ミラー★みらくる!

桜 花音

文字の大きさ
35 / 43
7.最後の一日

7-4

しおりを挟む
 保健室は校舎の角にあるんだけど、向かいのドアがプレハブに繋がっている。
 そこには相談室と会議室があった。
 相談室というのは、週に一度カウンセラーさんが来た時に使う部屋らしいんだけど、莉菜もそんな部屋があるらしいくらいのことしか知らない。
 はじめて入ったその部屋は、教室とは違って部屋の角に先生の机らしいものはあるけれど、ゆったりとしたソファが二台、向かい合わせで並んでいる。
 その間にはテーブルがあって、そこだけみるなら普通にリビングと変わらないかもしれない。

「今日はカウンセリングの日じゃないから、落ち着くまでゆっくりしていってね」
 養護の先生は鍵だけ開けてくれて、そのまま帰っていった。
 静まり返った部屋の中、鳴海と二人きりでどうしたらいいのかわからない。
 突然の展開に、涙はすっかり止まってしまった。

「とりあえず、座れば?」
「う、うん」
 二人掛けのソファの端っこにそっと座ると、思ったより柔らかくて、そのまま後ろへと身体が沈んだ。

「うわわっ」
「不器用過ぎんだろ。ソファに座れないとか」
 クッと笑う鳴海を、思わず睨んでしまう。
「こんなに沈むと思わなかったんだもんっ」
「そうかよ。これ、養護の先生からの差し入れ」
 テーブルにペットボトルのお茶を二本、トンと置いた。

「叔母さん、だったんだね」
「まぁ、芹香以外しらないかもな。別に隠しているわけじゃないけど。あの人、苗字、鳴海だし」
「そうなんだ」
 保健室ってよっぽどじゃないといかないし、莉菜は健康そのものだったから、本当に縁がないんだよね。

「じゃあ、一本、もらうね」
 きっと冷蔵庫で冷やしてあっただろうペットボトルは、汗をかいて濡れていたけど、まだ冷たかった。
 走ったり泣いたりして渇いた喉に注ぐと、呼吸しやすくなった。
 向かいのソファに鳴海も腰かけて、同じようにお茶を飲む。
 さっきまで鳴海から逃げていたのに、こうして向きあっているなんて変なの。

「落ち着いたか?」
「……うん」
 それっきり、鳴海も黙り込んでしまった。
 外では遠くに賑やかな声がしているだろう気配はする。
 この部屋は下駄箱から遠いし、人気がしないから、まるで時間が止まっているみたい。

「授業、はじまっちゃうね」
「大丈夫だろう。適当にごまかしておいてくれるよ」
「……慣れてる?」
「こんなこと、やったことねーよ」
「本当かなぁ」
 思わずクスッと笑うと、鳴海は真剣な顔をして、またもや黙り込んでしまった。

 わたしとしても、なにを話していいのかわからなくて、ただただお茶をチビチビと飲む。
 潤っているはずなのに、なんだか落ち着かなくて、意味もなくペットボトルの側面をキュッと撫で続ける。

「俺、変なこと、言ってもいいか」
「え……?」
 変って、どういうこと?

 思わず顔を上げたら、こちらをじっと見ている鳴海と目が合った。
 いつもと違う様子に、思わず目がそらせない。

「最近のお前、なんか違う。どこがってハッキリ言えないけど、楠木のはずなのに、違和感が拭えない」
「――‼」

 思いもしなかった言葉に、わたしは思わず息をのんだ。
 そんなわたしを、鳴海は逃さないと言わんばかりに、強い瞳でこちらを見ていた。
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

笑いの授業

ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。 文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。 それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。 伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。 追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。

悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~

橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち! 友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。 第2回きずな児童書大賞参加作です。

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

愛を知りたがる王子様

広原琉璃
児童書・童話
この学園には、『王子様制度』が存在する。 主席入学で顔も良い、そんな人が王子様になるのである! ……という、ぶっとんだ制度がある私立の女子中学校へ進学した少女、大沢葵。 なんと、今年度の『王子様』に任命されてしまった。 オレ様生徒会長な、流華。 クールな放送部部長、ミナツ。 教師で王子、まお。 個性豊かな先輩王子様と共に、葵の王子様生活が、今始まった……!? 「いや、あの、私は『愛ある物語』が知りたいだけなんですけどー!」 第3回きずな児童書大賞で奨励賞を頂きました、ありがとうございます! 面白いと思ったらお気に入りや感想など、よろしくお願いいたします。

夜寝たくなくて朝起きたくない

一郎丸ゆう子
絵本
大人のための絵本です。現代人って夜寝たくなくて朝起きたくない人が多いな、でも、夜は寝ないと困るし、朝は起きないとなんないなんだよね、なんて考えてたら出来たお話です。絵はcanvaで描きました。

未来スコープ  ―キスした相手がわからないって、どういうこと!?―

米田悠由
児童書・童話
「あのね、すごいもの見つけちゃったの!」 平凡な女子高生・月島彩奈が偶然手にした謎の道具「未来スコープ」。 それは、未来を“見る”だけでなく、“課題を通して導く”装置だった。 恋の予感、見知らぬ男子とのキス、そして次々に提示される不可解な課題── 彩奈は、未来スコープを通して、自分の運命に深く関わる人物と出会っていく。 未来スコープが映し出すのは、甘いだけではない未来。 誰かを想う気持ち、誰かに選ばれない痛み、そしてそれでも誰かを支えたいという願い。 夢と現実が交錯する中で、彩奈は「自分の気持ちを信じること」の意味を知っていく。 この物語は、恋と選択、そしてすれ違う想いの中で、自分の軸を見つけていく少女たちの記録です。 感情の揺らぎと、未来への確信が交錯するSFラブストーリー、シリーズ第2作。 読後、きっと「誰かを想うとはどういうことか」を考えたくなる一冊です。

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

処理中です...