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エーリオと絶妙な状況で再会!? 私、絶望。
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「そう言えば、エーリオって呪いのせいで部屋に閉じ込められてるんじゃなかったっけ?」
私の尋ねたこの質問には、「どうかエーリオ来ないでくれ」という願いと、「でも来なければ私は、キッチンの床に生えたオブジェ状態で誰かに殺されてしまいそうで困る」という相反する気持ちが両方込められていて、なんだか泣きたくなってしまった。なのにチェルヒェはニヤニヤ笑ってばかりいる。お前は良いさ、エーリオの使い魔のお前はエーリオだって手酷く扱いはしないし、城の人も命を狙うことは無いんだから。気づけば私はチェルヒェのことをジトーと見つめていた。
「閉じ込められているのと、そこから出ないっていうのは別物なのだよ、アリス」
そこへチェルヒェが諭すように言ってきた。意味の分からなさは通常運転だ。私からすれば、「閉じ込められている=そこから出ない」という等式が成り立つのだけれど。まぁ、深く考えれば頭が痛くなってしまう。チェルヒェがそう言うなら、そう言うことなのでしょう。つまり……。
「エーリオ必ず来てくれるわけね?」
私が問うと、チェルヒェはにこやかに頷いた。嬉しいような、嫌なような、どっちともつかない気持ちがやはり私の内を支配した。
「はぁ……」
ため息しか出てこない。「ため息つくと、幸せが逃げちゃうよ」なんて、よくポジティブな友達にたしなめられていたっけか。けれどね、これは豆知識なのだけれど、ため息つくとストレスが緩和されるんだぞ。寧ろ、ため息つくのは良いことなのだ。つまり私の今の状況は、ため息をつかないと精神が保てない、ストレスマックスの状態だった。
それはそうと、
「さっき私の命を狙ってきた女の子は、誰だったの?」と、私はチェルヒェに解説を求めた。
「あれは、お妃様だね」
あっさりとした、チェルヒェの返事。私も「そうか」とさらっと受け入れ……。
「っえ? エーリオのお母さん、若すぎない?」
受け入れられなかった。だって明らかにティーンエイジャーにしか見えなかったのだもの。しかし、私のツッコミにチェルヒェはアッハと笑い出す。
「あれは、魔女さ。魔法を使えば若返りなんて訳ないのさ」
チェルヒェは私に、馬鹿のことを聞くなと言いたげだった。しかし、あれが妃で魔法の達人だったならば、
――それなら、私を殺すために魔法でも手下でも使えばいいのに。
ちょっと思ってしまった。
「そりゃ、恥ずかしいんだろ。永遠の美しさは欲しいけれど、それを求める自分は愚かしく見えてしまう。だから、不老不死の肉を手に入れるために、手下に命令もできないし、自分が手を下したという痕跡も残せない」
ああするしかできないのさ。とちょっと納得な返答が……上から降ってきた。
恐る恐るに上に目を向けてみる。黒の髪に、黒の瞳。エーリオがそこに立っていた。
「やぁ、エーリオ。助けて欲しいんだ」
チェルヒェが明るい口調で彼に呼びかけ、私は、床に埋まったこの姿に羞恥を思い出し、少し俯く。
どうしよう……性格の悪いエーリオのことだ。この姿を馬鹿にするに決まってる。チェルヒェだけ助け出して、私はそのままに去ってしまうかも。それとも、動けないことを良いことに嬲り殺すか? いやいや、床に刺さった豚に変えてしまって、後でコックがヤッタヤッタと喜び勇んで調理に励むのを高みの見物するかもしれない。
羞恥から絶望へと、私の考えは悪い方へと巡っていった。
「そこまでしねーよ」
すると、またもや思考を読んだエーリオの声が降ってくる。そして、魔法を使って私を綺麗に床から脱出させてくれたようだった。
「あ、ありがとう」
私は、一応、お礼を言った。
「いいさ」
エーリオはそれだけ言って、私にツカツカ近寄ってくる。
顔が近づき、私は反射的にぎゅっと目をつぶる。
金木犀のような甘い香りがふわっと漂い、肩と頭を優しく抱かれた。
そして、私のうなじに口づけの感触。
私の頭はその出来事を処理できなくてオーバーヒート。心臓はバクバクと煩く身体を震わせる。
辛うじて、僅かな理性が、彼を突き放した。
「なっ、何をするの?」
私が問うと、エーリオはにっこり微笑み、
「俺のものを誰かの勝手で殺されても、面白くないからな。ちょっとした、まじないだ」と目を細めて言った。
そして、「これでも身に着けてると良い」と黒真珠の玉が連なったようなブレスレットを私の手首に巻き付けた。
