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しおりを挟む告げられた奉公先へ出向くまで二週間のうちに出来るだけの仕事を終えて、私は荷造りをした。
聞いたところによると、身分お高い人々の住まう所で雑用と機織りをしてほしいとの事だった。
どうやら都ではうちの工場の生地は人気が高いらしく身分の高い人々にも好評なようだった。
そこからの奉公の話になったらしい。
私に出来ることなんて、手先の器用さを生かしたこの機織りや染色加工しか無い。
それを求められての採用なら大丈夫だろうと、実に安直に考えていた。
連れてこられた都で、見上げた後宮の門前に立つまでは……。
「父さん、奉公先はしっかり教えといてくれないとダメでしょう……」
小さな呟きは何とか他の人に届くことは無く。
内心の動揺を押し隠して、私は後宮の女中としてその場に一歩を踏み入れた。
後に、ここで回れ右しておけば良かったと心底後悔するが、それこそ後の祭りというやつである。
不審にならないように、取り次がれた女官さんについて歩く。
後方で働くものの区域に入って、やっと小さくホッと息を吐き出した。
「緊張しましたか?もう大丈夫ですよ。では女中たちの控え室に案内します」
優しい笑みを浮かべてくれる女官さんに、微笑んでお礼を言いついて行く。
「あら、今は浮光だけですか?」
「嬋娟様!はい、今は出払っておりまして私だけにございます」
すくっと立って答えたのは成人したてに見える年下の少女。
その子にも優しい笑みを浮かべて嬋娟様は言った。
「新しく来た女中で機織りがメインになる子よ。春麗、この子も二週間前に来たばかりよ。浮光(ふこう)っていうの。部屋も同じだから仲良くなさい」
そうして、私の後宮での女中生活は穏やかにスタートした。
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