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第6話『ビター』
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生駒京華。
私立白布女学院高等学校の生徒会長でもある先輩が新入生の私を呼び出す理由は、きっと風紀委員のことだろう。3年生だし、個人的に朝倉先輩と繋がりがある可能性は十分に高いと思う。
「その表情だと、どうしてここに呼び出されたのか分かっているみたいね」
「……風紀委員のことですよね。そこには朝倉先輩が絡んでいるはずです」
「素晴らしい! さすがは沙耶が目を付ける生徒さんだけあるわね」
生駒会長は笑顔で拍手をしてくる。昨日の夜に朝倉先輩とあんなことがあって、翌日の昼休みに生徒会長に呼び出されるとしたらこれしかないと思うんだけど。
「私は風紀委員になるつもりはありませんよ」
「やっぱりね。沙耶から昨日の話は聞いてるわ。やっぱり、沙耶にパンツを見られて、触られて、嗅がれちゃったんだ」
「……あの人はド変態ですよ」
ううっ、思い出したくない。一目惚れしちゃった人だから余計に。
というか、どうして生徒会長さんなのに朝倉先輩の変態ぶりを笑顔で言うことができるんだろう。もしかして、生駒会長って朝倉先輩と同類?
「今、私が沙耶みたいな変態だと思ったでしょ」
「……だって、パンツのことを笑顔で話すんですもん」
普通なら嫌そうな顔をすると思うよ。女の子だし。一目惚れをした私でさえも嫌だったんだからね。
「あははっ、女の子ならそうなるよね。まあ、私は沙耶と昔からの仲だし。私も沙耶にパンツを見られたことはたくさんあるわよ」
「そうなんですか!」
昔からの仲……ってことはいわゆる幼なじみってやつだよね。もしかして、生駒会長って朝倉先輩のことが好きだったりするのかな。私よりも綺麗だし、可愛げだってあるし、スタイルだって抜群だし。それに、パンツのことでこんなにも笑顔で話せるなんて。きっと、生駒会長は朝倉先輩にパンツを見られて、触られて、見せられることで幸せを感じてるんだ。
「……あまり人の考えていることを詮索したくないんだけど、私は別に沙耶にパンツを見られることは快く思ってないから。その証拠に今はスパッツ穿いてるし」
ほらっ、と生駒会長はスカートをたくし上げて黒いスパッツを見せてくる。確かにパンツは見えないけれど、自分からスパッツを穿いている姿を見せちゃうのはいかがなものか。朝倉先輩とは違う意味で変態さん?
「人にスパッツを見せる趣味はないから安心して」
「そ、そうですか」
私の考えていることはお見通しってことね。
でも、パンツ堪能防止のためにスパッツを穿くのはいいかもしれない。覚えておこう。
「話を戻しましょう、折笠さん」
「はい」
「……沙耶はパンツに関してはド変態だけれど、それ以外は真面目な子よ。折笠さんを風紀委員にしたい気持ちは本気だよ」
「……確かに、朝倉先輩は私を助けてくれましたし、風紀委員の話をするときは真面目な感じはしましたけれど、私の気持ちは変わりません。風紀委員にはなるつもりはありません。ごめんなさい」
ずっと待っているなんて言っておきながら、生駒会長に協力してもらうなんて。朝倉先輩の嘘つき。それだけ私を風紀委員会にしたいんだろうけど。
生駒会長が朝倉先輩の幼なじみなら、あのことを知っているかもしれない。
「会長、一つ訊いてもいいですか」
「何かしら」
「朝倉先輩は風紀委員には元々興味がないと言っていました。頼まれてなったみたいです。朝倉先輩なんかに頼んだ人って誰なんですか? あんなパンツド変態の先輩に。きっと、先輩の本性を知らない――」
「私よ」
「……えっ?」
耳を疑った。
「生駒会長なんですか? 朝倉先輩を風紀委員になってほしいと頼んだのは」
聞き間違いであったかどうかを確かめるために、生駒会長にそう訊くと、
「そうだよ」
会長は首をゆっくりと縦に振った。
「そ、そんな……」
てっきり、朝倉先輩を風紀委員にしたのはパンツド変態という彼女の本性を知らない人だと思っていた。風紀委員に相応しくないし。けれど、まさか朝倉先輩の幼なじみである生駒会長だったなんて。
