お手つき禁止!~機織り娘の後宮奮闘記~

織原深雪

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 そんなに笑う?

 私は、天蓋から降り立っても笑い続ける陛下に若干引きつった笑みを見せた。
 すると、コホンと一つ咳払いをしてやっと笑いを収めると、陛下は私に聞く。

 「よくここまで逃げて隠れられたな。こちらも春麗の行方が掴めなくって、少々心配していたんだ」

 そんなに私痕跡残さなかったかしら? ちょっと首を傾げていると飛龍さまが、頷きつつ言葉を添える。

 「俺が気づいて迎えに行った時には既に工場がもぬけの殻で、そこにいた筈の痕跡はあったし、途中までは追えたんだよ。流鶯さまの居室前でパタリと途切れてたから……」

 うん、敵方に囚われてしまったかもとなったんだね。
 しかし、この事態の収集の方が先だからここまで来た侵入者を捉えに来て、まさかの寝所に侵入跡、があって気づいたと。

 「この隠し通路は誰から聞いた? まぁ、大方予測はつくが……」

 ため息混じりの陛下の言葉に、私はもちろん陛下の予測した人物の名を口にする。

 「もちろん、この隠し通路を本来非常用に教えられている流鶯さまですよ。この前の茶会で、身辺の異変の際についての話をしたらこの通路と、その先のたどり着く場所について教えて下さいました」

 陛下と泰然さまと飛龍さまは顔を合わせると、苦笑しつつ言った。

 「本来はこれは口外禁止の重要機密なんだがな。今回の場合は非常時に役立ったことだし、流鶯はお咎めなしだな」

 陛下の言葉に泰然さまと飛龍さまは膝まづいて頭を下げると、賛同の意を示したあと更なる指示を受けたあと寝所を下がっていった。

 「春麗、此度は巻き込んで済まなかった。そこで、提案があるのだが……」

 言葉が止まると、陛下はちょっと表情固くしつつ私の顔をみたあと、キュッと手を握りしめたあとに告げたのだった。

 「今後も狙われることがあるかもしれぬ。春麗を俺が気に入ってることが、周囲に知られ始めているから。守るためにも、六番目の側妃になって欲しい」

 ………………。
 はい? 庶民な田舎出の小娘が? 後ろ盾も何もない庶民の子が? 六番目の側妃に?

 「いや、おかしいでしょう?! 貴族でも豪商の子でもない、一般市民の子が側妃はありえない!!」

 私の叫びに、陛下はクスッと笑うと言った。

 「何にでも例外というものはあって、初めてのものには皆驚くものだ。しかし、春麗を守るためだ。受け入れてくれ」

 えぇ、この国の最高位の陛下に否と言える訳もなく、後宮に奉公で女中に来
たのに……。
 なぜか、激しいクラスチェンジに思考回路はカランカランと空回り。
 しかし、言い返せるはずもなくこの日のうちに後宮の六番目の側妃の部屋に私の荷物が運び込まれ、あれよと側妃になってしまったのだった。
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