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雨漏り修理の日に
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午後の陽が梢から差し込む薄暗い雑木林の中、煙草を吹かしながらクロは腕を振り続けていた。
「おかしいな~あの時もこんなふうにしてたと思うんだけど」
細く立ち上っている煙を切るつもりで、もう一度腕を素早く振り上げた。変化なし。
「いろいろ考えすぎてんのかな・・・」
白く伸びた灰を落としつつ、右手のひらを見て首を傾げた。
魚住ユミのストーカーから助けた際に、自身の腕から風が走り、鋭い刃をなって攻撃できたのだことは間違いない。でもその後、何度同じフォームで腕を振っても、あの時の再現はできなかった。
「気のせいだったのかな、アレって」
まぐれであんなことができるのか?確実に、相手の腕を切り裂いたのに・・・
納得いかないクロは、ガシガシと頭を掻きむしった。
この妙な能力がほんの少しでも、記憶をなくした自分の過去を知るためのヒントとなればと期待しているのに・・・苛立つ気持ちは隠せない。
むしゃくしゃした気分を滅多切りするように、乱暴に腕を振り回した。
「ちょっと!こんなところでサボってたの?シロが台風に備えて雨漏りを修理してる途中でクロがどこかに消えたって探してるわよ」
「あ、あぁ、ちょっと一服してただけだよ。すぐ戻るつもりだ」
そう言いながら、大きくブンっと右腕を振り上げた。
「やだ、またやってる。最近そればっかりね。癖になってるんじゃない?」
くわえ煙草から落ちてくる灰を避けて茜がうんざりした声で言った。
「そう言うけどよ、俺の身元に繋がる唯一の特徴かもしれねぇんだぜ?無視はできねぇよ。それに、もしかしたら、この能力が完全復活したら記憶も全部戻るかもしれねぇだろ?」
「そうかもしれないけど・・・」
研究所へ向かい並んで歩く茜の表情は知れないが、声色はやや重く、煮え切らないものの言い方だった。
「あ!ひょっとして、あの時みてぇに命の危機って感じの緊迫感を再現できればいいのか?ヤバい!俺、刺されて死ぬ!って恐怖を、もっとリアルに想像して・・・」
そう言うが早いか、クロは立ち止まり、俯き、しばし目を閉じた後バッと顔を上げた。
「この野郎!!」
妄想の中の敵をめがけ、素早く右腕を振り上げた。空気が避け、シュッという乾いた音が響く。
・・・・・・
周囲の木々にはなんの変化も起きない。極限状態を想像し集中してからの、渾身の一振りをお見舞いしたつもりだったのに、木の葉一枚落ちてこないなんて。
「やっぱりダメか」
苦笑いして、足音に落とした吸殻の火をもみ消した。
今のはかなり手応えを感じたのだけど、思うようにはいかないものだ・・・そう思った瞬間、研究所の方から甲高い悲鳴があがった。
クロと茜は顔を見合わせ、急いで戻った。
「クロ君!能力を使うことは許可しますが、制御できるまでは研究所近辺での発動を禁止します!業務命令です!!」
「オヤジ・・・?」
屋外作業用の、直射日光から身を保護するために着込んだ分厚いレインコートから覗いた青白い顔を、さらに蒼白にしたシロは、不安定な屋根の上に四つん這いになって喚いていた。
彼のいる屋根の真下には、伸び放題の草に埋もれた、真っ二つに折れた梯子が転がっている。
「クロ、アンタの能力、ちゃんと発動してたらしいわね・・・全然コントロールできてなくて、雇い主を危険にさらしてるけど」
「・・・そうみてぇだな」
「何のんきに話しているのですか!早く代わりの梯子を持ってきてください!僕、体力には自信ないのですよ」
「あぁ分かってるよ、もうちょっと踏ん張ってろ」
「可及的速やかに行動しなさい!上司命令です!」
