って、たった一日しか経ってない……でもさ、知っちゃったんだよ!アイツらだって笑うし、怒るし、楽しむんだって!人間と同じなんだって……!たった一日でって、言われるかもしんないけどな!それでも、俺は……初めて人に囲まれて楽しかったんだよ!だから、手を貸してくれ!アイツらの手助けをするために!!
まあな : 手助け……?
ハルト : そうだよ!
大天狗 : まるで子供の癇癪だな。騒がしいったらありゃしない。
ハルト : 大天狗……!
大天狗 : 我からすれば、どちらが消えても構わん。どちらにしろ、貴様を喰らうのは我だからな。だが、あまり感情的になられすぎると、肉が不味くなる。
まあな : じゃあ!
大天狗 : 我は手を貸さんがな。
ハルト : はぁ!?じゃあなんで降りてきたんだよ!
大天狗 : 手は貸さんが、知恵くらいなら貸してやろう。その小指一本と交換だがな。
ハルト : こゆ……!
まあな : え、だめだよそんなの!そこまでする義理ないでしょ!?あたしたちは、自分で考えるからあっち行ってよ!
大天狗 : 退魔師の娘。お前には聞いていない。黙っておれ。
まあな : はぁ!?冗談じゃないわよ!頭おかしいんじゃないの!?
大天狗 : 我は妖だからな。人間と考え方が違うのは当たり前のことだろう。
ハルト : こゆ、び……。
大天狗 : 情なぞその程度だろう。余計なことを言ったな。
ハルト : いい!!小指くらい!!
まあな : は!?貴方正気!!?
大天狗 : ほう……。
ハルト : 今、ここでアイツらを見殺しにしたら後悔すると思うんだ……!
まあな : ねぇ、今言ったじゃない……たった一日なのに……。
ハルト : なんでって言われたら、分からない……けど、俺はアイツらに生きていて欲しいんだよ。
大天狗 : ……フッ、その目は本物だな。約束だ。この小指は我のだ。せいぜい可愛がっておくといい。
ハルト : え、今じゃなくて良いの?
大天狗 : ああ。まだ時期尚早というやつだ。食べ頃にはまだ早い。
まあな : 君の小指に変な紋様が付いてる。
大天狗 : それが我との契約の証よ。さあ、知恵を貸してやろう。九尾の狐は元より、気に食わなかったのだ。
まあな : ……。
ハルト : 早く。俺はとっくに覚悟ができてる。
ところ変わって酒呑童子ら。
茨木童子 : うっ!!くぅ、やはり、お強い……!(突風に充てられて)
酒呑童子 : ぬぉお!蹴りだけでなく、妖力も扱いよるのか!面倒じゃのぅ。(突風に充てられて)
しゅう : 先程まで楽しげに戦っていた方が何を言う。
九尾の狐 : そろそろ面倒になってきたの。まだ戦うのか?今なら見逃してやるが?人の子二人を置いていけばの。
しゅう : それは無理な相談だね。私は彼女を守るために生きている。
酒呑童子 : 儂もそれは無理な相談じゃぁ!理由は言わんがの!
九尾の狐 : はぁ、そんなに早く消えたいというのじゃな?仕方の無い奴らよの。では――
ハルト : ”力のままに、災いを振りまく者よ”
九尾の狐 : っ……。
酒呑童子 : お?なんじゃ?動きが止まったのぅ。
まあな : ”世の理を乱し、破滅へ導く者よ”
九尾の狐 : なんじゃ、これは……?妾の体の妖力が……?
ハルト : ”許されざる者には罰を”
まあな : ”力の役割に従えぬ者には罰を”
九尾の狐 : 彼奴らのせいか!?妾に何をした!嗚呼、蓄えた妖力が、抜けていく!そんな、そんな……!
ハルト : ”心を開き、循環させよ”
まあな : ”邪心を退き、天と愛に裁かれよ”
しゅう : あんな呪文は聞いたことがない……!まあな!?
酒呑童子 : 茨木童子、あれは何を言っちょるんじゃ?
茨木童子 : 分からないですが、九尾の狐の動きがほとんど無くなりました。私たちには影響も無いようですし、大丈夫だとは思いますが……。
ハルト : ”始まりにて全てを正せ!!”
九尾の狐 : ああ、わらわの、妖力が……忌々しい!小童どもが!死に晒せ!!
しゅう : っ、まあな!!
まあな : ”天と地の繋ぎ目より、調和、す”……?
しゅう : ……っ!!
九尾の狐 : いやぁあぁぁぁぁ!!
酒呑童子 : む?九尾の狐が縮んで、小狐になってしもうた!狐のつまみはあったかのぅ。
茨木童子 : 私には思いつきませんね。
ハルト : 良かった……上手く行きましたよ、大天狗さ……
まあな : (遮り)え、しゅう!?しゅう!?あっ、そ、そんな……!式神がやぶけてる!しゅう!だめ、消えないで!お願い!
しゅう : ふ、ふふ……ようやっと、私の、一人目の役目は終わったんだ。まあな、式神とはこういうものだよ。こうやって失い、枚数を増やして強くしていく……お父様は、それを知って欲しかったから、貴方に私を作らせたんだよ。
まあな : ああ!どんどん薄くなっていく……!やめて、やめてよ!帰ってきてよ!だめ!くっつけたらどうにか……!
しゅう : 大丈夫、あなたならもっと強い式神が作れるから。そして、使いこなしていって。私の願いはそれだけ。
まあな : 嫌だ!嫌なの!あたしは貴方じゃなきゃ……!
しゅう : ふふ、そう言ってくれるだけで、私が存在した意味があったってものだよ。ありがとう、まあ、な……。(消える)
まあな : しゅう!しゅう……いや、いや、いやぁああああ……。
大天狗 : ふむ、まあ……仕方の無いことだな。百を助くために一を犠牲にする。あって当然の事象だ。
ハルト : ……。
大天狗 : それでは、我は食べ頃の時期に顔を出しに来よう。またの。
ハルト : ……。帰ろう、皆で……。
モノローグまで少々間。
ハルト(M) : そうして、その日は退魔師もとい阿部舞明成の家に泊まることとなった。家が酷い状態だったし、当たり前だが……家の弁償もしてくれるという話だったので、そのまま甘えることにしたのだ。
初めて会った舞明成の父親には、開口一番に「お前も退魔師になれ」と告げられた。まあびっくりはしたけれど、酒呑童子と茨木童子のこともあったし……と二つ返事で承諾。
するとびっくり!あれよあれよと引越しさせられ、一つ年上の舞明成とも共に住むこととなってしまった……正直、自分でも何を言っているか分からないんだよなぁ……。
ああ、そうだ。みんな気になっているであろう、舞明成の事だけど、まるで死にそうな程に落ち込んでいた娘を見て居られなくなったんだろう。父親のアドバイスに則り、式神の一番大事な一文字を他の人型の紙に貼り付けて”しゅう”を取り戻していたよ。
まあな : しゅう、しゅう、なんだよね?
しゅう : そうだけど、まさかここに戻ってこられると、はっ!び、びっくりした。急に飛び付かれたら反応できないよ。
まあな : 馬鹿!馬鹿馬鹿!もう居なくなったりしないでね!約束だから!!
しゅう : ……ふ、ふふ。甘えんぼだね、まあな。よしよし。
ハルト(M) : ああ、あとは、茨木童子は茨城としてまだ学校にい続けることにしたってさ。九尾の狐も、妖力が溜まるまで小狐の姿から変われないらしくて……小狐のまま、茨城に着いてってるよ。猫が狐に変わったくらいで、あんまり変わらないけどな。
茨城桃花 : え?だって、もう離れる理由無くなったし?それに、高校が終わったらもう化けないからそれくらい許してよね。
九尾の狐 : まあ、わるくはないぞ、このせいかつも。わらわがようりょくをためて、だいようかいにもどるまでの、ひまつぶしじゃ。
ハルト(M) : 他に話すことか……あれ以来、大天狗はよく俺に会いに来るよ。他のやつにマーキングされたら腹が立つってさ。訳わかんないよな。
大天狗 : 我が喰らう予定の身体だからな。勿論大事にしてもらわねば困る。それに、成長過程を見るのだって、喰らう者の仕事だろう。
ハルト(M) : そして最後。酒呑童子には名前を教えて、ハルトって呼ばれることになったよ。
酒呑童子 : お前さんの名前、未だに知らんのじゃが……何時になったら教えてくれるんじゃ?
