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第69話『恋のしずく-前編-』
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黒瀬先輩のスマートフォンから連絡が取れなくなってしまったけれど、SNSの運営会社に問い合わせて黒瀬先輩や掛布さんのアカウントから、ブランのことを捜査することになった。
ただ、サーバーにブランと黒瀬先輩のトークのログは残っていたけど、ブランが誰なのかまでは特定できなかったという。
4月19日、火曜日。
今日はどんよりと曇っていて、結構肌寒い。最近は寒暖の差が激しいし風邪を引かないように気を付けないと。学校ではあんなことがあったし。
家に近いこともあって、今日はお母さんの運転する車で学校まで送ってもらった。
「じゃあ、琴実。いってらっしゃい」
「うん、行ってくるね、お母さん」
「気を付けてね。何かあったら連絡しなさい」
「分かった」
車を降りて私は学校の中に入っていく。登校する生徒が多いと、この中にダブル・ブレッドのメンバーが私のことを監視しているんじゃないかと思ってしまう。
校舎に入り、風紀委員会の活動室に近づくにつれて生徒も少なくなっていく。曇っていて肌寒いからか寂しげな感じもして。
活動室の扉を開けると、中には千晴先輩と会長さんがいた。
「おはようございます」
「おはようございます、琴実さん」
「おはよう、折笠さん」
千晴先輩も徒歩圏内なので、私と同じように親御さんに送ってもらうことになっている。ちなみに、沙耶先輩とひより先輩、理沙ちゃんは東雲先生と秋川先生の車で登校してくる予定だ。
「無事に来ることができたのですね、琴実さん」
「お母さんの車で送ってもらいましたから。千晴先輩もそうですよね?」
「ええ。そういえば、生駒会長はどのようにして?」
「私は風紀委員会のメンバーじゃないからね。普通に電車通学だよ。特に怪しそうな人はいなかったよ。ただ、こうして風紀委員会と関わっているから、私も気を付けないといけないかな」
会長さんの言う通りかも。彼女は風紀委員会と同じくらいにダブル・ブレッドの情報を知っている。それに、沙耶先輩と昔からの友人なので、ダブル・ブレッドのターゲットにされる可能性はありそうだ。
「もし、ブランがこの学校の生徒であれば、きっと普通に登校しているのでしょうね。そして、私達の動向をどこかで伺っている」
「そうでしょうね、千晴先輩」
「……本当にブランは誰なのでしょうね。私達からは全然見えないのに、ブランは私達のことをちゃんと把握しているように思えて。何だかブランが私達の近くにいるような気がするのです」
「同感です。あと、東雲先生も同じようなことを言っていましたよ」
ただ、ブランもそんな私達のことを警戒していると思う。副会長である黒瀬さんとの連絡手段を断ち切ったのもそれが理由じゃないだろうか。
「生駒会長はどうお考えですか?」
「私も2人と同じ考えよ。ブランは風紀委員会のすぐ近くにいるんじゃないかな。私の場合はこの白布女学院関係者って意味だけれど」
「黒瀬さんはネット上でブランとやり取りをしていたって言っていましたもんね。世界中の人と繋がることができることを考えれば、私達にとって白布女学院の関係者はとても近い人物ですよね」
「ふふっ、そういう考え方もありね。私の場合は生徒会長だから、この学校のみんな近しい存在だと思っているよ」
「さすがは会長さんです」
勝手なイメージだけど、会長さんならダブル・ブレッドのメンバーに襲われそうになっても難なく対処できる気がする。
「みんな、おはよう」
「おはようございます」
「おはようございます! ことみん、ちゃんと学校に来られたね!」
沙耶先輩、ひより先輩、理沙ちゃんが部屋の中に入ってくる。理沙ちゃんは私のことをぎゅっと抱きしめてきた。
「理沙ちゃん、早く琴実ちゃんと会ってもふもふしたいって言っていたんだよ」
「そうだったんですか、ひより先輩」
「だって、昨日はあんなことがったんですよ。ことみんの顔を見て、温もりや匂いを感じないと安心できません」
理沙ちゃんは私の胸に頭をすりすりさせてくる。きっと、私の温もりや匂いを感じていることだろう。私は理沙ちゃんの頭を優しく撫でる。
「唐沢さんの言うことは分かるなぁ。親しい人のパンツを堪能しないと安心できないときってあるよね。琴実ちゃん、あとで君のパンツをもふもふ……じゃなくてすりすりしていいかな?」
「……どうせやるんでしょう? あと、今の沙耶先輩を言動で私はもう安心しました」