屋根の雨どいに無様にしがみつき、至急救助するように騒ぐシロと地面に転がった梯子を交互に眺めながら、クロは消沈とも安堵ともつかないため息をつき、新たな煙草に火を点けた。
「おかしいな~あの時もこんなふうにしてたと思うんだけど」
細く立ち上っている煙を切るつもりで、もう一度腕を素早く振り上げた。変化なし。
「いろいろ考えすぎてんのかな・・・」
白く伸びた灰を落としつつ、右手のひらを見て首を傾げた。
魚住ユミのストーカーから助けた際に、自身の腕から風が走り、鋭い刃をなって攻撃できたのだことは間違いない。でもその後、何度同じフォームで腕を振っても、あの時の再現はできなかった。
「気のせいだったのかな、アレって」
まぐれであんなことができるのか?確実に、相手の腕を切り裂いたのに・・・
納得いかないクロは、ガシガシと頭を掻きむしった。
この妙な能力がほんの少しでも、記憶をなくした自分の過去を知るためのヒントとなればと期待しているのに・・・苛立つ気持ちは隠せない。
むしゃくしゃした気分を滅多切りするように、乱暴に腕を振り回した。
「ちょっと!こんなところでサボってたの?シロが台風に備えて雨漏りを修理してる途中でクロがどこかに消えたって探してるわよ」
「あ、あぁ、ちょっと一服してただけだよ。すぐ戻るつもりだ」
そう言いながら、大きくブンっと右腕を振り上げた。
「やだ、またやってる。最近そればっかりね。癖になってるんじゃない?」
くわえ煙草から落ちてくる灰を避けて茜がうんざりした声で言った。
「そう言うけどよ、俺の身元に繋がる唯一の特徴かもしれねぇんだぜ?無視はできねぇよ。それに、もしかしたら、この能力が完全復活したら記憶も全部戻るかもしれねぇだろ?」
「そうかもしれないけど・・・」
研究所へ向かい並んで歩く茜の表情は知れないが、声色はやや重く、煮え切らないものの言い方だった。
「あ!ひょっとして、あの時みてぇに命の危機って感じの緊迫感を再現できればいいのか?ヤバい!俺、刺されて死ぬ!って恐怖を、もっとリアルに想像して・・・」
そう言うが早いか、クロは立ち止まり、俯き、しばし目を閉じた後バッと顔を上げた。
「この野郎!!」
妄想の中の敵をめがけ、素早く右腕を振り上げた。空気が避け、シュッという乾いた音が響く。
・・・・・・
周囲の木々にはなんの変化も起きない。極限状態を想像し集中してからの、渾身の一振りをお見舞いしたつもりだったのに、木の葉一枚落ちてこないなんて。
「やっぱりダメか」
苦笑いして、足音に落とした吸殻の火をもみ消した。
今のはかなり手応えを感じたのだけど、思うようにはいかないものだ・・・そう思った瞬間、研究所の方から甲高い悲鳴があがった。
クロと茜は顔を見合わせ、急いで戻った。
「クロ君!能力を使うことは許可しますが、制御できるまでは研究所近辺での発動を禁止します!業務命令です!!」
「オヤジ・・・?」
屋外作業用の、直射日光から身を保護するために着込んだ分厚いレインコートから覗いた青白い顔を、さらに蒼白にしたシロは、不安定な屋根の上に四つん這いになって喚いていた。
彼のいる屋根の真下には、伸び放題の草に埋もれた、真っ二つに折れた梯子が転がっている。
「クロ、アンタの能力、ちゃんと発動してたらしいわね・・・全然コントロールできてなくて、雇い主を危険にさらしてるけど」
「・・・そうみてぇだな」
「何のんきに話しているのですか!早く代わりの梯子を持ってきてください!僕、体力には自信ないのですよ」
「あぁ分かってるよ、もうちょっと踏ん張ってろ」
「可及的速やかに行動しなさい!上司命令です!」
屋根の雨どいに無様にしがみつき、至急救助するように騒ぐシロと地面に転がった梯子を交互に眺めながら、クロは消沈とも安堵ともつかないため息をつき、新たな煙草に火を点けた。
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