ハルト : あれ、そういえば言ってなかったっけ?俺は竜崎遥斗だよ。
酒呑童子 : りゅうざきはると?じゃあ、はるとでええな!呼び方が楽になるけぇ!
ハルト : はると、はるとね……なんか、むず痒いわ。
酒呑童子 : 何故じゃ?
ハルト : ……あんまり呼ばれたことないからさ。友達もいなかったし、両親も名前呼ばない人だったし。
酒呑童子 : ほうか。儂がその分いっぱい呼んじゃる!楽しみにするんじゃな。
ハルト : へ、あ、はは!ありがとう。じゃ、よろしく!
ハルト(M) : そうして、俺が退魔師を名乗るまで……まだまだ長い道があるけれど、そこはまた別の話にしておこう。まだ聞けてないこともいっぱいあるしな!
それではこれにて、『俺が退魔師を名乗るまで』……閉幕。
ハルト(台詞:151) 男
本名、竜崎遥斗。妖怪というものとは無縁だった高校生。しかし、何気なくやった召喚術にて『酒呑童子』を召喚してしまい、退魔師から逃げることとなる。怒鳴り、叫びあり。
酒呑童子(台詞:95) 性別不問
常に酔っ払ってる。訛り口調。ハルトに対し非常にだる絡みをよくする。酒は水と同じだぜ!怒鳴りあり。
茨木童子(台詞:73) 女(男でも可だが、セリフ変更不可)
酒呑童子の直属の配下だった。ハルトの同級生の茨城桃花と偽っていた。酒呑童子と暴れたいと思っている。桃華を兼役。怒鳴りあり。
まあな(台詞:49) 女
退魔師の高校生。阿部舞明成だが、基本は平仮名で名乗る。相棒である”しゅう”と共にハルトを追いかけることになった。怒鳴りあり。泣きあり。
しゅう(台詞:43) 性別不問
まあなの初めての式神。自我を持ち、式神としては随分長寿である。限界が近い。怒鳴りあり。
大天狗(台詞:42) 性別不問
酒呑童子に迷惑をかけられた覚えしかない人。恨んでは無いが、まあ嫌がらせしてもいいよな?と思うくらいには嫌っている。後半しか出てこない……。怒鳴り、叫びあり。
九尾の狐(台詞:25) 性別不問
九尾はかっこいいよねぇ……!人の子食べたいなぁと思ってる人……妖怪?今回はちょっと役として悪役気味かも?
桃華(台詞:17) 女(男でも可だが、セリフ変更不可)
茨木童子の化けた姿。基本的に茨木童子が兼役だが、台詞数の問題から、九尾の狐でも可。
猫(台詞:8) 性別不問
桃華の猫。ちょくちょく出てくるから気をつけて!基本的に九尾の狐の兼役だが、台詞数の問題から他キャラでも可。
※ 台詞の変更、アドリブは世界観を壊さない程度なら可。
【基本配役】
ハルト(151) :
酒呑童子(97) :
茨木童子・桃華(90) :
まあな(50) :
しゅう(43) :
大天狗(42) :
九尾の狐・猫(33) :
カリカリと何かを書く音。
ハルト : ん?これでいいんだったか?あれ、違ったっけ?まあ間違っててもいいか……どうにかなるだろ。(一回手を叩き)”来たれ、人道を外れし者よ。我、類稀なる世界を望む者なり。この美しき月光を祝福し、契約を執行せん。”
ぶどうジュースを飲み干す。
ハルト : ……やっぱりなんも起きないよなぁ。本来ならワインの方が良いんだろうけど、流石にワインは買えなかったし、これ以上は無理だもんな。……つーか、我ながら悪魔を呼び出そうとするの悪趣味だよなぁ。暇潰しでやろうとしただけだし。うーん、誰に言い訳してんだろ、俺……もう一杯飲むか。ぶどうジュースに罪は無いしな!投入~!
水音と共に、風の音。召喚音。
ハルト : ……は?
酒呑童子 : ん、んん~!!外はいいのぅ!久々じゃ!!あの男子、儂の首を落としおうてからに……!!酒は美味かったが、どんな目にあわせてやろうかのぅ……む?なんじゃぁ、お主?
ハルト : え、いや、こっちのセリフ……あんた、誰?
酒呑童子 : ふむ、人間の男子かぇ?なんとも美味そうな匂いをさせておるのぅ……丁度酒の肴が欲しかったところじゃ!
ハルト : さ、さけの、さかな?ちょ、ちょっと待ってくれよ!
酒呑童子 : 喰ろうた後は、酒でも探しに行くかぇ。ええ匂いがするけぇ、ええ酒もあるはずじゃ。
ハルト : な、なん……くろう?食べるって、こと、か?なあ?
酒呑童子 : 五月蝿いのぅ、さっきから!儂がええ気分で話しとるじゃろうが!!
ハルト : っ!!
酒呑童子 : 本来なら生き血を啜りながら、肉を削いでいくつもりじゃったが、もうええ。さっさと殺しちゃろう。
ハルト : (恐怖の吐息)
酒呑童子 : そんなに怯えんでも、一瞬じゃき、安心せぃ。味おうてやるきに……ん、なんじゃこ……ぐぅう!!?ま、まるで、いかづ、づち、に、うた、れれた、ような、いいい、いたみ、じゃぁ!け、けっか、い?こ、こんな、わらべに、できるわけ……!
ハルト : はっ、はっ、な、なに……?
酒呑童子 : ……はぁ、なんとか、動けるようになったきに。なんじゃ。童、貴様、儂に何をした?
ハルト : なに、なに、も……そもそも、アンタが誰かすら、知らないんだぞ!俺は!
酒呑童子 : 何?何もしてないとな?そんなわけがあるかい!結界なぞ、貴様のような童に出来るわけあるかい!そもそも、蘇らせたのも貴様じゃろ!!
ハルト : お、俺は!ただ!暇潰しに悪魔を呼び出そうとしただけであって!……ま、さか、お前は悪魔なのか?だから、俺を食べようとするのか?
酒呑童子 : なわけあるかい。儂は酒呑童子。貴様らのいうところの、妖じゃ。そもそも、あくまとはなんじゃぁ?初めて聞く名じゃ。……ふむ、すっかり興が冷めてしもうた。久々に町で暴れてくるかのぅ。
ハルト : 町で?暴れる?
酒呑童子 : そうじゃ。この腹立たしさは、晴らすべきじゃろうて。ついでに酒も手に入れられれば、まあ満足はするじゃろ。
ハルト : そ、そんなの許せるわけないだろ!?
酒呑童子 : 貴様に指図される謂れはない。それともなんじゃ?その細っこい身体で、儂を止める気かぇ?
ハルト : け、けっかい?っていうのがあるんだろ……?俺があんたに触れれば!
酒呑童子 : ……たわけ、儂がそう簡単に触れられると思うのか。あの結界、なかなか痛ぅてのぅ。
ハルト : っ、くっ……酒呑童子っ!
酒呑童子 : はっ、遅いぞ、童。それではなっ!
ハルト : ”行くなっ!!酒呑童子!!”
