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そこにある 深淵 14話
しおりを挟むシバは手荒くタツキの腕を掴み、後ろ手に縛り上げた。左手でその硬く結ばれた紐の端を、まるで犬のリードでも持つかのように握る。
それからチラリと腕時計を確認し、左手を小さく旋回させてタツキに繋がった紐をたぐり寄せた。
「丁度これから、ショーの時間だ」
中央の、普段は男女が音楽に身をゆだねて踊るそのスペースで行われる狂宴。
それらの行為に素早く幕が下りる。
満身創痍の“商品”たちはどこかへ連れて行かれ、客らはやや不完全燃焼の態で渋々ホールの外側へ移動する。
「ところでお前」
シバは紐を掌に巻き付けた状態のまま、必要以上の力でタツキの顎を掴み上げた。指の力と食い込む紐の圧迫感。タツキは堪えて眉間にしわを寄せる。
そんな彼女にフンと鼻をならすと、
「クスリを飲むか、飲まないか、自分で決めろ」
どこから取り出したのか、片方の指先で摘んだ赤い錠剤を見せる。
「それ…何…」
「ぶっ飛ぶクスリだ。気分が昂揚して、痛みも感じなくなる。お前がこれから体験するイベントには必要かもしれんぞ」
「それ、いらない」
投げやりにタツキは俯こうとした。相変わらず顎と頬を強く固定されて、それは叶わなかったが。
「なら、…あれか」
シバは誰かに顎をしゃくって合図する。
「“タレアドール”を持ってこい」
先ほどの若い男が、皮のケースに入った注射器を用意する。
シバはそれを受け取ると、ご丁寧に薬の効果を説明しながら、タツキの太股のジーンズの生地越しに、注射針を刺し込んだ。
「ロシアのブツだ。神経が研ぎ澄まされ、判断力が上がる。SO繊維もFG繊維も、FOG繊維もマックスまで状態が強化される。…運動能力の上昇だ。アスリートの為に闇で造られる代物。それを使えるんだ、光栄に思えよ」
針は太く、液体がヒヤリと皮膚の下に広がるのがわかった。
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