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嵐のあとは
しおりを挟む無事に村人みんなで嵐を乗り切ったが、村に戻ると状況は悲惨だった。
農場と畑はみんな泥と水に浸かってしまい作物は全滅。
農場はなんとか水が来る前に草原に牛や豚や鳥もどこかに行ってしまうのを考慮しつつも放したおかげで、家畜は何匹か行方不明ながらも無事だった。
そして住人たちの家やお店はと言うと、やはり泥まみれ。
これを綺麗に片付けるのは容易じゃない感じのべとつき具合で、その様子に住人みんなため息を零すけれど、みんなお互いを見つそのあとには笑顔を浮かべていた。
昨夜子ども達が寝てから村の大人から聞いたのは、二十年前に同じ規模の嵐が来たときは大人子ども合わせて百人近くの犠牲者が出たのだという……。
それを想えば、村人がみんな無事で嵐を乗り越えられたことは奇跡なんだと。
ここに大きな建物が出来てたおかげだと、みんな口をそろえて言った。
そんな二十年前を思えば、今回はみんな無事なのだ。
力を合わせて、綺麗にしてゆっくりと生活を立て直していけばいい。
そんな気持ちの前向きな笑顔が見られて、みんな片付けに精を出し始めた。
私はそんな村人たちの邪魔にならないように、園舎で子ども達と保育園を再開することにした。
いろいろ足りないものはあるけれど、この生活の立て直しの現場に子どもは危ないからだ。
子ども達も自分の家の状況を見て、元のように住めるようになるまで時間がいることを理解できたようで、私と一緒に園舎で過ごしたり、午後は園庭に飛んできた枝や葉っぱを集めて綺麗にしたりと子ども達も頑張ったのだった。
そして、暗くなる前には村の大人みんなが保育園に戻ってくる。
まだ家で過ごせるほどに片付けが終わるわけもなく、今週いっぱいは皆さん自宅や職場を片付けては保育園で夜を過ごすことになる。
魔法があるとはいっても、ここの皆さんが使えるのは生活魔法といったたぐいのもので、水が出せるとか火がつけられるとか、ちょっと明かりが出せるみたいなものだからだ。
私が自分の世界で読んでたファンタジー小説の魔法みたいにドカンと爆発させたり、風を巻き起こしてみたり、それで飛んでみたりみたいな派手なものは無いのだ。
つまり、大体は地道な手作業での復興作業となる。
私の世界みたいな重機や便利な機械はそうそうない。
スコップやブラシを駆使してなんとかやっているのだ。
一週間でも家を綺麗に住めるまでにするのは結構厳しい期間だと思う。
それでも、みんな疲れた顔をしても穏やかでいられるこの場所があって良かったと心から思った。
私はみんなが頑張ってる間、無事だった子ども達をしっかり守ること。
そうして気合を入れて、私は嵐の翌日からなるべくいつものようにと子ども達に心がけて接して過ごすようになったのだった。
嵐の日から四日、園庭で遊んでいた子ども達が一斉に草原のほうへと顔を向ける。
「みんなどうしたの?」
いま子ども達以外ではここには私とマリーさんしかいない。
ライラさんもいつも手伝ってくれるキャロルさんやミーナさんエリンさんも自宅の修復で忙しいのだ。
そんな時に子ども達が一斉に草原のほうに反応するので私としてはどうしたらいいものか、判断に困っているとカロンくんが寄って来て教えてくれた。
「王様の気配がする。それ以外にもいっぱいの人の気配がするからみんな気になっているんだ」
そんなカロンくんの説明を聞いてるうちに、私の背後からもたくさんの足音がしてきた。
振り返れば、そこにはカーライドさんをはじめとした村の若手の大人たちが来ている。
「すごい人数の集団が近づいてくる気配がして、心配になって来てみたんだが杞憂だったみたいだ」
そのカーライドさんの言葉にカロンくんは頷いて言う。
「カーライド兄ちゃんは距離がありすぎて誰だか分からなかったんだね。俺は距離が近かったから王様だって分かったよ」
ちょっと自慢げにいうカロンくんの頭を撫でて、カーライドさんはにこやかに言う。
「あぁ、カロンはしっかり成長しているな。来年から学校だもんな、大きくなったもんだ。みんな、固まってないでこっちにおいで」
