【本編完結・R18】旦那様、子作りいたしましょう~悪評高きバツイチ侯爵は仔猫系令嬢に翻弄される~

とらやよい

文字の大きさ
22 / 44

二人の時間※

しおりを挟む


パークシャー伯爵家の事件以降、ジョアキンは残務処理に追われ忙しい日々を送っていた。

慌ただしい数ヶ月が過ぎた頃、休みが取れたから侯爵家の別邸へ足を伸ばそうというジョアキンの提案にエメリは顔を輝かせた。

この数ヶ月、周囲に暗い顔を見せぬよう気丈に振舞っていたエメリだがキャサリンのことで気持ちが萎んでいるのは明らかだった。
久方ぶりのエメリの笑顔にジョアキンだけでなく使用人たちの雰囲気も明るくなる。

旦那様と遠出するなど今までなかった。驚きと共にワクワクが止まらないエメリは、ドレスを並べながらついつい鼻歌を歌ってしまう。

微笑みながらローラが徐ろに新品の夜着と下着をトランクの中に入れた。

「新しい物を用意してくれたの?」

「勿論でございます。とっておきのものを用意いたしました」

「ちょっと布地が薄すぎない?胸元の、レースやリボンは可愛いけれど」

夜着を広げて布地を透かして見る。

「このリボンを引くと…片手でも簡単に脱がせられるのですよ」

満面の笑みを称えたローラが、何を意図して用意してくれたのかがわかり顔に熱が集まる。

「そ、そうなの…それは…旦那様のためにも…………良い、わよね…」

言いながらも恥ずかしくなりギュウギュウとドレスの奥に夜着を押し込むとトランクを閉めた。




二人が目指す別邸は王都郊外の丘陵地にあった。
豪華で洗練された侯爵邸とは違い、丘の上に佇む白壁に青屋根の素朴で可愛らしい館で周囲を葡萄畑が囲みワイナリーも併設されていた。

葡萄畑を管理している農夫から葡萄の品種の説明を受け、ワインを試飲した後はジョアキンと共にのんびりと葡萄畑の中を散歩した。
風が吹き抜ける丘の上に立つと何とも言えない解放感で思わず両手を広げて深呼吸した。
こんな時間を二人で過ごす日が来るなんて、結婚した時には考えもしなかった。

「ずっとここに居たい、帰りたくないな…」

ボソリと独り言を呟く。

来たばかりだというのに、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうという現実を、もう悲しく思い始めている。

