異世界もふもふ保育園へようこそ!

織原深雪

文字の大きさ
7 / 16

羊族の村に危機到来

しおりを挟む
 夏も本格化してきたころ、村では急に慌ただしく人々が奔走し始めた。
 保育園の窓から急に慌ただしくなった人々を見て私は何が起きるのかと、思わず様子を伺っているとそこにエリンさんミーナさん、キャロルさんにミレイラさんが来て告げた。

 「ライラさん、ハルナちゃん明日には嵐が来るわ、準備しないと!」

 その言葉にライラさんは顔色を変えた。

 「ハルナ、明日は保育園は休園にしましょう。人が外に出れる状況ではなくなるわ」

 その言葉に、私は嵐がとてつもない規模のものだと推測した。

 「ここは高台だし、他に建物もないからしっかり準備しないと大変なことになるわね。建てたばかりの園舎はなんとか保たないと……」

 そんなライラさんにエリンさんが答える。

 「サムが自分の家を補強したら真っ先にここにきて補強してくれるって言ってたわ」

 その言葉にうなずくライラさんに、私は聞いた。

 「ライラさん、嵐ってどんなものですか?」

 私の問いにライラさんは目を丸くして驚きつつもハッとすると教えてくれた。

 「そうね、ハルナはここに来たばっかりだものね。嵐は文字通りよ、雨と風がすごい勢いで来るの。最近は穏やかで減っていたんだけど、最悪この農地や農場も近くの川が崩れると水没するの。昔はこの高台にみんな着の身着のまま避難したものよ」

 嵐はどうやら私の世界でいう大きな台風と想像した。
 私の世界でもこの季節にはちょこちょこ巨大な台風が来ては大きな被害をもたらしていた。
 幸いにして私の住んでる地域ではちょっと停電くらいや軽い崖崩れ、住宅の屋根瓦が飛ぶ程度でいたけれど、海を挟んだ隣の県ではものすごい被害が出たりもしていたものだ。
 場合によっては生命の危険が及ぶもの……。

 こちらの嵐もその認識で合っているよう。
 大人はみんな急いで明日に備えるべく動いているようだ。

 「ライラさん、ここに水分と簡単に食べられる物を集めておきませんか?ここは昔避難していた場所なんですよね?」

 私の言葉にライラさんはハッとする。

 「そうね、今回もなにかあったらここは建物もあるし避難所になりあえるわ。キャロルとミレイラ、ここに水と食料を集めてくれるかしら」

 ここには子ども用とはいえ初期もあるし、トイレ調理場まであるのだ。
 そして、最悪ここではみんななにかしら魔法も使えるというし建物が一つ残れば避難所として機能できるだろう。

 「あと、毛布や肌掛けなどもあればいいかと思います」

 そんな私の言葉にキャロルさんとミレイラさんは頷くと、今頼んだものを集めてここに運ぶために動き出した。

 そうしていつものように遊んだり、ご飯を食べたり、お昼寝したりして過ごしたところで、お帰りの挨拶で私は大切だと思うことを子ども達に伝えることにした。

 「みんなは私より耳が良くって、音に敏感だね。だから少しでも怖い、危ないと思ったら大人と離れずに過ごすこと。そして、大人の言うことをしっかり聞いて、その言うことをしっかり聞いてね。そして、なにかあったらお父さんお母さんに保育園に行こうっていうのよ」

 そんな私の言葉に、メロウちゃんやノノちゃんは頷く。
 カロンくんは少し考えた顔をした後に聞いてきた。

 「どうして保育園に行こうって言うの?」

 その問いに私はしっかりみんなを見つつ答えた。

 「ここにはね、飲み物や食べ物や寝るための毛布とかを集めてあるの。ライラさんがここは昔避難所だったと言ってたから。だから危なくなる前にここに来ててほしいの。私もここで過ごすから」

 私の言葉にへぇとか分かった! なんて返事を子ども達はして今日は早めに迎えに来た親御さんたちにも、ここをもしもの時の避難所にすることを話してその日はお別れした。

 私とライラさんも一度家に帰ると、いろんなものを運びつつローライドさんカーライドさんも共に保育園へと戻った。
 村は聞けば川があふれれば水没するというし、この高台のほうが村全体を見渡せるので自警団の長のカーライドさんも様子を見て動きやすいと思ったのでみんなで今夜からここで過ごすことにした。