酒呑童子 : っぐ!ち、から、が……ぬけ……な、なん、なんじゃ、さっきから……はぁ、酒が足りん……。
ハルト : え……あ、よ、かった……マジで、なんなんだよ……。は~、最悪。腰抜けたぜ畜生……しゅ、てん、どうじ、っと。お!ネットって凄いな、いっぱい出てくる。えっと?酒呑童子とは、盗賊の頭目?と、お、鬼の頭!!?しかも首落とされて死んでるはずなの!?ま、まじか……俺、もしかして……とんでもないやつ、呼び出しちゃったのか?
翌日。
ハルト : じゃ、俺行ってくるからな。”俺が帰ってくるまで待ってろよ!”
酒呑童子 : はぁ、お主の言葉に逆らえんのはなんなんじゃ一体……気持ちが悪い。儂の身体でないようじゃ。
ハルト : それは知らないけどさ……正直、街を壊さないって約束すればどこに行ってくれてもいいんだぞ。
酒呑童子 : はっ。そうしたいのは山々だがの、外に出る気力が全く無いけぇ、無理な話じゃ。あ、帰りに酒を買うてこい。
ハルト : 悪いが俺は高校生なんでね、酒なんて買えないんだよ。
酒呑童子 : なんじゃと!!?全く、使えんヤツよのぉ……そもそもじゃが、そのこうこうせい、というやつはなんじゃ?
ハルト : 学生だよ。昔は、寺子屋?とか呼ばれてたと思うけど、わかんないよな。
酒呑童子 : 分からん。興味もないがの。さっさと行け。
ハルト : ……行ってきます。
酒呑童子 : くぁ、暇じゃのぅ。……酒が足りん、寝ちょるか。
教室。
ハルト : ふぁあ、っく、おはよう……なんか、体がどっと疲れた、気がする。
桃華 : おはよう、竜崎くん。今日も眠そうだね。
ハルト : まぁな……色々あったんだ。
桃華 : なぁに、色々、って……?ん、この、匂い……。
ハルト : え、なに、俺なんか匂いする!?
桃華 : ……んーん、いつも通りなんかいい匂いするよ?美味しそうっていうか、甘いっていうか?
ハルト : なんかそれはそれで嬉しくないな。なんだ美味しそう、って。
猫 : ナァン。
ハルト : お?また連れてきたのかよ、茨城。そろそろバレて怒られるんじゃないか?な~。
猫 : ミャァン。
ハルト : なぁ、まだ名前付けねぇの?こんなに慣れてんなら……お、や、やめろって!舐めんなって!あはは!
桃華 : ふふ、本当にその子は竜崎くんに懐いてるよねぇ。あ、名前については付けないよ。私には飼えないもん。
ハルト : 家に連れ帰ってんのに?
桃華 : いつ引っ越すか分からないもん。飼えないの!それに、私よりも竜崎くんの方に懐いてるし。
猫 : にゃぁ。
桃華 : ほら、この子もうん、って言ってる。
ハルト : あ、そう?まあどっちでもいいけどな。
桃華 : ……ねぇねぇ、竜崎くん。今日さ、おうちにお邪魔してもいい?ちょっとだけ、この猫ちゃんも連れてくからさ。
ハルト : は?なんでだよ、急に。
桃華 : 私が飼えないからさ、竜崎くんにこの子をおねがいしたいなぁってって思ったの!ちゃんと食事代とか出すし!
ハルト : いや、俺も飼えな……。
桃華 : (遮る)いいのいいの!話を聞くだけしてくれればいいし!良いよね!じゃあ放課後、色々用意してからお家いくね!あ、そうだ。一時間目移動教室だから、早く用意した方がいいよ!お先に!
ハルト : え、あ、マジじゃん!なんで先いくんだよ、茨城!!って、もう居ない!!あ、やべ!間に合わないんじゃないか!?急がないと!
まあな : ちょっと、廊下は走らないで。
ハルト : すみません!
まあな : ……ん?あれ、あの子……。
放課後の家。扉を開ける音。
ハルト : ただいま~……。
酒呑童子 : ……すかー、んがっ!ん、おー、帰ってきたか。そうじゃ、お前さんの料理、なかなか美味かったけぇ!
ハルト : え、いる……!?ってか、料理?俺の……ああ、冷蔵庫に残ってたやつ?
酒呑童子 : そうじゃそうじゃ。酒が無かったのが残念なところじゃったが、少々濃ゆい味付けが儂好みでなぁ……あれならいくらでも喰えるきに!
ハルト : あ、そ、そう……まあ、一人暮らし初めてそこそこ経つしな!つ、つーか、そんなに褒めても何も出ねぇからな!
酒呑童子 : 今晩の飯は何時じゃ?
ハルト : ……七、八時くらい。
酒呑童子 : そうけ。ほんなら、もうちょい待つけぇの。
ハルト : ……自由気まま過ぎだろ。って、あ、茨城が来るって言ってたけど、普通に忘れて家に帰ってきちゃったよ。ま、酒呑童子がいる間はどうしても連れて来れないけどな。よし、飯作るか……。
インターホンが鳴る。
ハルト : ん?インターホン?こんな時間に誰だ?はーい。
桃華 : こんばんは、竜崎くん!色々持ってきたの!開けて!
ハルト : え、茨城?俺、うちの場所、教えてないはず……。
酒呑童子 : む?この気配、何処かで……?
桃華 : ふふ、ちょっと裏技があるの。両手塞がってるからとりあえず開けて~。
ハルト : 悪いが帰ってくれ。今日はどうあっても入れられない。
桃華 : なんで?私こんないっぱい、色々買ってきたのに!
ハルト : ん?うわ!な、なんだ今の音!ちょっと揺れたぞ今!
桃華 : せめてこれだけでも置いてかせて!玄関でいいから!
ハルト : ……玄関だけだからな。あとさっき言ってたその裏技のことも説明してくれ、そんな簡単にウチがバレたら怖いんだぞ。
桃華 : うふふ、分かったよ!
扉を開ける音。
ハルト : って、なんだその大荷物!?よくこんな量もてたな?
桃華 : んふ、まあね。あ、あとご挨拶しないと。
ハルト : おい!玄関だけって話だろ!おい!
桃華 : 貴方様の復活、お待ちしておりました。酒呑童子様。
酒呑童子 : ふむ、おんしは誰じゃ?気配は知っちょるが、ガワは見たことがないけぇの。
ハルト : え?なんだ?茨城が、なんで酒呑童子に……。
桃華 : 失礼致しました。では……。
ハルト : え、茨城、だよな?姿が、かわって、いく?
茨木童子 : ……ふぅ、これで、お分かりいただけるでしょうか?
酒呑童子 : 茨木童子ではないか!!久しくじゃのぅ!!元気にしちょったか!?
茨木童子 : ええ、勿論にございます。貴方様が滅された時から、いつか戻ってくると信じ、様々なものに変化して生き長らえ続けておりました。
ハルト : 茨城も、鬼、だったのか?
茨木童子 : まあそうだな。しばらく騙していて悪かった。だが、驚いたぞ私は。木曜まで何も無く、美味そうな匂いをさせていたお前が、金曜……つまり、今日突然酒呑童子様の匂いをさせてくるからな。昨日何をしていたのか問いただしてやりたいところだったんだぞ。そんなことをすれば、変な目で見られるのは当然だったからな、やめたが。
ハルト : なるほど?いや、本当はよく分からないけど。
茨木童子 : 分からなくていい。それよりも、酒呑童子様、ゆきましょう。共にまた破壊の限りを尽くしましょう……!そのためにここまで私は……!!
酒呑童子 : すまぬが、茨木童子。儂はもう少しばかり此奴から離れられんようじゃ。
茨木童子 : ……へ?
ハルト : 破壊の限りはさせないけどさ。俺から離れられないって何だよ?