カーライドさんの声にカロンくんより小さな子達で固まってた子たちが動き出した。
「お前たちも、ちゃんと気配が読めて偉いぞ。今回はいいが、おかしいと思ったらすぐハルナに伝えて園舎に戻るんだ。今度からの約束な?」
かがんで子ども達に目線を合わせて言うカーライドさんに、子ども達は顔を綻ばせていい返事をした。
「はい! ちゃんとハルナ先生を守るからね!」
一人ずつわしゃわしゃと撫でながら、頼んだぞと笑顔で言って回るカーライドさんは優しくて、頼もしいなと眩しく感じたのだった。
近づいてきた気配はカロンくんが教えてくれた通り、一か月ぶりの王様ご一行だった。
しかも今回はかなりの大人数で、私たちも驚きを隠せないが王様は村の半数近くが保育園のそばに集まってるのを見て安堵の笑みをこぼして言った。
「皆、無事であったか。此度の嵐は王都でも猛威を振るっていたので、心配になり視察に来た。被害を想定して食物と物資と人手も連れてきた。数日滞在するから、その間に一気に作業を進めよう」
王様の言葉に、駆けつけたローライドさんは頭を下げた。
「ありがたく存じます。此度の嵐は村人は保育園に避難したおかげで誰一人欠くことなく無事でありました。しかし、住居や仕事に関しては壊滅的なのです」
王様はローライドさんの話を聞くと、保育園から村を見渡して頷いた。
その眼下には、ダメになってしまった畑。農場の飛んでしまった屋根や村の家にまだまだこびりついている泥汚れなどが見えていただろう。
およそ人が生活できるような状態ではない、悲惨な状況。
それでも死者がいなかった、それだけが私たちのやる気を支えていたのだ。
「これだけの被害で、よくぞ無事だったと思う。こうした少し高いところに大きな建物を建てるのは、嵐には有効かもしれぬな。今後のことを考えて検討次第即国としても動くとしよう」
そんな王様は、後方に控えていた騎士や作業員のような人々に動くよう指示を出す。
それを聞いて、村の状況を一番把握しているローライドさんがあれこれと王様が連れてきた人々と話し出す。
また村に人々が移動していくと、王様はまだここに残っていた。
「嵐の際、この保育園を避難所にしたのはそなたの意見か?」
静かに問われた私は王様を見つめて答えた。
「えぇ。ここが一番新しい建物で、この村の中で一番高いところになることと、二十年前にここが避難場所だったとライラさんに聞いて今回もここが安全だろうと思い決めました」
真っすぐに見つめて答えた私に、ダムド国王は言った。
「この世界の嵐は厄介でな。普段は温暖で穏やかな気候の国だが十数年に一度こうして大きな嵐に見舞われるのだ。しかも突発的にな……」
それは気象予報の発達した私の元世界とは比べられないほど、穏やかでいいことだけど数十年に一度、しかも来るのを知るのは一日前では大変だなとは思う。
「そなたの世界にも嵐はあったのか?」
ダムド国王のその問いに私は頷いて答えた。
「ありました、嵐以外にもものすごい雨だけが降るとか、地が揺れることもありましたし、山が噴火することもありました。一番まれなのは噴火ですね」
そんな答えに、ダムド国王は目を丸くする。
「地が揺れるとは恐ろしいな、噴火と言うのも想像できん。嵐もあるなど、ハルナの世界は住むのが大変なのだな」
まぁ、言葉だけ聞くとそう思うよね。
災害大国ともいわれていたようだし、確かに一年に何件もの災害が起きる年もあるほどだった。
「でも、過ごしやすい国でしたし天気は三日後ぐらいまで予報が出るし、一週間の予報もあったので嵐はわりと早くから対処できたんですよ」
そんな私の話に驚きつつ、ダムド国王は言った。
「嵐対策や、その後の立て直しに着いてそなたの世界でのことを教えてほしい」
それは、きっとこの世界にも有効だろう。
「えぇ、お話します。そこまで詳しくは無いですけど」
こうして国王さまの援軍を得て、生活立て直しはペースを上げることができた。
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