「ははっ、そうかい」
そう言っていつもの爽やかな笑みを浮かべる沙耶先輩を見てようやく安心できた。どんな状況でも好きな人の笑顔を見ることができるのは幸せなことだ。
「あ、あの! 朝倉さん!」
「うん、どうかした? 藤堂さん」
千晴先輩、頬を赤らめながら真剣な表情で沙耶先輩のことを見ているけど、どうかしたのかな。
「お怪我の方は大丈夫ですか? 昨日、家に帰ってからもそのことが心配で」
「ああ、昨日すぐに保健室で手当を受けたからか、今日になったら痛みもだいぶ引いたよ。ただ、今朝、姉さんに湿布を貼ってもらったときはちょっと痛かったから、ケガしたところにぶつけないようにしないとなぁ」
「そうですか。でも、一晩経って酷くなっていなくて良かったです。あの……無理だけはしないでくださいね」
自分を庇うようにして沙耶先輩が怪我をしてしまったから、千晴先輩はずっと心配していたのだろう。
「分かってるよ。じゃあ、今日も元気に過ごすために琴実ちゃんのパンツをすりすりしようかな?」
「それなら、あたしは後ろから抱きしめてことみんの髪の匂いを嗅ぎますね。凄く好きなので」
「へえ、そうなんだ。髪の匂いを嗅ぐと安心できるよね」
この後、前方からは沙耶先輩にパンツを堪能され、後方からは理沙ちゃんに髪の匂いを堪能されることに。3人だけならいいけれど、千晴先輩達が見ている中で堪能されるのって物凄く恥ずかしい。何なのこの羞恥プレイ。ただ、今日は肌寒いので2人のおかげで心地よい温かさを感じている。
ただ、そんな中で……ダブル・ブレッドも変態組織と名乗っているんだから、こういうことしかしなければいいのにと思うのであった。
色々とあったけど、昨日の放課後に比べれば平和な時間を過ごし、今日も理沙ちゃんのボディーガードをされる中で午前中の授業を受けた。
昨日から思っていたけれど、すぐ後ろから理沙ちゃんにただ「見られている」ことと「見守ってもらっている」ことって、こんなにも違って安心できるんだと思った。
午前中の授業も無事に終わり、お弁当の入った手提げを机に置いたときだった。
――プルルッ。
スマートフォンが鳴っているので確認してみると、千晴先輩からの電話だった。
「はい、折笠です」
『琴実さんですか。午前中の授業、お疲れ様でした』
「お疲れ様です。どうしたんですか、昼休みになってすぐにお電話なんて」
『……琴実さんと2人きりでお昼ご飯を食べたいと思いまして。もう、教室の前に来ているのですよ』
「えっ?」
教室の入り口の方を見てみると、小さな手提げを持って笑顔で私に手を振る千晴先輩がいた。
「ちょっと待っていてくださいね」
私の方から通話を切って、
「理沙ちゃん、ごめん。千晴先輩が私と2人きりでお昼ご飯を食べたいみたいで」
「うん、分かった。じゃあ、あたしはテニス部の子と食べるよ。……って、もうそこにいるじゃない」
「私も驚いちゃった。行ってくるね」
「うん、行ってらっしゃい」
私はお弁当と水筒の入った手提げを持って、千晴先輩のところに行く。
「お待たせしました」
「いえいえ、こちらから突然誘ったことですので。ありがとうございます。帰りもここまで送りますから安心してくださいね」
「はい。ところで、2人きりで食べたいと言っていましたけど、どこで食べましょうか?」
「晴れてきたので屋上で食べようかなと思っています」
「えっ、屋上って行くことができるんですか?」
「ええ。お昼休みと放課後は開放していますよ。ベンチもあります」
「へえ……」
漫画やアニメのように屋上を開放している高校はないって聞くけど……意外とそうでもないのかな。それとも、ここが珍しいのか。
千晴先輩と一緒に私は屋上へと向かう。
「うわあっ、広くていいですね」
「でしょう? 周りに高い建物も全然ないですから、とても広い景色を見られるのですよ」
確かに、結構遠くまでの景色を見ることができる。緑もあってゆっくりできそうな素敵な場所なのに、昼休みが始まって数分ほどしか経っていないからかほとんど生徒がいない。
千晴先輩と一緒に近くのベンチに座った。遠くには小学生の頃に遠足で登った山が見えている。
「では、さっそく食べましょうか。いただきます」
「いただきます」
屋上で景色を見ながら食べるお弁当もいいなぁ。いつもより美味しく感じる。大好きな玉子焼きだからかもしれないけど。
「そういえば、千晴先輩が私と2人きりで話したいことってなんですか?」
「ええと……」
すると、千晴先輩の顔が見る見るうちに赤くなっていく。そして、私のことをチラチラと見てくる。まさかとは思うけど……まさか?