酒呑童子 : そうじゃのぅ。今日、お主ががっこう?なるものに行ったじゃろ?その時になぁ……外に出る気力は回復したんじゃが、身体がどうにもうごかんでな。もしやとは思ったんじゃが……お主が帰ってきてから確信した。儂ゃ、お主から力をもろうて今ここにいる。
ハルト : だから、お前から離れた時にあんなに疲れたのか?いや、何それ怖!!
酒呑童子 : ちゅーことで!お主にはしばらく世話になるけ!お前さんの名前を教えてくれんか?儂ゃ、お主と呼び続けたくは無い。
ハルト : いやいやいや!今の話聞いてよろしくなんてできるわけあるか!
茨木童子 : なっ!なっ!!お前!!一体、酒呑童子様に何をしたァ!!
ハルト : んぐっ!く、くび、くびしまってる!
茨木童子 : そ、そうだ、お前……一体、どんな方法で酒呑童子様を蘇らせたのだ!応えろ!!
ハルト : くる、し……い、ばら、ぎ……。
茨木童子 : 答えぬのならば聞き出すまで!!
酒呑童子 : 茨木童子、ちぃと落ち着け。このままじゃ、其奴が死んでしまう。其奴が死んだ場合、儂がどうなるかも分からんけ、その手を離すんじゃ。
茨木童子 : ……っ!くっ……。
ハルト : うっ!はっ、はぁ、げほっ、ごほ、ごほ!
茨木童子 : はぁ、人は脆すぎる……手加減が難しい。
酒呑童子 : 儂は此奴に触れられんからのぅ。その感覚は分からんが。
茨木童子 : 触れられない?それは一体……と、今考えたら、貴方様が子供を喰らわないのも珍しい。なにか理由がおありなのですか?
ハルト : (荒い呼吸)
酒呑童子 : まあ、みちょれば分かる。こうやって触れるとな……む?何も無い?おかしいのぅ。
ハルト : ちょ、あ、たま、を、なで、るな!くびが、もげる!!
酒呑童子 : 昨日は触れられんでな、何故じゃろな?
茨木童子 : そもそもですが、昨日何があったのです?そこからお聞きしたいのですが。
酒呑童子 : 儂も分からん。そこは其奴に聞かねばならんな。
ハルト : は~...俺ちゃんと首ある?ある、良かった……って、ん?何だよ。
酒呑童子 : お主、どうやって儂を蘇らせたんじゃ。
茨木童子 : 私が何をしても無理だったのに、お前には出来た……何が必要だったのか言え!
ハルト : ちょ、ちょ!そんなにこっちに寄ってくるな!怖いから!話すから待てよ!あ、そうだ、茨城も俺の家がわかった理由、説明しろよ!それが条件だ!
茨木童子 : ああ、そういえばそんなことを話したな。良いだろう、とは言っても、私のようなものにしか出来ない技だからな。安心しろ。
ハルト : いや、茨城みたいなのが近くにいたことに気づいた今じゃ、安心できないっての……酒呑童子を呼び出した経緯、ね。まあ、簡単に言うと暇潰しで悪魔召喚しようとしてた。
茨木童子 : は?
酒呑童子 : うむ、やはりその”あくま”というのが分からんのぅ。
ハルト : 悪魔の話はまあいいとして、俺さ、友達なんて殆ど居ないし……親からも離れて一人暮らしだからさ、時間を持て余すわけだよ。
茨木童子 : うむ、知っている。変わり者として遠巻きにされているのもな。だからこそお前には話しかけているわけだ。
ハルト : なんだよ。俺がぼっちじゃなかったら、話しかけなかったのか?
茨木童子 : 勿論だ!私はすぐにいなくなる身だからな。あまり人に関わりたくないわけだ。
ハルト : なんか、それはそれで嫌だな。俺に近づいたのそれだけの理由なのか?
茨木童子 : いや?お前はいい匂いがすると言ったろう?もっと仲良くなったら、喰らってまた別の場所に行こうと思っていたんだ。お前はきっと、どんな御馳走よりも美味いのだろうからな。
ハルト : ……もう、二度とお前とは話さない。
茨木童子 : 安心しろ。お前を殺して酒呑童子様に何が起こるか分からない以上、手を出すつもりは無い。
ハルト : その言葉も信じられないけどな!?
酒呑童子 : そもそもじゃが、そんなにええ匂いするけ?儂には分からんのぅ……。
茨木童子 : そこも、何かあるのか……竜崎、早く続きを話せ。
ハルト : はいはい。……ネットでさ、暇潰しで調べてた時に、なんか出てきたんだよね。悪魔召喚の儀みたいな。簡単に出来る!みたいな変な見出しでね。
茨木童子 : そんなものに、引っかかったのか、お前……。
ハルト : そんだけ暇だったんだよ!!そんな可哀想な目で見るな!それに、そんだけ胡散臭ければ、デマだと思うしさ……あ、これだよコレ。この魔法陣とワインがあればできるって書いてあって……まあ、買うのも馬鹿らしいから自分で書いたんだよ。
茨木童子 : ……ああ、出てきたな。なんだこれ、本当に胡散臭い……あ、ここの字間違ってないか?魑魅魍魎の魅が、ただの鬼になっている。
ハルト : あ、面倒くさくてさ。省略したんだよね。
茨木童子 : ……呆れてしまう。馬鹿なのかお前は。
ハルト : だ、だってさ!他の字は間違ってないし!それに……ワインなんて買えないからぶどうジュースにしたけど、それ以外は間違ってないし!
茨木童子 : お前、適当にも程があるだろう。もう少し考えろ、頭を使え、馬鹿。
酒呑童子 : ……ところで、茨木童子、先程からいじっているその板はなんじゃ。ねっと、というものも分からん……儂にわからん言葉で話すのはやめろ!
茨木童子 : あ、そうでしたね……貴方様はあの頃のままですからね……その辺の説明はまた後々させていただきます。とにかく、その儀式で呼び出したのが酒呑童子様であった、それで良いのか?
ハルト : そうだよ。
茨木童子 : はぁ……もし、もしもだがな? その召喚の儀?の際に、本当に契約が契られてしまっていたのだったらだぞ?最後の”契約せん”は、契約をする、とも捉えられるはずだ。
ハルト : ……じゃあ、俺、もしかして……こいつの主?的な?
茨木童子 : 非常に遺憾だが、まあそうなるだろうな。どういう契約で結ばれているのか分からない以上、どうすることも出来ん。
酒呑童子 : 儂はなんでもいいがの。のぅ、飯はまだかぇ?
ハルト : まだまだ先だよ、ってか、本当にいいのか?俺がお前の上に立ってんだぞ?
茨木童子 : そうです!貴方様が一番上に立ち、導いてくださるからこそ、あの鬼の集は纏まっていた!
酒呑童子 : じゃが、集はもうおらんじゃろ?つまり、お前さんと此奴が居ればええ話じゃけ。それに、儂は此奴の飯が食えればそれでええ!あん頃よか何十倍もマシじゃけ……。
茨木童子 : あ……。
ハルト : え、何?そんなに飯酷かったの?その時の。
酒呑童子 : あれは、酷いもんじゃった……。
茨木童子 : それには同意しか出来ませんね……誰も、料理など出来ず……味付けなど、無いに等しい……。
酒呑童子 : ただ、そのまま食うだけよ。前はそれでも良かったがの、お主の料理を食った今じゃ、無理じゃの。
茨木童子 : 私も、人間の料理というものを知ってしまった今、あの頃のような食事は出来ません……それにしても、そんなに彼のご飯は美味しいのですか?
酒呑童子 : 儂の舌にピッタリ合う味じゃ!茨木童子、お主もきっと気に入るじゃろうて!
茨木童子 : そ、それは……!楽しみです!……仕方の無いことだ。しばらくここにいてやろう。そ、そしてお前のご飯を食べさせろ!
ハルト : いや、は?
酒呑童子 : それはええのぅ!一緒に食事を楽しもうぞ!
