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第一巻『この幻想が 薔薇色の誇りに なると信じて。』(RoGD Ch.2)
Verse 4-16
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「マジで言ってんのか?嘘じゃねぇよな?」
夕方、アーサーは待ち合わせ場所のパブの前にやってきた二人の言葉に食いつく。アーサーの懐疑の瞳に、レイは幸せそうに頷き、ジークフリートは恥ずかしそうにそっぽを向いた。雄叫びと拳を挙げるアーサーを尻目に、その隣にいたアルフレッドは慈愛の笑みを浮かべる。一人ではしゃぎ立てていたアーサーは、たまたま通り掛かったエドワードとリチャードを見とめて手を振った。
「おいエドいい所に来たな、今から飲もうぜ!」
エドワードの首に腕をかけて、アーサーはレイ達三人とその向こう側にあるパブを指す。
「おっ飲み?いいよいいよ。」
意気揚々とそう告げたエドワードはそのままアーサーについていこうと足を踏み出した。エドワードの足が止まり、腕がするりと首から抜けていく。後ろを振り向くと、リチャードが先程の位置から一歩も動かずにエドワードをじっと見つめていた。
「ごめん。俺、ヨハンと帰るよ。」
その視線をアーサーも察して、エドワードの残念そうな声に手をひらひらと振る。
「あぁ、そうしとけ。……ほんじゃ、まぁ俺ら四人で。」
リチャードの下へ駆けていくエドワードを一瞥して、アーサーはレイとジークフリートの間を突き抜けてパブへ一番乗りした。
各々が注文した飲み物が届くと、アーサーはグラスを持ち上げる。
「じゃあ二人の再会を祝してってぇところで。」
その声とともに、三人も容器を持ち上げた。
「乾杯!!!」
ガラスとガラスがぶつかり合う高い音がテーブルに響き渡ると、彼らは一杯目を飲み干した。勢いよく机にグラスを置いて、アーサーは向かい側にいるレイとジークフリートを品定めするように見つめる。
「んで?レイの期間限定の皇太子復帰ってのはこれの為か?」
「あぁ。一つはな。」
ジークフリートが片眉を上げる。
「一つ?まだあるのか。」
二杯目に口をつけていたレイは、頷きながら琥珀色に染まるグラスをテーブルの上に置いた。
「エドワードがこの間のテロの関連で、分家の発祥について調べてたんだ。王宮に、皇族と神官しか入れない禁書庫があって、そこには沢山の分家の資料があるからそこを見てたんだ。もう一つは……。」
口を噤んだレイを見て、アーサーは口をへの字に曲げる。記憶力抜群の彼には、思い当たる事が一つだけあった。
「あーもしかして……俺があん時ぼやいた?」
ぼそぼそと口を開いたアーサーから目を離して、ジークフリートは伺うような視線をレイに向ける。レイは頷いた。
「あぁ、親父の前世について。でもこっちは、殆ど手をつけてない。分家のほうに忙しくて。」
まじか、とアーサーは背もたれにもたれる。
「僕とアーサーはそれなりに推察が出来た気がするけどな。」
グラスに口をつけながらぼやいたジークフリートの言葉に、アーサーは賛同とばかりに頷いた。椅子の後ろ足二本でバランスを取っていたアーサーは、その椅子を戻して机に乗り出す。
「なんなら時間作って、調査結果発表会、するか。」
肘をついてぼやいたアーサーに、レイとジークフリートは頷いた。
* * *
戴冠式の衣装の最終確認や馬選びを終えて、レイは漸く自室に帰る事ができた。部屋の中では既に湯浴みを終えたジークフリートがソファーの上でうたた寝をかましている。扉の音でびくりと体を動かすと、ジークフリートは顔を上げた。
「レイ。」
「ただいま。」
王宮にレイがいるうちは、ジークフリートも王宮に寝泊まりしていい、とフランシスは二人を極力甘やかす事にしたようである。夜の警護も暗殺の少ないこの時勢では最小限に軽くされた。
「ついに明日か。」
残っていた蜂蜜酒を注いで、そのグラスをレイに渡す。琥珀色のその液体を眺めながら、レイはジークフリートに寄り添うようにしてソファーに座った。
「体は?」
第二ボタンまで空いたワイシャツから見える胸に手を滑らせて、レイは不安そうな視線を送る。軍人にしてはあまりに繊細すぎる手をとって、ジークフリートはその甲に唇を落とした。
「もう殆ど治りかけてる。無理をしなければすぐに治るさ。」
満面の笑みを浮かべるジークフリートに、レイも安堵のため息をつく。
「風呂に入ってくるよ。」
