指切りの彼

藤咲 ふみ

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エピローグ

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「⋯さん!蓮さん!」

 僕を起こす誰かの声に、僕は目を開けた。それは、学校から帰って来た、僕の十歳年下の恋人、菊木 春の声だった。

「あれ、春、今帰ったの?」

 僕が体を起こしながら言うと、春が心配そうに言った。

「蓮さん、大丈夫?なんか、泣いてるよ?どうしたの?」

 それに僕は、あーって思った。昔の夢を、見ていたんだ。なんて、言えない。

「うん⋯悲しい恋のお話、読んで眠ったら、なんか夢に、出ちゃったみたい!」

 僕は『ロミオとジュリエット』をヒラヒラと見せた。
 それに春は

「あー、そんなの読んで眠るから!次はもっと愉快なの読んで寝たらいいですよ⋯『ドクタースランプ』とか!」

 それに僕は大爆笑する。

「それは、愉快な夢が見られそうだね!それより、春はそろそろ専門学校卒業だよね?何か欲しいものはある?あっ、ハーバリウムはなしね!今度はちゃんとお金、かかるものにして!君はハーバリウム持ち過ぎだから!いい!記念に何か、考えといてね!」

 それに春は、ブーイングする。

 最後の恋に、しようと思っていたんだ。柊との恋を。でもね、ごめんね、僕、今新しい幸せの中を、生きているよ!君も、どうか新しい幸せを、生きてね!

 僕の恋人は今年で二十歳になる。そして僕は三十歳になる。
 人生何があるか、どんな歳の人と一緒にいるか、分からないね!

 春は今日あった楽しかったことを一生懸命に話してくれている。その傍に、美しいマーガレットのハーバリウムが、西日に照らされて、輝いている。

 僕はそんな可愛い恋人にそっと、キスをした。

「ねぇ、春、僕とっても、幸せだよ!」

 そう言って僕らは、柔らかく微笑み合った。
 傍らで、『ロミオとジュリエット』が切ない青春の名残を残していた。


  ~完~
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