茨木童子 : ええ、お酒もいっぱい買ってきましたので!この時代の酒は、色々ありますので飲み比べましょうぞ!
酒呑童子 : ええのう、ええのう!楽しみじゃ!
ハルト : そのデカイ袋酒かよ!!
茨木童子 : 酒とつまみ。肉類もあるぞ。食費なら私に任せておけ。今まで貯めてきた分がある。
ハルト : 食費の部分がいいならまあいいけど……その貯めてきたって金は、どっから出てきてんのか不安だ。
茨木童子 : 聞きたいか?
ハルト : 結構だ!俺も腹減ってきた……何作ろっかな。豚肉あるし、野菜炒めでも作ろうかな。
猫 : なァん。
酒呑童子 : ……っ!お主、そこから離れるんじゃ!!
ハルト : えっ、う、わ!!
大きめの破壊音。家の一部が崩壊している。
しゅう : このまま、その少年を保護するつもりだったんだがね。失敗してしまった……すまない、まあな。
茨木童子 : 何故、ここがバレたんだ!退魔師共が……!
まあな : 別にいいわ。後からでも保護すればいいのよ。こんばんは、名前は知らないけれど……あたしが助けに来た今、怯える必要は無いわよ。一年生くん。
ハルト : お、俺の家がァァ!!ここ賃貸なのに!!
酒呑童子 : いや~な匂いじゃのぅ……敵意の塊じゃ。
ハルト : ってか、は!?どういうことなの!?あんたら誰だよ!!
まあな : 名乗るのは後!とにかく、あたしたちは味方よ!しゅう!!お願い!!
しゅう : うん、任せて。少年、私の手に捕まるんだ。
ハルト : え、はやっ……。
酒呑童子 : そう簡単に渡すわけあるかい、武器を作ってくれてあんがとさん、じゃ!ぬぅん!!
しゅう : がっ!
まあな : しゅう!!あの鬼、ただの瓦礫でアレなの!?あ、あたしだけで、倒せるの?……いいえ、まあな。やらなきゃダメよ……!
しゅう : すま、ない……少し、油断した……。
まあな : 痛みは!?
しゅう : 大丈夫だよ、私はただの式神だからね。痛みなんて無い。
まあな : っ!そう、だったわね!しゅう、もう一回!!
しゅう : ああ!!
酒呑童子 : 同じのを食らうわけ無かろうて!次こそ潰してやろうか!!
ハルト : ”駄目だ!逃げろ!!”
酒呑童子 : んぐぅ!また来おうた……!!
茨木童子 : 酒呑童子様と竜崎を守りながら戦うなんて面倒なこと出来ません!行きますよ!!酒呑童子様、その男、離さないでくださいね!!
酒呑童子 : 勿論じゃ……!
ハルト : え、ちょ、ま……ぎゃああああ!!浮いてるぅぅぅぅ!!
茨木童子 : 五月蝿い!!黙れ!
ハルト : できるかバカァァァァ!!(フェードアウト)
しゅう : ……逃げられてしまったね。
まあな : そうね、追いかけないと!
しゅう : でも、あの鬼たちを相手にするなら、私だけでは……。
まあな : 出来る!できるわ!!だって、やらなきゃ行けないのよ!
しゅう : そう、だね。大丈夫、君のことは私が必ず守ると約束するから。
まあな : ……。早く行こう。見失っちゃう前に。
しゅう : ああ。そうだね、舞明成……。
まあな : ん?何、まだ何かあるの?
しゅう : いいや、何も無いよ。あの先は森だ。天狗が居るはず。用心していこう。
まあな : 分かってるわよ。そんなに言われなくたって!早く、お父様やお兄様に追いつかなくちゃいけないの……貴方と私が凄く強いんだって証明しなきゃ!別の式神を作れなんて、言われないように!
しゅう : うん、ありがとう、そうだね。
大天狗の山。
ハルト : ぜえ、ぜぇ、こ、こわ、かった……。
酒呑童子 : ぬぅう……ああやって止められると、体が固まってしもうて……まあ、酒なら持ってきたけぇ!!酒盛りなら出来る!!
茨木童子 : あの状態でよく持ってこれましたね?いや……とくになにかを言うつもりはありませんが。しかし、まだ飲まない方がよろしいかと。
ハルト : つーか、俺ん家壊れちゃったんだけど?それにアイツ誰だよ!人ん家壊していきやがって!
茨木童子 : あれは恐らく、退魔師というものだな。
ハルト : え、タイマ?
茨木童子 : (被せ気味)やばい薬の方ではないぞ、わかっているとは思うが。
ハルト : あ、いや、うん……。
茨木童子 : 魔を退く者と書いて退魔師と読む。アニメや漫画に出てくるようなものだと考えて差し支えないだろう。
ハルト : そもそも、妖怪の時点で二次元の話なんだよなぁ、俺からすると。はぁ、どうしようかな。こんな山の中に入ってきちゃってさ……。
酒呑童子 : んぐっ、んぐっ……ぷ、はぁ!!美味いのぅ!こんな美味い酒は久々じゃあ!!!
ハルト : え、あ!酒飲んでる!こんな異常事態に!
茨木童子 : ……はぁ、飲んでしまわれましたか……。
酒呑童子 : うんまい酒は残しておくよりも飲んだ方がええじゃろ!!お主も飲め!!
ハルト : 俺はまだ高校生で、お酒は飲んじゃ行けませーん!!って歳なの!!飲めません!!
酒呑童子 : 儂の酒がのめないっちゅうんか!!
ハルト : その通り、飲めないんだよ!!NO!!アルコール!!
茨木童子 : 保健の授業で、死ぬほど見たやつ……。
酒呑童子 : ちゅうか、妙に見覚えあるのぅ。この山。なんじゃろな、どこじゃったかのぅ……。
茨木童子 : お忘れですか?貴方が良くお酒を頂きに来ていた山ですよ。だから、飲むなと言ったのです。
酒呑童子 : ああ、なるほどのぅ!ここは――
大天狗 : 大天狗の山ぞ。鬼と人の子よ。
酒呑童子 : おお!久々じゃのう!美味い酒をまた溜め込んどるんじゃないか!?
大天狗 : 久方ぶりの再会だと言うのに、貴様はそれか。そういうところは本当に好かぬ。一度去ね。さすれば、もう少しまともになるだろう。
酒呑童子 : 儂がまともじゃないって言いたいんか!?まともってなんじゃあ!!
大天狗 : こんな道端でも飲んでいるのか貴様は。最早飲むではなく、呑まれておるな。何時、貴様の首が飛ぶか楽しみにしておるぞ。早ければ早い方が良い。
酒呑童子 : 首なら一度飛んだわ!!
大天狗 : 飛んでこれか。ふむ、だからここ何百年と来んかったのか。ということは、平穏な日々が終わるとな……全く、嘆かわしいな。
酒呑童子 : なんじゃ、大天狗、貴様……戦いとうて戦いとうて仕方ないんか?仕方の無いやっちゃのう!
大天狗 : 誰がそんなことを言った。うつけ者め。
酒呑童子 : うつけ者じゃと!?貴様の羽を全てむしり取っちゃるけ、そこで待っとれ!!
大天狗 : そんな物言いをされて待つものがどこにおる。そんなんだから、うつけ者と呼ばれるのだろう。
酒呑童子 : そんな呼び方しちょる命知らずはお前だけじゃ!
大天狗 : む?ところで、このいい香りの正体はそこの子か?ふむ、我への献上物か?貰い受けはするが、そんなもので許せるほど、貴様らの罪は軽くないぞ。
茨木童子 : そうでは無い。退魔師に追われていてな。命からがら逃げてきたところだ。
大天狗 : 何?貴様らが命からがら?なんだその面白き話は。是非詳しく聞きたいところだな。貴様らがそこまで弱ったのか、退魔師が強くなったのか。確認してくれてもいいのだぞ?
