緋色の魔法遣い

Naoyuki Okada

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蛇足

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 雲一つない真っ青な夏空。見渡す限りどこまでも遠く続く海と、白い砂浜。
 日傘の下に置かれたベンチにゆっくりと腰を下ろし、年老いた婦人は眩しそうに眼を細めた。

「まったく、あいつらときたら。私が何歳だと思っているんだ」

 波打ち際には元気に走りまわる三人の少女達の姿がある。真っ白な髪に、日焼けが心配してしまうような真っ白な肌。それも全く気にしない様子で、思い思いの水着に着替えて水遊びに興じている。
 もちろん婦人は心配などしていない。彼女たちは人の常識など問題にもならない、解き放たれた存在なのだ。

『ジャス、みんなに混ざんなくていいの?』
 もう随分と使い込まれ、くたびれた〈ステラソナ〉が話しかけた。

「無理を言うな。あの化け物どもと一緒に体を動かそうものなら、一週間は寝て過ごすことになる」

 そう毒づく彼女の顔は嬉しそうだった。

「……五〇年近くも約束を待たせおって。もうすぐ死んでしまうところだったじゃないか」

 婦人は首から下げたペンダントを手にとる。〈片翼の竜の翼〉のシンボル――かつては〈杖に絡まる蛇〉を意匠としていたそれ。彼女が率いてきた組織の紋章を見つめた。
「長かった。私が破滅の鍵となる可能性を摘み、《悪意の均衡》も始末した。再び人類は争いを始めるだろうが、それで滅びたとして人類の選択ならばそれもいい。超越者の意のままにならない、あいつらのような自由をやっと手に入れたのだ」

 彼女は、ふうとため息をつく。人生の終わりを目前にして、生涯思い続けてきた親友たちと、ようやく海に来れた。
 涙も枯れ果てた人生であったが、彼女の頬を伝う一粒の雫を海辺の光筋がキラリと光らせたのは幻ではないだろう。


                                  終劇
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