ありふれたこの世界であの王冠を手にしたい。

天智学

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第十四話

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「父上」
「どうした?ラディウス」

 会が解散となり、その場には僕だけが残っている。にも関わらず厳格な雰囲気を保ったままの父上に少し萎縮しながらも、跪いたまま僕は口を開く。

「実力以外にも経験など様々な要因があることは理解しております。ですが……」
「なぜお前を護衛の任に就けなかったのか、か?」

 核心をついた言葉に僕は反射的に「はい」とだけ答える。

「理由はいくつかある。一番の理由はお前には実戦経験が足りないことだ。確かに、同年代の戦士と比較すればお前はかなりの実力を持っている。それに、ドラゴンを倒したという実績もある。だが、戦場は優しい世界じゃない」

 父上の言葉に僕は何も言い返すこともできずに目を細めた。
 父上の言葉は何も間違っていなかった。僕はまだ戦いの厳しさをほとんど知らない。

「しかし、僕は―」
「焦る気持ちは分かる。だが、お前はまだ怪我も治っていない。それに、お前はこの国にたった一人だけの王子だ。無理をさせるわけにはいかない」

 納得するしかなかった。しかし、僕は許せない。ルクスをあれだけ傷つけた奴らが。名も知らぬ彼を唆した奴らが。
 僕は頭をフル回転させ、少し考えた末に口を開いた。

「お言葉ですが父上。今の王国には圧倒的に戦力が不足しているように思います」
 僕の言葉に父上は「ほう」と言って肘に顎を置いた。

「それで、お前はどうしたいのだ」

 父上の言葉に僕は少し間を置いてから答える。

「僕が危険に晒されないためにも、僕に仲間を集める機会をお与えください」
「いざというとき、支え合える仲間を集めます。それが結果的に王国のためになると存じます」

 僕の言葉に父上は沈黙を返し、顎を擦った。

「ふむ。して、あてはあるのか?」
「ありません。ですので、僕はあくまで遊撃隊として動きたく思います」

 僕の言葉に父上は姿勢を崩しながらため息をついた。

「それを余が許可するとでも思っているのか?ラディウス」

 父上のその言葉には圧倒的な威圧感があった。
 思わず顔を上げれば、そこには果てしないほどの魔力を放つ父上の姿があった。
 まるで雷を体現したようなその姿に、恐怖からか僕の額から汗が滴り落ちる。

「確かに、現状の僕の実力を考えれば危険な賭けかもしれません。ですが父上。守護王も四獣の護衛で手一杯。ルクスですら重傷を負って動けない。そんな状況で敵にされるがままで国が守れますか?」

 僕の言葉に父上は魔力を鎮めてから冷静に口を開く。

「言いたいことは分かる。だがそれをお前がする必要はない」
「僕以外に誰がやるというのですか!最上級剣士ですか?完成魔導師ですか?どちらも遠征に出ていてあてにならないではないですか!」

 父上の言葉に僕は叫んだ。口を開くたびに恐怖を噛み締めた。僕は生まれてからずっと父上の好意に甘えてばかりいた。だけど、それじゃあダメなんだ。
 父上が何か言おうと口を開いた瞬間、扉の開く音が響いた。その音に振り返ると、そこには包帯の上にいつものロングコートを羽織るルクスと、それを支えるレントの姿があった。
 無言でレントに目をやると、グッドポーズと共にウインクが返ってきた。

「ルクス、レント。一体どうしてここに来た」

 父上は冷静を装ってそう言った。それに対してルクスは体を押さえながら口を開く。

「いやぁ、ラディウスを国に置くって判断をしたって聞きましてねぇ」

 ルクスの言葉に父上は「それが何か?」という様子で閉口し、堂々と椅子に座っていた。

「確かに、そいつはまだまだ弱いですよぉ」

 僕はその言葉を俯きながら事実を受け入れる。しかし、「だが」とルクスが声を上げる。

「ラディウスは必ずこの国を救う英雄になる。あなたを超える英雄王に必ずなる。だからこそ、やりたいことをさせてやってくれませんか」

 そう言うとルクスはレントの肩から腕を外し、ボロボロの身体で跪いた。
 それに乗じるようにしてレントも跪く。

「父上、必ず役に立ってみせます」

 僕は一切の迷いもなく父上を見つめた。
 何秒間か見つめ合った後、父上がため息をつく。

「しょうがないなぁ。ラディウスは。分かった。ラディウスの特別行動を許可する」

 半ば呆れたように放たれたその言葉に僕たちは一斉に顔を上げた。

「しかし、絶対に無理をするなよ。お父さん心配になっちゃうから!」

 先ほどまでの威厳はどこに行ってしまったのかを問いただしたくなるほどいつも通りの口調で父上が言った。

「それは陛下のおっしゃる通りだ。ラディウス、死んだら殺すからなぁ」

 ルクスが鋭い眼光で睨みつけながら言った。僕は思わず「はい!」と裏返った声で返事をする。
 その様子にルクスとレントは笑みをこぼし、父上は頷く。

「それと、仲間を最低二人は集めるんだ。そして、その間に強くなれ。そして死ぬな。これが最低条件だ」
 父上は再び威厳に満ちあふれた形相で語るように言った。
 その言葉に僕は改めて姿勢を正し、「はっ!」と返事をする。
 そんな僕の緊張をほぐすかのように、穏やかな様子で父上が言った。

「まぁ、いざとなったらお父さんが助けてやる。ラディウスがどこにいても、俺が死ぬことになってもな」

 父上の言葉に「ありがとうございます」と言いかけたその瞬間、ルクスが割って入るように口を開く。

「陛下、それは俺の役目ですので。陛下の出番はありません」

 敬っているはずなのにどこか挑発的に感じるルクスの口調にまんまと乗っかるように父上は立ち上がる。

「何を!そんなボロボロの身体で何を言うか!」
「陛下こそもうまともに戦えないんじゃないですかぁ?なんなら今から勝負しますかぁ」
「いい度胸じゃないかルクス。三ヶ月半は入院させてやる」
「上等ですよ。老後常に腰が痛むくらいボコボコにしてあげます」

 火花を散らすような二人の攻防に気圧されながらも、僕は口を開く。

「そんなことより!!ルクス、敵の詳細を教えてくれないか?」

 僕の言葉にルクスはハッとしたような表情を見せた後、先ほどまでとは打って変わって俯きながら「あぁ」と返した。
 そして、一呼吸間を置いてからルクスが語り始める。
 次にルクスから語られたのは、衝撃的な話だった―。
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