ガール&パンツ

桜庭かなめ

文字の大きさ
42 / 86

第41話『姉妹じゃなくていい』

しおりを挟む
 寝間着に着替え、お母さんにお風呂を出たことを伝えて、私は沙耶先輩と一緒に部屋に戻った。

「お風呂、気持ち良かったね」
「そうですね」

 気持ち良かったのは本当だけど、常にドキドキしていて妙に体が熱くなったような。今でも普段よりも鼓動が早い。

「先輩、ドライヤーで髪を乾かしましょう」
「ありがとう。じゃあ、その後に私が琴実ちゃんの髪をドライヤーで乾かすね」
「はい」

 沙耶先輩にも見えるようにテーブルの上に鏡を置いて、私はドライヤーを使って沙耶先輩の髪を乾かしていく。
 こうして触れてみると、先輩の髪って結構サラサラしているなぁ。櫛を使ってといてみるとかなり長い。普段、ポニーテールだからか全然気付かなかった。
 そういえば、お風呂を出る直前に沙耶先輩が言っていたさっきの言葉ってどういう意味だったんだろう。先輩に訊いてみようかな。

「沙耶先輩。さっき言っていた、私が妹じゃなくて良かったってどういうことですか?」

 その言葉が頭の中にずっと残っていて。妹じゃなくて良かったというのはどういう意味なのか気になっていた。
 沙耶先輩は視線をちらつかせたけど、すぐに笑顔を見せて、鏡越しに私のことを見る。

「……ダメな姉になったかもしれないと思ったから」
「えっ?」
「琴実ちゃんはとてもしっかりしている女の子だよ。私は琴実ちゃんに助けられたり、甘えたりして……何もできない人間になっていたかもしれない」
「そんな、風紀委員の仕事をしているときも、沙耶先輩に色々なことを教わりました。沙耶先輩に2度も助けてもらいました。沙耶先輩はしっかりとした女の子ですよ」

 そんな先輩と仮に姉妹だったとしても、多少は甘えん坊になるかもしれないけど、基本的には今と変わらないと思うけど。
 でも、沙耶先輩にはお姉さんがいる。姉妹だと妹が姉に甘えそうなイメージがあるなぁ。沙耶先輩がしっかりしているってことは、先輩のお姉さんは甘えん坊さんなのかな?

「……そう言ってくれるのは嬉しいよ、琴実ちゃん」
「私は……思ったことを言っただけですよ。あと、沙耶先輩が私の姉じゃなくて良かったです」
「どうして?」
「小さい頃からずっとパンツを堪能されるなんて嫌ですから」

 四六時中、沙耶先輩のことを警戒しなきゃいけないなんて嫌だもん。

「ははっ、そうか。でも、姉さんのパンツは毎日堪能しているわけじゃないよ」
「……毎日じゃなければいいっていうわけじゃないんです」

 まったく、先輩ったら。でも、沙耶先輩と姉妹だったら、絶対に毎日パンツを堪能してくると思う。そう思わせるくらい、この1週間でパンツに関する沙耶先輩の変態ぶりを見せつけられてきた。

「はい、先輩。終わりましたよ。こんな感じでいいですか?」
「うん、ありがとう」
「髪がストレートになると本当に印象が変わりますね。動かなければ本当におしとやかですよ」
「……普通、喋らなければじゃないの?」
「沙耶先輩はパンツを見て、触って、嗅ぐことで堪能しますからね」
「なるほどね。私は琴実ちゃんの穿いている赤色の縞模様パンツ可愛いねって言うけど?」
「……喋らなければも追加しておきましょうか」
「結局そうなるんだ」

 沙耶先輩は声に出して笑っている。本当に可愛らしい先輩だ。
 ストレートヘアの沙耶先輩なんて滅多に見ることができないので、ベッドの上に置いてあるスマートフォンを手にとって、先輩のことを写真に撮った。

「急に撮られたからビックリしたよ」
「ご、ごめんなさい。あまりにも可愛かったもので」
「まあ、琴実ちゃんならいいよ。ほら、琴実ちゃんの髪を乾かすから、ここに座って」
「はい」

