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スイートルーム※
しおりを挟む私達が再会したのはフェリクスが行動を起こしてくれたから。
だから、今度は私が行動を起こす。例えフェリクスに既に嫌われていたとしてもフラれて傷ついても、何もしなかったと五年間とはもう違う。
電話をしたが留守電になり、メールを送っても返事がない。
一度動き出したら、どうしても今日会わないといけないような気がしてならない。
気持ちばかりが急いていた。
ホテルデュボアの従業員通用口で受付を済ませる。
いくら仕事で何度も出入りし警備員さんとも顔見知りとはいえ一流ホテルのセキュリティは厳重だ。
秘書のフェリクス・ガルニエさんにアポイントなしの面会希望と伝えると程なくして、仕立ての良いスーツを着た美女が現れた。
フェリクスは外出中だがもう少しで戻るという。待っていただけるようにと部屋に案内されるが、エレベーターに乗り最上階の部屋に通された。
ここって、どう見てもスイートルームよね……。
ここで待機と言われても落ち着かないが、彼に会うためには待つしかない。
どのくらい待っただろうか。
扉が開く音がすると乱れた足音、何かが倒れる音、割れる音も聞こえてくる。スイートルームは部屋も広いが廊下だって広い。配置されていたコンソールテーブルやチェスト、花瓶でもぶつかっているのか薙ぎ倒しているのか…何か只ならぬことが起こっている。
何が起こってもおかしくない世の中だ。事件に巻き込まれたとか?…大きな組織に狙われるようなことしたとか?…得体の知れない不審者の侵入であるのは間違いない。
「え、えっ?!な、なに?!」
何部屋かあるうちの一番広いリビングルームでソファに座っていた私は恐怖のあまり立ち上がり部屋の窓際まで後退る。近くにあったカーテンを握り締め隠れるように体に巻き付けた。
凄い勢いでバンッと開いたドアからフェリクスが転げるように入ってくる。
息を切らせた彼は四つん這いの状態で朦朧とした目を私に向けた。
フェリクスのあまり登場に息をのむ。
「あの…フェリクス」
漸く、絞り出すように彼の名を呼んだ。
「げ、現実だよな…今、目の前にいるのは夢じゃなくて本物のリディ?」
フェリクスはヨタヨタと近づいてくるとカーテンごと私を抱き締めた。
苦しいくらい抱き締められて私も気持ちを返すようにギュウッと抱き締め返した。
私は心底ホッとした。
「リディに嫌われて…もう二度と会えないんじゃないかって思った。ずっと苦しかった…」
息を切らせている彼の呼吸が整うまでゆっくりと背中を撫で、彼に息を切らせ汗だくになっている理由を聞いてみた。
どうやら彼は接待の席で着信音を消していた為、電話にもメールにも気付かなかったらしい。
部下から私が訪ねてきたと連絡が入ったのと着信やメールに気付いたのが同時だったようだ。返信よりも直接会う方が早いと思い、すぐさま会場を出たらしいがタクシーで戻る途中、渋滞に巻き込まれ慌ててタクシーから降りデュボアまで走って来たという。
会食で出された酒が走ったことで一気にまわり、ここに着いた時には体力の限界と酒せいでフラフラの状態だったようだ。
やっと呼吸を整えたフェリクスは神妙な顔になる。
「ごめん、リディ…もう、あんなこと二度としない。許して欲しい」
流れる汗と涙と鼻水でイケメンが台無しだけれど……そんな彼が妙に愛おしくて堪らない。
「…許す………私、もう…すっかりフェリクスの毒にやられてて頭がおかしいの……だからもう、ずっとそのテンションで私を好きでいて!……馬鹿になるくらい好きでいて!」
汗、涙、鼻水でぐちゃぐちゃのフェリクスの顔が近づいてくる、流石にその状態でキスされるのは…いろんな味がしそうで嫌だ。咄嗟に彼の顔を両手で挟み引き離すと、バッグから取り出したハンカチでゴシゴシ拭いた。
「いて、痛い…ちょっと雑…もうちょっと優しくして……でも、こんな…大雑把なリディも好き…」
不満を言いながらも惚気てくるフェリクスに笑いながらキスをする。
キスをしたらもう止まらなかった。
そのまま私達はお互いの服に手をかけた。上半身裸になったフェリクスは私をお姫様抱っこして一際豪華なベッドルームに運んだ。
ベッドで抱き合いながらフェリクスは五年前と同じリクエストをしてきた。
「フェリクスって女の子に乗られるのが好きよね?」
「言っておくけど、僕は女の子に乗られるのが好きなんじゃなくて、リディに乗られるのが好きなの」
フェリクスは私を自分の顔の上に跨がせると、溢れた蜜をねっとりと舌で舐め上げる。
「はぁ…んんっ」
フェリクスの指と舌は私の弱いところも感じる場所も全て心得ていて、与えられる快楽に甘い声をあげる。
「リディ…ねぇ、僕のも…して?」
相変わらずおねだりが上手なフェリクス。
彼のエッチなお願いを私が拒否することは今まで一度もない。だってフェリクスが私にするお願いは彼だけでなく私も興奮する要素をいつもたっぷり含んでいたから。
今だって視界に入る凶暴なまでに反り立ち血管が浮き出た剛直に触れたくて堪らないのだ。
私が気持ちいい時には同じくらいフェリクスにも気持ち良くなって欲しい。そんな欲求は彼とする度に強くなっていた。
「う、うん…」
ゆっくりと上体を前に倒す。
舌でぺろりとフェリクスのつるりとした先端の雫を掬った。
彼の腰がぴくりと反応する。
フェリクスと仲直りできて、またこんな厭らしいことをしていると思うだけで気持ちは高揚していった。
私達は久し振りに触れる互いの肌と放たれる熱を無我夢中で貪りあった。
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