ガーデン・オブ・ガーディアン 〜Forbidden flower garden〜

サムソン・ライトブリッジ

文字の大きさ
113 / 157
~三章 復讐の乙女編~

三十九話 残された衣服

しおりを挟む

 村での探索は夜まで行われた。──しかし、隅から隅まで特に異常も無く、見つかった衣服も見させてもらったが何の変哲もない。私達のヴァスコ村とその状況は変わらず、何の証拠も見つからない。犯人はその足取りを完璧に消しているのだ。

「……どうヴィエリィ? 何かわかったぁ?」

「……駄目ね。話しとかも色々聞いてみたけどさっぱりだ」

 がくりと肩を落として私達は地面に座り込むと、すっかりと暗くなった夜空の星々を眺めて渋い顔をした。

「オツカレサマデス。二人共、ドウデスカ」

 サンゴーがガシャリと足音を立ててこちらにやって来ると、私達は首を振った。

「サンゴーは何かわかった?」

「私ハ、残サレタ衣服ヲ主二調査シテマシタ。コノ衣服、争ッタ後ヤ血痕ガナイデス。マルデソノ場デ消エ去ッタ様ナ奇妙サヲ感ジマス」

「考えたくないけど人を消し去る能力……そんな危険な奴かもしれないわねぇ……」

「……マイナスな考えはよくないわ。それに消し去る能力があったとしても、それを元に戻す能力だってあるかも知れないわけだし。とにかくブリガディーロ遺跡の方に行ってみましょう。何かわかるかも知れないわ」

