お手つき禁止!~機織り娘の後宮奮闘記~

織原深雪

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絶対、変えないんだから! 小さな抵抗

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 後宮侵入事件後すぐ、あっという間に陛下の一存で六番目の側妃にされてしまった私。
 しかし、この地位に就くことに納得したわけじゃない私は、今日も自分に就いた女官の目をくぐり抜けて私が一番落ち着く工場へとたどり着き、いつものようにせっせと機織りを始めて半刻ですぐに見つかってしまった。

 移動には女中の時のお仕着せを着たので違和感なく移動できたのに、どうやら私に就いてる女官はとっても優秀なようだ。

 「春麗さま、どうかお部屋にお戻りくださいませ。 今日は陛下がお見えになると先触れが来ております。 私共が叱られてしまいます。」

 むむ、陛下が来るの? それは戻らないわけにはいかないか……。
 まったく面倒な地位に就けてくれたものだ。 望んだわけでもないのに……。

 「わかりました。 戻ります」

 こうして、私の速攻行われた居室からの逃亡は一刻にも満たないうちに幕を閉じた。
 機織りが生きがいの私には、大変不服な現状である。

 部屋の戻ると、いつの間に用意されたのか綺麗で華やかな服へと着替えを要求されて、仕方なしと流れるままに任せる。 不服はあるが、側妃の部屋に押し込まれてしまった以上どうすることもできない。

 そうして、着せ付けられた綺麗な衣装と髪飾りで飾り付けられるのが終わって少し経った頃、陛下が部屋へと訪れた。

 「春麗、よく似合っているな。 やはり、春麗には淡く明るい色が似あう」

 私が着ているのは若草色の着物に薄桃色の裙である。帯は深い緑で飾り紐は紅。
 それに蝶や花の形の簪で髪は綺麗にまとめ上げられている。
 身の回りのお世話をする女官達は総じて手先が器用で仕事に無駄がなくきびきびと動く。
 おかげで陛下の訪問に間に合ったのだ。 プロの技といったところだろう。

 「陛下、本日はどんなご用向きでございましょう?」

 私の声に、陛下は眉根を寄せた。 そしてそのままの顔で言った。

 「春麗、そんな話し方をしなくていい。 工場へ行ったそうだな。春麗の部屋のそばに小さめの工場を作ろう。今までの場所では移動が大変だろうからな。あの、離れを模様替えして工場にするから」

 何の気なしに告げられた言葉に私は目を見開く。
 ただの六番目の側妃にそんな贅沢を与えてはいけないと思う。 まして、女中上がりなのだ。配属された女官達は優しいものの、元同僚などからはきつい視線を受けた。
 そんなわがままな暮らしはできようはずもない。

 「恐れながら、陛下。私は今も十分なほど頂いております。これ以上は不要にございます」

 私のきっぱりとした拒否に陛下は驚きとともに、悲しそうな顔をした。

 「わかった。気が変わったらいつでも、言ってくれ。俺は春麗のためにしたいんだ」

 そう残して、今日は早々に部屋を出て行った。

 望まない日々の幕開けであった。
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