酒呑童子 : 儂を無視するな!!木の上から引きずり下ろしちゃる!!!
茨木童子 : そんなことをしても、メリットがあるのは貴様らのような関係の無い妖だけだろう。
大天狗 : なんだめりっと、とは?人間に染まったのか、そこの鬼は。確かにそうなれば、弱くなるのも当たり前か。
ハルト : な、なぁ、茨城。アイツは?
茨木童子 : この山の主、大天狗だ。天狗は聞いたことあるだろう?あれの支配者と呼べるものだ。
ハルト : 天狗の、支配者……大天狗……何それ、カッコイイ……。
大天狗 : ふっ、だろう?人の子はよく分かっているようだな。其奴らを捨てれば、我が貴様を大事に育ててやるが?
茨木童子 : 辞めておけ。あれの大事は、食料としてだ。
ハルト : あ……や、やめておきます。
大天狗 : 何だ、貴様もその程度か。まあ良い。馳走を作る際に攫えばよかろう。
ハルト : ねぇ、怖いこと言ってるよ。大天狗。
茨木童子 : 妖とはそういうものだ。信頼しない方が良いぞ。
ハルト : ……そうだな。
茨木童子 : おい、何故離れる。
ハルト : いや、お前も妖じゃん。
茨木童子 : ……お前なんぞ食わん。
ハルト : 酒呑童子との繋がりがあるからだろ?
茨木童子 : 否定はしない。
ハルト : やっぱり妖は信じられない。
茨木童子 : 安心しろ、人間も似たようなものだ。
ハルト : ……もう何も信じられない。
大天狗 : だから、我ならば……ぬぉ!?
酒呑童子 : やぁっと捕まえたけぇ、覚悟せい!!うおおおおぉ!!
大天狗 : こら、羽を掴むな!!おい!!あああああ!!!我の羽を抜くなこの鬼風情が!!!!
酒呑童子 : 儂をうつけと呼んだ罰じゃけ!!
大天狗 : ぐぁあああ!羽がァァァァ!
茨木童子 : 五月蝿いな、あの人ら。
ハルト : ほんとにね。
猫 : みゃあん。
ハルト : え、今……?
茨木童子 : な、んだ、この気配……。
大天狗 : む、嫌なものの香りがするな。鼻がひん曲がりそうだ……酒呑童子!!貴様、もう退かんか!!まさかこの気配が分からぬとは申すまいな!?
酒呑童子 : ああ!?知らんが!!そんな知らんもんよか先に、お主の羽を全部毟るんじゃあ!!
大天狗 : これだから貴様は嫌いなんだ!!!この気色の悪い気配が三もあると言うのに、分からぬなど役立たずにしかならん!!退け!!!
酒呑童子 : うっわ、落ち……うおおおおぉ!!頭打ったんじゃあああ!!いてぇぇぇえ……。
大天狗 : ふん……。それにしても、我の山を穢す気ならばただでは返さん。
茨木童子 : ……。
酒呑童子 : なんじゃなんじゃ……そんなに気を張って、どうしたんじゃ?茨木童子?
茨木童子 : いいえ……追ってきた、だけです。
酒呑童子 : 追ってきた?あの小娘かぇ?
ハルト : わあ!また逃げなきゃじゃん!?
大天狗 : なんだ、此奴らから逃げてきたと?……まあ、わからんことは無いな。此奴らは、随分と嫌な気配を持っておるからの。
酒呑童子 : そうけ?儂にはわからんのぅ……。じゃが、この足音だけは聞こえるがの。
まあな : しゅう!!!
しゅう : ああ。君はこちらだよ。
ハルト : なっ!また急に!!ちょ、掴むな!!
酒呑童子 : なっ!お主……な、名も知らぬ者よ!!
ハルト : なんだその呼び方ぁぁ!!
しゅう : やっと保護できたよ。まあな。
まあな : そうね。良かったわ……というか、一人増えて……あ、待って、アレって……!!
しゅう : 大天狗、だね。
大天狗 : ふむ、我の名は人間達まで轟いているようだ。
まあな : さ、三人も相手に……しゅう……。
しゅう : ああ、少し、厳しいかもね……しかも、鬼二人に大天狗一人……やれるだけ、やってみるかい?
まあな : っ!駄目、無理、だわ!しゅう、あたしじゃ……!一回、家に帰って……!
しゅう : でも、逃げる暇なんてなさそうだよ。大天狗はいいにしろ、あの鬼二人は殺しに来るかもしれないよ。
ハルト : ちょ、やめろ!やめろって!攻撃とかしなくていいから!
まあな : ……は?
しゅう : ……暴れないで。落としかねないから。
ハルト : 敵対する気は無いから!!
まあな : え、何、言ってるの?よく、分からないのだけど……。
しゅう : 彼らから、一体何を聞いたんだい?そもそも……。
ハルト : これには、実は事情があって……正直、俺もよく分かってないんですけどね?
まあな : ……よく、分からないけど……何か、脅迫されているとか言うわけじゃないなら、いい、のかな?
しゅう : ……良くは、無いだろうけど、まずは確認を取らなきゃいけないね。とりあえず、下ろすよ。
ハルト : あ~、ありがとう。良かったぁ……なんか、よく分かんないけど、上手く落ち着けそうで良かったよ。
酒呑童子 : なんじゃ?戦わんのか?
茨木童子 : まあ、良かった……のでは無いでしょうか?久方振りの戦となりましょう?であれば、身体も鈍ってしまっていることでしょうからね。
酒呑童子 : 身体をあっためるにはちょうどええかとも思ったんじゃがのぅ。
大天狗 : お前達、本当に気づかんのか?もう一つ、ずっと気色の悪いは気配があると言うのに……はぁ、これだから嫌なのだ。
酒呑童子 : そういえば、お前、言っちょったなぁ?気配が三つとなァ……儂には一つしか感じとらんかったがの。
大天狗 : 貴様は、本当に強い者しか興味を持たんな。いつか身を滅ぼしても知らんぞ。
酒呑童子 : そんな簡単に身は滅ばん!儂ゃ、そんなに弱うないからの!
大天狗 : 要らぬ心配だったな。
茨木童子 : ……っ!な、ん、だ……この、嫌な気配は!!
しゅう : はっ!まあな、早くこっちへ!
まあな : え、何!?急に!!
ハルト : え、何?みんなどうしたの?何も変なことなんて……
猫 : にゃァん
まあな : え、猫?
しゅう : 駄目だ、まあな。あれは……あれは、近づいては行けない!絶対に!
まあな : しゅう?あれ、ただの猫じゃない……の……?
ハルト : あ、茨城の猫じゃん。茨城~!ここまで追っかけてきてる……いばら、ぎ?
茨木童子 : ……わ、たしは……あんな、得体の知れないものを連れていたのか……何年も、何年も……。
酒呑童子 : がはは、彼奴じゃのぅ!儂が感じちょった奴は!そんな小さいガワなんて捨てて、本性を見せてみぃ!
猫 : みゃうん
ハルト : なあ、皆してなんでそんな反応してるんだよ。可哀想だろ。ほら、こっちおい、でぇっ!!
茨木童子 : やめろ!!死にたいのか!!
ハルト : 急に引っ張るなよ!!びっくりしただろ!?腕いってぇし……。
猫 : にゃぅ……に゛ゃ、ぁ、う゛ぅん……
しゅう : まあな!!見るんじゃない!!
まあな : なんか、変な音がする……しゅう、しゅう!
ハルト : ヒッ!な、なん、なん、なんだよ……形が、変形してく……猫の、かわ、が……!
茨木童子 : っ!あ、れは……
九尾の狐 : はぁ……一人くらいはつられてきてくれると高を括っていたが、まさかバレるとはの。
茨木童子 : 九つの尾に、黄金の毛色……九尾、か!!