ジョアキンは腕を空に伸ばし背伸びをした。

「また、時間を見つけて来よう。何度でも」

独り言は、しっかり聞かれていたようだ。

夜になれば、晩餐の美味しいワインと料理に舌鼓を打ち、その後は湯あみを済ませ夢見心地で寝室に向かった。

扉を開けて、はたと足を止める。

驚くことに既にジョアキンがいる。
しかも、どこか思いつめた表情で腕を組む姿は一種の異様さを放っていた。

一体どうしたというのだろうか?
自分が入って来たことにも気付かない夫に戸惑いがちに小さな声で呼びかける。

「旦那様?」

ジョアキンはビクッと大きく肩を揺らし慌てて立ち上がった。

「あっ!ああ、いたのか…すまない考え事をしていた」

いつものクールフェイスはどこにいったのか?ギクシャクした動きでエメリの手を取りベッドに座らせた。

並んで座る二人の沈黙を破ったのはジョアキンだった。

「長時間馬車での移動と…葡萄園も散歩したし、疲れたのではないか?」

「いいえ、馬車に乗って外の見慣れない景色を見るのも、葡萄園の散策も興味深くて疲れなんて全くありません。楽しくて充実した一日でした!」

薄暗い寝室の雰囲気とは正反対に元気に喜びを伝えると。ジョアキンの顔もほころぶ。

「そうか、良かった」

しかし、そのまま言葉が続かず黙り込んでしまったジョアキンの姿に、初めて会った見合いの日のことを思い出した。

「ふふふっ」

「どうした?」

「だって、初めてお会いした時のことを思い出して。あの時も私達無言でしたわね。それに比べたら今夜は旦那様から話しかけてくれたので凄い進歩です」

小首を傾げ可笑しそうに笑う。

「見合いの時、そんなだったか?」

本当に覚えていないのか、しらばっくれているのか、ジョアキンはバツの悪そうな顔をする。
そして、一呼吸おくと頭を下げた。

「今思えば…あの時は確かに酷い態度だったな…すまない…」

「旦那様…どうしたのですか!?お熱でもあるのでしょうか…」

謝罪の言葉と共に、自責の念に駆られ顔を歪めたジョアキンに驚いて額に手を置いた。

「ね、熱はない!」

「本当ですか?」

有無を言わせず、今度は頬を両手で挟み自分の額と旦那様の額をピタリと合わせた。

「う~ん、熱はないようですね」

互いの睫毛が触れそうな距離で二人の視線が重なる。

「大丈夫だ!」

ジョアキンはエメリの肩を掴み引き剥がすが、そのまま手を離せなくなる。

「…スープラ医師の診察を受けた…体は元の健康な体に戻った」

「そうなのですか!!良かった…本当に良かったです!」

興奮して目を見開くとジョアキンの肩を掴んだ。
互いに肩を掴んだまま正面で見つめ合う状況に、ほぼ同時に噴出し笑い始めた。

笑いが収まると、どちらかともなく肩を掴んでいた手降ろし自然と手と手を握り合う形になっていた。

「今日はゆっくり寝ようとは言ってやれない…いいか?」

「は…はい」

はしたなくコクリと喉を鳴らしてしまい赤くなる。

それがどういうことか、色恋に疎い自分でもわかる。
もっと言うなら、別邸に足を伸ばそうという提案をしてくれた時から思うところがあった。

どちらかともなく顔を寄せキスをした。
結婚式以来のキスだ。

ジョアキンは後頭部を手で支えながら壊れ物を扱うように静かに寝かせてくれた。

「優しくするけれど、痛かったり嫌だったりしたら我慢せず言うんだぞ?」

「う、うん」

本来なら「はい」と答えるところだが、緊張のあまり今は淑女から素の十九歳のエメリに戻っていた。

そっと頬に手を添えると、啄むように唇、鼻先、頬、瞼、額にキスが降ってくる。

「ふふ…くすぐったい」

「…くすぐったいのは嫌か?」

「…ううん」

「なら…良かった……」

ジョアキンの今まで見たことのない蕩ける様な笑みに目を奪われ呆然とする。

この美貌を以てして侯爵であり、しかも誰よりも仕事の出来る男…そして、こんな蕩ける様な微笑みを私にだけ向ける…この人は、私の夫なんだわ。
今、この人と夫婦の初めての契りを結ぼうとしている…その現実に心臓の音が煩くなる。

夜着の胸元のリボンを解くと脱がせるのは簡単だった。
露わになった白い胸元にキスをすると舌先を胸の膨らみまでツーっと滑らせる。
生温かくぬめりとした舌の感触にゾクゾクと甘い痺れが背筋を這い上がる。

「は、んん…」

思わず漏れてしまった甘ったるい声に、自分自身が一番驚き、更に恥ずかしさも増す。

「あまり見ないで…こんな小さな胸で申し訳ないというか、恥ずかしい…」

真っ赤になり膨らみを両手で隠そうとするが、容赦なく手を剥がされる。

「恥ずかしい?どこが?白くて滑らかで柔らかくて、何をとっても美しいだけだ」

そう言うと、パクリと膨らみの先端を口に含んだ。
優しく吸うと舌先で芯を持ち始めた先端を上下左右に弾く。
胸の先が芯を持ち痛いくらいに硬く、弾かれる度に疼く。
疼くという初めての感覚に自分の体に何が起こったのか飲み込めない。

「旦那様…私の胸…変になっちゃてる?痺れて…痛いの」

「痺れるような痛みは、快感を拾っているからだ。じきに気持ち良いと感じるようになる…どういうことか、これからわからせてやるから」

薄明かりの中、ツンと立ち上がった先端は赤みを帯びジョアキンの唾液で濡れてらてらと淫靡に光っていた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷徹公爵の誤解された花嫁

柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。 冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。 一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

辺境伯夫人は領地を紡ぐ

やまだごんた
恋愛
王命によりヴァルデン辺境伯に嫁ぐことになった、前ベルンシュタイン公爵令嬢のマルグリット。 しかし、彼女を待っていたのは60年にも及ぶ戦争で荒廃し、冬を越す薪すら足りない現実だった。 物資も人手も足りない中、マルグリットは領地の立て直しに乗り出す。 戦しか知らなかったと自省する夫と向き合いながら、少しずつ築かれていく夫婦の距離。 これは、1人の女性が領地を紡ぎ、夫と共に未来を作る「内政×溺愛」の物語です。 全50話の予定です ※表紙はイメージです ※アルファポリス先行公開(なろうにも転載予定です)

【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

虚弱姫はコワモテ将軍の筋肉に触りたい

隙間ちほ
恋愛
◼︎無骨な英雄×病弱な筋肉フェチ姫 ◼︎辺境伯の末娘エルナは、領軍の英雄マテウスとの結婚が決まった。政略結婚――のはずが、実は姫は将軍の熱烈なファン。姫がノリノリで嫁ぐ一方、当のマテウスは「か弱い姫君に嫌われている」と思い込み、距離を取ってしまう……。 ◼︎筋肉と鼻血とすれ違いラブコメ。 ◼︎超高速展開、サクッと読めます。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

王宮地味女官、只者じゃねぇ

宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。 しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!? 王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。 訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ―― さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。 「おら、案内させてもらいますけんの」 その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。 王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」 副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」 ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」 そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」 けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。 王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。 訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る―― これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。 ★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。

侯爵令嬢ソフィアの結婚

今野綾
恋愛
ソフィアは希少なグリーンアイを持つヴィンセントと結婚した。これは金が欲しい父の思惑と、高い爵位が欲しいヴィンセントの思惑が一致したからに過ぎない。 そもそもヴィンセントには恋人がいて、その恋人は身分に大きな差があるために結婚することは叶わないのだ。 結婚して早々、ソフィアは実家から連れてきた侍女夫婦とあばら屋に住むように言われて…… 表紙はかなさんのファンアートです✨ ありがとうございます😊 2024.07.05

処理中です...