ガーデン・オブ・ガーディアン 〜Forbidden flower garden〜

サムソン・ライトブリッジ

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~二章 献身の聖女編~

二十八話 終わりの音

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「でたらめだ! サビオラ、こんな馬鹿話しに付き合うな──!」

 お父さんが立ち上がり叫ぶと、彼は哀れなものを見るような目でこちらを一瞥する。

「やれやれ。わからぬ人ですな。やはり天然ものの逸脱は思考が違うようだ。ですが、別に理解をして貰う必要は無い。ここで絶えゆく諸君らには関係の無い話しでしたな。──そろそろ終わらせましょうか。終幕は少々派手にいきますよ」

 恐ろしき音がまた飛んでこようとしていた。お父さんは私の手を握ると、意を決した目でこう言うのだ。

「サビオラ──。パパに力を貸してくれるか?」

「──もちろんだよ。ここで、こんなところで私達は負けられない……!」

「流石は俺の娘だ──!」

 私はお父さんの大きな背中に乗る。その見た目はまるで幼き日を思い出させるかのように、父が娘をおんぶする姿だ。

「最後は父娘一緒で死にたいのですかな?」

「ぬかせ。これはてめえをぶっ倒す最終形態だ」

「……面白い。ならばみせて貰いましょう。この最終楽章で終幕です! 『死の旋律デァ・トート・メロディ』!!」

 ──ソルダーノは踊る。それは見事なタップダンスであった。手から、指から、地を踏む足から出される旋律。軽やかな流れ、刻む音の波が衝撃波と真空の刃となってその戦い、命と言う演目を締めるように私達にむかってきた。

「うおおおおおおおッッ!!」

 一撃で昏倒するような衝撃が父の身体を打ち、全てを切り裂く刃が肌を削るようにして血を溢れさせた。

「耐えて……! お父さん……! 『献身の治癒オーバー・ヒール』!!」

 私は背中越しにその父にかかるダメージを感じながら、必死に力を使って全力で治す。これは肉を切らせて骨を断つ──捨て身の作戦であった。

「ふははははは! 何かと思えば実に愚直! ですが嫌いでは無いですよ! そうです、そうですとも! 散り際はたくましく、美しく! 父娘共々仲良くその姿のまま立ち往生といきましょう!」

「ぐお……! うおおおッ……ッ!! 痛く、ねえぞおおおおッ!!」

 一歩、また一歩と衝撃の嵐の中を敵に向かって進む。気をぬけばすぐにでも待ち構える"死"。私の治癒と敵の旋律、どちらが速いかの勝負である。

「いつまで耐えれる? どこまで進める? 死はもう、すぐ隣にある! あなたの命の輝き! とても痺れますねえ!」

「ぬ、お、お、お、お、ッッ!!!!」

「頑張って……! お父さん……!」

 伝わる振動が私を振り落としそうになる。だがその度に、私はお父さんにしがみついて離れまいと力をこめた。

 勇む足はあと一歩で手が届きそうな距離だ。あと一歩、この一歩で決着がつく。私も、お父さんも限界ギリギリのところ──ついに、その最後の一歩を大地に着けた──!

「よく、ここまで来ましたな」

「ぬうううおおッ! おおおらあッッ!!」

 豪腕が唸る。大砲のような拳が敵の顔面をとらえようとした──

「──残念! そんな遅い攻撃を受けるわけにはいきませんね」

 そう言って、ふわりと、敵は後方へと跳ぶのだ。それは私達のここまでの作戦と行動を嘲笑うかのように無駄にする。万策は尽きた。もう勝ち目が無いと誰もが感じた。敵はいやらしく笑みを見せ──勝利を確信するのだ──。



「──甘いぞ……ソルダーノ……!」

 ガッシィッ!



 ──その敵の行動を見透かしていたかのように、マルセロさんが白い足を捕まえていた。

「!? まだ動けたのか!?」

「スタムさん!! これを!!」

 片手で自分の魂ともいえる剣を投げる。ヒュンと空中で剣が円い軌道を描いて父の元へと飛んでくる。そして父は──その千載一遇の勝機をキャッチするのだ──!

「でかしたァッ!! おおおおッッ!!!!」

「くっ! 『刃のクリンゲ』──」


 ズバァァッッ!!!!


 万力によって振り下ろされた剣は、ソルダーノの胸を大きく裂いた──。

「──Großartigグロースアーティッヒ(素晴らしい)」

 そんな皮肉を言いながら、白いタキシードは血に塗れてその身体を崩れさせた。

「──か、勝ったの、か……」

 お父さんは山が崩れるように倒れる。マルセロさんもその決着を見届けるとガクリと意識を落とした。

「お父さん! マルセロさんも今治します!!」

 まだ僅かに残った力を振り絞るよう、私は二人を精一杯に治癒をする。──すると、

「いいものを……見せてもらった……」

「!! あなた──まだ……!」

 ソルダーノが虫の息でこちらを向いて話しかけてきたのだ。

「安心……したまえ……。私は、もう……死ぬだろう……。その前に──最初の問題の、答えを聞こう……」

「最初の問題……」

 彼は真剣な目であった。私は、その問題の答えがまだわからない。

「時間切れだ……。……逸脱は、みな約束の地へと、目指してるのだよ……」

「約束の地……?」

「そうだ……我々は本能で、無意識に、みな……運命に翻弄されるよう……『禁断の花園・・・・・』へと向かって、いるのだ……。それが、答え……。私も──行きたかった……な──」

 ソルダーノはそう言いきり、その息を引き取った。

 "禁断の花園"──。それは、伝説に語り継がれる場所……。彼が言った意味を、今の私に理解はできない。


 鳴らす音は鳴り止んだ。それは決着の音、静寂なる音であった──。





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