ガーデン・オブ・ガーディアン 〜Forbidden flower garden〜

サムソン・ライトブリッジ

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~二章 献身の聖女編~

七話 明確なる敵

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「中々、思うようには情報が掴めないな」

「でもこの町の芸人さんが無実であることは分かったんだから前進だよ。それとお父さん。あんなに人を恐がらせちゃ駄目だよ! 次にあんなことしたら嫌いになっちゃうよ!」

「そ、それは嫌だ……! サビオラに嫌われるくらいならパパは……」

 お父さんはぐしゃりと膝を落とした。

「お、大袈裟だよお父さん。大丈夫だよ、嫌いにならないからもう人を威圧するのはやめてね」

「──俺の娘はなんて良い子なんだ……ッ! 街中の人々にサビオラの素敵ポイントを伝えてあげてえよ……! 」

「やめてよ! 恥ずかしいよ!」

 親馬鹿な会話をしつつ、大通りを下る私達はひとまず酒場へと足を運ぶ。

 情報を集めるために、片っ端から色々な人に生誕祭の様子や怪しい人物を見なかったかと尋ねるも、それらしき情報は無く時間ばかりが過ぎ去る。


 夕方になる頃には人通りも減ってきた。これ以上の情報収集は徒労に終わるのが明白だと思い、仕方なく私達も宿へと帰ることにした。


「結局……一日中歩き周ったけど何も情報は手に入らなかったね」

「生誕祭の日はみんな酒を飲んで浮かれているからな。多少怪しい奴見たって誰も気にも止めないだろうよ」

「唯一の手がかり……と、言っていいのかわからないけど芸人さんが言ってた事がちょっと気になるくらいかな」

「変な仮面被った芸人だろ? だけどそんな奴も特に珍しくねえからなあ。芸人なんて言ってみればみんな変な奴だしな」

「うーん……。困ったね。明日からどうすればいいんだろう……」

 宿へと向かいながら二人は首を捻らせた。仮に誘拐犯がいたとして、何故に人を拐うのか、目的もわからなければ行方不明者の法則性も無いし、手段も謎に包まれている。

 モヤモヤとした感情を抱きながらくれないに染まりゆく町を歩いていると、ふと横目についた路地の奥に何か動くものが見えた。

 私は離れたそれに目を凝らすと、それが帽子だとわかった。その帽子は赤と黄色の目立つ色をしたものである。その帽子を被った何者かが、路地の奥に消えていったのだ。

「お父さん! いま赤と黄色の帽子を被った誰かがこの先にいたわ! もしかして、いなくなったマッシモ君じゃない!?」

「なに!? よし! 追いかけてみよう!」

 私達はその何者かを追うように路地を駆けた。路地の奥を抜けると、こじんまりとした通りに出る。

「──あれ? いない──?」

「! サビオラ! 階段の上だ!」

 お父さんが通り沿いにある階段の上を指差すと、ちらりと帽子の先が見えた。私達はそれをまた追いかける。

「はあ、はあ。どっちにいったの」

「くそ! 何てすばしっこいんだ!」

 また何者かを見失う。すると視界の端にまたまた赤と黄色の帽子がこちらを誘うように十メートルほど離れた道の角へと消えるのが見える。

「こんどはあっち!?」

「野郎! おい! ちょっと待て!」

 こちらの呼び掛けを無視する帽子は、あっちこっちに現れては消える。まるで私達を翻弄しているのか、それとも誘導をしているかのように何者かはどんどん私達を町の中心地から遠ざけた。

 そんな鬼ごっこを続けていると、気づいたら私達はいつの間にか町の外へと来ていた。


「はあ、はあ、はあ。疲れたよお……」

「だーー!! どこ行きやがった!? こんな何も無い所まで連れて来て俺達をおちょくりやがって!!」

 町の外の平野にお父さんの怒号が飛び交う。確かにあの帽子はこちらに来ていた筈なのだが、その姿は見えない。夕日も段々と沈みゆく──その時であった。


「そろそろ鬼ごっこもおしまいだ」


 急に何者かの声が聞こえた。それは私達の後ろから聞こえる。

「誰だ!?」

「えっ、後ろ!?」

 私とお父さんは同時に振り向くと、そこには赤と黄色の帽子を手に持った眼光の鋭い男の人が立っていた。

 巻き貝のようにまるまった緑の髪の毛に、風通しの良さそうな服を着た軽装の男性。でもそんな彼を見て私は何かとても嫌な感じがした。言葉では無い、気配で感じる何かドス黒いオーラというか、明らかな敵意を感じるような人だ。

「誰だお前は、何者なにもんだ」

 お父さんが目を尖らせて、ジロリと見る。

「──君達だね……。行方不明者を一生懸命に探してるって言うのは」

「えっと──、私達ブンデスの街から来た者です。この町で行方不明が出たと聞いて、その調査に来ました。それであなたの持ってる赤と黄色の帽子を被った子供を探していてですね、何かご存知ないですか?」

 私は何か険悪な雰囲気を察して、物腰を柔らかくするように話しかけた。

「……ふーん。そうか、じゃあ君達がブンデスで神父から依頼された『"逸脱"』の親子か」

「えっ!? 私達を知ってるのですか?」

「おいおい。俺達が逸脱ってことも知ってるのかよ。あんた何者だ──」

「ああ、よく知ってるよ。だってこの人に聞いたからねえ」

「え?」

 彼はそう言うと、手に持った赤と黄色の帽子から丸い何かを取り出した。その丸い何かは彼の影になってよく見えない。だが──紅い夕日がその何かをゆっくりと照らしてくれた。


「……なっ──!!!!」

「え────」


 赤く、紅く、朱く染まった丸いものは、私達のよく知る人物──パウロ神父の"頭部"であった──。






「自己紹介が遅れたね。俺は余計な事を詮索するお前らを殺しに来た使者。セントミカエル教団が影の暗部、"裁きの門ゲート・オブ・ジャッジメント"の一人『音速のキエーザ』だ。さあ、どちらから首を落としてやろうか──」



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