装いは完璧。心の声までは直せません

たけのこ

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2 ミリアという子

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「おねえちゃまのぬいぐるみ、ほしいの。わたしのと交換して」

「……これは、母様にいただいた大切なものよ。大事にしたいの」

「やだぁぁぁああああ!! おねえちゃまばっかり!!ずるい」

ミリアは幼少期からわたしの物をほしがり、いつも屋敷にはミリアの叫び声が響いていた。

ミリアは後妻の子としてフェルマータ公爵家の子になったいわば義妹だ。


義母は分別のわかる方ですぐにミリアを低い声で叱った。

「ミリア、リシェルのものを欲しがってはいけません。これはあなたにあげたものとは違うわ。リシェルの物はリシェルの物よ」

「でもぇ……でもぉ……ひどいぃ……!」

(“ひどい”のはあなたの頭の悪さでしょ)

リシェルはにこりと笑いながら、ミリアの頭をそっと撫でる。

「ミリア、今度一緒にお人形さんを作りましょう? あなたの分は、私が特別に作ってあげる」

「ほ、ほんとぉ?」

「ええ。あなたのものは、あなたらしく可愛くしないとね」

(私のものを壊されるよりマシだわ)

リシェルは、すでに学んでいた。
この妹には**「拒否」ではなく、「別のものを与えて逸らす」**のが最も効果的なのだと。

ミリアの「ずるい」は年齢とともに、質を変えていった。

公爵夫妻は、その都度ミリアを注意した。
父は厳しい声で「他人のものを欲しがるのは卑しいことだ」と叱り、母は「リシェルの真似ばかりせず、自分の美点を育てなさい」と諭した。

だが、ミリアは言葉の意味など理解しない。

彼女は常に「姉はずるい」「姉ばかり可愛がられている」と被害者意識を膨らませていた。

(ミリア、あなたが私を憎く思えば思うほど、私は“演技”を上達させるわ)

リシェルは妹の行動すべてを把握していた。

本を読むふりをしながら、ドアの隙間に耳をすませ、家令や侍女の噂話にもさりげなく耳を貸す。

そして、彼女は確信した。

ミリアは、リシェルの人生を奪いたがっている。
ただ「同じものが欲しい」のではなく、「姉より上に立ちたい」のだ。

その最たる獲物が、王太子アルベルトだった。

ミリアはリシェルの婚約者である彼に近づき、王太子の興味を得た。

アルベルトの方も浅はかで、「可憐な妹」にすっかり夢中になった。

リシェルは笑顔で、何も言わなかった。

(いいわ。あなたが王太子と遊ぶ分には、むしろありがたい。私は王太子には何も興味がないから。政務もやらない、頭を使わない、体力もない、魅力的なのは、見た目だけ?見た目も私の好みではないわ。だから、こちらに好意を向けられても困るのよね。
なぜ彼が王太子でいられるのか
それは私が婚約者だからよ)


ミリアはついに“最後の一手”を打とうとしている。
王太子との共謀で、リシェルをパーティーで“公衆の面前で破滅させる”計画らしい。

だがリシェルは、すべて知っている。

王宮の使用人たちの口から、少しずつ情報は流れ込んでいた

(情報が漏れるなんて、本当にお粗末だわ。)

王太子も、妹も。
いずれ、自分の欲と浅知恵で滅びる日が来る。

リシェルは今日も、完璧な笑顔でティーカップを口に運んだ。
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