空になったグラスをテーブルに置くと、レイはバスルームに消えていった。
* * *
空に小さな花火が上がるとともに、レイの乗る豪華絢爛な馬車は王宮を出発する。隣にはお付きの神官であるランスロットが座り、レイの質問にすぐ答えられるように待機していた。王宮の敷地内を出る前まで、レイは一つの窓を見つめている。
「殿下、そろそろ。」
窓の向こう側では、ジークフリートがじっとレイの乗る馬車を目で追っていた。ランスロットの呼びかけて姿勢を前に戻すと、ジークフリートは窓から離れた。馬車の後には、ROZENの元帥達が馬に騎乗して続いていく。
「手を振ればいいのか?」
「えぇ、にこやかに。」
ランスロットの笑顔で緊張の氷が解け始めると、レイは王宮を出るとともに笑みを作って、道端に集まる民衆にぎこちなく手を振り始めた。軍人には要らぬ器用さである。街樹達は、もう春の暖かさだというのにその花で風景を彩ってはいなかった。寒々しい樹を見ながら、レイは心持ち口を緩める。王宮から一直線続く道を行けば、もうすぐに中央教会が見えてくる筈であった。
アルフレッドとともに、アーサーは未だ冬の様相が残る街路に出る。人という人は、中央教会に入った皇太子が出てくるのを待ちに待っている。
「見える?」
「うっせぇ背高のっぽ。」
身長の低いアーサーはアルフレッドの皮肉のような気遣いを跳ねのけて、火の灯っていない街灯にするりと登っていく。目の上に手をかざして、アーサーは中央教会の入り口に視線をやった。
「おう、見えるぞ。」
「だろうね……。」
手にしていたフライドポテトを口に入れ、アルフレッドは大衆より一つ頭抜きん出たその身長を活かしてじっと教会を見ている。
「ん、出てき——」
教会の扉が開かれた瞬間、だれもが辺りの風景に視界を取られた。まるで皇太子を歓迎するかのように、木々の蕾という蕾が色とりどりの花を開かせたのである。観衆は一斉に声を上げた。アルフレッドが目をこらすと、レイもあんぐりと口を開けている。冬景色だった帝国直轄領は、突然に春を迎えたのである。
「なんだなんだ?」
アーサーは街灯から降りて観衆に加わる。街の顔は一気に冬から春へと表情を変えていた。大分上にあるアルフレッドの顔を見上げると、彼は浮かれる観衆とは別に酷くまじめな顔をしている。
「彼を歓迎してる。」
ぼそりと呟いたアルフレッドの言葉は辛うじてアーサーに届いたが、アーサーは訝しげな顔をしたままであった。自然がか、と返したが、アルフレッドはそれきり口を閉じてなにも言わなかった。
夕方、アーサーは待ち合わせ場所のパブの前にやってきた二人の言葉に食いつく。アーサーの懐疑の瞳に、レイは幸せそうに頷き、ジークフリートは恥ずかしそうにそっぽを向いた。雄叫びと拳を挙げるアーサーを尻目に、その隣にいたアルフレッドは慈愛の笑みを浮かべる。一人ではしゃぎ立てていたアーサーは、たまたま通り掛かったエドワードとリチャードを見とめて手を振った。
「おいエドいい所に来たな、今から飲もうぜ!」
エドワードの首に腕をかけて、アーサーはレイ達三人とその向こう側にあるパブを指す。
「おっ飲み?いいよいいよ。」
意気揚々とそう告げたエドワードはそのままアーサーについていこうと足を踏み出した。エドワードの足が止まり、腕がするりと首から抜けていく。後ろを振り向くと、リチャードが先程の位置から一歩も動かずにエドワードをじっと見つめていた。
「ごめん。俺、ヨハンと帰るよ。」
その視線をアーサーも察して、エドワードの残念そうな声に手をひらひらと振る。
「あぁ、そうしとけ。……ほんじゃ、まぁ俺ら四人で。」
リチャードの下へ駆けていくエドワードを一瞥して、アーサーはレイとジークフリートの間を突き抜けてパブへ一番乗りした。
各々が注文した飲み物が届くと、アーサーはグラスを持ち上げる。
「じゃあ二人の再会を祝してってぇところで。」
その声とともに、三人も容器を持ち上げた。
「乾杯!!!」
ガラスとガラスがぶつかり合う高い音がテーブルに響き渡ると、彼らは一杯目を飲み干した。勢いよく机にグラスを置いて、アーサーは向かい側にいるレイとジークフリートを品定めするように見つめる。
「んで?レイの期間限定の皇太子復帰ってのはこれの為か?」
「あぁ。一つはな。」
ジークフリートが片眉を上げる。
「一つ?まだあるのか。」
二杯目に口をつけていたレイは、頷きながら琥珀色に染まるグラスをテーブルの上に置いた。