九尾の狐 : お、そち、妾を知っておろうか。褒めて遣わす。……ふむ、誰かと思ったら、お主。妾を目掛けてくれた女子か。小物では無いと思ってはいたが、まさか鬼とは思わんかった。その姿も美しゅう。妾の世話をするには十二分じゃろう。
大天狗 : 貴様か……!この山に異様な空気を呼ぶ者は……!我の山を穢す気か?
九尾の狐 : 嗚呼、大天狗様。妾の目的はそこの男子と女子を喰らう事にございます。暫くぶりの食事に勤しみたく……どうか、ご慈悲をいただけないでしょうか?
大天狗 : ……ふむ。
九尾の狐 : もし妾が二人を喰らえた暁には、宴会での盛り上げ役をさせていただきましょう。妾とて、大妖怪の端くれ、綺麗な女子にも、秀麗な男子にも化けられる自信がございます。
大天狗 : それだけか?
九尾の狐 : いいえ。献上物も御用意致します。一度だけではございませんし、良い物を選ぶことをお約束いたします。どうでしょうか?
大天狗 : ……。
九尾の狐 : 貴方様の嫁……もしくは婿になれますが?
大天狗 : 今は要らぬ。だが、献上物は年に一度、三十年。
九尾の狐 : 感謝致します。
茨木童子 : 大天狗!!
大天狗 : 悪いが、我は貴様らに迷惑をかけられた覚えはあっても、手を貸す義理はない。
酒呑童子 : まあ、ええじゃろ!肩慣らしじゃ肩慣らし!
しゅう : まあな、下がって!
まあな : しゅう、やっぱり帰ろう!お父様にこの話……!
しゅう : 逃げられるなら、そうしたいところだけど……あの九尾から逃げられるとは思えない……鬼二人だけなら、私も一緒に逃げられたけれど......今回は、私の囮ありきだね。
まあな : そんなの許さない!一緒に帰るの!!もう何年も一緒にやってきたでしょ!?
しゅう : ありがとう……でも、私はただの式神だよ。使い捨てなんだ。
まあな : そ、そんなの絶対許さない!!貴方には自我があるんだもの!使い捨てなんて絶対にしない!一緒に帰るの!
しゅう : うん……ここを乗り切れたら、帰ってもう一度話そう。
まあな : 嫌よ!だめ、行かないで!!
九尾の狐 : 鬼二人に変な紙が一枚。さらに、鬼の片方は、酒呑童子と……妾に勝てるだろうか、不安じゃ。
酒呑童子 : まさか、こんなに唐突に九尾と戦うことになるとは思わんかったのぅ!お前さんから来ぃや!!
九尾の狐 : 野蛮じゃの。妾の美しゅう身体に、傷を付ける気なんじゃからな。そんなことは許されぬぞ?じゃが、お主は面倒そうじゃの。仕方の無いことじゃ。
酒呑童子 : がははは!!その意気じゃ!!ふんっ!!
九尾の狐 : 木を抜きおった?はぁ、力だけの者はこれだから嫌なんじゃ。妾のように美しゅう生きることを知らぬ……。さっさとその息の根、止めてやろう!
酒呑童子 : 早いのぅ、早いのぅ!!じゃが、それだけじゃのぅ!!オルァ!!
九尾の狐 : ふん、動きが単調じゃ。読みやすい。
酒呑童子 : がァっ!いっ、たいのぅ!(背を蹴られ)何をしおるか!!
九尾の狐 : お遊戯じゃないのじゃぞ?何を馬鹿なことを……。
しゅう : 助太刀いたす!
九尾の狐 : ん?ふふ、愚かじゃな。気づいておらんと思うか?
しゅう : 上に避けられ…っぐぁ!(背に乗られ)
九尾の狐 : 式神の背は乗り心地が悪いの。もう少し踏みやすくした方が良いのではないか?
酒呑童子 : ふん、ぬぅうぅう!!(大木を振り回し)
九尾の狐 : はぁ、やはり単調。面白くもなんともない。
しゅう : っが、はっ!!(酒呑童子の大木が当たる)
酒呑童子 : そんなところにいるから悪いんじゃ!何故そこにおる!!
しゅう : 貴方だけでは無理だろうから、手を貸しに来た、んだ……私が式神でなかったら危ないところだよ?
酒呑童子 : 知らん!!儂は儂の好きに戦うんじゃ!!貴様、邪魔するんなら貴様から相手しちゃる!!
しゅう : そんなことを言ってる場合じゃないだろう!?今は九尾を先に!
九尾の狐 : 妾抜きで盛り上がってもらっては困るのじゃが?
しゅう : いつのま……っ!!(鳩尾を蹴られ)
酒呑童子 : はっ!余裕こいてるからじゃ……どぅ!!(足払いをかけられ)
九尾の狐 : なんじゃ。ただのお遊びかの?妾を馬鹿にしておるのか。
茨木童子 : ふー……竜崎、あの退魔師の女と下がってろ。私たちがあれと戦うのに邪魔だ。
ハルト : は!?でも……!
茨木童子 : 正直、酒呑童子様よりもアイツの方が強い……しかも、身体が鈍っている酒呑童子様には荷が重い。だから私と、あの退魔師の式神?と言うやつでどうにか止める。もし、無理そうだと判断したら逃げろ。
ハルト : いや、でもさ!
茨木童子 : でもじゃない。お前ならば、私たちを生き返らせられるかもしれないから言っているんだ。もしダメだったら、最初と同じことをしろ。最悪、私はいい。
ハルト : なんで、そんなこと言うんだよ……!
茨木童子 : ……もう少し、聞き分けよくなってよ。竜崎くん。(一瞬だけ桃花に)
ハルト : いばら、ぎ?
茨木童子 : 頼んだ!
ハルト : ……っ!ああ、畜生!なんだってんだよ!!もう!!
まあな : だめ、だめ!しゅう、逃げるの!!あたし、貴方が居なきゃ戦えないの!
ハルト : おい、落ち着けって!
まあな : 落ち着けるわけないでしょ!?しゅうは、あたしの小さい頃からずっとそばに居る親友なの!!いなくなってほしくないの!!邪魔しないで!!
ハルト : じゃあここで叫んでいればどうにかなるのか!!?
まあな : っ!!でも、でも、これしかあたし……!
ハルト : 俺は、こんなことになったのは初めてで、本当に何も分からないんだよ……!だから、お前にしか頼れないんだよ!
まあな : っ!
ハルト : 俺はさ、アイツらと会って、たった一日しか経ってない……でもさ、知っちゃったんだよ!アイツらだって笑うし、怒るし、楽しむんだって!人間と同じなんだって……!たった一日でって、言われるかもしんないけどな!それでも、俺は……初めて人に囲まれて楽しかったんだよ!だから、手を貸してくれ!アイツらの手助けをするために!!
まあな : 手助け……?
ハルト : そうだよ!
大天狗 : まるで子供の癇癪だな。騒がしいったらありゃしない。
ハルト : 大天狗……!
大天狗 : 我からすれば、どちらが消えても構わん。どちらにしろ、貴様を喰らうのは我だからな。だが、あまり感情的になられすぎると、肉が不味くなる。
まあな : じゃあ!
大天狗 : 我は手を貸さんがな。
ハルト : はぁ!?じゃあなんで降りてきたんだよ!
大天狗 : 手は貸さんが、知恵くらいなら貸してやろう。その小指一本と交換だがな。
ハルト : こゆ……!
まあな : え、だめだよそんなの!そこまでする義理ないでしょ!?あたしたちは、自分で考えるからあっち行ってよ!
大天狗 : 退魔師の娘。お前には聞いていない。黙っておれ。
まあな : はぁ!?冗談じゃないわよ!頭おかしいんじゃないの!?
大天狗 : 我は妖だからな。人間と考え方が違うのは当たり前のことだろう。
ハルト : こゆ、び……。
大天狗 : 情なぞその程度だろう。余計なことを言ったな。
ハルト : いい!!小指くらい!!