そして、「じゃあな」とフッと消えた。エーリオの真意が分からず、私は立ち尽くすばかり。
そこへ、私のお腹がグウとなった――。
私の尋ねたこの質問には、「どうかエーリオ来ないでくれ」という願いと、「でも来なければ私は、キッチンの床に生えたオブジェ状態で誰かに殺されてしまいそうで困る」という相反する気持ちが両方込められていて、なんだか泣きたくなってしまった。なのにチェルヒェはニヤニヤ笑ってばかりいる。お前は良いさ、エーリオの使い魔のお前はエーリオだって手酷く扱いはしないし、城の人も命を狙うことは無いんだから。気づけば私はチェルヒェのことをジトーと見つめていた。
「閉じ込められているのと、そこから出ないっていうのは別物なのだよ、アリス」
そこへチェルヒェが諭すように言ってきた。意味の分からなさは通常運転だ。私からすれば、「閉じ込められている=そこから出ない」という等式が成り立つのだけれど。まぁ、深く考えれば頭が痛くなってしまう。チェルヒェがそう言うなら、そう言うことなのでしょう。つまり……。
「エーリオ必ず来てくれるわけね?」
私が問うと、チェルヒェはにこやかに頷いた。嬉しいような、嫌なような、どっちともつかない気持ちがやはり私の内を支配した。
「はぁ……」
ため息しか出てこない。「ため息つくと、幸せが逃げちゃうよ」なんて、よくポジティブな友達にたしなめられていたっけか。けれどね、これは豆知識なのだけれど、ため息つくとストレスが緩和されるんだぞ。寧ろ、ため息つくのは良いことなのだ。つまり私の今の状況は、ため息をつかないと精神が保てない、ストレスマックスの状態だった。
それはそうと、
「さっき私の命を狙ってきた女の子は、誰だったの?」と、私はチェルヒェに解説を求めた。
「あれは、お妃様だね」
あっさりとした、チェルヒェの返事。私も「そうか」とさらっと受け入れ……。
「っえ? エーリオのお母さん、若すぎない?」
受け入れられなかった。だって明らかにティーンエイジャーにしか見えなかったのだもの。しかし、私のツッコミにチェルヒェはアッハと笑い出す。
「あれは、魔女さ。魔法を使えば若返りなんて訳ないのさ」
チェルヒェは私に、馬鹿のことを聞くなと言いたげだった。しかし、あれが妃で魔法の達人だったならば、
――それなら、私を殺すために魔法でも手下でも使えばいいのに。
ちょっと思ってしまった。
「そりゃ、恥ずかしいんだろ。永遠の美しさは欲しいけれど、それを求める自分は愚かしく見えてしまう。だから、不老不死の肉を手に入れるために、手下に命令もできないし、自分が手を下したという痕跡も残せない」
ああするしかできないのさ。とちょっと納得な返答が……上から降ってきた。
恐る恐るに上に目を向けてみる。黒の髪に、黒の瞳。エーリオがそこに立っていた。
「やぁ、エーリオ。助けて欲しいんだ」
チェルヒェが明るい口調で彼に呼びかけ、私は、床に埋まったこの姿に羞恥を思い出し、少し俯く。
どうしよう……性格の悪いエーリオのことだ。この姿を馬鹿にするに決まってる。チェルヒェだけ助け出して、私はそのままに去ってしまうかも。それとも、動けないことを良いことに嬲り殺すか? いやいや、床に刺さった豚に変えてしまって、後でコックがヤッタヤッタと喜び勇んで調理に励むのを高みの見物するかもしれない。
羞恥から絶望へと、私の考えは悪い方へと巡っていった。
「そこまでしねーよ」
すると、またもや思考を読んだエーリオの声が降ってくる。そして、魔法を使って私を綺麗に床から脱出させてくれたようだった。
「あ、ありがとう」
私は、一応、お礼を言った。
「いいさ」
エーリオはそれだけ言って、私にツカツカ近寄ってくる。
顔が近づき、私は反射的にぎゅっと目をつぶる。
金木犀のような甘い香りがふわっと漂い、肩と頭を優しく抱かれた。
そして、私のうなじに口づけの感触。
私の頭はその出来事を処理できなくてオーバーヒート。心臓はバクバクと煩く身体を震わせる。
辛うじて、僅かな理性が、彼を突き放した。
「なっ、何をするの?」
私が問うと、エーリオはにっこり微笑み、
「俺のものを誰かの勝手で殺されても、面白くないからな。ちょっとした、まじないだ」と目を細めて言った。
そして、「これでも身に着けてると良い」と黒真珠の玉が連なったようなブレスレットを私の手首に巻き付けた。
そして、「じゃあな」とフッと消えた。エーリオの真意が分からず、私は立ち尽くすばかり。
そこへ、私のお腹がグウとなった――。
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