【完結R18】エリートビジネスマンの裏の顔

シラハセ カヤ

文字の大きさ
9 / 25
01.

09.ごめんね

しおりを挟む



「緋莉さん…?えっ、緋莉さん!!」

閉めたはずの鍵が開いており、
見慣れない靴を見つけた石橋くんは
すぐ奥の部屋まで入ってくる。

「石橋くんッ」
顔を見たら安心して泣きそうになってしまう。

「……警察、呼びますからね」
「いいのか?緋莉のこと、働けなくしちゃうよ」
カッターを私の目の上に構える。

「お願い石橋くんやめて…!」

「狂ってるって……頭おかしいんとちゃう自分」
檜垣さんの裏の顔を目の当たりにした石橋くんは
この状況に正常性バイアスが働いているのか
乾いた笑いを浮かべて1歩、私たちに近寄ってくる。

「…ガキのくせに、生意気なんだよ」
それを牽制するように、
石橋くんの方にも刃先を向けて威嚇する。

「ほら、緋莉がイくとこ見せてやるよ」
邪魔はするなと牽制をかけて、私を後ろに向かせて
首を絞めながらベッドに私の顔を押し付ける。

「やめろって!!!!」 

石橋くんの大きな声で
私の首を絞める手が緩まって離れる。

「それ以上したら、分かってんやろな」

背後でカッターがカチカチと音を立てる。

「今すぐ出てけや」

こんなに怒りの感情でいっぱいの石橋くん知らない。

あまりの勢いにさっきまで
完遂する気満々だった檜垣さんも私から離れる。

「お前の生温いセックスじゃ満足できないんだよ
 緋莉は。それでも欲しけりゃ奪ってみれば」
服の乱れを直して、さっさと家を出た。



「緋莉さん、ごめんなさい、1人にして」
石橋くんは私をきつく抱きしめた。
声も手も震えていた。
「怖かったっすよね、ほんまごめんなさい……」

何も考えられないくらい疲れ切っていた。
一生こうして檜垣さんに粘着されるのに
怯えないとならないのだろうか。

深く溜息をつく石橋くんの背中をさすった。
「…ごめんね、入られちゃって、
 私が気抜いてたから…」
乱れた呼吸を整えるように、
何度も息を吸って吐く音が伝わってくる。
「すぐ戻ってきてくれて、ありがと」


さっきまで絞められていた
首筋を無言でそっと触られる。
掴まれていた髪を撫でられる。

「ん…?」
何か言いたげな口元に、
一瞬私と視線を合わせて伏せる瞳。


「……後輩失格や、俺」
「そんなことないよ、私がちゃんとしてないから…」

全て私が招いたことだ。
これ以上石橋くんのこと、巻き込みたくない。

「私、自分の家に戻るよ」
「え、でも……」

そうだ、1ブロック手前には檜垣さんの家がある。

「これ以上石橋くんに迷惑かけたくないの」





そこから数日間、
私は何事もなく自宅から会社に通う生活に戻った。

「緋莉、明日は早いの?」
「…いつも通りです」
「……じゃあまた明日ね」

たまに仕事帰り檜垣さんと遭遇して、
帰路を着いてくるが、
必ず自分の家に着くと素直に入っていく。

このままの生活であれば、何も問題はない。

だが、なにか違和感を感じる。
何もしてこないことになのか、違うことなのか。



「緋莉さん、昼行きませんか」
「あ、うん、いいよ」

石橋くんとも今まで通りだ。

「最近何も無いですか」
たまにこうして
困っていることは無いか聞かれるが、
今のところ本当に驚く程何も無い。

「大丈夫だよ、もう私に飽きたのかもね」
私の返事に目尻を下げて、ホッとしたように微笑む。
「よかった」

「最近業者飲みの予定多そうだけど、疲れてない?」

これまで社内資料を作ったり、企画の打ち合わせで
ほとんど定時で帰ることはなかったのに、
最近定時や定時を少しすぎたあたりで
帰ることが増えたように思う。

スケジュールを見ると、非公開予定。
接待やら同業者との飲み会も、
はたまたプライベートの予定ももちろん
公開にする人はいないので、
内容は窺い知ることはできないが。