「エドワードがこの間のテロの関連で、分家の発祥について調べてたんだ。王宮に、皇族と神官しか入れない禁書庫があって、そこには沢山の分家の資料があるからそこを見てたんだ。もう一つは……。」
口を噤んだレイを見て、アーサーは口をへの字に曲げる。記憶力抜群の彼には、思い当たる事が一つだけあった。
「あーもしかして……俺があん時ぼやいた?」
ぼそぼそと口を開いたアーサーから目を離して、ジークフリートは伺うような視線をレイに向ける。レイは頷いた。
「あぁ、親父の前世について。でもこっちは、殆ど手をつけてない。分家のほうに忙しくて。」
まじか、とアーサーは背もたれにもたれる。
「僕とアーサーはそれなりに推察が出来た気がするけどな。」
グラスに口をつけながらぼやいたジークフリートの言葉に、アーサーは賛同とばかりに頷いた。椅子の後ろ足二本でバランスを取っていたアーサーは、その椅子を戻して机に乗り出す。
「なんなら時間作って、調査結果発表会、するか。」
肘をついてぼやいたアーサーに、レイとジークフリートは頷いた。
* * *
戴冠式の衣装の最終確認や馬選びを終えて、レイは漸く自室に帰る事ができた。部屋の中では既に湯浴みを終えたジークフリートがソファーの上でうたた寝をかましている。扉の音でびくりと体を動かすと、ジークフリートは顔を上げた。
「レイ。」
「ただいま。」
王宮にレイがいるうちは、ジークフリートも王宮に寝泊まりしていい、とフランシスは二人を極力甘やかす事にしたようである。夜の警護も暗殺の少ないこの時勢では最小限に軽くされた。
「ついに明日か。」
残っていた蜂蜜酒を注いで、そのグラスをレイに渡す。琥珀色のその液体を眺めながら、レイはジークフリートに寄り添うようにしてソファーに座った。
「体は?」
第二ボタンまで空いたワイシャツから見える胸に手を滑らせて、レイは不安そうな視線を送る。軍人にしてはあまりに繊細すぎる手をとって、ジークフリートはその甲に唇を落とした。
「もう殆ど治りかけてる。無理をしなければすぐに治るさ。」
満面の笑みを浮かべるジークフリートに、レイも安堵のため息をつく。
「風呂に入ってくるよ。」
空になったグラスをテーブルに置くと、レイはバスルームに消えていった。
* * *
空に小さな花火が上がるとともに、レイの乗る豪華絢爛な馬車は王宮を出発する。隣にはお付きの神官であるランスロットが座り、レイの質問にすぐ答えられるように待機していた。王宮の敷地内を出る前まで、レイは一つの窓を見つめている。
「殿下、そろそろ。」
窓の向こう側では、ジークフリートがじっとレイの乗る馬車を目で追っていた。ランスロットの呼びかけて姿勢を前に戻すと、ジークフリートは窓から離れた。馬車の後には、ROZENの元帥達が馬に騎乗して続いていく。
「手を振ればいいのか?」
「えぇ、にこやかに。」
ランスロットの笑顔で緊張の氷が解け始めると、レイは王宮を出るとともに笑みを作って、道端に集まる民衆にぎこちなく手を振り始めた。軍人には要らぬ器用さである。街樹達は、もう春の暖かさだというのにその花で風景を彩ってはいなかった。寒々しい樹を見ながら、レイは心持ち口を緩める。王宮から一直線続く道を行けば、もうすぐに中央教会が見えてくる筈であった。
アルフレッドとともに、アーサーは未だ冬の様相が残る街路に出る。人という人は、中央教会に入った皇太子が出てくるのを待ちに待っている。
「見える?」
「うっせぇ背高のっぽ。」
身長の低いアーサーはアルフレッドの皮肉のような気遣いを跳ねのけて、火の灯っていない街灯にするりと登っていく。目の上に手をかざして、アーサーは中央教会の入り口に視線をやった。
「おう、見えるぞ。」
「だろうね……。」
手にしていたフライドポテトを口に入れ、アルフレッドは大衆より一つ頭抜きん出たその身長を活かしてじっと教会を見ている。
「ん、出てき——」
教会の扉が開かれた瞬間、だれもが辺りの風景に視界を取られた。まるで皇太子を歓迎するかのように、木々の蕾という蕾が色とりどりの花を開かせたのである。観衆は一斉に声を上げた。アルフレッドが目をこらすと、レイもあんぐりと口を開けている。冬景色だった帝国直轄領は、突然に春を迎えたのである。
「なんだなんだ?」
アーサーは街灯から降りて観衆に加わる。街の顔は一気に冬から春へと表情を変えていた。大分上にあるアルフレッドの顔を見上げると、彼は浮かれる観衆とは別に酷くまじめな顔をしている。
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