「そうだ。パンツ大好きな変態さんだと知ったのは、風紀委員にした後ですよね!」
「沙耶は中学ぐらいからあんな感じだったわ。私は沙耶の変態ぶりを承知した上で彼女を風紀委員にしたのよ」
「どうしてですか! 例え、女の子同士でもパンツを見せたり、触ったり、嗅いだりするのは風紀を乱してしまう行為ですよ! そんな危険行為が大好きな人を風紀委員にするなんて信じられません……」
朝倉先輩が女の子で一目惚れした相手だから学校側に何も訴えてないけれど、男の子だったら完全に痴漢として警察に通報してるよ。
「確かに、普通に考えれば折笠さんが正しいね」
「で、ですよね! なのに、どうして……」
「……沙耶のことを信頼しているからだよ」
「しん、らい……」
信頼、という言葉が心に引っかかる。昨日、朝倉先輩も言っていた。頼まれるってことは信頼してくれているからこそなんだって。
「さっきも言ったけど、沙耶はパンツに関しては超が付くほどの変態。でも、それ以外は普通の女の子で、任されたことは責任を持ってちゃんとこなすって知っているし、信じてる。まあ、風紀委員には興味がなさそうだったけど、沙耶は運動神経もいいしね。昨日の折笠さんのような場合にも対応できるし。おまけに周りからの人気もあるから、風紀委員にしないともったいないって思ったの」
どうしてだろう。朝倉先輩が風紀委員になったちゃんとした理由が分かったのに、心がモヤモヤするんだろう。不満だったり、悲しさだったり。そんな気持ちばかり生まれて、どうしてスッキリできないだろう。
「……朝倉先輩が風紀委員になった理由は分かりました。だって、生駒会長っていう幼なじみが信頼していたんですもんね」
言葉を口にすると、不思議と気持ちは高ぶっていく。そして、
「だったらどうして、生駒会長が朝倉先輩の相棒にならないんですか! 信頼し合っているんだから、会長が朝倉先輩の相棒になればいいじゃないですか!」
気付けば、私は声を荒げて生徒会長に思いをぶつけてしまっていた。
相棒になるには信頼し合っていなければいけない。それなら、どうして生駒会長が朝倉先輩の相棒にならなかったのか。
それなのに、私を風紀委員にして朝倉先輩にしようとしている。振り回されて、都合のいいように動かされているような気がして嫌なんだ。
「……私は生徒会長だしね。沙耶の相棒になれればなりたいけど。でもね、沙耶が相棒にしたいって言ったのは、折笠さんが初めてなんだよ」
「えっ……」
「沙耶1人ではできないこともある。それに、風紀委員は多い方がいい。だから、沙耶に一緒に仕事ができそうな人を探してみてって言ったの。それで、初めて風紀委員にして相棒にしたいって言ってきたの。それがあなたなの」
「……私と出会ったばかりなのに、何を……」
「折笠さん。1つ質問。よく知っている人じゃないと信頼しちゃいけないの?」
「そ、それは……」
その質問については、昨日から自問自答を繰り返している。
朝倉先輩のことはよく知らないし、パンツが大好きな変態さんだ。それでも、私のことを守ってくれたのも事実。そんな先輩を信頼していいのかどうか。
「私はね、知らなくてもこの人なら大丈夫だ、って信じられる気持ちさえあればいいと思っているの。私は沙耶を信じてる。だから、沙耶が信じてるって言った折笠さんのことも信じているわ。こうしてちゃんとあなたと話してみて、その気持ちはより固まったわ」
「だけど、先輩は……」
「……風紀委員になるかどうかはあなたの自由よ。でも、これだけは言わせて。あなたは風紀委員として、沙耶の相棒としてしっかりと仕事ができる。私はそう思っているよ」
「……私のことを全然知らないのに、よく言えますね」
自分の気持ちがまだ纏まっていなくて。だから、今の時点で会長の言うことにどうしても頷きたくなくて。だから、反抗的なことを口にしてしまう。
「知らないなら、信じるしかないじゃない。その人のことを知るまでは」
きっと、それができないと朝倉先輩の相棒にはなれないんだと思う。それは分かっている。だけど、まだ朝倉先輩を信じる勇気が湧いてこない。それに、生駒会長っていう朝倉先輩を信じることのできる存在がいることが悔しくて。それが風紀委員になる高いハードルにも感じてしまっていて。