「まあ、ちょっとはね、あれっすけど」
「あれって何」
笑いながら彼に目をやると、
何となく疲れが溜まっている様子だった。



その数日後だった。
体調を崩したといい、1週間連続で欠勤した。
理由は教えられないのか、
上司は分からない、と言う。

週ごとの共有会議で、事業企画チームが1週間ぶりに
会議室に集まった今日。

「石橋くん大丈夫かな…」
「どうしたんですかね……」

会議が始まる前の話題は彼のことで持ち切りだった。

欠勤2日目くらいに送ったメッセージも
まだ見られていない。

「共有会議始めるぞ」
上司が遅れて入ってきて、静まり返る私たちに
席について淡々と、話し始める。


「たぶんみんな気になってると思いますけど
 石橋くんが来週から休職することになりました」

みんな驚いてザワつく。
休職?

「期間は3ヶ月だけど未定かな、
 この期間のフォロー体制の話も
 今日はしようと思うから」


どうして?



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

ホストな彼と別れようとしたお話

下菊みこと
恋愛
ヤンデレ男子に捕まるお話です。 あるいは最終的にお互いに溺れていくお話です。 御都合主義のハッピーエンドのSSです。 小説家になろう様でも投稿しています。

ダメンズな彼から離れようとしたら、なんか執着されたお話

下菊みこと
恋愛
ソフトヤンデレに捕まるお話。 あるいはダメンズが努力の末スパダリになるお話。 小説家になろう様でも投稿しています。 御都合主義のハッピーエンドのSSです。

つかまえた 〜ヤンデレからは逃げられない〜

りん
恋愛
狩谷和兎には、三年前に別れた恋人がいる。

6年分の遠回り~いまなら好きって言えるかも~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
私の身体を揺らす彼を、下から見ていた。 まさかあの彼と、こんな関係になるなんて思いもしない。 今日は同期飲み会だった。 後輩のミスで行けたのは本当に最後。 飲み足りないという私に彼は付き合ってくれた。 彼とは入社当時、部署は違ったが同じ仕事に携わっていた。 きっとあの頃のわたしは、彼が好きだったんだと思う。 けれど仕事で負けたくないなんて私のちっぽけなプライドのせいで、その一線は越えられなかった。 でも、あれから変わった私なら……。 ****** 2021/05/29 公開 ****** 表紙 いもこは妹pixivID:11163077

子持ち愛妻家の極悪上司にアタックしてもいいですか?天国の奥様には申し訳ないですが

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
胸がきゅんと、甘い音を立てる。 相手は、妻子持ちだというのに。 入社して配属一日目。 直属の上司で教育係だって紹介された人は、酷く人相の悪い人でした。 中高大と女子校育ちで男性慣れしてない私にとって、それだけでも恐怖なのに。 彼はちかよんなオーラバリバリで、仕事の質問すらする隙がない。 それでもどうにか仕事をこなしていたがとうとう、大きなミスを犯してしまう。 「俺が、悪いのか」 人のせいにするのかと叱責されるのかと思った。 けれど。 「俺の顔と、理由があって避け気味なせいだよな、すまん」 あやまってくれた彼に、胸がきゅんと甘い音を立てる。 相手は、妻子持ちなのに。 星谷桐子 22歳 システム開発会社営業事務 中高大女子校育ちで、ちょっぴり男性が苦手 自分の非はちゃんと認める子 頑張り屋さん × 京塚大介 32歳 システム開発会社営業事務 主任 ツンツンあたまで目つき悪い 態度もでかくて人に恐怖を与えがち 5歳の娘にデレデレな愛妻家 いまでも亡くなった妻を愛している 私は京塚主任を、好きになってもいいのかな……?

お人形令嬢の私はヤンデレ義兄から逃げられない

白黒
恋愛
お人形のように綺麗だと言われるアリスはある日義兄ができる。 義兄のレイモンドは幼い頃よりのトラウマで次第に少し歪んだ愛情をアリスに向けるようになる。 義兄の溺愛に少し悩むアリス…。 二人の行き着く先は…!?

処理中です...