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募る寂しさ
しおりを挟む近衛が研修に行ってから三日目。
「はぁぁ..................」
リビングの中に大きな光琉のため息が響いた。
「うーー」
光琉は唸ると、項垂れるようにソファーに深くもたれかかる。
TVにはいつも近衛と一緒に見ているバラエティー番組が流れてた。いつもは声を出して笑っているのに、今日は全然頭に入ってこない。
「このえせんぱぁぃ............」
無意識に愛しい彼の名前が口から零れ落ちる。その声はまるでキューンと鳴く犬のように、とても寂し気なものだった。
『一週間なんてあっという間』近衛を宥めるためとはいえ、そう言った自分の言葉を光琉はすでに後悔し始めていた。たかが一週間、されど一週間。光琉はソファーの上で三角座りをすると膝をギュッと抱きしめた。
視線の先に手首についたキスマークが見える。それはすっかり薄くなっていた。
「キスマークって案外早く消えちゃうんだな............」
そんなものなのか、光琉の新陳代謝がいいのかは分からないが、薄くなった痕に光琉は寂し気な表情を浮かべる。
考えたら一週間も会わないなんて、以前光琉が近衛の愛犬まめを近衛の好きな人だと思い、自分はその人に似ているから近衛が大事にしてくれるのだと勘違いして距離をとった時以来だ。あの時もとても会いたかったが、それ以外に頭の中を不安が占めていて逆に一週間があっという間だった。
両思いだと分かり恋人になってからは、好きなやつとは四六時中一緒にいたいという近衛の言葉通り、ずっと一緒にいるので、どうしても近衛が側にいないという状態が落ち着かない。
(落ち着かない、というか......)
正直、めちゃくちゃ寂しかった。近衛に抱きしめて欲しくて堪らない。あの太陽のように温かい腕の中に包まれて、近衛の温もりを全身で感じたい。近衛が研修に行って三日目で、光琉はすでに寂しくて根を上げそうだった。LINNはくるが、やはり研修が忙しいのか普段の近衛からしたら連絡は少ない方だった。
きっと近衛のことだ、光琉が寂しいと言えば、自分の睡眠時間を削ってでも夜に電話をして光琉が満足するまで付き合ってくれるだろう。それもきっと「光琉が寂しいって思ってくれて嬉しい」と喜んで自分から進んでそうしてくれる。そのぐらい近衛は優しくて温かい人だ。
だけど近衛は自分の夢を実現するため、勉強のために研修に行っている。それを光琉も心から応援しているし、人のことには敏感なのに、どこか自分自身のことはないがしろにする近衛をいつも心配している。
それが分かっているからこそ、光琉は寂しいなんて口にできなかった。
抱えた膝に光琉は顔を埋めた。
「......そうだ...........」
不意に光琉はあることに思いついてパッと顔を上げる。そしてソファーから立ち上がると、自分たちの部屋がある二階に続く階段を駆け上がった。
そして光琉は自分の部屋......ではなく、その横にある近衛の部屋のドアを開けた。
「お邪魔します、近衛先輩......」
本人がいないのに律儀に挨拶をして光琉は中に入る。そしてキョロキョロと部屋を見渡した。
「あっ......」
そしてあるものを見つけてパァァーッと顔を輝かせた。
椅子の背もたれにかけられたそれを手に取ると、光琉はいそいそとそれを羽織った。
それは近衛が部屋着で着ているパーカーだった。袖を通してフロントジッパーを締める。
「わぁ......」
自分の体には大きいブカブカのパーカー。光琉の腕をすっぽりと包み込む袖の長さ、そして微かにふわりと近衛の匂いが舞う。まるで近衛に包まれているように感じて、一瞬で蕩けるような安心感が光琉を包んだ。目を閉じれば、大きい近衛の体に、後ろから抱きしめられているような感覚に襲われた。
「近衛先輩だぁ......」
余った袖を口元に宛て、光琉はふふと微笑む。
羽織ったパーカーをギュッと抱きしめて、光琉はルンルン気分でリビングに戻った。
さっきまで全く頭に入らなかったバラエティー番組が、今度はちゃんと面白く感じる。光琉は近衛のパーカーにすりすりと頬を寄せながら上機嫌でTV画面を見つめた。
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