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早く会いたい
しおりを挟む「ふーーっ」
近衛は新幹線の席に深く腰かけると大きく息を吐いた。ネクタイを解き無造作にカバンに突っ込み、シャツのボタンを外して首元を緩める。
(なかなかハードだったな)
研修期間中はスケジュールがびっしりと組まれていた。夜は夜でその日の復習、そして明日の予習に費やしていたので、睡眠時間もあまりとっていない。
襲ってくる睡魔と疲労に、シートに頭を預けてもう一度深く息を吐き出した。
(まあ、寝る時間が短いのはいつものことだけど)
疲労を感じる体をどこか他人事のように思いながら瞳を閉じると、眼裏に愛しい姿が浮かんできた。それは疲れた近衛を見つめ、眉毛を下げとても心配そうに近衛を見つめていた。自分を想う愛らしい姿に、自然と近衛の口元が弧を描く。
近衛はスーツの内ポケットからスマホを取り出し、待ち受けを見て盛大に頬をニヤケさせた。
そこには、昔買っていた愛犬のまめの写真、それと近衛の可愛い恋人光琉の写真があった。大学の牧場の動物たちと一緒に写っている光琉を愛し気に見つめる。何度見ても可愛らしいその姿に、研修での疲れが癒されていくのを感じる。
(まめも光琉も動物たちも俺の家族だ。ほんと可愛い)
ふふと笑みが自然に沸いてくる。すっかり光琉のいるあの牧場が、近衛の帰る場所になっていた。
(早く会いたい......ひかる)
急激に愛しさがこみ上げてくる。画面をタップして近衛は光琉にLINNを送った。メッセージはすぐに既読がつき、光琉からの返事が返ってくる。
『気を付けて帰ってきてね。俺も、早く近衛先輩に会いたい......はやく抱きしめて欲しい』
「っ......」
帰ってきたメッセージに近衛はドキッとする。あまりに可愛らしい言葉に、嬉しさと愛しさが込み上がり幸せな気分が体全部に広がっていく。
(やべ......俺の恋人めちゃくちゃ可愛い。可愛すぎる)
口元が緩むのを抑えきれず、近衛は慌てて手で押さえた。
その文面だけで、一瞬で疲れが吹っ飛ぶ。ハードな研修も睡眠時間を削ることさえ、光琉を守る糧になるのだと思うと、どれだけ大変だとしても、簡単なことのように思えてくるから不思議だ。
愛し気に画面を見つめてから、近衛はスマホを閉じると視線を窓の外に向けた。
(今日中に帰れてよかった)
研修のご褒美として、ホテルはもう一泊とってあり他の学生たちは明日名古屋を観光してから帰る予定だが、近衛にとってのご褒美は光琉以外の何物でもなく、挨拶まわりを終わらせた近衛は早々に新幹線に飛び乗った。早く柔らかくて温かい光琉に触れたい。そう考えながら、何をするでもなく窓際に頬杖を付いて、近衛はボーッと外を眺める。
『狼上くんみたいな天才が僕の元についてくれたらとても助かる』
ふと病院を出る前に加藤にかけられた言葉が頭を過ぎった。それを思い出し、近衛はどこか遠くを見るような瞳になった。
(天才、か......)
近衛は思わず苦笑を浮かべる。
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