指切りの彼

藤咲 ふみ

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ドキドキのバンドヴォーカル。そして始まった高校二年生の夏休みと君からの贈り物。

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「また来たのかよ、蓮!好きか、バンド?」

 それに僕は頷いた。

「『ピンキーソーイング』の、ファンです!」

 と言った。
 それに柊以外のメンバーも笑う。
 その日から僕は時々、『ピンキーソーイング』の練習を見学しに行くようになった。

 ある時はバチバチに歌う柊の姿を眺めたり、ある時は端の方で反省点を活かしながら練習する姿を眺めたり⋯そして、驚いたのはそんな日々の中で、突然練習中の柊に舞台に引っ張り上げられて

「ほれ、お前折角ならちょっと歌え!」

 と言われたこと。
 それに僕は

「む、無理だよ!歌うなんて⋯!」

 それに柊がイタズラッぽく笑って

「チェッカーズ、歌え!みんなでちょっと練習したんだ!カウント頼んだ!いいか、スティックが三回鳴ったら歌い出せ!」

 それに僕はマイクを握って頷く。
 ドラムがカウントをして、スティックを三回鳴らす。
 僕は緊張しながら、チェッカーズの『涙のリクエスト』を歌い出す。

 イントロ部分を歌うと、楽器がバーッと勢いよく演奏を始める。それがとっても、気持ち良かった。

「蓮、スゲー良かったよ!お前なんか、才能あんな!」

 僕はお世辞でもそれが嬉しかった。
 僕は『ピンキーソーイング』のバンドメンバーにもお礼を言って、拍手を送って、舞台を降りた。

 その日柊と一緒に帰りながら、楽しく歌わせて貰った時の話をした。

「凄く楽しかったよ!中々できない体験しちゃった!特別体験!へへっ!今思い出しても、足が震えちゃうや!柊はあの中をいつも堂々と歌うんだから、凄いや!」

 そう言うと柊は

「まぁな!好きなことだから、できるんだ!でも⋯正直本番とかは震えてるよ、俺も!恥ずかし!」

 それに僕は笑う。柊も可愛いところあるんだなって。

「今年もさ、文化祭バッチリキメるから、聴きに来てな!約束!」

 柊はそう言って、やんちゃに笑いながら、小指を出した。
 僕は柊の小指に、自分の小指を絡めて、ニッコリ笑った。

「約束!」

 って。
 今日も潮風が心地よい。その中を柊と二人、歩く。それだけで、それだけのことが、幸せだった。

「もうすぐ夏、本番だな!今年はたくさん、遊ぼうな!」

 柊が子供のように笑う。
 それに僕は、楽しく頷く。

 今年は夏休み、楽しみだ!楽しみにして、いいかな?

 そんなことを思いながら、僕らは日が沈み出した海辺を、ゆっくりと歩いて帰った。
 そんな高校二年生の夏の始まり。

  高校二年生の夏休みも、店番や近所の子の相手をしていたら、残すところあと少しになった。
 でも、今年は最後の方に楽しいイベントが残っていた。それは、夏祭り!柊がクラスの何人かと一緒に行こうと、誘ってくれたのだ。
 もう数日後に迫った夏祭りに、僕は毎晩ワクワクしていた。

 普段面倒を見ている近所の子にも、夏祭りに連れて行ってとせがまれたけど⋯忙しいと嘘をついて、断ってしまった。少し罪悪感があったけど、今の僕にとっては、柊と過ごせる夏の時間の方が大切だったから、仕方ないよね?ごめんね⋯!

 そんな夏祭りの当日が、いよいよ今晩に迫った。柊から集合場所や時間のメールが来た。それに、ワクワクが募った。

 学校外で会う柊、どんな感じかな?

 僕はその日なんだかソワソワして落ち着きなく、一日店番をして過ごした。
 待ち合わせの時間少し前、人で賑わう出店の始まり辺りで、僕はみんなを待っていた。すると、次第に呼んだ友達が集まり出す。そして、柊もやって来る。みんな揃ったのを確認すると、僕らはゆっくり祭りを回り出す。

「華やかだなー!」

 柊が屋台の光に目を細めながら笑う。
 みんな何を買うか、何をして遊ぶか話して騒いでいる。

「柊は、何かしたいこと、ないの?」

 それに柊はちょっと考えてから
「あっ、射的やりたい!俺、結構得意なんだ!」

 と無邪気に笑った。
 射的の屋台を見つけると、柊は屋台のおじさんにお金を払って僕に聞く。

「蓮、何が欲しい?言ってみ?とってやるよ?」

 それに僕は、悩む。すると、目線の先にちょっと目がつり目の可愛らしい猫のぬいぐるみが見えた。なんかそれは、柊に似ていた。

「あれ!あの子!あの、猫のぬいぐるみ、欲しい!」

 僕は咄嗟に柊によく似たその猫のぬいぐるみを、指さした!
 それに柊は

「オッケー!あの猫な!」

 と、射的のコルクの入った銃を構えた!
その姿が、とても絵になっていて、かっこいい!
 柊が放った最初の一発は、猫の少し左をかすめた。

「惜しい!」

 僕と柊は同時に声を上げた。
 残りは後二発!
 柊が次の一発を放った。それは猫に当たったけれど、猫を倒す威力まではなかった。

「わー、今当たったよね!凄いや!柊!」

 僕のその声に、柊はなんの反応もせずに、最後の一発を放った!
 その一発は、勢いよく飛んで、猫に命中すると、ファサッと猫のぬいぐるみを倒した!
 それに僕は、一瞬茫然とした。その後あって、思った!倒したんだ!柊、猫のぬいぐるみ、倒したんだ!凄い、凄いよ

「凄いよ!柊!凄い!かっこいいよ、柊!」

 僕は思わず柊に、抱きついた。
 それに柊は、とても照れていた。

「なんだよ蓮お前、恥ずかしいから、離れろ!」

 って。
 僕も柊も笑ってた。とってもとっても、笑ってた。
 その後屋台のおじさんから、倒した猫のぬいぐるみを柊が受け取ると、それを柊が僕にくれた。

「ほれ!これやるよ!」

 って。
 それに僕はとても嬉しくなって、とびきり幸せに笑った。

「ありがとう、柊!この子、大切にするね!」

 って、大切に抱き締めて。
 それに柊は笑っていた。

「なんかその猫、俺に似てねぇか?気のせい?お前、趣味悪いな?」

 僕はなんて言われても良かった。この子は絶対に、ずっとずっと、大切にすると決めたから!だって、柊からの、贈り物だから!

 ねぇ、柊、柊にそんな気はなくても、僕に素敵なプレゼントをくれて、ありがとう!
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