僕の友達がマンホールに住んでた。

七部(ななべ)

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僕の友達がマンホールに住んでた。

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Bucharest in April,2000.   This is a story  of two boys.

「今日お前んち遊びに行ってもいい?」
「なんでさ、嫌だよ。」
「この前何度も僕んちいったろ?親友なんだから、別にいいだろ。」
「嫌だよ。理由は、ないけど。」
「なんでだよ!着いてくぞ!」
「…分かった。びっくりするなよ。」
「うん、分かったけど。」

どんどん街並みから離れていく。荒廃していく住宅、タトゥーの入った人や地に寝ている人が増えてある予感がした。
「なぁ、これってひょっとして、スラム街…」
「ああそうだ、はここ、フェレンタリにある。」
フェレンタリ地区、ブカレストの中でも特に治安が悪く、人身売買、売春が横行している最悪の街だ。スラムに来たのは生まれて初めて。多分人生で一度きりになる体験だろう。
更に歩いていく。スプレー缶で描かれている壁に子供が1人で物乞いをしている情景が目に映る。なんて可哀想なんだろう。自分の人生を恨む。
「ここ。」
「え?ここ!?」
「入るよ。」
「え!え?!」
彼の指差す方はマンホール。手慣れてようにマンホールの中に入っていく彼。こんなところに一体家なんてあるのだろうか、地下にある家なのだろうか。
マンホールの中はほこりが舞っているようで何度か咳払いをした。
「おい、咳をするな!」
普段は温厚な彼がとてつもない形相でそう言った。
「おい、誰だ!!」
「ごめんboss。これは僕の大切な親友だ。どうか傷付けないでおくれ。」
boss。どういうことなんだ。彼は親のことをbossと呼んでいるのか。
地面に着く。横に放射状にある管を見る。そこにはとんでもない情景があった。
人だ。人がぎゅうぎゅう詰めになって居る。
「僕の家はここ。マンホールの下なんだ。」
「一体どういうことなんだい?」
「僕は小さい頃から親が居なくてね。地上で泣いていたところをbossが拾ってくれたんだ。それでみんなでここでくれしてる。ほら、テレビだってあるんだよ!」
今まで思っていた彼のイメージが違いすぎて困っている。確かにそこにはテレビがある。新品そうなテレビだが、テレビからは哀愁が発信しているような気がしてやまなかった。



Winter of 1989

ヨーロッパは比較的温暖だとされ、雪はあまり降らなかった。その代わり、ルーマニアでは弾が降り注いでいた。
12月21日、ルーマニアには労働者と軍との間で衝突が起きていた。軍は容赦なく銃弾を市民に当て、虐殺を繰り返していた。
そして翌22日。ルーマニア社会主義共和国の指導者、チャウシェスクとその妻が起訴され、銃殺刑で殺された。これはコンプラが甘かった当時の日本でも放送され、モザイク無しの死刑の瞬間が生々しく報道された。これにて、が終わり、ルーマニアは民主主義に切り替わった。
一件、明るい未来が待っているようだが、そうではない。
チャウシェスク政権の時に行った人口増加計画で子供が急増し、その子供の扶養に耐えれなくなった親の一部が路端に捨てる。という事態になってしまったんだ。きっと彼もその一部なんだろう。

「新しいテレビだね!うちにはないよそんなもの。」
「でも、家はあるよね。」
この言葉から受け取った悲しさは言葉でその大きさを表せなかった。それほど大きく、僕の心を大きく揺さぶられた。
「よし、毎日ここに通わせてくれ。お金だってやるさ。」
「本当かい?ありがとう、あなたにこの事実を教えてよかった。」
彼のこの言葉からは、見たことないような期待が込められていた。









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