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屈強な男が借金のカタに後宮に入れられたら

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「畳んだ洗濯物の上を踏むな!」

「まだその煮込みは途中だ!腹がへったら干し芋でもかじってろ!」

「時間外にくるなら先触れをだせ!寝られん!」


さて、これはどこの子供への小言だろうか。

これは一国を治める美青年王アズが自分の後宮で毎日のように男性妃イルドルから掛けられている小言であった。


イルドルは親族の借金が元で売られてきた三十路手前の屈強な男だ。長い黒髪を一つにまとめ、鍛え上げられた屈強な肉体は並の男くらいなら二、三人担ぐことも容易い。元々は山で働いていたとも噂されていた。


この大男を後宮に放り込む作戦は、当初後宮が美女美少年で埋め尽くされていたにも関わらず全く食指を伸ばさない王に対しての臣下達の苦肉の策だったのだが、恐ろしいことに予想以上に王はこのイルドルにずっぽりハマってしまった。


というのも、イルドルは基本妃が望むようなことを王になにも要求しない。抱いて欲しいとも言わないし、実際肉体関係も一切ない。それどころか最低限の衣食住が確保されて申し訳ないからと家事一般や大工工事一般まで手伝う始末。

むしろ王が暇そうなら引っ張り出して


「脚立おさえててくれね?」


等と言い出すし、

おわったら


「おつかれ、蒸しパン喰う?」


と手製の笹蒸しパンを与えたりする。

休みの日は敷地内を流れる川で魚釣りを楽しんだり、

その魚を燻製にして夕飯を食べたりする。

ようするに『普通』のおっさんで有り続けたのがアズ王にとって堪らなくツボだったようなのだ。周囲の者たちはハラハラしたり立腹したりするのだがアズ王には仕事明けにイルドルと蒸しパン齧ったり、洗濯物を畳んだりする時間が堪らなく癒やされる。

アズ王にはこのこじんまりした時間がとても大事だった。


そもそもアズ王はその華やかで美しい美貌とは裏腹に大げさだったりけばけばしかったりするのが嫌いなのだ。

王の間に花びらを撒く形式も嫌だし、後宮に入ったあと服を脱ぐ順番で作法があるのもいやだ。後宮に何百人も美姫を住まわせたり、そこでの政治に気を使ったりとっても疲れる。


そこへいくとイルドルはいい。

疲れて帰ってくると大きめの籠をだしておいてくれて


「そこ脱いどけ」


で、済む。

強い香水で目眩がすることもない。

アズ王がイライラして裏切った部下をなぶり殺しにしそうになっても


「バカ。風呂でも入って頭冷やしてこい」


とタオルを投げつけて冷静さを与えてくれる。

イルドルの部屋は本人が望んだので広さもこじんまりしているが、ベッドは大きい。そこは後宮だ。

アズ王は仕事が終わるといつもそこでイルドルとねっころがって干し芋を齧って、最近下町で有名な茶屋の話や宇宙の広さの話をダラダラと捏ねる。話のジャンルに決まりはない。好みの書籍の貸し借りなども頻繁だ。無理やりな酒もなければ着飾らなければならない礼服も、破廉恥な下着も、甘ったるい気分の悪くなるお香もない。

あるのは気安い茶と安い茶請け。


「イルドル。お前はなにか欲しい物ないのか?」

「洗濯用洗剤のストックがそろそろねえかな」

「そういうものではなくて!というかそもそもそれも侍女の仕事だろう」

「只で飯食わせて貰ってるんだぜ?これ以上はねえ!」

「お前はそう言ってこの間も奥の間の立て付けを直していたではないか!」

「おお、気づいたか。滑りが良くなっただろ?」

「そういうのは専門がおる!」

「ははは、たまには遊ばせてくれよ」


イルドルは万事がこの調子だ。

アズ王はイルドルになにか与えたくて仕方ない。だがイルドルはのらりくらりと躱し続け、アズ王の良き逃げ場で有り続けた。また、彼が意図的にそうしていたのかはわからないが、後宮で身の回りを基本的な場所だけとは言え自分で整えていたのは彼だけだった。

