反逆の異世界おつかい士は侵略されたリアル世界でも英雄となる。

梧桐将臣

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第1章

異世界で死にかける。

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「――おう、大丈夫か少年。」

「あ、は!はい!――うぐっ!」

死を覚悟したのに死んでいなかった事、目をあけると狼たちの代わりに青年がいた事に呆けていた僕。

突然話しかけられ、身を起こそうとするも体中から猛烈な痛みが襲ってきて、思わず苦痛にもだえてしまう。

「全然大丈夫じゃねーな。とりあえずこれ使っとけ。」

すると何もない虚空から緑色の液体が詰まった瓶が現れ、青年の手に収まる。

「え?え?」

「え?じゃねーよ。ポーションだ、使っとけ。」

「ポーションってRPGとかでよくあるあの?てか今どうやって?」

「あーるぴーじー?おいおい。頭も強くうっちまったか?」

何もない空間から液体の入った瓶をとりだした事。それをポーションと言った事。RPGが伝わらなかった事。僕の頭の中で混乱が加速していった。

「おい少年。見たところ継続ダメージもありそうじゃねーか。死んじまう前に使うぞ。」

瓶の栓をきゅぽっと抜き、青年は僕の傷口に緑色の液体を振りかける。

すると、どうだろう。たちどころに傷はふさがり痛みも和らぐ。

すごい!本当にゲームとかにあるポーションなのかも!

傷が治って死をまぬがれた嬉しさもだが、それ以上に本物のポーションが実在する事に感動していると「あとは飲んどけ。」と言いながら青年が瓶を渡してきた。

・・・。色的にあまりおいしそうではないな・・。束の間逡巡していると、「なーにしてんだ、早く飲めよ。」と青年の声。

人の親切をまずそうだからという理由で断る訳にはいかない。

えいやっ!覚悟を決め一息に飲み干そうと口に含む。

――おいしい!ミントのような清涼感があり、ほのかに苦みはあるがくどくない甘味が喉を通りすぎる。

そのおいしさや気付かないうちに喉がかわいていた事もあいまって、僕は一気にポーションと言われた緑色の液体をごくごくと飲み干した。

飲んですぐに体のだるさや、目に見えなかった打撲などの痛みも全て無くなった。

ポーションすごい!

「お!どうやら全回復したみてーだな。にしてもポーションで全回復とは・・。レベルはいくつだ少年?」

「え?レベル?」

「は?混乱デバフでもくらったか?けどステップウルフにそんな攻撃あったかな・・。おい少年、ステータス確認してみろ。」

「ステータス?さっきからレベルとかステータスとかってゲームじゃないのに見れるわけ・・。」

――RPGという言葉は伝わらないのに、混乱“デバフ”とか普通に言っているし、レベルやステータスというゲーム用語が普通にでてくる。

ここはもしかしてゲームの世界なのか?でも狼の攻撃は本当に死を覚悟したし、あれが仮想の痛みや恐怖だとは思えない。

僕は今までの出来事や、青年の言葉からなんとか自分の置かれた状況を推察しようとする。

その沈黙を破るように青年かぼそっとつぶやいた。

「・・・お前、もしかしてさまよい人(ワンダラー)か?」

「ワンダラー?」

ゲームでも聞いた事のない言葉で、いよいよ僕は何もわからなくなる。

「さまよい人(ワンダラー)も知らないのか。こいつはいよいよ本物だな。うーん。まぁ簡単に言うと、迷子みたいなもんだな。俺が詳しい事教えてやってもいいんだけど、ちょっとめんど・・・。
ごほんっ!・・俺よりも適任がたくさんいるとこまで連れてってやるよ。」

あごに手をやりながら何やら思案しているかと思うと、にっ!と白い歯を輝かせながら爽やかに笑う青年。

「・・は、はい!よろしくお願いします!」

途中少しひっかかる部分はあったが、素直にこの人は信用できそうだと思ったし僕1人でこの草原に放り出されたら命がいくつあっても足りないと思った。僕はこの青年に言われるがままついていく事にした。



1時間程歩いただろうか。

ついに遠くに見えていた石レンガの壁まで到着した。

道中、狼型のモンスターやイノシシ、巨大バチ、ウサギ等、色々なモンスターに襲われたが、青年が刀の一閃により、全て一太刀で片づけてくれた。

青年のその強さは、ゲームやアニメの中でみるヒーローのようで僕も強くなりたい!と思うと同時に、もしかしたらこの世界ではなれるのかもしれないと淡い期待を抱く。

また、倒した後のモンスターたちが光の粒となって霧散する様、霧散した後に残される牙や羽などのモンスターの体の一部だったものを、青年が拾ったと思ったらしゅんっという音と共に消えていく様子。

その光景を目の当たりにして、今まで自分がいた世界とは全く別の理が働く世界で、自分が慣れ親しんだゲームのような世界に近いのかもしれないとも思う。

よくアニメなどで見る、異世界転生のようなものを想像してしまい、訳のわからない状況に不安しかなかったけど、正直ある種の興奮や高揚感のようなものが、感情の奥の方で首をもたげだしている。

目的地である人工建造物は、近づきながらわかってはいたが近くで見ると壁の大きさに圧倒される。左右の端は見えない程長く、壁の高さは20メートル程あるだろうか。

なんでもここは外周を大きな壁に囲われた街らしい。

しかし、外壁の厳重さの割には門での警備は割と甘く、青年が門番らしき人に何かを見せると、特にとがめられる事なくあっさりと街の中に入る事ができた。

――そして、街の中の光景に僕は息をのみ、目を輝かせた。

石畳の道に、その上をガタガタと木の車輪を鳴らしながら走る馬車。いや、馬車というのは適切でない。ひいているのは馬ではなく、恐竜を彷彿とさせるような大きなトカゲのような生き物だからだ。

大きな声を張り上げ、りんご飴のようなものを売っている商人は、ファンタジー世界でおなじみのホビット族のようなかわいらしい風貌。

道行く人々も多種多様で、大胆に肌を露出した背の高い女性の耳はウサギのように長い。その隣を連れ立って歩くのは同じく長身かつ耳がとんがっている男性でエルフのように見える。

そういえばここまで連れてきてくれた青年も、尻尾が生えていて側頭部では無く、頭の上の方に猫のような耳がついている。アクセサリーとかじゃなくて本物だったのかと思い直す。

そして、酒場らしき店では、スキンヘッドで筋肉隆々の男性と、立派な髭をたくわえたドワーフ族らしき人が、昼間から豪快に酒を酌み交わしている。さらに身に着けているものは、ゲームやアニメでした見た事のない金属の鎧だ。

「きたーーー!!!」

僕は思わず叫びだしてしまった。絶対ありえないと思っていたから夢見る事も無かったけど、男子なら1度は憧れるファンタジー世界。

目の前に広がる紛れもないリアルなファンタジー世界の光景に僕は確信する。

僕はファンタジー世界にいる!

感動に興奮を隠せずにいるとばしっ!と頭をたたかれる。

「いきなりうっせーよ。」いたずらっぽく笑いながら青年改め、猫耳の青年が言う。

「色々珍しいだろ?見て回りたい気持ちもわかるけど、とりあえず冒険者ギルドに行くぞ。まずはそこでギルドの姉ちゃん達にこの世界の事を色々教えてもらいな。」

冒険者ギルド!?姉ちゃん!?僕はいよいよ興奮を抑えきれなくなり「はい!いきましょー!」と片手を突き上げ満面の笑みを浮かべながら猫耳の青年に返事をするのだった。
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