1 / 1
僕の友達がマンホールに住んでた。
しおりを挟む
Bucharest in April,2000. This is a story of two boys.
「今日お前んち遊びに行ってもいい?」
「なんでさ、嫌だよ。」
「この前何度も僕んちいったろ?親友なんだから、別にいいだろ。」
「嫌だよ。理由は、ないけど。」
「なんでだよ!着いてくぞ!」
「…分かった。びっくりするなよ。」
「うん、分かったけど。」
どんどん街並みから離れていく。荒廃していく住宅、タトゥーの入った人や地に寝ている人が増えてある予感がした。
「なぁ、これってひょっとして、スラム街…」
「ああそうだ、俺の家はここ、フェレンタリにある。」
フェレンタリ地区、ブカレストの中でも特に治安が悪く、人身売買、売春が横行している最悪の街だ。スラムに来たのは生まれて初めて。多分人生で一度きりになる体験だろう。
更に歩いていく。スプレー缶で描かれている壁に子供が1人で物乞いをしている情景が目に映る。なんて可哀想なんだろう。自分の人生を恨む。
「ここ。」
「え?ここ!?」
「入るよ。」
「え!え?!」
彼の指差す方はマンホール。手慣れてようにマンホールの中に入っていく彼。こんなところに一体家なんてあるのだろうか、地下にある家なのだろうか。
マンホールの中はほこりが舞っているようで何度か咳払いをした。
「おい、咳をするな!」
普段は温厚な彼がとてつもない形相でそう言った。
「おい、誰だ!!」
「ごめんboss。これは僕の大切な親友だ。どうか傷付けないでおくれ。」
boss。どういうことなんだ。彼は親のことをbossと呼んでいるのか。
地面に着く。横に放射状にある管を見る。そこにはとんでもない情景があった。
人だ。人がぎゅうぎゅう詰めになって居る。
「僕の家はここ。マンホールの下なんだ。」
「一体どういうことなんだい?」
「僕は小さい頃から親が居なくてね。地上で泣いていたところをbossが拾ってくれたんだ。それでみんなでここでくれしてる。ほら、テレビだってあるんだよ!」
今まで思っていた彼のイメージが違いすぎて困っている。確かにそこにはテレビがある。新品そうなテレビだが、テレビからは哀愁が発信しているような気がしてやまなかった。
Winter of 1989
ヨーロッパは比較的温暖だとされ、雪はあまり降らなかった。その代わり、ルーマニアでは弾が降り注いでいた。
12月21日、ルーマニアには労働者と軍との間で衝突が起きていた。軍は容赦なく銃弾を市民に当て、虐殺を繰り返していた。
そして翌22日。ルーマニア社会主義共和国の指導者、チャウシェスクとその妻が起訴され、銃殺刑で殺された。これはコンプラが甘かった当時の日本でも放送され、モザイク無しの死刑の瞬間が生々しく報道された。これにて、ルーマニア革命が終わり、ルーマニアは民主主義に切り替わった。
一件、明るい未来が待っているようだが、そうではない。
チャウシェスク政権の時に行った人口増加計画で子供が急増し、その子供の扶養に耐えれなくなった親の一部が路端に捨てる。という事態になってしまったんだ。きっと彼もその一部なんだろう。
「新しいテレビだね!うちにはないよそんなもの。」
「でも、家はあるよね。」
この言葉から受け取った悲しさは言葉でその大きさを表せなかった。それほど大きく、僕の心を大きく揺さぶられた。
「よし、毎日ここに通わせてくれ。お金だってやるさ。」
「本当かい?ありがとう、あなたにこの事実を教えてよかった。」
彼のこの言葉からは、見たことないような期待が込められていた。
「今日お前んち遊びに行ってもいい?」
「なんでさ、嫌だよ。」
「この前何度も僕んちいったろ?親友なんだから、別にいいだろ。」
「嫌だよ。理由は、ないけど。」
「なんでだよ!着いてくぞ!」
「…分かった。びっくりするなよ。」
「うん、分かったけど。」
どんどん街並みから離れていく。荒廃していく住宅、タトゥーの入った人や地に寝ている人が増えてある予感がした。
「なぁ、これってひょっとして、スラム街…」
「ああそうだ、俺の家はここ、フェレンタリにある。」
