デイサービス ふくふく ~あやかし招き猫付き~

織原深雪

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「笹倉ハルエさんのお孫さんが顔を出してくださいまして。ハルエさんが、亡くなったと。それで、お孫さんが就職先探してるっていうんですよ。すぐ、降りてきませんか?」

中野さんの言葉に対する、電話の向こうの反応は私には分からない。
しかし、中野さんは笑顔を浮かべており次に返した言葉は更なる驚きをもたらした。

「そうでしょう!早く来てください。念願の即戦力の若手介護士ですよー!」

あら?
そんなに、めちゃめちゃ煽られると私は不安ですよ。
介護といっても、祖母のお世話をしていただけで、複数の人などお世話をしたことは無いのに。

電話が切られると、事務室近くの階段から音がする。
程なくして、事務室に施設の代表さんが現れた。

「初めまして。ハルエさんは残念でしたね。ご冥福をお祈りします」

丁寧に頭を下げてくれた代表さんは、中野さんと同世代に見える。


「さてさて、お名前と御歳を伺っても大丈夫ですか?」

代表さんはにこやかに尋ねてきたので、私は戸惑いつつも答えた。

「笹倉佳菜恵です。二十一歳です。高校時代からずっと祖母をみてきましたけど、それだけです。資格も一応取ってはあるんですが、それもお世話の知識が欲しくてなので」

「そうなんですか。高校時代からというと、五年くらい?」

「そうです。高校二年生からなので、十六からの五年間ですね。そのうち、四年はふくふくさんにお世話になってました」

私の話に、頷きつつ代表さんが話し始める。

「私は、このふくふくを運営しています。木村と言います。若いうちに家族の介護をするなんて、覚悟がないと出来ないことです。佳菜恵さんは、それが出来た。ならば、それが仕事になっても出来ると思います」

にこやかに代表さんは言い切る。

「どうでしょう? デイサービスふくふくで、働いてみませんか?」

いいんだろうか? こんな風に声をかけてもらうために来たわけではなかったのだけれど。
でも、祖母がお世話になった施設。
これも、なにかの縁かもしれない……。

「私としては、高卒のまま働いた経験もない。中途半端な年齢の私でも働きませんか、と言っていただけるのであれば。よろしくお願いします」

そんな私に、木村さんも中野さんも優しい表情で迎え入れてくれた。

私、困難に思っていた就職先探しが思わぬご縁で見つかりました。

このやり取りを、こっそり見ている存在には気づかないまま。
私はお祖母ちゃんのことが落ち着くだろう来週から、ふくふくで働くことになりました。



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