釣りが繋ぐ絆

むちむちボディ

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見られた夜

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 小屋の網戸が、音もなく揺れていた。
 午後の海風が肌にべったりと張り付き、秀昭はシャツの背を汗で湿らせたまま、
 まな板の上でイカをさばいていた。

 
 「なあ、今夜、珍しく来客あるかもしれん……」


 釣果から戻った昭吾が、魚を入れたバケツを置きながら言った。


 「漁協のやつらが、“焼いて飲もうぜ”って。断ったけど、来るかもってさ……」

 「ここに?」

 「小屋を使ってたの、元々あいつらだしな。俺が勝手に住みついてるようなもんだ……」

 
 心に小さな針が刺さった。
 この小屋は、ふたりだけの場所じゃないのか。
 そう思った瞬間、まな板の上のイカの内臓を、思わず強く掴んでしまった。

 

 夕方、炭を熾していた頃だった。
 軽トラの音がして、二人の男が降りてきた。
 漁師仲間らしく、ひとりはがっしりと日焼けし、
 もうひとりは昭吾と同じような恰幅で、笑いながら缶ビールを差し出した。


 「よう昭吾! なんだよ、マジで人住んでんじゃねぇか?」

 「言ったろ。俺の“家”だって。」

 「はは、それにしても……デカい同居人だな。何キロだ?」

 
 瞬間、空気が張り詰めた。
 笑ってはいるが、“探っている”。
 そう感じて、秀昭の喉がひとつ鳴った。


 「村瀬です。前は営業やってまして……まあ今は、こっちでのんびり……」

 「へえ、営業? そりゃまた……何の営業?」

 「住宅……の、内装関係ですね。」

 「へええ……」

 
 グリルで焼かれる魚の匂い。
 炭の煙。
 笑い声。

 けれど、どこかで“見られている”感覚が離れなかった。
 昭吾と目が合うたび、秀昭は何かを確かめたくなる。



 (俺たちって……堂々してていい関係なのか?)

 

 「なあ昭吾、お前らって、なに? 友達? 家族? それとも、なに?」


 酒が回ってきた男が、テーブル越しに問うた。
 空気が止まった。
 火の音だけが、はぜるように響いた。

 昭吾はビール缶を置いた。
 そして、まっすぐ男を見返した。


 「家族でもねえし、ただの友達でもねぇ……」

 「……」

 「けど、俺が“誰と生きたいか”って話になったら――
  こいつがいいと思っただけだ。」

 
 相手の男は眉をひそめたが、何も言わなかった。
 ただ、缶を持ち上げて言った。


 「……はあ? なんだそりゃ、男でそれ言うかよ。
  ……まあ、面白れえな。へんな奴だ、お前……」


 それだけで、会話は終わった。

 
 けれど、秀昭の中では、終わらなかった。



 夜。
 ふたりきりになった小屋。
 布団の上で、シャツを脱いだ昭吾が、秀昭を見つめて言った。


 「……さっきの、聞いてたな?」

 「ああ……」

 「恥ずかしくねぇんだ。俺はお前を、堂々と見せられる。」


 秀昭の目に、涙がにじんだ。
 なぜだか分からなかった。
 ただ、ずっと、誰にも見せられなかった自分を
 昭吾が丸ごと“誇ってくれている”と、そう思えてしまった。

 
 「……しょうご……抱いてくれ……
  ちゃんと……他の誰に見られてもいいって、身体に言ってほしい。」





 昭吾は秀昭を押し倒した。
 肉厚な胸を舐め回し、乳首を吸い上げ、
 腹をじっくり撫でて、汗を引き出していく。


 「ここの汗……すげえいい匂いする。」

 「お前も、脂と汗で……俺の腹、濡れてんじゃねぇか……」

 
 昭吾の舌が、秀昭の尻を割って奥へと入る。
 ぐちゅぐちゅと舐め回され、太った身体がよじれた。


 「もう……我慢できねえ……入れて、しょうご……っ」


 腹の下から差し込まれるように、
 昭吾のものが、肉を割り、ぬるんと押し込まれた。


 「うあ……っ、あっ……深い、きてる、しょうご、全部……っ」

 
 腹が腹にぶつかる。
 脂の摩擦音と、尻奥に響く重低音の突き上げ。
 男ふたりの汗がシーツに染み込み、
 部屋全体が獣の匂いに包まれる。

 
 「俺のこと……誰に見られてもいいって言ったな……」

 「ああ……っ、だから……俺の全部、お前に預ける……っ」

 「俺も、もう……離さねぇ!」


 射精は激しかった。
 どぷっ、どくっと腹の底に流し込まれ、
 秀昭の手が、昭吾の背を抱きしめて離さなかった。


 濡れたまま、ふたりは唇を重ねた。
 汗、精液、唾液、そして心――
 全てが混ざって、重なって、やっと「ひとつ」になった気がした。
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