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人間ではない何か
しおりを挟む小説を書くきっかけになった小説がある。小説と片付けてしまうには余りにも愛に溢れた作品だ。その美しさに惹かれ、僕は読むことに没頭し、そしてそのあまりにも美しく自然な文体を目の当たりにして自分でもかけるのだと思い込んでしまい、実質書くようになったのだが、そんな簡単に美しい文章は書けない。
そして小説を素人なりに書いて楽しんでいただけなのに、いつの間にか評価されなくてはならないと思うようになり、でも作り出すものは世間一般でいう駄作であり、評価されるに及ばないことは重々にわかっていながら、にわかに評価されていく作家友人(素人)たちを見ていると、自分の作品もそうあってほしいと願ってしまう。
これは比較によって生まれる苦しさであり、始めた当初の感覚から言えば分不相応。それでも一度評価されるかもしれないと思ってしまったが最後欲望から逃れられないのだから、欲とは恐ろしい執着心を持つ悪夢のような存在だ。
僕の人生を大きく小説側に引寄せた作品は現在シリーズ12冊目になり、今その12作品目を拝読している。
文を読み進めるたびに、涙があふれて止まらない。感情の波が立ち、そして琴線をびんびんと鳴らしていく。触らないでほしいと思う線であっても、容赦なく入り込み、そして波を立てて僕の心を凌駕する。作品を読んで思うこと。こんな美しい文章は書けないということ。僕は愛を知らない。知らないものを表現出来ない。僕は愛を描きたい。僕の作品に足りないのは常識でも知識でも文章力でもなく、ただただ愛が足りないと、その作品を読むと思うのだ。僕は人を愛せない人間だから余計に焦がれ、そして挫折する。星には手が届かないと嘆く愚かな天文学者だ。
愛に育まれてきた人間は違う。人種が違うと僕は思う。
戦争に行ったおじいちゃんが言っていた。
「人は指一本でもなくすともう人間じゃなくなるんや」
それはとても酷な表現の仕方だと思う。身障者の方たちを人間扱いしないという意味に当初とらえてしまったが、彼が言いたかったのではそういう事ではない。
持っていたかけがえのないものを失ってしまうと、その人はその人でなくなり、別のものになるのだと、そういいたかったのだと思う。
僕の息子が亡くなった後、僕の精神は崩壊した。今は適応障害を発症している。昔の自分に戻りたいと切に思う。昔というのは息子が生まれる前の、亡くなる前の状態を指す。僕は息子を失い、もう人間じゃなくなったんだと思う。もう違う生き物なんだと思う。
愛を知らない、人間じゃない生き物になって僕はこの世界を彷徨っている。
恐ろしいじゃないか。
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