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high risk zone ― level 2―
唇と唇の距離 (和臣 視点 ) 7話
「ま、ざっくりと。経過報告ってとこかな」
珍しく俺の会社に顔を出した勝は、用意してきた資料をデスクにのせた。
「左はこっちの進行分。右はSAWAの調整分。早めに目を通してくれよ」
午後一番にアポなしでやってきたこいつは、偉そうに分厚い資料を指で弾いた。
「…了解。だが、このオマケも必要だったのか?」
俺が目を細めた相手は勝ではなく、その隣でシャカシャカ音漏れのするイヤホンを首から外した馬宮。
え?俺?と目を見開き、顎を引く。
「俺が連れてきたんじゃないぞ。偶然下で会ったんだ。君んちの女の子に用があるらしいんだけど、直接バイト現場に案内させた方がよかったか?」
「いや…ここでいい」
入室からまだ一度も声を発していない馬宮は、ひょいと肩を竦めると勝手にソファーに腰を下ろした。
「右の資料の、ラインが入った部分な、できれば今すぐにでも許可が欲しい。そっちのOKが出れば、鉱物の研究施設が現地に建てられる」
「“建設”で現地住民の採用、か。地域貢献度は早めに上げていて損はないからな」
「そゆこと」
資料に目を通す間、勝は窓際に立ち、何の感慨もなさそうに眼下の風景を見ている。俺は特に気にもかけず、彼らをそのままにしていた。
「なぁ、和臣」
「…なんだ」
俺はページをめくる手を休めずに答える。
「あれから、女の子、調子どうよ」
“あれ”は、大使館での一件。
“女の子”は、達樹。
「女の子、泣いてたんだろ?ボス女優に牽制されて」
「みたいだな」
達樹は結局何も言わなかった。しばらくして泣きやんだ後、『いやもう慣れない場所に緊張しすぎてお腹が痛くなって』と見え見えな嘘をついて恥ずかしそうに笑った。
それから一週間が過ぎる。
達樹はまた、これまでのようにあの涙を『メンドクサイからなかったことに』しようとしているに違いなかった。
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