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久志との問答
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7月16日早朝
電話の向こうの父さんは不機嫌だった。
紳士服店は夏場は閑散期らしいけど、今年は祖父ちゃんの入院というアクシデントがあり、休日でもゆっくりできないと愚痴っている。
「緊急の用件じゃなきゃ、後にしてくれないか。これから祖母さん連れて病院行かなきゃいけないから」
今起きたばかりという雰囲気が伝わってくる。寝起きの父さんはいつも以上に面倒くさがるから、聞きづらいんだけどな。
僕は朝ごはんを頬ばっている天狗と清蟹くんに気づかれないように台所を出て、朝日が眩しい縁側に腰掛けた。
電話口で大あくびする父さんに「時間ないんだが」と急かされ、簡潔に大天狗に言われた事と、畑で遭遇した猿との一件を話した。
「さ、猿に何かされたのか!?」
珍しく、父さんが声を上ずらせて驚いた。日頃、動揺した姿を見せない人だから、こっちが逆に戸惑っちゃうよ。
「何もされてないよ。天狗が助けてくれたから」
「そうか・・・天狗が」
「だけど、あの時の天狗の様子も変だったよ。この子に手を出すな、とか言って動物相手に本気で怒鳴るしさ」
「・・・」
「ねぇ、どういうことなの?僕の小さい頃に何かあったの?」
矢継ぎ早の質問に父さんは沈黙した。
けれど、すぐにいつもの飄々とした口調に戻って「気のせいだな」とキッパリ言い切った。
「お前、深読みしすぎだ。大天狗もきっと隠居してボケちゃったんだろ。勘違いしてるだけさ。天狗の奴は単にそうやって野生動物を威圧して追い立てただけだろうよ」
「え、そうなの?そうは感じなかったけど」
「田舎育ちじゃないお前には、山のやり方に違和感を覚えるのかもしれないけど、みんな気のせいだ、気のせい」
また他所者っていう。本当にそれだけ?
どうしても腑に落ちない。何か隠してるような気がしてモヤモヤする。まぁ、父さんがダメだとしても、後で祖母ちゃんにでも電話して・・・
「あ、祖父さんたちに今の話は絶対するなよ。畑に猿が入り込んだなんて知れたら、病院抜け出しかねないからな」
「うっ・・・うん」
さすが父さん、僕が考えていることを見透かして、釘を刺してきたよ。
まぁ、その通り、猿のことを話題にした時点で祖父ちゃんには激怒されそうだから。
「分かった。じゃ、また」
「天狗に言い寄られても、上手くかわせよ。じゃあな」
電話を切ったと同時に、ご飯を食べ終わった天狗が清蟹くんと一緒に縁側に来た。
「今日も天気が良いでござるな」
「お散歩日和ですね。大希くん」
ニコニコしている山の妖怪と里の守り神につられ、僕も笑顔になった。
考えたって答えが出ないなら、考えなければいいじゃないか。どうせ、夏の間しかこの家にいないんだから。
「そうだね。作業が済んだら、清蟹くんの祠にお参りに行こうか?」
「まことでござるか!」
「うん、ホントだよ。お手伝いしてくれたらね」
「承知した!」
「権現様、抜け駆けは許しませんよ!私も仲間に入れてくださいませ」
飛び跳ねて喜ぶ清蟹くんと天狗に癒やされながら、僕は縁側に出してあったサンダルを突っかけて外へおりた。
電話の向こうの父さんは不機嫌だった。
紳士服店は夏場は閑散期らしいけど、今年は祖父ちゃんの入院というアクシデントがあり、休日でもゆっくりできないと愚痴っている。
「緊急の用件じゃなきゃ、後にしてくれないか。これから祖母さん連れて病院行かなきゃいけないから」
今起きたばかりという雰囲気が伝わってくる。寝起きの父さんはいつも以上に面倒くさがるから、聞きづらいんだけどな。
僕は朝ごはんを頬ばっている天狗と清蟹くんに気づかれないように台所を出て、朝日が眩しい縁側に腰掛けた。
電話口で大あくびする父さんに「時間ないんだが」と急かされ、簡潔に大天狗に言われた事と、畑で遭遇した猿との一件を話した。
「さ、猿に何かされたのか!?」
珍しく、父さんが声を上ずらせて驚いた。日頃、動揺した姿を見せない人だから、こっちが逆に戸惑っちゃうよ。
「何もされてないよ。天狗が助けてくれたから」
「そうか・・・天狗が」
「だけど、あの時の天狗の様子も変だったよ。この子に手を出すな、とか言って動物相手に本気で怒鳴るしさ」
「・・・」
「ねぇ、どういうことなの?僕の小さい頃に何かあったの?」
矢継ぎ早の質問に父さんは沈黙した。
けれど、すぐにいつもの飄々とした口調に戻って「気のせいだな」とキッパリ言い切った。
「お前、深読みしすぎだ。大天狗もきっと隠居してボケちゃったんだろ。勘違いしてるだけさ。天狗の奴は単にそうやって野生動物を威圧して追い立てただけだろうよ」
「え、そうなの?そうは感じなかったけど」
「田舎育ちじゃないお前には、山のやり方に違和感を覚えるのかもしれないけど、みんな気のせいだ、気のせい」
また他所者っていう。本当にそれだけ?
どうしても腑に落ちない。何か隠してるような気がしてモヤモヤする。まぁ、父さんがダメだとしても、後で祖母ちゃんにでも電話して・・・
「あ、祖父さんたちに今の話は絶対するなよ。畑に猿が入り込んだなんて知れたら、病院抜け出しかねないからな」
「うっ・・・うん」
さすが父さん、僕が考えていることを見透かして、釘を刺してきたよ。
まぁ、その通り、猿のことを話題にした時点で祖父ちゃんには激怒されそうだから。
「分かった。じゃ、また」
「天狗に言い寄られても、上手くかわせよ。じゃあな」
電話を切ったと同時に、ご飯を食べ終わった天狗が清蟹くんと一緒に縁側に来た。
「今日も天気が良いでござるな」
「お散歩日和ですね。大希くん」
ニコニコしている山の妖怪と里の守り神につられ、僕も笑顔になった。
考えたって答えが出ないなら、考えなければいいじゃないか。どうせ、夏の間しかこの家にいないんだから。
「そうだね。作業が済んだら、清蟹くんの祠にお参りに行こうか?」
「まことでござるか!」
「うん、ホントだよ。お手伝いしてくれたらね」
「承知した!」
「権現様、抜け駆けは許しませんよ!私も仲間に入れてくださいませ」
飛び跳ねて喜ぶ清蟹くんと天狗に癒やされながら、僕は縁側に出してあったサンダルを突っかけて外へおりた。
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