 私は立ち上がって明後日の方向を向いて歩き出す。するとバラコフは慌てて立ち上がった。

「ちょっとちょっとぉ! 今日はもう日も落ちたし無理よぉ! それにあんた遺跡の方角もわからないでしょ!」

「はっ そうだった……。ついつい身体が動いてしまった……」

 バラコフの言葉に私は勇み足を止めると、彼は呆れた顔で汗を拭った。

「みなさんお疲れのようですな。あちらに空き家があるのでお使い下さい。ある程度の物は揃っておりますよ」

 ひょこひょこと歩いてきた老人がこちらを労うようやって来てくれた。私達は顔を合わせると一息もらすと空き家の中へと入って行き、疲れた身体と脳を休めたのであった──。






────────────────





「──ん…………ごう……! さ──ご……う……! そ──いつ……を……去……れ……」

 ────ノイズが走る。何者かが、何かを訴える──。

「参……号──! 参──号! そいつを……去れ──! そい……つを──!」






「消し去れ」







────────────────



「!!!!」

 がだんっ! と、勢いよく立つ。その衝撃でボロい床板はヒビが入り、今にも穴が空きそうである。

「なっ何よぉ!」

「どうしたの!?」

 朝からのその爆音に反応してベッドに寝る私とソファで寝てたバラコフが飛び起きた。

「──スミマセン二人共。ドウヤラ、誤作動ヲ起コシタヨウデス……」

 突然の音の犯人、サンゴーはこちらにギギギと頭を下げて謝る。

「もう! 朝から驚かさないでよねぇ!」

「サンゴー大丈夫? もしかしてまだヴライにやられたダメージが残ってるんじゃないの?」

 私はヴライに打たれたサンゴーの胸の凹みを触って心配すると、機械の彼は首を横に振った。

「大丈夫デス。アリガトウ、ヴィエリィ。本当ニ、タダノ誤作動デス。心配アリマセン」

「それならいいけど……。何かあったらすぐに言ってね。私達は仲間で友達なんだから!」

 私はサンゴーの肩をぽんと叩く。サンゴーは歯車を回したような音を出して黙っている。

「(記憶メモリーガ……修復サレテキテイル……)」

「どしたの? サンゴー?」

「──! スミマセン……演算処理ヲ シテマシタ。モウ、大丈夫デス」

「? よくわかんないけど大丈夫ならオッケーだね!」

 私は窓を開けると、今日もまぶしい朝日が家の中を照らす。赤い岩肌の景色が視界いっぱいを覆い、砂っぽい空気が流れていた。

「よし……! 食事したら遺跡に向かいまふか!」

 そう言う私の手にはもう干し肉が握られていて、それをむしゃむしゃと食べながらバラコフとサンゴーに言った。

「立って食べるな! 食って喋るな! もう本当に女子力が皆無ねぇあんた!」

「今日モ、ワイルドデス。ヴィエリィ」

 私とバラコフは簡単な食事を済ましサンゴーは太陽光でエネルギーを貯めると、家を出て老人の家に挨拶に行こうとする。

 しかし、その老人の家には朝っぱらから何人かの男が集まっていた。何やら慌てた様子で話していて騒がしさが目立っている。

「あれ? どうしたんだろ?」

「何か変な雰囲気ねぇ」

 私達は老人を取り囲んで話しをしている男達の輪に近づく。

「どうかしたんですか?」

「あ! あんた達、スーラとスベンを見なかったか!?」

 男の一人がたずねる。スーラとスベンと言えば昨日私と話しをした子供の名前だ。

「いや、私は見てないけど……どうしたの?」

 私はバラコフとサンゴーとも顔を見合わせるが見てないことを示すように首を振る。

「スーラとスベンの二人が昨日から帰って来てねえんだ! 一体どこに行っちまったんだ……」

 男は困った顔で言い狼狽える。

「どういうこと? この村の外に出て帰って来ないの?」

「あの二人はたまに村の外に勝手に子供だけで遊びに行っちまうとこがあるんだ。いつもなら夕方頃には平気な顔して帰って来るんだが、昨日の昼過ぎに遊びに行ったっきり今日の朝になっても帰って来てねえのがさっきわかったんだ……」

「なんでそんな大事な事さっさとわからないのよぉ!」

 バラコフが叱責すると、老人が答える。

「あの子らは大人をあまり信用してなくてな……。二人だけで空き家に生活してるんだ。発見が遅れたのは村全体の責任じゃ……」

「なら私達も探すわ! まかせて! 私もよく迷子になるからほっとけないわ!」

「子供がいなくなったのならほっとけないわねぇ。あたし達も探してあげるわぁん」

 どうやらの一大事、私とバラコフは真剣な目で言う。

「わしらは里に終われた孤独者……だからこそ、ここに集うみんなは家族みたいなものなんだ。旅の者、すまなんだ一緒に探してくれますと助かりますですじゃ……」

 老人は深々と頭を下げて頼み込む。

「でもどうやって探そうかしらぁ…………あっ! そうだサンちゃんあんた前に足跡を追える便利な機能使ってたわよねぇ!? あれで何とかならないかしらぁ!」

「──無論デキマス。デスガ……ココハ足跡ガアリスギマス。特定ガ難シイデス」

 サンゴーは地面を見て難色を示した。ただでさえこの村は住民が移り変わる如く流れ者の集まる所なのが災いしたのだ。

 地面には無数の足跡、その中から特定はサンゴーでも難しいのである。

「そんなぁ……。サンちゃんでも駄目なもんは駄目かぁ……」

「足跡ノ サンプルガアレバ可能ナノデスガ……」

「──足跡…………ある! 足跡なら、ある!」

 皆が困る中、私はサンゴーのその言葉を聞いて思い出すように口にした。

「え? どこにあんのよぉ」

「ここにある──!」

 それは私の靴であった。正確には靴の表面、私はそこに指差した。

「はぁ? なんでそんなとこに……あっそうかぁ! 昨日のねぇ!」

「そう! 昨日の!」

 私は思い出した。昨日スベンに会った時に自分の足を踏まれた事を思い出したのだ。

「サンゴー! これをチェックして!」

「了解デス──。………………分析完了。足跡ヲ、追尾デキマス」

「やった!」

 私はガッツポーズを取ると、サンゴーは村の外を指差して方向を示す。

「アッチニ、足跡ハ伸ビテマス」

「あの方向は……遺跡の方向ですな。またあの子らは遺跡に行こうとしてたのか……」

 老人は困った顔でそう言う。

「どういうことですか?」

「スベンとスーラは前にも遺跡が見たいと言って勝手に飛び出した事があったのです。ですが、遺跡までは大人の足を持っても二時間はかかる。結局その時は二人は途中で諦めて戻って来たのですが……さてはまた向かったのかも知れません」

 そう言って老人は深いため息をつく。

「それなら丁度いいわね! 私達も遺跡に用事があるから連れ戻して来るわ!」

「とにかく急ぎましょうよぉ。あの子達、きっと遺跡から帰り道がわからなくなって困ってる筈だわぁ」

「そうだね! サンゴー! お願い!」

「了解シマシタ」



 ──乾いた風が吹き荒れる中、私達はサンゴーの案内で村の外へ出ると一時間ほど歩いた。

「サンちゃんどう? 足跡ちゃんとある?」

「大丈夫デス。足跡ハ、真ッ直グト続イテイマス」

 その言葉を信じて私達はひたすらに遺跡の方向へ歩いていると、先頭を歩いていたサンゴーが突然と足取りを止めてその場にしゃがみこんだ。

「なによぉ? サンちゃんどったの?」

「サンゴー……?」

 私とバラコフは突然動かなくなった彼に不思議そうに言うと、サンゴーはこちらを振り向いて言うのだ。


「足跡ガ──途切レテマス。ソシテ、コレガ──」

 そう言って私達の前にサンゴーは何かを差し出した。


 それは──子供の衣服、あの二人の物であった──。






しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

処理中です...