 「完成した時にも見たけど、ここはやっぱり可愛い作りだね」

 カーライドさんは園内を見渡して微笑む。
 ローライドさんも見て回って、思いついたらしくライラさんに話しかける。

 「ライラ、家に眠ってるカーライドが昔好きだったおもちゃや絵本を持ってきたらどうだい?」
 
 その言葉にライラさんは、一つ頷くと言った。

 「そうね、持ってきたらみんなが遊べるわね。すっかり忘れてたけど、取っていたんだったわねぇ」

 にこやかにいうライラさんは少し懐かしそうで、優しい表情をしている。
 きっとカーライドさんが小さいころを思い出しているんだろうな。

 すると、カタカタと窓の外から風の音がしだした。

 「予測より早く来そうだな……」

 そんなローライドさんの言葉の通り、天気読みさんの予測よりやや早く嵐は近づいてき始めた。
 この世界に天気予報なんてない、でも魔法で空を読み翌日の天気をお知らせしてくれる天気読みという職業の方々が大体村に一人はいるんだとか。

 今回もそんな天気読みさんが明日は嵐が来ると言ったので皆さん準備したのだ。
 天気読みの予報は翌日のものであるがゆえに精度が高く外れることがないという。
 そんな天気読みさんが異例にも明日と明後日はダメだと言ったので住人たちは慌てたのだ。
 この村の天気読みさんはベテランでこの村の生き字引なマリーおばあちゃん。
 マリーさんは独り暮らしなので、ここに来るときに実は一緒に来ている。
 マリーさんが一人で避難するとなると大変だからと説得して一緒に来た。

 今はライラさんと二人ゆっくりお茶をしている。

 深夜と呼べる頃、外の風はどんどんと勢いを増し雨も降ってきたしその音はすでに叩きつけるようなもので不安になってくる。

 「こりゃ、私の読み以上の嵐かもしれん……」

 マリーさんの言葉にカーライドさんは外の様子を見に出た。
 そして慌てて駆け込んできてローライドさんに言った。

 「父さん、まずい! 川がもう溢れそうだ! 俺は村に戻って避難が大変そうなところを手伝ってくる!」

 その言葉に私は一気に不安が増し、私も動こうと玄関に向かうとカーライドさんはそんな私を見て微笑んだ。

 「ハルナ、大丈夫。君はここでこれから来るだろう子ども達のために残らないと。ハルナがいれば子ども達は安心するだろう?」

 そんなカーライドさんの言葉に私はそれでも表情を緩めることは出来ない。

 「お願いだから無理はしないでね? 気を付けてね」

 そんな私の言葉に、カーライドさんは頷くと私の髪をクシャッと撫でて嵐の中を村に向かって行った。

 そんなカーライドさんと入れ違うように、村の住人が続々と保育園にやってきた。
 次々と来る人々に私やライラさんマリーさんにローライドさんはタオルを渡したり、お茶を入れたりした。
 その後も続々と来た人々を受け入れて行ったのでてんやわんやしつつ、空が明るくなる前には保育園は村の住人約三百人で埋まった。
 結構スペースとしてはきついけれど、それでも人々がみんな無事避難できたことに安心する。
 カーライドさんも無事に保育園へと戻ってきて数分後、川は溢れて村がどんどん、水に飲まれていく。
 暗いまま迎えた朝とともに村はいつもの様子から変わってしまったのだった。

 村人すべてを受け入れられたその要因はもしかしたら今後は子どもが増えるかもという私の考えから、この村で建てるなら一番広くしちゃおうなんて考えで園舎の建築をお願いした結果だった。
 大は小を兼ねるとはいえ大きすぎたかな? と完成当初は思ったものだが今回の様子を見るに結果オーライ。
 広かったおかげ村人の避難所としても機能したのだから。

 子ども達も、いつも過ごす園で親も近所の人も一緒で安心したようだし嵐が落ち着くまでは狭いながらもみんな顔見知りの住人たちは穏やかに過ごすことができたのだった。

 そうして嵐は翌日の昼までには大人しくなり、水もその日の夕方には引いていったが、もう一晩はみんなで保育園で過ごして翌日みんなで村に戻ることに決まったのだった。

 建物、作物に被害はあるだろうが人的被害がなく嵐を乗り切れたことに大人たちはほっとしたのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

異世界転生してしまった。どうせ死ぬのに。

あんど もあ
ファンタジー
好きな人と結婚して初めてのクリスマスに事故で亡くなった私。異世界に転生したけど、どうせ死ぬなら幸せになんてなりたくない。そう思って生きてきたのだけど……。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

処理中です...