すろらいふ・おんらいん

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アカネとサオリ 01

01 過去に言われたこと

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 ゲームで。
「ソラタ君。君には判らないだろうね。僕たちがどんだけ苦労をしているか」
 夢を見た。
「――こっちだって頑張ってるって。あと、ニッチに寄っただけだし」
 空を見る。
「――誰だっけ。言ってきたのって。そもそもそんな時代じゃないぞ」
「――どうしたの?」
 アカネが顔を見せた。
「またゲームでも寝ていたの?」
「いいじゃん。やることないんだから」
「やることないのにお金をもらっているって……。罪悪感ない?」
「仕事はしているよ。――考え古くないか?」
「そう?」
「そんな古いことを言われたのを、思い出していた」
「どういう?」
「お前に、私の苦労なんかわからないだろう。って」
「あぁ、あるよね。遠回りしているの」
「考え、古すぎるだろ。技術は発展しても」
「人の考えまでは更新できないと」
「人の脳なんて、もうバイト数ではマイクロカードにも満たないんだよな」
「そのくせプライドが高い」
「アカネ、言うようになったね」
「ソラタを見ていると、他がバカらしくなったの!」
「あ、そう」
「ちなみに?」
 アカネからの少し深い話。
「ホワイトハッカーテスト? 受けれる?」
「この本はまず読破して」
 データをアカネに渡す。
「……なに、これ?」
「ホワイトハッカーテストの問題にも出るけど」
「……やめとく」
「それほど難しいってこと。制約も多いし」
「これ、持ってるの?」
「うん」
「……凄いわ。ソラタって。そんなに努力を?」
「そうでもないんだけどね。ニッチだっただけで」
「――そうなんだ」

「ねぇ、思っていたんだけど。何でAIオカンなの?」
「どうしたの?」
「いや、もっと付けるかなって」
「判りやすくない?」
「もしかして、マザーだからオカン?」
「正解」
「何のひねりもないんだけど」
「変な名前を付けて判らなくなるよりいい」
「データの名前とかは?」
「言いにくい」
「そうか――。案外単純」
「だから、なにかこだわりとか、ないから」
 うなだれたアカネ。
「……もしかして、プログラミングにも?」
「書くよ」
 オカンに任せる際は指示コマンドに『okan』と入れる。
「そうか~~」
「アカネもAI使っていたよね」
「クエストチームはいろいろ制約があるから」
「……何のための制約? 使いこなせばいいのに」
「ショートするんだって。いろいろ頼むから」
「それを人に任せるの?」
「だって」
「本末転倒じゃない?」
「それを言われると……」

「でも、つくづくすごいわ。ソラタのAI」
「褒めても、何も出ないけど」
「暇な理由が判ったなって」

 Cマスが呼んでいる。
「どうしたの?」
「本当、ソラタを見ていると、週5日。一日10時間労働が惨めに思えてくるよ」
「へ~~」
 僕はCマスと遊んでいる。
「ちょっと。話を――。別に、聞かなくていいけど。というか、絵代わりがしない!」
「別に、景色を眺めるのは何度やってもいいじゃないか」
「まぁ、そうなんだけど――」
 困っているアカネ。
「――なにかあるの?」
「あのね、ちょっと相談が――。捜し物をしていて」
「なに?」
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