蝶たちの予感 **言葉より、キスより はじまりのストーリー**

深月 翠

文字の大きさ
52 / 64

愛を聴けば孤独   20話

しおりを挟む

 ダイニングテーブルと呼ぶには小さすぎる二人掛けの丸いソレ。

 焼かれたパンと、サラダとコーヒーというシンプルな朝食がそこに並んでいる。

「おいで」

 先に座っていた八嶋は向かい合わせの椅子を指さし、逆の手で持っていたコーヒーをテーブルに戻した。

「…ありがとうございます」

 何となく服のしわを気にして手で押さえながら席に着く。

「バターしかないけどいい?」

「充分です」

 頷くと、八嶋は甲斐甲斐しくパンにバターを塗ってやる。

「あ、いいですよ。八嶋さん、自分でできますから」

「知ってる」

 八嶋はクスリと笑う。

「…」

 何だろう。

 達樹は困って、八嶋を顔をちらりと確認する。

「何?」

 柔らかい笑顔も口調もいつものまま。でも、

「まぁいいや。はい口あけて」

 まさかの“あ~ん”。流石にこれは無理だと、タツキはまだ温かいパンを受け取った。

「八嶋さん、何だかいつもと違う」

 正直に疑問を口にしてみる。

「そうかもね」

 機嫌のいい彼。いや、機嫌よさを装ったその数百分の一の、男の顔が、タツキには違和感だった。

 八嶋は綺麗な顔で言う。

 朝の光に透かせた、細い髪をさらりと揺らして首を傾げる。


「君を遠慮しないって、決めたからね」


 うぐっと、喉がつまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

抱きしめて

麻実
恋愛
夫の長期に亘る不倫に 女としての自信を失った妻は、新しい出会いに飛び込んでいく。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

処理中です...