落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ

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四章

呼びに

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父様達が待っている部屋の前へと到着し、従者がその扉を開くと、バルドは部屋中に響くような声で挨拶をしながら中へと入って行く。

「お邪魔します!暫くお世話になるので、今日からよろしくお願いします!!」

父様達は紅茶を飲みながら寛いでいたようで、テーブルの上にカップが乗っていた。

「ふふっ、こちらこそ、今日からよろしくね」

「はい!!」

元気過ぎるくらい元気な様子のバルドを見て、母様はまるで微笑ましいものでも見るような視線を向けながら笑っており、父様も似たような表情をしていた。兄様は相変わらず無表情で、傍から見たら不機嫌そうに見えるかもしれないけれど、みんなは何度も顔を合わせていて兄様の事を知っているからか、誰も怒っているとは思っていないようだった。

部屋で待っていた母様達は、朝の服装とは違っていて、簡素で動きやすそうな服を来ていた。父様達も普段とは違って、きっちりした服装ではなく、何処かラフなゆったりとした服装をしていた。だけど、父様や兄様みたいな顔が整っている人が着ると、そんなな服であっても、上質な服を着ているように見える。まぁ、実際に、僕には見分けがつかないだけで、高価な布が使われているんだとは思う。

「予定の時間にはもう少しあるから、それまでの間、こっちで一緒に紅茶でもどうかしら?」

「俺、紅茶とかあんまり好きじゃないから良いや」

「そう…」

バルドは身内に近いような態度と言葉使いで母様に接していたけど、何度も屋敷で顔を合わせているからか、母様達や、部屋にいるメイド達もそれを気にした様子はない。だけど、紅茶の誘いを断られたからか、母様の顔には少し残念そうな顔が浮かんでいた。

あの紅茶は、父様が母様のためにブレンドした紅茶らしくて、母様は最近、あればっかり飲んでいる。僕も事ある事に誘われて飲んでいるけど、少しだけ飲み飽きて来た。だから、バルドが直ぐに断ってくれて、ちょっとだけホッとした。

「それより、リュカ達ともう出発しないかって話しになったから呼びに来たんだけど、もう出発して良いかな!?」

母様の誘いをあっさりと断ったバルドは、残念そうにしている母様や、影でホッとしている僕の事など置き去りにしたまま、話しを前へと進めて行く。

そんなバルドが出す雰囲気に後押しされたのか、母様は少し残念そうな表情を残しつつも、気を持ち直したようだった。

「私達の仕度は終わったから、荷物の積み込みが終われば何時でも出発は出来ると思うけれど、アル、もう少し掛かるかしら?」

「荷物も然程なかったはずだ。だから、既に積み込みは終わっている頃だろうから、何時出発しても問題はないと思うよ。皆が良いと言うのならば、多少速いが出発しようか?」

伺うように聞いて来た母様に、朗らかな笑みで答えた父様は、次いで部屋に控えていたドミニクに視線を向けた。すると、ドミニクは軽く礼をしてから部屋の外へと退出して行ってしまった。

「やった!そうと決まったら、速く行こうぜ!」

「おい、お前1人で勝手に話しを進めるなよ。まだ、こっちの用事が終わってない」

周りの様子を気にも止めないで、先に一人で行ってしまいそうなバルドを止めつつ、バルドが少し不機嫌そうな顔をしていた。

「用事?そんなのあったっけ?」

「はぁ…俺達が持って来た手土産の話しが終わってない」

「あぁ!あったな!そんなの!」

「そんなのって…お前なぁ…」

不思議そうに問い掛けた後、今思い出したかのように声を上げたバルドの言葉に、ネアは呆れたような顔を見せたが、父様の前に立つとその表情は鳴りを潜め、真面目な顔付きになっていた。

「手土産は、先に屋敷の方へと渡してあります。後ほどで構いませんので、ご確認の程よろしくお願いします」

「催促している訳ではないのだから、わざわざ持って来る必要などないと思うのだがね?」

「色々と目を瞑って頂いていますので…」

「そう思っているのならば、多少は、行動で返してはどうだ?」

「なので、今もこうして、手土産をお持ちしているではないですか?」

やさしげな笑顔と敬語で語り合いながらも、2人が何処かバチバチと火花が飛び散っているような目線を交わしているように見えるのは、僕の気の所為なんだろうか?

その横で、その会話の間にどう入って行って良いのか分からず、困惑と焦りなどが綯い交ぜになったような顔で、視線をウロウロとさせていた。

「父様。コンラットも、お土産持って来たんだよ」

「そうなのか?」

僕がそう父様へと声を掛けると、父様の視線が僕からコンラットの方へと向く。その事に、コンラットが僕に感謝の念を込めた視線を向けて来たけれど、直ぐに父様の方へと緊張したような様子で向き直る。

「父からは、色々と便宜を図って頂きありがとうございます。お手数ですが、今度とも宜しくお願いしますと伝えて欲しいとの言伝を預かって来ました」

既に何を言うか決めて来ていたような堅苦しさで話し、父様へと頭を下げるコンラットの姿に、父様は少し苦笑を浮かべつつも、緊張を解すように優しく語りかける。

「リュカの友人なのだから、その家族も気に掛けるのは自然な事だ。それに、私が好きでやった事なのだから、その事に対して無駄に気に病む必要はない。先方にはそう伝えて貰えるかな?」

「は、はいっ!!」

自分へと返って来た返事に満足そうな笑顔で頷いてはいるけれど、さっきまでネアと話していた時と比べると、態度が違うような気がする。父様は、階級で人を見るような人じゃないのに、何でネアに対しては態度が違うんだろう?

「父様?」

「ん?」

「何で、ネアだけはちょっと冷たいの?」

僕が不思議に思った事をそのまま口にすれば、父様は僕がそんな事を言うとは思っていなかったような意表を突かれたような顔をしていた。

「特に冷たくしているつもりはないのだけどね…。商人には抜け目がない者が大勢いるから、無意識のうちに身構えてしまうのかもしれないね…」

「でも、ネア相手にそんなの必要ないでしょ?それに、何度もネアと会ってるのに、身構える必要ってあるの?」

「そうだね…。そういう切り替えに関しては苦手だから…という事で駄目かな…?」

歯切れ悪く答える父様に問いかければ、まるで僕に確認するように聞いてくる。そんな父様に僕は内心首を傾げつつも、兄様も何処か不器用で、人に誤解される事があるから、それと同じようなものかな?

「父上、準備が終わったようですよ」

僕が少し考え込んでいると、それまで事の成り行きを見守っていた兄様が、僕達へと声を掛けながら扉の方へと視線を投げる。その先には、いつの間に戻って来たのか分からないドミニクが、そっと控えるように立っていた。

「では、出発するとしよう」

「う、うん…」

父様は、僕達の会話を終わらせるようにみんなへと声を掛けると、ドミニクが控えている扉の方へと行ってしまった。

「リュカ、行くぞ」

そんな父様を追うために声を掛けて来た兄様の後を追って、僕も扉の方へと歩を進めた。
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