まあな : は!?貴方正気!!?
大天狗 : ほう……。
ハルト : 今、ここでアイツらを見殺しにしたら後悔すると思うんだ……!
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ハルト : なんでって言われたら、分からない……けど、俺はアイツらに生きていて欲しいんだよ。
大天狗 : ……フッ、その目は本物だな。約束だ。この小指は我のだ。せいぜい可愛がっておくといい。
ハルト : え、今じゃなくて良いの?
大天狗 : ああ。まだ時期尚早というやつだ。食べ頃にはまだ早い。
まあな : 君の小指に変な紋様が付いてる。
大天狗 : それが我との契約の証よ。さあ、知恵を貸してやろう。九尾の狐は元より、気に食わなかったのだ。
まあな : ……。
ハルト : 早く。俺はとっくに覚悟ができてる。
ところ変わって酒呑童子ら。
茨木童子 : うっ!!くぅ、やはり、お強い……!(突風に充てられて)
酒呑童子 : ぬぉお!蹴りだけでなく、妖力も扱いよるのか!面倒じゃのぅ。(突風に充てられて)
しゅう : 先程まで楽しげに戦っていた方が何を言う。
九尾の狐 : そろそろ面倒になってきたの。まだ戦うのか?今なら見逃してやるが?人の子二人を置いていけばの。
しゅう : それは無理な相談だね。私は彼女を守るために生きている。
酒呑童子 : 儂もそれは無理な相談じゃぁ!理由は言わんがの!
九尾の狐 : はぁ、そんなに早く消えたいというのじゃな?仕方の無い奴らよの。では――
ハルト : ”力のままに、災いを振りまく者よ”
九尾の狐 : っ……。
酒呑童子 : お?なんじゃ?動きが止まったのぅ。
まあな : ”世の理を乱し、破滅へ導く者よ”
九尾の狐 : なんじゃ、これは……?妾の体の妖力が……?
ハルト : ”許されざる者には罰を”
まあな : ”力の役割に従えぬ者には罰を”
九尾の狐 : 彼奴らのせいか!?妾に何をした!嗚呼、蓄えた妖力が、抜けていく!そんな、そんな……!
ハルト : ”心を開き、循環させよ”
まあな : ”邪心を退き、天と愛に裁かれよ”
しゅう : あんな呪文は聞いたことがない……!まあな!?
酒呑童子 : 茨木童子、あれは何を言っちょるんじゃ?
茨木童子 : 分からないですが、九尾の狐の動きがほとんど無くなりました。私たちには影響も無いようですし、大丈夫だとは思いますが……。
ハルト : ”始まりにて全てを正せ!!”
九尾の狐 : ああ、わらわの、妖力が……忌々しい!小童どもが!死に晒せ!!
しゅう : っ、まあな!!
まあな : ”天と地の繋ぎ目より、調和、す”……?
しゅう : ……っ!!
九尾の狐 : いやぁあぁぁぁぁ!!
酒呑童子 : む?九尾の狐が縮んで、小狐になってしもうた!狐のつまみはあったかのぅ。
茨木童子 : 私には思いつきませんね。
ハルト : 良かった……上手く行きましたよ、大天狗さ……
まあな : (遮り)え、しゅう!?しゅう!?あっ、そ、そんな……!式神がやぶけてる!しゅう!だめ、消えないで!お願い!
しゅう : ふ、ふふ……ようやっと、私の、一人目の役目は終わったんだ。まあな、式神とはこういうものだよ。こうやって失い、枚数を増やして強くしていく……お父様は、それを知って欲しかったから、貴方に私を作らせたんだよ。
まあな : ああ!どんどん薄くなっていく……!やめて、やめてよ!帰ってきてよ!だめ!くっつけたらどうにか……!
しゅう : 大丈夫、あなたならもっと強い式神が作れるから。そして、使いこなしていって。私の願いはそれだけ。
まあな : 嫌だ!嫌なの!あたしは貴方じゃなきゃ……!
しゅう : ふふ、そう言ってくれるだけで、私が存在した意味があったってものだよ。ありがとう、まあ、な……。(消える)
まあな : しゅう!しゅう……いや、いや、いやぁああああ……。
大天狗 : ふむ、まあ……仕方の無いことだな。百を助くために一を犠牲にする。あって当然の事象だ。
ハルト : ……。
大天狗 : それでは、我は食べ頃の時期に顔を出しに来よう。またの。
ハルト : ……。帰ろう、皆で……。
モノローグまで少々間。
ハルト(M) : そうして、その日は退魔師もとい阿部舞明成の家に泊まることとなった。家が酷い状態だったし、当たり前だが……家の弁償もしてくれるという話だったので、そのまま甘えることにしたのだ。
初めて会った舞明成の父親には、開口一番に「お前も退魔師になれ」と告げられた。まあびっくりはしたけれど、酒呑童子と茨木童子のこともあったし……と二つ返事で承諾。
するとびっくり!あれよあれよと引越しさせられ、一つ年上の舞明成とも共に住むこととなってしまった……正直、自分でも何を言っているか分からないんだよなぁ……。
ああ、そうだ。みんな気になっているであろう、舞明成の事だけど、まるで死にそうな程に落ち込んでいた娘を見て居られなくなったんだろう。父親のアドバイスに則り、式神の一番大事な一文字を他の人型の紙に貼り付けて”しゅう”を取り戻していたよ。
まあな : しゅう、しゅう、なんだよね?
しゅう : そうだけど、まさかここに戻ってこられると、はっ!び、びっくりした。急に飛び付かれたら反応できないよ。
まあな : 馬鹿!馬鹿馬鹿!もう居なくなったりしないでね!約束だから!!
しゅう : ……ふ、ふふ。甘えんぼだね、まあな。よしよし。
ハルト(M) : ああ、あとは、茨木童子は茨城としてまだ学校にい続けることにしたってさ。九尾の狐も、妖力が溜まるまで小狐の姿から変われないらしくて……小狐のまま、茨城に着いてってるよ。猫が狐に変わったくらいで、あんまり変わらないけどな。
茨城桃花 : え?だって、もう離れる理由無くなったし?それに、高校が終わったらもう化けないからそれくらい許してよね。
九尾の狐 : まあ、わるくはないぞ、このせいかつも。わらわがようりょくをためて、だいようかいにもどるまでの、ひまつぶしじゃ。
ハルト(M) : 他に話すことか……あれ以来、大天狗はよく俺に会いに来るよ。他のやつにマーキングされたら腹が立つってさ。訳わかんないよな。
大天狗 : 我が喰らう予定の身体だからな。勿論大事にしてもらわねば困る。それに、成長過程を見るのだって、喰らう者の仕事だろう。
ハルト(M) : そして最後。酒呑童子には名前を教えて、ハルトって呼ばれることになったよ。
酒呑童子 : お前さんの名前、未だに知らんのじゃが……何時になったら教えてくれるんじゃ?
ハルト : あれ、そういえば言ってなかったっけ?俺は竜崎遥斗だよ。
酒呑童子 : りゅうざきはると?じゃあ、はるとでええな!呼び方が楽になるけぇ!
ハルト : はると、はるとね……なんか、むず痒いわ。
酒呑童子 : 何故じゃ?
ハルト : ……あんまり呼ばれたことないからさ。友達もいなかったし、両親も名前呼ばない人だったし。
酒呑童子 : ほうか。儂がその分いっぱい呼んじゃる!楽しみにするんじゃな。
ハルト : へ、あ、はは!ありがとう。じゃ、よろしく!
ハルト(M) : そうして、俺が退魔師を名乗るまで……まだまだ長い道があるけれど、そこはまた別の話にしておこう。まだ聞けてないこともいっぱいあるしな!
それではこれにて、『俺が退魔師を名乗るまで』……閉幕。
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