フェレンタリ地区、ブカレストの中でも特に治安が悪く、人身売買、売春が横行している最悪の街だ。スラムに来たのは生まれて初めて。多分人生で一度きりになる体験だろう。
更に歩いていく。スプレー缶で描かれている壁に子供が1人で物乞いをしている情景が目に映る。なんて可哀想なんだろう。自分の人生を恨む。
「ここ。」
「え?ここ!?」
「入るよ。」
「え!え?!」
彼の指差す方はマンホール。手慣れてようにマンホールの中に入っていく彼。こんなところに一体家なんてあるのだろうか、地下にある家なのだろうか。
マンホールの中はほこりが舞っているようで何度か咳払いをした。
「おい、咳をするな!」
普段は温厚な彼がとてつもない形相でそう言った。
「おい、誰だ!!」
「ごめんboss。これは僕の大切な親友だ。どうか傷付けないでおくれ。」
boss。どういうことなんだ。彼は親のことをbossと呼んでいるのか。
地面に着く。横に放射状にある管を見る。そこにはとんでもない情景があった。
人だ。人がぎゅうぎゅう詰めになって居る。
「僕の家はここ。マンホールの下なんだ。」
「一体どういうことなんだい?」
「僕は小さい頃から親が居なくてね。地上で泣いていたところをbossが拾ってくれたんだ。それでみんなでここでくれしてる。ほら、テレビだってあるんだよ!」
今まで思っていた彼のイメージが違いすぎて困っている。確かにそこにはテレビがある。新品そうなテレビだが、テレビからは哀愁が発信しているような気がしてやまなかった。
Winter of 1989
ヨーロッパは比較的温暖だとされ、雪はあまり降らなかった。その代わり、ルーマニアでは弾が降り注いでいた。
12月21日、ルーマニアには労働者と軍との間で衝突が起きていた。軍は容赦なく銃弾を市民に当て、虐殺を繰り返していた。
そして翌22日。ルーマニア社会主義共和国の指導者、チャウシェスクとその妻が起訴され、銃殺刑で殺された。これはコンプラが甘かった当時の日本でも放送され、モザイク無しの死刑の瞬間が生々しく報道された。これにて、ルーマニア革命が終わり、ルーマニアは民主主義に切り替わった。
一件、明るい未来が待っているようだが、そうではない。
チャウシェスク政権の時に行った人口増加計画で子供が急増し、その子供の扶養に耐えれなくなった親の一部が路端に捨てる。という事態になってしまったんだ。きっと彼もその一部なんだろう。
「新しいテレビだね!うちにはないよそんなもの。」
「でも、家はあるよね。」
この言葉から受け取った悲しさは言葉でその大きさを表せなかった。それほど大きく、僕の心を大きく揺さぶられた。
「よし、毎日ここに通わせてくれ。お金だってやるさ。」
「本当かい?ありがとう、あなたにこの事実を教えてよかった。」
彼のこの言葉からは、見たことないような期待が込められていた。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
アルファポリスとカクヨムってどっちが稼げるの?
無責任
エッセイ・ノンフィクション
基本的にはアルファポリスとカクヨムで執筆活動をしています。
どっちが稼げるのだろう?
いろんな方の想いがあるのかと・・・。
2021年4月からカクヨムで、2021年5月からアルファポリスで執筆を開始しました。
あくまで、僕の場合ですが、実データを元に・・・。
24hポイントが0だった作品を削除し再投稿したらHOTランキング3位以内に入った話
アミ100
エッセイ・ノンフィクション
私の作品「乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる」がHOTランキング入り(最高で2位)しました、ありがとうございますm(_ _)m
この作品は2年ほど前に投稿したものを1度削除し、色々投稿の仕方を見直して再投稿したものです。
そこで、前回と投稿の仕方をどう変えたらどの程度変わったのかを記録しておこうと思います。
「投稿時、作品内容以外でどこに気を配るべきなのか」の参考になればと思いますm(_ _)m
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる