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秋香の霊力
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7月18日昼
母屋裏の畑は猿山みたいだった。
ミニトマトだけじゃなく、胡瓜や南瓜の蔓の中に座りこんでるヤツ、ピーマンや茄子の葉をちぎるヤツ、葉生姜の畝で遊ぶヤツ・・・かなりカオスな状況だ。
天狗を呼ぶにはここからじゃ遠すぎるし、小さな清蟹くんにはとても手に負えないよな。
「僕が何とかしなきゃ」
ここに来る道すがら納屋から持ってきた竹箒の柄を握りしめた。そして姿勢を低くして気配を消し、ジリジリと畑の中へ入っていった。
作物を荒らすことに夢中になっている群れに中に、突然人間が現れたら絶対ビビるよね。もし向かってきても、祖父ちゃん手製のぶっとい孟宗竹の箒で威嚇してやる。
我ながらイイ案だと思ったね。
けど、野生動物の異変の察知能力を侮ってた。僕の存在は、すでにバレていたみたい。
ミニトマトの枝を放り投げている猿たちの中に、あの枝豆畑の大猿がいた。僕に気づいたヤツは、こっちの方へ真っ直ぐ歩いてくる。
じっと目を見据えたまま、堂々と。
「ヤバい、竹箒じゃ勝てないかも!?」
焦りのせいか、痛めた足に力が入らない。どうしよう、襲われちゃう!
「大希様!」
甲高い声と共に、ブワッと煙のようなモノが立ちこめた。
ふわふわと漂う煙は、僕たちを包み、畑全体をすっぽり覆ってしまった。風が吹いても流れたり消えたりしない不思議なものだった。
「お怪我はございませんか?大希様」
「あ、秋香さん?」
畑を包む薄茶色の煙を吸い込まないように、彼女は僕の肩を抱いて着物の袖で口を塞いだ。
何、この煙。どういうこと?吸い込んだらどうなっちゃうの?・・・抱きしめられたことは嬉しいけど。
「私にはこれしかできません。大希様、すべて済むまで目を閉じてくださいませ」
「う、うん」
煙が流れてから猿たちがキャッキャと悲鳴を上げ始めた。
どうなっているのか分からないけど、ガサガサと鳴る葉の音が遠ざかっていってるってことは、逃げてるってことだよね?あちこちから聞こえた音が、消えていった。
「お辛いでしょうが、もう少しでございますよ」
秋香さんの胸が当たる肩に神経が集中してて、つらいどころか逆に嬉しいとか言ったら軽蔑されるよな。着物の生地越しにモゴモゴしながら訊いた。
「ねぇ、秋香さん。この煙って、秋香さんがやってるの?」
「・・・」
彼女は答えなかった。けど、僕の肩に回した腕がきゅっと強ばった。
この人も、やっぱり妖怪なんだな。
猿たちの気配が消えてしまうまで、僕はちょっとシパシパする目の痛みがあったけど、和服美女に抱かれたままだった。
母屋裏の畑は猿山みたいだった。
ミニトマトだけじゃなく、胡瓜や南瓜の蔓の中に座りこんでるヤツ、ピーマンや茄子の葉をちぎるヤツ、葉生姜の畝で遊ぶヤツ・・・かなりカオスな状況だ。
天狗を呼ぶにはここからじゃ遠すぎるし、小さな清蟹くんにはとても手に負えないよな。
「僕が何とかしなきゃ」
ここに来る道すがら納屋から持ってきた竹箒の柄を握りしめた。そして姿勢を低くして気配を消し、ジリジリと畑の中へ入っていった。
作物を荒らすことに夢中になっている群れに中に、突然人間が現れたら絶対ビビるよね。もし向かってきても、祖父ちゃん手製のぶっとい孟宗竹の箒で威嚇してやる。
我ながらイイ案だと思ったね。
けど、野生動物の異変の察知能力を侮ってた。僕の存在は、すでにバレていたみたい。
ミニトマトの枝を放り投げている猿たちの中に、あの枝豆畑の大猿がいた。僕に気づいたヤツは、こっちの方へ真っ直ぐ歩いてくる。
じっと目を見据えたまま、堂々と。
「ヤバい、竹箒じゃ勝てないかも!?」
焦りのせいか、痛めた足に力が入らない。どうしよう、襲われちゃう!
「大希様!」
甲高い声と共に、ブワッと煙のようなモノが立ちこめた。
ふわふわと漂う煙は、僕たちを包み、畑全体をすっぽり覆ってしまった。風が吹いても流れたり消えたりしない不思議なものだった。
「お怪我はございませんか?大希様」
「あ、秋香さん?」
畑を包む薄茶色の煙を吸い込まないように、彼女は僕の肩を抱いて着物の袖で口を塞いだ。
何、この煙。どういうこと?吸い込んだらどうなっちゃうの?・・・抱きしめられたことは嬉しいけど。
「私にはこれしかできません。大希様、すべて済むまで目を閉じてくださいませ」
「う、うん」
煙が流れてから猿たちがキャッキャと悲鳴を上げ始めた。
どうなっているのか分からないけど、ガサガサと鳴る葉の音が遠ざかっていってるってことは、逃げてるってことだよね?あちこちから聞こえた音が、消えていった。
「お辛いでしょうが、もう少しでございますよ」
秋香さんの胸が当たる肩に神経が集中してて、つらいどころか逆に嬉しいとか言ったら軽蔑されるよな。着物の生地越しにモゴモゴしながら訊いた。
「ねぇ、秋香さん。この煙って、秋香さんがやってるの?」
「・・・」
彼女は答えなかった。けど、僕の肩に回した腕がきゅっと強ばった。
この人も、やっぱり妖怪なんだな。
猿たちの気配が消えてしまうまで、僕はちょっとシパシパする目の痛みがあったけど、和服美女に抱かれたままだった。
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