神秘学メンズラブシリーズ”nihil”

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第三巻『その痩躯から 死が分たれる その時まで。』(RoGD Ch.4)

Verse 5-1

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 天界にある全知全能たる神々の神殿から、その黒馬に跨ったゴーレム達は出発した。その列はごく僅かなゴーレムと、一つのバロック彫刻の棺で構成されていた。ガラスの蓋の中には、溢れんばかりのベルベットのような花弁を持った赤黒い薔薇達と共に、零の仮の遺体が置かれていた。その日、神殿より北側を流れる川の上流は、葬列の一部の関係者以外の立ち入りを禁じられた。ゴーレム達が出発したのを見て、集まった幾人かの[シシャ]達ははその黒馬の足元に各々が持ち寄った花束を投げていく。それぞれの時代の喪服に身を包み、葬列に足を運び、頭を下げていく。馬の蹄の音が、天界にただただこだましていた。

「では……。我々は、これで。」

 棺の後ろに参列したのは、ルプレヒト以外の、帝國でROZEN本部に勤めていた[シシャ]の面々だった。

「皆様。長い列を、ありがとう御座いました。」

 天界の領地は途切れた。ここからはもう、アヴィセルラと数少ないゴーレム達が川を昇って零の亡骸を神域に運ぶのみだった。参列した人数分の赤い薔薇の花束を、硝子の棺の上にそっと置く。馬を降りたゴーレム達が、棺を舟に乗せた。人間界からは天の川として見える川を昇っていくのだ。アヴィセルラがもう一度一礼すると、船は動き始めた。

「……ルプレヒトは、来なかったな。」

「ああ。来ないだろ、あの人は。」

 小さくなりゆく小舟を見つめながら、ジークフリートが肩を落とした。リチャード一世とジャンが、その肩を撫でてすれ違っていく。次に、ニコライ二世が向日葵の花を川に流して、ロマノフの一族と共にその場を後にした。アルフレッドは、小舟が見えなくなるまで見届けると、鼻をすすりながら天界の病院への道筋を歩き出した。ジークフリートは、舟が見えなくなってもただただそこに立っていた。カペーの王族達が後ろで待っていたが、フィリップ二世はお構いなしにジークフリートに付き合ってやった。そうして一時間が過ぎ、二時間が過ぎた。

「……ジークフリート、迎えだ。」

 振り返ったフィリップ二世の視線の先には、黒い蝙蝠傘を差した理恵とフェリクスが静かに佇んでいる。

「お迎えに来たわ。ジークフリート。」

 足が棒のようになって動けなくなってしまったジークフリートの背中を、フィリップ二世は押した。ジークフリートがつんのめって一歩を踏み出す。

「……そうだな。あいつがいなくても、僕はまだやる事がある。」

「ええ、悲しみは計り知れません。ですが、その全てを吐き出すには、時間があまりに少ない。」

 行きましょう。そう言って、理恵はジークフリートに手を差し伸べた。

「あの人が帰って来た時、この聖戦に純然たる戦勝を齎せるように。」

 ジークフリートは、理恵の黒レースに覆われた手を取った。まだ希望はある。なぜなら、零は決して、死んだわけではないのだから。

 三人は歩き出す。途中、川に、薔薇色の花がたった一輪流れていった。
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