 さっき沙耶先輩が座っていたところに座り、ドライヤーで先輩に髪を乾かしてもらう。

「やっぱり、琴実ちゃんの茶髪は綺麗だね。サラサラしているし」
「ありがとうございます」
「きっと、これが生来の茶髪だからここまで綺麗なんだろうね。まあ、私は髪を染めたことがないし、周りに髪を染めるような人がいないから、実際は分からないけど……」
「この髪は好きですから、多分、染めるようなことはないと思います」

 それに、沙耶先輩が綺麗だって言ってくれているから。髪をわざわざ変えるようなことはしない。
 鏡越しで沙耶先輩のことを見ているけど、穏やかな笑みを浮かべながら私の髪を乾かしてくれている。もし、2歳上の姉がいたら、こういう風に髪を乾かしてもらうことがもあったのかもしれない。
 あぁ、ドライヤーの風が温かくて、段々と眠気が。

「琴実ちゃん、眠くなってきた?」
「お風呂に入った直後ですし、ドライヤーの温かい風が気持ち良くて。それに、今日は色々なことがありましたから」
「確かに、今日は私が盗撮されたのが判明して、盗撮した生徒を見つけて、ダブル・ブレッドの存在が明らかになったもんね」
「今日一日で起きたとは思えないくらいに盛りだくさんでしたよね」

 来週は平和な1週間になってほしいけど、多分、そうならないんだろうな。ダブル・ブレッドが動き始めた可能性が高いし。

「一通り乾いたと思うけど、これでどうかな?」
「はい、ありがとうございます」

 何だか、いつもよりも髪がふんわりとしているような。コツとか……あるのかな。
 ――ぎゅっ。
 そんなことを考えていると、沙耶先輩は後ろから私のことを抱きしめてきた。

「せ、先輩?」

 いきなり抱きしめられたら、凄くドキドキしちゃうよ。

「本当にありがとね、琴実ちゃん」
「な、何のことでしょうか?」
「盗撮をされたって知ったとき、本当はちょっと怖かったんだ。でも、琴実ちゃんが側にいてくれたから、すぐに安心できた。琴実ちゃんのおかげで、今日もいつも通りに学校生活を過せたんだよ。ありがとう」

 沙耶先輩、普段と変わりない様子だったけど、本当は盗撮されたことを恐れていたんだ。もしかして、家に帰ってくるときに見せた寂しげな笑みも、私と一緒にいるところを盗撮されているかもしれないと思ったからなのかな。

「私は風紀委員として、先輩の相棒として当然のことをしただけですから。でも、まずは先輩を盗撮した掛布さんを捕まえることができて良かったです」

 そのことで、事態が良くなったかどうかは分からないけれど。どうなろうと、沙耶先輩の相棒として活動していくことに変わりはない。
 沙耶先輩の方に振り返ると、先輩と目が合う。すると、先輩はにっこりと笑った。

「……そうだ」

 すると、沙耶先輩はスマートフォンを手にとって、
 ――カシャッ。
 私とのツーショット写真を撮影した。まさか、先輩とこうした写真を撮れるなんて嬉しいな。

「琴実ちゃんに送るね」

 そう言うと、SNSで沙耶先輩から今の写真が送られてきた。先輩とツーショットの写真を持つことができるのが嬉しくて、すぐにホーム画面に設定した。

「これでお揃いだね、琴実ちゃん」

 すると、先輩のスマートフォンのホーム画面も今の写真になっていた。沙耶先輩とお揃いかぁ、嬉しいな。

「じゃあ、今日はもう寝ようか」
「すみません。まだ9時過ぎくらいで明日はお休みなのに」
「気にしないでいいよ。眠たいときに寝た方が体にいいし。それに、これで明日早く起きたらそれはそれでいいと思うけどな」
「そうですね」

 今夜は眠れないことになるかもしれないと思ったけど、どうやらいつもよりも早く眠れそうなのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サクラブストーリー

