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 「ここまで自由になれずに拘束されるとはね……」

 側妃の室に押し込められて一週間。
 すっかり、室に引きこもりの私。
 今はここに押し込められる前に織り上げていた生地を、数着の衣装に仕立てられた物に刺繍を施している。

 側妃という立場がこんなにままならないものだとは思っていなかったので、私はすっかり元気と物事へのやる気を無くしていた。

 「人間、ここまでダラっと出来るものなのね……」

 手を止めて、窓の先に見えるのはすっかり秋模様になった木々に色づき落ちていく葉だった。

 
 「奉公で働くために来たはずなのに、どうしてこうなった……」

 父は出会いが少しでもあるようにと望んでいたが、後宮ではそんなものは少なく、それでも機織りが好きなだけ出来る環境を私は気に入っていたのに……。
 側妃になるなんて、まったく考えになかったしいまだに、なにかおかしいとしか思えない。
 田舎の行き遅れ娘、容姿だっていいとこ中の下の平凡な娘だ。
そんな私も女官に飾り立てられ続ければ、それなりには見えるらしいがそれを喜ぶようなタイプではないから、この環境に精神的に疲れているのだと思う。

 「はぁぁぁ……」

 出てくる溜め息は深く、数は増える一方。
 そんな溜め息をついてすぐ、室の入口から声をかけられた。

 「春麗。なにを憂えている? そんなに深い溜め息を零して。 俺になにか出来ることは無いのか? 」

 後ろから聞こえた声に、私は驚きつつ振り向く。
 入口の開け放たれた戸に寄りかかるようにして、声を掛けてきたのは私が工場て見掛けていたゆるっと着崩した服の陛下だった。

 「陛下!? 今日はこちらにいらっしゃるとは伺っておりませんでした。 直ぐにお茶を……」

 室の隅で待機していた女官が動き出したのを、陛下が手を挙げて止める。

 「春麗と少し二人で話したい。 茶と菓子はゆっくり持ってきてくれ」

 陛下の言葉に、サッと頭を下げると女官は肯定の言葉を述べると立ち去って行った。

 この室で二人きりというのは初めての事だ。

 「春麗。 俺は間違えただろうか? お前の身を守るためにはこうするのが一番安全だ。 しかし、春麗の心は俺から離れていると感じる……」

 それは、そうだろう。
 前までの態度もおかしかったのだけれど、望んでいなかった側妃なんて立場に追いやられたとしても、そこはそれ相応の態度でいなければいけない。
そんな周囲からの空気をしっかり感じ取っているのに、前のままみたいな態度でいられるわけがない。
 私はきちんとした対応しているだけだ。
 まぁ、否やもなくこの室へと入れられたことに不満があるのも確かだから、それも態度に出ているとは思う。
 大人になりきれていないのだろう、顔や態度に気持ちが出てしまうのは……。
 それは、確かに陛下へと引いたひとつの線となっているのだった。

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