ガール&パンツ

桜庭かなめ

文字の大きさ
73 / 86

第72話『告白宣言』

しおりを挟む
 今日は無事に見回りが終わって良かった。昨日のこともあって、ダブル・ブレッドも表立った活動は控えているのだろうか。

「う~ん」

 ただ、千晴先輩が沙耶先輩のことを好きだということを知ってしまった。ある意味ではブランよりも千晴先輩の方が脅威かもしれない。

「どうすればいいんだろう……」

 アドバイスにもなっていない私の言葉を聞いて、沙耶先輩にパンツを堪能させていたし。見回りが終わったときなんてかなりいい雰囲気になっていた。何もしなかったら千晴先輩に先を越されちゃうかもしれない。そんなことを考えながら湯船に浸かっていた。

「そういえば、一緒のお風呂に入ったのが楽しかったな」

 沙耶先輩の背中を流して。沙耶先輩には背中を流してもらうだけじゃなくて、髪を洗ってもらった。ドキドキしたけれどあのときはとても幸せな時間だった。
 でも、もし……沙耶先輩が千晴先輩と付き合うようになったら、そういった時間を過ごすことができなくなるかもしれない。そう思うと、途端にお湯が冷めてしまったように感じて。

「もう出よう」

 お風呂から出て、宿題もないのであとは部屋でまったりと過ごすことに決めた。沙耶先輩は今頃、何をしているのかな。
 スマートフォンでこれまでに撮ってきた沙耶先輩の写真を見ていくと、温かい気持ちがどんどん膨らんでいって。あぁ、この人のことが好きなんだって再認識させてくれて。
 また、私のベッドで一緒に沙耶先輩と寝たいな。できれば、そういった日々を毎日過ごしたいな。
 ──プルルッ。
 バイブ音が鳴ると、千晴先輩からメッセージが届いたという通知が。理沙ちゃんや沙耶先輩ならともかく、千晴先輩からは珍しい。

『今から電話したいのですがいいですか?』

 事前にメッセージを送らなくても普通に電話をかけてくれてもいいのに。お昼休みはそうだったんだから。プライベートな時間だから気を遣ってくれているのかな。

『もちろんいいですよ』

 というメッセージを返すと、間もなく、
 ――プルルッ。
 千晴先輩から電話がかかってきた。よっぽど私と話がしたいのかな。

「折笠です」
『こんばんは、藤堂です。すみません、プライベートなお時間ですのに、突然お電話をしてしまって』
「いえいえ、気にしないでください」

 とても真面目な人だ。やっぱり、夜になってプライベートな時間だから、メッセージで一言入れたんだな。

『ちなみに今は……何をされていましたか?』
「お風呂から出て、宿題もないので部屋でのんびりとしていました。千晴先輩は何をしていましたか?」
『ついさっきまで、明日提出の課題をしていました。お風呂は……琴実さんとのお話が終わったら入ろうと思っています。私、湯船に長く浸かるのが好きなので、最後に入ることが多いのですよ』
「そうなんですか。私も冬は長く湯船に浸かることが多いですね」
『寒いとつい長くなってしまいますよね』

 ふふっ、と千晴先輩の笑い声が聞こえる。そういえば、こういった他愛のない話を千晴先輩とするのは初めてかもしれない。

『段々と温かくなってきたのでいいですけど、真冬のときは湯船が気持ち良すぎて溺れてしまいそうなことが毎年1度はあって』
「……意外とおっちょこちょいなところがあるんですね」
『ふふっ、意外ですか。私、昔から何度もおっちょこちょいと言われたこともありますし、真面目すぎて空回りしていると笑われたこともあって。ですから、琴実さんが意外だって言ってくれたこと……嬉しいですね』
「……千晴先輩のこと、からかったつもりだったんですけどね。嬉しいだなんて言う人、先輩が初めてだと思います」

 千晴先輩は真面目すぎて堅い人だと思っていたけれど、本当は愛嬌があっていい意味で天然な可愛らしい人なんだ。今日の彼女を見ると、実は千晴先輩と結構お似合いなんじゃないかと思い始めてしまう。

『ふふっ、先輩をからかうだなんて。まあ、琴実さんですから気にしませんけどね。ただ、あなたもいい意味で段々と肩の力が抜けてきて、風紀委員としてよく働いてくれていると思います。これもきっと相棒の朝倉さんのおかげでしょうね』
「……沙耶先輩はとてもいい先輩だと思います。もちろん、千晴先輩やひより先輩も」
『そうですか。入って早々、厄介な相手と対峙する状況になってしまっていますが……琴実さんがそう言ってくれて委員長として嬉しく思います。辛いときはいつでも相談してくださいね』
「……ありがとうございます」

 ダブル・ブレッドのことも大変だと思うけれど、今……一番心配なのは、もしかしたらこれからも沙耶先輩とこのまま一緒にいられなくなるんじゃないかってこと。

『そうは言っておいて何ですが、私の方から琴実さんに相談してもいいですか? それがこのお電話の本題なのですが』
「……いいですよ」

 私への相談。それが何なのか何となく想像はついている。今日の千晴先輩と、今の声色からして。

『私……明日、朝倉さんに告白しようと思います。ですから、琴実さんにどのようにして告白すればいいのか相談したくて』

 やっぱり、千晴先輩は沙耶先輩に告白するんだ。それだけ沙耶先輩のことが好きなんだな。出そうなため息を必死に堪える。

「私、告白したことはないんで……」

 そう言った瞬間、理沙ちゃんのあのときの顔を思い出した。

「……でも、一度だけ女の子に告白されたことがあります。好きですって」
『そ、そうなんですか! もしかして、琴実さんはその方とお付き合いを……』
「いえ、付き合っていません。私にも千晴先輩と同じようにとても大好きな……片想いの人がいますから」

 沙耶先輩の笑顔がはっきりと頭の中に浮かんでくるよ。

「でも、告白してくれた子の好きっていう気持ちが伝わってキュンときました。だから……想いを素直に言うのが一番いいんじゃないでしょうか」

 何を言っているんだろうな、私。恋のライバルに告白の助言なんて。
 でも、きっとこれで良かったんだろうってすぐに思った。

『なるほど。シンプルに言うのが一番いいですか』
「……きっと」
『相談に乗っていただきありがとうございます。私、頑張りますね』
「……頑張ってくださいね」
『告白したら琴実さんには連絡しますね。では、失礼いたします。また明日、学校で会いましょう』
「はい。早いですけど、おやすみなさい」
『おやすみなさい』

 千晴先輩の方から通話を切った。

「……明日、告白するんだ。千晴先輩……」

 沙耶先輩が急に遠くなっていく感じがする。必ずではないけど、千晴先輩が告白したら沙耶先輩と付き合う可能性がある。
 千晴先輩に自分も沙耶先輩のことを好きだと伝えてもいいかもしれないけど、告白を邪魔してしまうような気がして気が引ける。

「告白したっていう連絡を待つしかないか……」

 千晴先輩も沙耶先輩も納得できるような結果になることを願うしかない。私がとやかく言えることじゃない。だって、これは……先輩方のことなのだから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サクラブストーリー

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の速水大輝には、桜井文香という同い年の幼馴染の女の子がいる。美人でクールなので、高校では人気のある生徒だ。幼稚園のときからよく遊んだり、お互いの家に泊まったりする仲。大輝は小学生のときからずっと文香に好意を抱いている。  しかし、中学2年生のときに友人からかわれた際に放った言葉で文香を傷つけ、彼女とは疎遠になってしまう。高校生になった今、挨拶したり、軽く話したりするようになったが、かつてのような関係には戻れていなかった。  桜も咲く1年生の修了式の日、大輝は文香が親の転勤を理由に、翌日に自分の家に引っ越してくることを知る。そのことに驚く大輝だが、同居をきっかけに文香と仲直りし、恋人として付き合えるように頑張ろうと決意する。大好物を作ってくれたり、バイトから帰るとおかえりと言ってくれたりと、同居生活を送る中で文香との距離を少しずつ縮めていく。甘くて温かな春の同居&学園青春ラブストーリー。  ※特別編8-お泊まり女子会編-が完結しました!(2025.6.17)  ※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

ルピナス

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の藍沢直人は後輩の宮原彩花と一緒に、学校の寮の2人部屋で暮らしている。彩花にとって直人は不良達から救ってくれた大好きな先輩。しかし、直人にとって彩花は不良達から救ったことを機に一緒に住んでいる後輩の女の子。直人が一定の距離を保とうとすることに耐えられなくなった彩花は、ある日の夜、手錠を使って直人を束縛しようとする。  そして、直人のクラスメイトである吉岡渚からの告白をきっかけに直人、彩花、渚の恋物語が激しく動き始める。  物語の鍵は、人の心とルピナスの花。たくさんの人達の気持ちが温かく、甘く、そして切なく交錯する青春ラブストーリーシリーズ。 ※特別編-入れ替わりの夏-は『ハナノカオリ』のキャラクターが登場しています。  ※1日3話ずつ更新する予定です。

管理人さんといっしょ。

桜庭かなめ
恋愛
 桐生由弦は高校進学のために、学校近くのアパート「あけぼの荘」に引っ越すことに。  しかし、あけぼの荘に向かう途中、由弦と同じく進学のために引っ越す姫宮風花と二重契約になっており、既に引っ越しの作業が始まっているという連絡が来る。  風花に部屋を譲ったが、あけぼの荘に空き部屋はなく、由弦の希望する物件が近くには一切ないので、新しい住まいがなかなか見つからない。そんなとき、 「責任を取らせてください! 私と一緒に暮らしましょう」  高校2年生の管理人・白鳥美優からのそんな提案を受け、由弦と彼女と一緒に同居すると決める。こうして由弦は1学年上の女子高生との共同生活が始まった。  ご飯を食べるときも、寝るときも、家では美少女な管理人さんといつもいっしょ。優しくて温かい同居&学園ラブコメディ!  ※特別編11が完結しました!(2025.6.20)  ※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の逢坂玲人は入学時から髪を金色に染め、無愛想なため一匹狼として高校生活を送っている。  入学して間もないある日の放課後、玲人は2年生の生徒会長・如月沙奈にロープで拘束されてしまう。それを解く鍵は彼女を抱きしめると約束することだった。ただ、玲人は上手く言いくるめて彼女から逃げることに成功する。そんな中、銀髪の美少女のアリス・ユメミールと出会い、お互いに好きな猫のことなどを通じて彼女と交流を深めていく。  しかし、沙奈も一度の失敗で諦めるような女の子ではない。玲人は沙奈に追いかけられる日々が始まる。  抱きしめて。生徒会に入って。口づけして。ヤンデレな沙奈からの様々な我が儘を通して見えてくるものは何なのか。見えた先には何があるのか。沙奈の好意が非常に強くも温かい青春ラブストーリー。  ※タイトルは「むげん」と読みます。  ※完結しました!(2020.7.29)

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。  とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。  ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。  お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2025.12.18)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

処理中です...