僕と松姫ちゃんの妖怪日記

智春

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大猿と洞窟

日時不明・1


目を開けると、闇の中だった。

あれ?まだ朝になってないのかな。

かなり長い時間眠っていたと思う。ここ一ヶ月分の睡眠不足を解消できた感じがして、全身がふわふわ軽い。誰にも邪魔されずに眠れたせいかな、久々に疲労感のない、めちゃくちゃさっぱりした気分だ。

「せっかくだから、もうちょっと寝よっかな・・・」

と寝返りをうった瞬間、ハッと気づいた。

車の中なのに、なんで寝返りできた?なんでゆったり横になれるスペースが確保できているの?

「え?どこ、ここ」

飛び起きると、自分に巻かれていた毛皮がバサッと足下に落ちた。
暗闇に目が慣れてくると、そこはゴツゴツした洞窟の中だと分かった。灯り一つない、むき出しの岩壁に囲まれた空間にふかふかの毛皮を敷かれて、その上に眠っていたらしい。

何それ!なんで車の外にいるの?実は僕、夢遊病だったとか?嘘でしょ?

「と、とりあえず、父さんに救助を・・・」

スマホを探してジーパンのポケットに手を突っ込んだけど、何も入っていなかった。車の鍵もない。着の身着のまま、この洞窟にいるみたいだ。

これってやっぱり遭難したってこと?けど、自分の足でここに来たとはとても思えない。じゃ、なんで毛皮の布団をかけられて寝てたの?

「!!」

混乱している僕の背後に、何かの気配を感じた。

「・・・だ、誰?」

その問いかけに、そいつは何も答えなかった。大きな体を丸めて、岩のようにじっと動かずに僕を見つめている。その目には見覚えがあった。

「お前・・・祖父ちゃんの畑荒らしてた大猿じゃないか?」

相手が分かったと同時に、猛烈にこの状況が怖ろしくなった。

もしかして、僕はさらわれたのか?

抗争中の祖父ちゃんへの報復として、孫の僕を拉致したってことだとしたら大変だ。彼らにとっては庭みたいな山の中で、他所者の僕には逃げることも難しい。
そんな非力な僕に、いったい何をするつもりなのか・・・

「猿にボコされるとか、マジで最悪なんだけど」

大猿から距離を取ろうと後退したけど、すぐに壁にぶつかった。この狭い空間の出口は、大猿の向こう側だということに気づいて足が震えた。
逃げるためには、こいつを倒さないといけないってっことらしい。立ち上がれば僕の方が背は大きいけど、身体能力では絶対敵わない。

それでも、戦うしかないの?野生動物に丸腰で?

「やだよ、もう!どうしたらいいの?誰か助けてよ」

泣き出しそうな気分で座り込み、顔を伏せた僕の頭をふわっと優しく撫でるモノがあった。動物とは違う、人と同じ手のひらの感触・・・

人がいる!?

頭を上げた僕のすぐ正面に、いつ近づいてきたのか、全身覆い隠すくらいの毛皮を纏った大柄な何者かが座っていた。
顔を仮面で隠したそいつは無言のまま、僕の震えが治まるまでずっと頭を撫でてくれた。
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