誘惑のお香を焚いたり、最新の下着やドレスを買ったりしない代わりにプランターに小さめの野菜を植えたり、趣味の大工仕事で椅子などをこしらえたりしたのでますますイルドルの部屋は後宮で異質化していく。


最近は他の妃もお茶を飲みに来るようになったらしい。

イルドルは聞き上手だ。まずは相手の吐き出したいことを全部受け止めてくれる。それから、静かにそばにいてくれるのだ。


「あの方は見た目こそ虎やクマのようですが、そういう時は猫のようでもありますわね」


とは同じ後宮にいる妃の言だ。


次第に後宮に友人の増えたイルドルはアズ王にほかの妃達の話もするようになる。もともと各地から連れてこられた女性や少年たちだ、孤独を抱えている者も少なくなかった。イルドルのとりもちで後宮はぐっと明るく、そして賑やかな場所になった。


そういう事実を見ながら、アズ王は彼女ら彼らに申し訳なく思う。


後宮など、元々一部形骸化してはいたのだ。後宮がなければ彼女ら彼らはもっと可能性を謳歌できただろうに。

魔法技術の進歩で同性同士でも高齢でも子をなせるようになった以上無理して今の規模の後宮を維持する必要はないとも思っている。


だが、今後宮を解体すればイルドルも去ってしまうだろう。


イルドルのベッドで干し芋をかじりながらアズ王はなんとも言えない心地に陥る。


「なあ、そういえばなんで置いてあるのがいつも干し芋なんだ?」

「俺の田舎の特産品なんだよ。っていうか、俺の田舎、それしかねえ!…でもうまいだろ?」


あっはっはとイルドルは豪快に笑った。

イルドルの故郷……。この後宮を解体したら、この男もそこへ帰ってしまうのだろうか。借金はすでに王が手を回して返してしまったから、それを盾にすれば残ってくれるだろうか……アズ王は悶々とする。


そんな時、アズ王が後宮に向かう途中で物陰で洗濯をする侍女達から声が聞こえてきた。


「ねえ、イルドル様ってやっぱりすごいの?」

「そりゃそうよ!この後宮で一番らしいわよ」

「入り浸りですもんねー。男性を名器でメロメロにしちゃうらしいじゃない」

「男性を……名器……メロメロ!」

「あの見た目で……わかんないわね……」

「だからこわいのよ」

「アンタの旦那だってわかんないわよ?」

「え?」

「なんでちょっと嬉しそうなのよ」


アズ王は耳にするなりガラにもなくダッシュでイルドルの部屋へ飛び込んでいった。


「イルドル!!」

「うわっ!アズ王、何度も言ってるだろ。ドアは静かに」

「浮気したのか!俺以外のやつと浮気したのか!?」

「う、うわきぃ?」

「確かに私はお前を抱かなかった……でもそれはお前を大切にしたかったから……!」

「まてまてまて」

「他の誰かに取られるくらいならいっそ!」


アズ王の顔がだんだんヤバい方向へ変わりそうななのでイルドルはアズ王の頬を軽く張った。


ぴしゃん


「……いたい」


自分の頬を抑えてアズ王が放心する。


「おちつけ!俺はぴっかぴかの童貞処女だ。神に誓ってもいい」

「だって侍女がっ噂がっ」

「大体俺と毎晩一緒にいるのはだれだよ」

「私……」

「そもそも各妃には基本的に隠密がついててなにしてるか報告が行ってるだろ!その侍女さんがなにを言ってたか話してみろ」


アズ王から話を聞いたイルドルはため息をひとつついて頭をバリバリ掻いた。


「そりゃ誤解だ。おまえさんが俺のトコにばっかりサボりにきてるから俺がよっぽど具合がイイんじゃねえかっていう皮肉でもあるな」

「は……そんな……?」

「こんなしょうもない錯誤、いつものお前ならやらかさねえだろう。らしくねえぞ」

「…………」


イルドルはアズ王の肩をぽんとたたくと


「茶でも煎れるか」


と言ったが、アズ王はその手をぐいっと引いてベッドに押し倒した。

ふっかふかなベッドに一度沈み


「おいっ」


と抗議するイルドル。しかしアズ王の目はいつもと違う。


「ホントに浮気をしてないかなんて。確かめてみないとわからない」

「は?!」

「今から確かめる」

「え?!」

「私のものになってくれ」

「ちょっ……!」


イルドルはアズ王の口付けに沈んでいった。




                                   ◇    




「あ……っそんなトコさわっても……意味なんか……んンっ」


アズ王の長い指がイルドルの乳輪をカリリと引っ掻く度、全裸のイルドルの声が高くなる。

背後から伸ばされた反対の腕は同時にイルドルの肉茎をゆっくりゆっくりしごいていくので、先走り液ですっかりぬるぬるだ。いやらしい音をたてて嬲られていく自分の巨体が恥ずかしくて、イルドルがシーツを噛む。


「ほら、歯が欠けてしまうぞ?かみしめないで……」


きゅむっと乳首をつまむと、イルドルの脳髄に快楽の雷が走る。


「あああっ!」

「イルドル……お前本当に初めてか?敏感すぎだ」

「く……っアズ王が……っおかしいことばっかりするからぁっ」


普段は飄々としている屈強な男が自分の指の動き一つでビクビクと揺れ感じてくれるのがうれしくて、つい意地悪をしてしまうアズ王。シーツに広がった長い黒髪も扇情的だ。日焼けした肌も鍛えられ盛り上がった胸筋もなにもかもが愛おしくてならない。コチラに向かってつんと尖った桜色の乳首があまりに美味しそうで口に含んでしまう。


「ひンっ!あぁあっ!」


尖らせた舌で転がし、乳輪を嬲る。口中の陰圧で引っ張っては犬歯をたて遊んでやる。


「は……ん!ああっ!だめっ!!それだめぇ!」


反対側の乳首はクイクイと強めにねじってやったら背筋を反らしてイルドルは悶え苦しんだ。肉茎に直接刺激がない分そこからは先走り液より濃厚な液がひたひたと溢れ泣き、後孔は処女のくせにひくつき濡れそぼっている。


「どうして……おれ……男なのに……」


「男でも胸で感じるやつは多い。性感帯は才能みたいなもんだからな」

「あうっ、そこでしゃべるなあっ!」


アズ王が話すたびに舌が不測な動きをしてイルドルを責め立てる。イルドルは気づいていない。乳首を責められたくないと口では言っているものの、身体は無意識に胸部をアズ王に押し付け、虐めてくれと懇願していることを。その気になれば腕の一振りでアズ王など跳ね除けられるのにそれをせず、むしろ自ら脚を開いて鳴いている事を。


イルドルは後宮にきても身体が衰えないように武人達と共に調練に出ている。後宮の妃が調練というのも前代未聞なのだが


「護身術ということならよかろう」


というはてしなく甘い沙汰がおりた。


その成果は日に焼けた褐色の肌に弾けんばかりの肉の誘惑。アズ王は自分の判断の正しさを自分で称賛した。割れた腹筋を柔らかくした舌で下から上へなめあげていく。


「あう……っ!アズ……王……そんな……」

「もっと声を出せ我が妻イルドル……そなたは美しい」

「そんなわけ……っああっ」

「この鍛え上げられた肉体、靭やかな手足……まるで鞭のようではないか。いままでよく童貞処女でおられたものだ」

「ああっ胸……っだめぇっ!」

「胸がだめ?ほんとうにそうか?ならなぜそうやってこちらに向けて胸をそらしておる。こんなに可愛く乳首を勃たせておる?」

「これは……アズ王が弄ったから……っああンコリコリしちゃだめぇっ!!」

「そうだな。ほかのだれにもイジらせてはならんぞ?」


アズ王はイルドルの乳首をピンと弾いた。


「あうンっ!」


イルドルは快楽に無意識に腰が揺れだした。それを察したアズ王がずむりと尻の肉を掴み、イルドルの後孔の縁に指をそえる。肉棒からの先走り液ですっかり濡れているそこをゆっくり、ゆっくりひらいていく。