「待ってるわ。風紀委員になって、沙耶の相棒になった報告をしてくれるのを」
生駒会長は優しい笑みを浮かべてそう言った。きっと、今すぐに決断できないことも分かっているんだ。
「……失礼します」
物凄くもやもやとした気持ちを抱えながら、私は生徒会室を後にしたのであった。
私立白布女学院高等学校の生徒会長でもある先輩が新入生の私を呼び出す理由は、きっと風紀委員のことだろう。3年生だし、個人的に朝倉先輩と繋がりがある可能性は十分に高いと思う。
「その表情だと、どうしてここに呼び出されたのか分かっているみたいね」
「……風紀委員のことですよね。そこには朝倉先輩が絡んでいるはずです」
「素晴らしい! さすがは沙耶が目を付ける生徒さんだけあるわね」
生駒会長は笑顔で拍手をしてくる。昨日の夜に朝倉先輩とあんなことがあって、翌日の昼休みに生徒会長に呼び出されるとしたらこれしかないと思うんだけど。
「私は風紀委員になるつもりはありませんよ」
「やっぱりね。沙耶から昨日の話は聞いてるわ。やっぱり、沙耶にパンツを見られて、触られて、嗅がれちゃったんだ」
「……あの人はド変態ですよ」
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というか、どうして生徒会長さんなのに朝倉先輩の変態ぶりを笑顔で言うことができるんだろう。もしかして、生駒会長って朝倉先輩と同類?
「今、私が沙耶みたいな変態だと思ったでしょ」
「……だって、パンツのことを笑顔で話すんですもん」
普通なら嫌そうな顔をすると思うよ。女の子だし。一目惚れをした私でさえも嫌だったんだからね。
「あははっ、女の子ならそうなるよね。まあ、私は沙耶と昔からの仲だし。私も沙耶にパンツを見られたことはたくさんあるわよ」
「そうなんですか!」
昔からの仲……ってことはいわゆる幼なじみってやつだよね。もしかして、生駒会長って朝倉先輩のことが好きだったりするのかな。私よりも綺麗だし、可愛げだってあるし、スタイルだって抜群だし。それに、パンツのことでこんなにも笑顔で話せるなんて。きっと、生駒会長は朝倉先輩にパンツを見られて、触られて、見せられることで幸せを感じてるんだ。
「……あまり人の考えていることを詮索したくないんだけど、私は別に沙耶にパンツを見られることは快く思ってないから。その証拠に今はスパッツ穿いてるし」
ほらっ、と生駒会長はスカートをたくし上げて黒いスパッツを見せてくる。確かにパンツは見えないけれど、自分からスパッツを穿いている姿を見せちゃうのはいかがなものか。朝倉先輩とは違う意味で変態さん?
「人にスパッツを見せる趣味はないから安心して」
「そ、そうですか」
私の考えていることはお見通しってことね。
でも、パンツ堪能防止のためにスパッツを穿くのはいいかもしれない。覚えておこう。
「話を戻しましょう、折笠さん」
「はい」
「……沙耶はパンツに関してはド変態だけれど、それ以外は真面目な子よ。折笠さんを風紀委員にしたい気持ちは本気だよ」
「……確かに、朝倉先輩は私を助けてくれましたし、風紀委員の話をするときは真面目な感じはしましたけれど、私の気持ちは変わりません。風紀委員にはなるつもりはありません。ごめんなさい」
ずっと待っているなんて言っておきながら、生駒会長に協力してもらうなんて。朝倉先輩の嘘つき。それだけ私を風紀委員会にしたいんだろうけど。
生駒会長が朝倉先輩の幼なじみなら、あのことを知っているかもしれない。
「会長、一つ訊いてもいいですか」
「何かしら」
「朝倉先輩は風紀委員には元々興味がないと言っていました。頼まれてなったみたいです。朝倉先輩なんかに頼んだ人って誰なんですか? あんなパンツド変態の先輩に。きっと、先輩の本性を知らない――」
「私よ」
「……えっ?」
耳を疑った。
「生駒会長なんですか? 朝倉先輩を風紀委員になってほしいと頼んだのは」
聞き間違いであったかどうかを確かめるために、生駒会長にそう訊くと、
「そうだよ」
会長は首をゆっくりと縦に振った。
「そ、そんな……」