「お、驚かないでくださいね?」
「はい」
そういう風に言われた後に話されたことで驚かなかったことがない。むしろ、余計に驚いちゃう気がする。
千晴先輩は私のことをじっと見つめ、
「実は私……朝倉さんに恋をしているのです」
ただ、サーバーにブランと黒瀬先輩のトークのログは残っていたけど、ブランが誰なのかまでは特定できなかったという。
4月19日、火曜日。
今日はどんよりと曇っていて、結構肌寒い。最近は寒暖の差が激しいし風邪を引かないように気を付けないと。学校ではあんなことがあったし。
家に近いこともあって、今日はお母さんの運転する車で学校まで送ってもらった。
「じゃあ、琴実。いってらっしゃい」
「うん、行ってくるね、お母さん」
「気を付けてね。何かあったら連絡しなさい」
「分かった」
車を降りて私は学校の中に入っていく。登校する生徒が多いと、この中にダブル・ブレッドのメンバーが私のことを監視しているんじゃないかと思ってしまう。
校舎に入り、風紀委員会の活動室に近づくにつれて生徒も少なくなっていく。曇っていて肌寒いからか寂しげな感じもして。
活動室の扉を開けると、中には千晴先輩と会長さんがいた。
「おはようございます」
「おはようございます、琴実さん」
「おはよう、折笠さん」
千晴先輩も徒歩圏内なので、私と同じように親御さんに送ってもらうことになっている。ちなみに、沙耶先輩とひより先輩、理沙ちゃんは東雲先生と秋川先生の車で登校してくる予定だ。
「無事に来ることができたのですね、琴実さん」
「お母さんの車で送ってもらいましたから。千晴先輩もそうですよね?」
「ええ。そういえば、生駒会長はどのようにして?」
「私は風紀委員会のメンバーじゃないからね。普通に電車通学だよ。特に怪しそうな人はいなかったよ。ただ、こうして風紀委員会と関わっているから、私も気を付けないといけないかな」
会長さんの言う通りかも。彼女は風紀委員会と同じくらいにダブル・ブレッドの情報を知っている。それに、沙耶先輩と昔からの友人なので、ダブル・ブレッドのターゲットにされる可能性はありそうだ。
「もし、ブランがこの学校の生徒であれば、きっと普通に登校しているのでしょうね。そして、私達の動向をどこかで伺っている」
「そうでしょうね、千晴先輩」
「……本当にブランは誰なのでしょうね。私達からは全然見えないのに、ブランは私達のことをちゃんと把握しているように思えて。何だかブランが私達の近くにいるような気がするのです」
「同感です。あと、東雲先生も同じようなことを言っていましたよ」
ただ、ブランもそんな私達のことを警戒していると思う。副会長である黒瀬さんとの連絡手段を断ち切ったのもそれが理由じゃないだろうか。
「生駒会長はどうお考えですか?」
「私も2人と同じ考えよ。ブランは風紀委員会のすぐ近くにいるんじゃないかな。私の場合はこの白布女学院関係者って意味だけれど」
「黒瀬さんはネット上でブランとやり取りをしていたって言っていましたもんね。世界中の人と繋がることができることを考えれば、私達にとって白布女学院の関係者はとても近い人物ですよね」
「ふふっ、そういう考え方もありね。私の場合は生徒会長だから、この学校のみんな近しい存在だと思っているよ」
「さすがは会長さんです」
勝手なイメージだけど、会長さんならダブル・ブレッドのメンバーに襲われそうになっても難なく対処できる気がする。
「みんな、おはよう」
「おはようございます」
「おはようございます! ことみん、ちゃんと学校に来られたね!」
沙耶先輩、ひより先輩、理沙ちゃんが部屋の中に入ってくる。理沙ちゃんは私のことをぎゅっと抱きしめてきた。
「理沙ちゃん、早く琴実ちゃんと会ってもふもふしたいって言っていたんだよ」
「そうだったんですか、ひより先輩」
「だって、昨日はあんなことがったんですよ。ことみんの顔を見て、温もりや匂いを感じないと安心できません」
理沙ちゃんは私の胸に頭をすりすりさせてくる。きっと、私の温もりや匂いを感じていることだろう。私は理沙ちゃんの頭を優しく撫でる。
「唐沢さんの言うことは分かるなぁ。親しい人のパンツを堪能しないと安心できないときってあるよね。琴実ちゃん、あとで君のパンツをもふもふ……じゃなくてすりすりしていいかな?」
「……どうせやるんでしょう? あと、今の沙耶先輩を言動で私はもう安心しました」
「ははっ、そうかい」
そう言っていつもの爽やかな笑みを浮かべる沙耶先輩を見てようやく安心できた。どんな状況でも好きな人の笑顔を見ることができるのは幸せなことだ。
「あ、あの! 朝倉さん!」
「うん、どうかした? 藤堂さん」
千晴先輩、頬を赤らめながら真剣な表情で沙耶先輩のことを見ているけど、どうかしたのかな。
「お怪我の方は大丈夫ですか? 昨日、家に帰ってからもそのことが心配で」
「ああ、昨日すぐに保健室で手当を受けたからか、今日になったら痛みもだいぶ引いたよ。ただ、今朝、姉さんに湿布を貼ってもらったときはちょっと痛かったから、ケガしたところにぶつけないようにしないとなぁ」
「そうですか。でも、一晩経って酷くなっていなくて良かったです。あの……無理だけはしないでくださいね」
自分を庇うようにして沙耶先輩が怪我をしてしまったから、千晴先輩はずっと心配していたのだろう。
「分かってるよ。じゃあ、今日も元気に過ごすために琴実ちゃんのパンツをすりすりしようかな?」
「それなら、あたしは後ろから抱きしめてことみんの髪の匂いを嗅ぎますね。凄く好きなので」
「へえ、そうなんだ。髪の匂いを嗅ぐと安心できるよね」
この後、前方からは沙耶先輩にパンツを堪能され、後方からは理沙ちゃんに髪の匂いを堪能されることに。3人だけならいいけれど、千晴先輩達が見ている中で堪能されるのって物凄く恥ずかしい。何なのこの羞恥プレイ。ただ、今日は肌寒いので2人のおかげで心地よい温かさを感じている。
ただ、そんな中で……ダブル・ブレッドも変態組織と名乗っているんだから、こういうことしかしなければいいのにと思うのであった。
色々とあったけど、昨日の放課後に比べれば平和な時間を過ごし、今日も理沙ちゃんのボディーガードをされる中で午前中の授業を受けた。
昨日から思っていたけれど、すぐ後ろから理沙ちゃんにただ「見られている」ことと「見守ってもらっている」ことって、こんなにも違って安心できるんだと思った。
午前中の授業も無事に終わり、お弁当の入った手提げを机に置いたときだった。
――プルルッ。
スマートフォンが鳴っているので確認してみると、千晴先輩からの電話だった。
「はい、折笠です」
『琴実さんですか。午前中の授業、お疲れ様でした』
「お疲れ様です。どうしたんですか、昼休みになってすぐにお電話なんて」
『……琴実さんと2人きりでお昼ご飯を食べたいと思いまして。もう、教室の前に来ているのですよ』
「えっ?」
教室の入り口の方を見てみると、小さな手提げを持って笑顔で私に手を振る千晴先輩がいた。
「ちょっと待っていてくださいね」
私の方から通話を切って、
「理沙ちゃん、ごめん。千晴先輩が私と2人きりでお昼ご飯を食べたいみたいで」
「うん、分かった。じゃあ、あたしはテニス部の子と食べるよ。……って、もうそこにいるじゃない」
「私も驚いちゃった。行ってくるね」
「うん、行ってらっしゃい」
私はお弁当と水筒の入った手提げを持って、千晴先輩のところに行く。
「お待たせしました」
「いえいえ、こちらから突然誘ったことですので。ありがとうございます。帰りもここまで送りますから安心してくださいね」
「はい。ところで、2人きりで食べたいと言っていましたけど、どこで食べましょうか?」
「晴れてきたので屋上で食べようかなと思っています」
「えっ、屋上って行くことができるんですか?」
「ええ。お昼休みと放課後は開放していますよ。ベンチもあります」
「へえ……」
漫画やアニメのように屋上を開放している高校はないって聞くけど……意外とそうでもないのかな。それとも、ここが珍しいのか。
千晴先輩と一緒に私は屋上へと向かう。
「うわあっ、広くていいですね」
「でしょう? 周りに高い建物も全然ないですから、とても広い景色を見られるのですよ」
確かに、結構遠くまでの景色を見ることができる。緑もあってゆっくりできそうな素敵な場所なのに、昼休みが始まって数分ほどしか経っていないからかほとんど生徒がいない。
千晴先輩と一緒に近くのベンチに座った。遠くには小学生の頃に遠足で登った山が見えている。
「では、さっそく食べましょうか。いただきます」
「いただきます」
屋上で景色を見ながら食べるお弁当もいいなぁ。いつもより美味しく感じる。大好きな玉子焼きだからかもしれないけど。
「そういえば、千晴先輩が私と2人きりで話したいことってなんですか?」
「ええと……」
すると、千晴先輩の顔が見る見るうちに赤くなっていく。そして、私のことをチラチラと見てくる。まさかとは思うけど……まさか?
「お、驚かないでくださいね?」
「はい」
そういう風に言われた後に話されたことで驚かなかったことがない。むしろ、余計に驚いちゃう気がする。
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