「あっああっ!そんなところっ!」

「大丈夫。痛くはしない。最初は解さないと怪我をしてしまうからな」


大分柔らかいとは言え、その感触に処女であることは事実だと確信しほっとするアズ王。やはり早く番っておくべきだったと決心をあらたにする。

指が入る。


「ひンっ……中ぁ、動かしちゃだめぇっ」

「ん……これは……」


イルドルの中は熱く、襞が蠢き恐るべき締め付けだった。そこだけがまるでべつの生き物のようにざわざわとコチラを翻弄しようと伺ってさえいる。


(名器というのは真であったか……)


ほくそ笑むアズ王。ゆっくりゆっくりかき回していくたびに、粘着質で淫猥な音がイルドルの耳を刺激する。


「う……っ!ああンっ」


すこし奥へ進め、男のツボを刺激してやる。


コリッ


電流が走るような強すぎる快感に目を見開くイルドル。


「あああっ!な、なんだ?!い、いまのっ」

「ここは男のツボだ。大丈夫。ここを突かれたらみんなそうなる」

「突かれたら……って、まて、そんな……」


アズ王はみずからの大振りな剛直をイルドルのそこへあてがうと、ゆっくり進めていった。


「いくぞ」

「まて……っあっ!ああああっ!」


ずちゅんっ!


嬌声が部屋に響く。


「あぁぁっ!」


ごりゅ…っ


痛みを覚悟したはずなのに、イルドルの身体は強すぎる快楽にガクガク震え目の前はチカチカしていた。


「アッ……なんで……っ」

「よかった……よさそうだな」


アズ王が腰を動かす。


ズズッ


「ひうっ!あっ!あうンッ!ま、まてっ、ああっ!」


ずっ

ずっ

ずずずっ


時に一定に、

時に態と外して、

アズ王の腰の動きにイルドルは翻弄され只鳴かされる。両乳首を捏ねられより一層追い詰められる。


「だめぇ!同時はだめだぁっ!」

「ああ、やっぱり我が妻はここが弱いとみえる。愛いやつだ、急に締め付けてきたぞ。むう、これは……すごいな、熱とうねりに腰が持っていかれそうだ、まさに傾国…」

一層奥へ男根を捻り込むアズ王。


ズパンッ!


「ヒィッ!あうっ!奥ぅ!奥きちゃうっ!!」


イルドルはアズ王にすがりついてくる。しかし、朦朧としていて尚アズ王を潰さないように気をつけて……だ。アズ王はすっかりこの健気な妃に惚れ直してしまった。


ずっちゅ

ずっちゅ

ぐちゅ


「あっ!あっ!はぁんっ!だめぇ!おかしく……おかしくなるぅ!!」

「イルドル……愛いやつめ……どうか一生私の側にいておくれ……」

「アズ王……」

「今はアズ、と」

「ああっ!い、アズ……ああんっ!こんな時に、ずるい……っ」


アズ王はわざと腰を止めてイルドルを焦らす。

ジリジリ快楽に灼かれるイルドルは唇を震わせて懇願する。


「いるぅ!死ぬまでいっしょにいるからぁ!イかせてぇ!」


ズグッ!


「あああああンっ!!」


「いい返事だ!今日からほんとうの意味でお前は私の妃だ!!私のものだ!!」


激しく貫かれイルドルは快楽の海に沈んでいった。

アズ王の腰はとまらない。イルドルの身体全てを平らげる勢いで貪りつき、イルドルが開放されたのは二日後だったという。



以降アズ王はかつての枯れ王ぶりが嘘のように本来の意味で後宮のイルドルの元へ通うようになり、イルドルは王朝を救った賢妃にして健妃として以後たたえられるようになったそうな……。


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みんなの感想(1件)

HALU
2023.03.22 HALU

うわぁ〜凄く好きな話でした!
出来れば長編で読みたくなる物語で
受け側の話も読みたくなります(*´艸`*)
良い御話ありがとうございます!!

信号六
2023.03.22 信号六

自分の好みをぎゅぎゅっと詰めてみた試作なので、そう言っていただけてとても嬉しいです!
ありがとうございます!!

解除
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