てっきり、朝倉先輩を風紀委員にしたのはパンツド変態という彼女の本性を知らない人だと思っていた。風紀委員に相応しくないし。けれど、まさか朝倉先輩の幼なじみである生駒会長だったなんて。
「そうだ。パンツ大好きな変態さんだと知ったのは、風紀委員にした後ですよね!」
「沙耶は中学ぐらいからあんな感じだったわ。私は沙耶の変態ぶりを承知した上で彼女を風紀委員にしたのよ」
「どうしてですか! 例え、女の子同士でもパンツを見せたり、触ったり、嗅いだりするのは風紀を乱してしまう行為ですよ! そんな危険行為が大好きな人を風紀委員にするなんて信じられません……」
朝倉先輩が女の子で一目惚れした相手だから学校側に何も訴えてないけれど、男の子だったら完全に痴漢として警察に通報してるよ。
「確かに、普通に考えれば折笠さんが正しいね」
「で、ですよね! なのに、どうして……」
「……沙耶のことを信頼しているからだよ」
「しん、らい……」
信頼、という言葉が心に引っかかる。昨日、朝倉先輩も言っていた。頼まれるってことは信頼してくれているからこそなんだって。
「さっきも言ったけど、沙耶はパンツに関しては超が付くほどの変態。でも、それ以外は普通の女の子で、任されたことは責任を持ってちゃんとこなすって知っているし、信じてる。まあ、風紀委員には興味がなさそうだったけど、沙耶は運動神経もいいしね。昨日の折笠さんのような場合にも対応できるし。おまけに周りからの人気もあるから、風紀委員にしないともったいないって思ったの」
どうしてだろう。朝倉先輩が風紀委員になったちゃんとした理由が分かったのに、心がモヤモヤするんだろう。不満だったり、悲しさだったり。そんな気持ちばかり生まれて、どうしてスッキリできないだろう。
「……朝倉先輩が風紀委員になった理由は分かりました。だって、生駒会長っていう幼なじみが信頼していたんですもんね」
言葉を口にすると、不思議と気持ちは高ぶっていく。そして、
「だったらどうして、生駒会長が朝倉先輩の相棒にならないんですか! 信頼し合っているんだから、会長が朝倉先輩の相棒になればいいじゃないですか!」
気付けば、私は声を荒げて生徒会長に思いをぶつけてしまっていた。
相棒になるには信頼し合っていなければいけない。それなら、どうして生駒会長が朝倉先輩の相棒にならなかったのか。
それなのに、私を風紀委員にして朝倉先輩にしようとしている。振り回されて、都合のいいように動かされているような気がして嫌なんだ。
「……私は生徒会長だしね。沙耶の相棒になれればなりたいけど。でもね、沙耶が相棒にしたいって言ったのは、折笠さんが初めてなんだよ」
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「私はね、知らなくてもこの人なら大丈夫だ、って信じられる気持ちさえあればいいと思っているの。私は沙耶を信じてる。だから、沙耶が信じてるって言った折笠さんのことも信じているわ。こうしてちゃんとあなたと話してみて、その気持ちはより固まったわ」
「だけど、先輩は……」
「……風紀委員になるかどうかはあなたの自由よ。でも、これだけは言わせて。あなたは風紀委員として、沙耶の相棒としてしっかりと仕事ができる。私はそう思っているよ」
「……私のことを全然知らないのに、よく言えますね」
自分の気持ちがまだ纏まっていなくて。だから、今の時点で会長の言うことにどうしても頷きたくなくて。だから、反抗的なことを口にしてしまう。
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きっと、それができないと朝倉先輩の相棒にはなれないんだと思う。それは分かっている。だけど、まだ朝倉先輩を信じる勇気が湧いてこない。それに、生駒会長っていう朝倉先輩を信じることのできる存在がいることが悔しくて。それが風紀委員になる高いハードルにも感じてしまっていて。
「待ってるわ。風紀委員になって、沙耶の相棒になった報告をしてくれるのを」
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