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の速水大輝には、桜井文香という同い年の幼馴染の女の子がいる。美人でクールなので、高校では人気のある生徒だ。幼稚園のときからよく遊んだり、お互いの家に泊まったりする仲。大輝は小学生のときからずっと文香に好意を抱いている。  しかし、中学2年生のときに友人からかわれた際に放った言葉で文香を傷つけ、彼女とは疎遠になってしまう。高校生になった今、挨拶したり、軽く話したりするようになったが、かつてのような関係には戻れていなかった。  桜も咲く1年生の修了式の日、大輝は文香が親の転勤を理由に、翌日に自分の家に引っ越してくることを知る。そのことに驚く大輝だが、同居をきっかけに文香と仲直りし、恋人として付き合えるように頑張ろうと決意する。大好物を作ってくれたり、バイトから帰るとおかえりと言ってくれたりと、同居生活を送る中で文香との距離を少しずつ縮めていく。甘くて温かな春の同居&学園青春ラブストーリー。  ※特別編8-お泊まり女子会編-が完結しました!(2025.6.17)  ※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

ルピナス

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の藍沢直人は後輩の宮原彩花と一緒に、学校の寮の2人部屋で暮らしている。彩花にとって直人は不良達から救ってくれた大好きな先輩。しかし、直人にとって彩花は不良達から救ったことを機に一緒に住んでいる後輩の女の子。直人が一定の距離を保とうとすることに耐えられなくなった彩花は、ある日の夜、手錠を使って直人を束縛しようとする。  そして、直人のクラスメイトである吉岡渚からの告白をきっかけに直人、彩花、渚の恋物語が激しく動き始める。  物語の鍵は、人の心とルピナスの花。たくさんの人達の気持ちが温かく、甘く、そして切なく交錯する青春ラブストーリーシリーズ。 ※特別編-入れ替わりの夏-は『ハナノカオリ』のキャラクターが登場しています。  ※1日3話ずつ更新する予定です。

管理人さんといっしょ。

桜庭かなめ
恋愛
 桐生由弦は高校進学のために、学校近くのアパート「あけぼの荘」に引っ越すことに。  しかし、あけぼの荘に向かう途中、由弦と同じく進学のために引っ越す姫宮風花と二重契約になっており、既に引っ越しの作業が始まっているという連絡が来る。  風花に部屋を譲ったが、あけぼの荘に空き部屋はなく、由弦の希望する物件が近くには一切ないので、新しい住まいがなかなか見つからない。そんなとき、 「責任を取らせてください! 私と一緒に暮らしましょう」  高校2年生の管理人・白鳥美優からのそんな提案を受け、由弦と彼女と一緒に同居すると決める。こうして由弦は1学年上の女子高生との共同生活が始まった。  ご飯を食べるときも、寝るときも、家では美少女な管理人さんといつもいっしょ。優しくて温かい同居&学園ラブコメディ!  ※特別編11が完結しました!(2025.6.20)  ※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の逢坂玲人は入学時から髪を金色に染め、無愛想なため一匹狼として高校生活を送っている。  入学して間もないある日の放課後、玲人は2年生の生徒会長・如月沙奈にロープで拘束されてしまう。それを解く鍵は彼女を抱きしめると約束することだった。ただ、玲人は上手く言いくるめて彼女から逃げることに成功する。そんな中、銀髪の美少女のアリス・ユメミールと出会い、お互いに好きな猫のことなどを通じて彼女と交流を深めていく。  しかし、沙奈も一度の失敗で諦めるような女の子ではない。玲人は沙奈に追いかけられる日々が始まる。  抱きしめて。生徒会に入って。口づけして。ヤンデレな沙奈からの様々な我が儘を通して見えてくるものは何なのか。見えた先には何があるのか。沙奈の好意が非常に強くも温かい青春ラブストーリー。  ※タイトルは「むげん」と読みます。  ※完結しました!(2020.7.29)

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。  とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。  ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。  お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2025.12.18)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

処理中です...