放浪(元)騎士、世界を救う!?

風無シオン

文字の大きさ
22 / 40

第20項 月が……綺麗ですね

しおりを挟む
――――バンッ!――――
「アイリッ!!」
 扉を跳ね開けて入っていくゼクス。
 急に扉が開いたもので「ギミャッ!?」と奇妙な声を上げて皿を落としそうになるキャミィ。間一髪のところでしっぽでキャッチをした。
 乱暴に開けた扉を気にすることなく、店内はいつものごとく傭兵たちが晩酌を楽しんでいた。
「どうしたの? 騒がしいわね。アイリなら今いないわよ?」
 アイリの指定席――カウンターの最奥端――には主のいない回転椅子がちょこんとあるだけ。
「例のブツの出所がわかった。それですぐにでも出ないと被害が出る。ミーナと出る。アイリが戻ったら至急よこしてくれ」
 端的に要件だけ伝えると、ゼクスは風のように去っていく。
「やれやれ、そそっかしい子ね」
 ため息を吐くリリィは肩をすぼめた。
「どうやら、大事になりそうだなぁ……」
 浅黒い筋骨隆々の騎士はボトルをショートグラスに傾ける。拳のような氷がカランと音を立てた。
「まあね。いろいろと手回ししなくちゃいけないみたいで大変だわ」
「相変わらず他人事みたいな言い方だな」
彼が重い腰を上げ、「しかたねえ」と、立ち上がる。
「リリィねえには俺たちも世話になってるからな。俺たちも手ェ貸すぜ」
グラスを煽り一気に中を空にして――タンッ!――とテーブルに叩きつけた。
「グラス、割らないでね」
やれやれ、とリリィは彼を見送った。

ゼクスが店から飛び出ると広場に見覚えのある魔装馬が二頭。出撃できる状態で佇んでいた。
「移動手段のアテはあるの?」
二頭の影からガンベルトを体に巻き付けたミーナが腰に手を当てて待っていた。
「ミーナ!? なんでここに――」
「あれだけ大きな魔力の流動が起きたら一発でわかるわよ。さぁ、乗って。急ぐんでしょ!?」
「ああ、助かる!」
 跳躍して魔装馬の背に飛び乗ると手綱を引いて疾走した。

「どこに行くのかわかってるのか!?」
 夜の高野をひた走る二人。
「大体しかわからない! ゼクス、先導して!!」
 前傾姿勢になりながら舌を噛まないように叫ぶ。
 シュレムの魔力を感知して魔装馬を用意したのは良かったが、行き先はまったくもって分かっていない。
 とにかく。できることはしておくミーナは自身も完全武装をして広場で待っていたのだ。
 彼女にできることはここまで。ここからはゼクスだけが頼り。出来ることなら自分が先導して解決したかった。
 自分の不覚でことが大きくなってしまった事でその思いは日々大きくなっていたのだ。
「一番近い村はどこだ!?」
「え、ああ。迷いの森に近いバレーナ村。海岸近くのオルカ村。この中で一番大きいクアーロ村だよ」
 帝都からそれほど離れていないおかげか治安は割とよくそのため村は数多くある。だがミーナはその中でもロクスティが行きそうな場所を選択して言ってくれているのだろう。
 海岸近くのオルカ村から船で海運してばらまく可能性もある。一番大きいクアーロ村でより多くの人を錯乱させることもありえる。
 彼の目的が分からない以上、勘で行くしかない。
「…………バレーナ村だ。理由はない」
 確信はない。ゼクスは信じてくれというしかなかった。
 後方を走るミーナはゼクスが何を思っているのか。わかりきった表情で微笑むのだった。
 彼女の表情で悩みは吹っ切れた。
(もう、進むしかないよな!!)

 静寂が包み込む村。家の明かりはついているのだが人の気配はない。その異様な雰囲気にゼクスは息を飲んだ。
「あれは……」
 広場にロクスティのものらしき荷馬車が一台佇んでいた。
 だが周辺にも人の気配はない。
 ミーナは荷台を覗くと、中は空っぽ。何か運んでいた形跡もない。
「……ミーナ」
 周囲を警戒していたゼクスがミーナを呼ぶ。
 村の入口から反対――森の入口にロクスティが二人を待っていたかのように立っていた。
「こんばんは。お二人とも。今夜は月が綺麗ですね……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...