52 / 66
大猿と洞窟
しおりを挟む
日時不明・1
目を開けると、闇の中だった。
あれ?まだ朝になってないのかな。
かなり長い時間眠っていたと思う。ここ一ヶ月分の睡眠不足を解消できた感じがして、全身がふわふわ軽い。誰にも邪魔されずに眠れたせいかな、久々に疲労感のない、めちゃくちゃさっぱりした気分だ。
「せっかくだから、もうちょっと寝よっかな・・・」
と寝返りをうった瞬間、ハッと気づいた。
車の中なのに、なんで寝返りできた?なんでゆったり横になれるスペースが確保できているの?
「え?どこ、ここ」
飛び起きると、自分に巻かれていた毛皮がバサッと足下に落ちた。
暗闇に目が慣れてくると、そこはゴツゴツした洞窟の中だと分かった。灯り一つない、むき出しの岩壁に囲まれた空間にふかふかの毛皮を敷かれて、その上に眠っていたらしい。
何それ!なんで車の外にいるの?実は僕、夢遊病だったとか?嘘でしょ?
「と、とりあえず、父さんに救助を・・・」
スマホを探してジーパンのポケットに手を突っ込んだけど、何も入っていなかった。車の鍵もない。着の身着のまま、この洞窟にいるみたいだ。
これってやっぱり遭難したってこと?けど、自分の足でここに来たとはとても思えない。じゃ、なんで毛皮の布団をかけられて寝てたの?
「!!」
混乱している僕の背後に、何かの気配を感じた。
「・・・だ、誰?」
その問いかけに、そいつは何も答えなかった。大きな体を丸めて、岩のようにじっと動かずに僕を見つめている。その目には見覚えがあった。
「お前・・・祖父ちゃんの畑荒らしてた大猿じゃないか?」
相手が分かったと同時に、猛烈にこの状況が怖ろしくなった。
もしかして、僕は攫われたのか?
抗争中の祖父ちゃんへの報復として、孫の僕を拉致したってことだとしたら大変だ。彼らにとっては庭みたいな山の中で、他所者の僕には逃げることも難しい。
そんな非力な僕に、いったい何をするつもりなのか・・・
「猿にボコされるとか、マジで最悪なんだけど」
大猿から距離を取ろうと後退したけど、すぐに壁にぶつかった。この狭い空間の出口は、大猿の向こう側だということに気づいて足が震えた。
逃げるためには、こいつを倒さないといけないってっことらしい。立ち上がれば僕の方が背は大きいけど、身体能力では絶対敵わない。
それでも、戦うしかないの?野生動物に丸腰で?
「やだよ、もう!どうしたらいいの?誰か助けてよ」
泣き出しそうな気分で座り込み、顔を伏せた僕の頭をふわっと優しく撫でるモノがあった。動物とは違う、人と同じ手のひらの感触・・・
人がいる!?
頭を上げた僕のすぐ正面に、いつ近づいてきたのか、全身覆い隠すくらいの毛皮を纏った大柄な何者かが座っていた。
顔を仮面で隠したそいつは無言のまま、僕の震えが治まるまでずっと頭を撫でてくれた。
目を開けると、闇の中だった。
あれ?まだ朝になってないのかな。
かなり長い時間眠っていたと思う。ここ一ヶ月分の睡眠不足を解消できた感じがして、全身がふわふわ軽い。誰にも邪魔されずに眠れたせいかな、久々に疲労感のない、めちゃくちゃさっぱりした気分だ。
「せっかくだから、もうちょっと寝よっかな・・・」
と寝返りをうった瞬間、ハッと気づいた。
車の中なのに、なんで寝返りできた?なんでゆったり横になれるスペースが確保できているの?
「え?どこ、ここ」
飛び起きると、自分に巻かれていた毛皮がバサッと足下に落ちた。
暗闇に目が慣れてくると、そこはゴツゴツした洞窟の中だと分かった。灯り一つない、むき出しの岩壁に囲まれた空間にふかふかの毛皮を敷かれて、その上に眠っていたらしい。
何それ!なんで車の外にいるの?実は僕、夢遊病だったとか?嘘でしょ?
「と、とりあえず、父さんに救助を・・・」
スマホを探してジーパンのポケットに手を突っ込んだけど、何も入っていなかった。車の鍵もない。着の身着のまま、この洞窟にいるみたいだ。
これってやっぱり遭難したってこと?けど、自分の足でここに来たとはとても思えない。じゃ、なんで毛皮の布団をかけられて寝てたの?
「!!」
混乱している僕の背後に、何かの気配を感じた。
「・・・だ、誰?」
その問いかけに、そいつは何も答えなかった。大きな体を丸めて、岩のようにじっと動かずに僕を見つめている。その目には見覚えがあった。
「お前・・・祖父ちゃんの畑荒らしてた大猿じゃないか?」
相手が分かったと同時に、猛烈にこの状況が怖ろしくなった。
もしかして、僕は攫われたのか?
抗争中の祖父ちゃんへの報復として、孫の僕を拉致したってことだとしたら大変だ。彼らにとっては庭みたいな山の中で、他所者の僕には逃げることも難しい。
そんな非力な僕に、いったい何をするつもりなのか・・・
「猿にボコされるとか、マジで最悪なんだけど」
大猿から距離を取ろうと後退したけど、すぐに壁にぶつかった。この狭い空間の出口は、大猿の向こう側だということに気づいて足が震えた。
逃げるためには、こいつを倒さないといけないってっことらしい。立ち上がれば僕の方が背は大きいけど、身体能力では絶対敵わない。
それでも、戦うしかないの?野生動物に丸腰で?
「やだよ、もう!どうしたらいいの?誰か助けてよ」
泣き出しそうな気分で座り込み、顔を伏せた僕の頭をふわっと優しく撫でるモノがあった。動物とは違う、人と同じ手のひらの感触・・・
人がいる!?
頭を上げた僕のすぐ正面に、いつ近づいてきたのか、全身覆い隠すくらいの毛皮を纏った大柄な何者かが座っていた。
顔を仮面で隠したそいつは無言のまま、僕の震えが治まるまでずっと頭を撫でてくれた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
17
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる