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1億日ぶりの有休

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「はい、次の方ー!」

 私、エーレインは順番待ちをする魂を呼んだ。

「前世の徳と罪は……あー、なるほど。来世ではWA20201の惑星、両親は普通の村人になりますね。はい。すみませんが、勇者に転生するにはちょっと徳が足りません。規則なので……」

 書類を見てから私はさっさと魂の転生先を決める。
 機械を操作して魂を転生させるとため息をついた。

「あああ~~~~~~、死にたい」

 神様でも死にたくなる時があるの。
 でも、死ねないのよね。神だから。
 無駄に丈夫な体だから不眠不休で労働できるのよ。かれこれ何年……え?
 私は次の魂を待たせたまま端末機を操作した。
 私って何日くらい連勤してるんだっけ?
 ずっと照明の付いた部屋で働いてると時間の感覚が曖昧になるのよ。
 画面に表示された数字を見る。

 勤務時間 2400000000時間

 目をこすってもう一度ゼロを数える。
 24億時間?つまり1億日?待って。そんなに働いてたの?そんな女神が他にいる?
 みんな、休憩も有休を取ってる中で私だけ魂魄転生局から出ずに働き続けてたの?

「マジで……?」

 そんなマヌケな声も出るわよ。
 そしてようやく自覚する精神的疲労感。

「我ながら見事な社畜になったものね。あははは……あははははは!」

 私は椅子から立ち上がると赤いボタンを押した。

「もう休む!1万日くらい休むから!」

 ビイイイイイッと大きなブザーが鳴って今まで魂が入ってきたドアがロックされる。すぐに他の部屋にいる100万人ほどの転生女神の誰かに仕事が移るはず。私は端末機で有休の申請を出し、部屋から出た。
 魂魄転生局に宿舎があるけど、そんなところには帰らない。
 どうせ友達いないし、私には仕事を忘れてのんびりするための場所が必要なんだから。
 みんなと顔を合わせたくないので神が一切干渉しない下界、廃棄世界と呼ばれる場所はぴったりね。
 転送局でぱぱっと手続きを取った私は転移装置の上に立ち、光のシャワーに包まれた。
 さらば、我が社!
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